国際フェアトレード認証とは 制度の仕組みとラベルの意味は?

国際フェアトレード認証のロゴマーク

国際フェアトレード認証とは、開発途上国の原料や製品が公平な条件で取引されていることなどを認証する制度。本記事では、制度の仕組みやラベルの意味、対象製品を紹介。フェアトレードがもたらすインパクトや成果、今後の課題について解説する。

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2021.11.17
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目次

フェアトレードとは 意味と仕組み

両手の中で咲く花

Photo by Photo by Lina Trochez on Unsplash

フェアトレードとは、開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目的とした「公平な貿易」の仕組みである。開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指すのだ。

私たちの生活に欠かせない日用品や食料品の多くが開発途上国で生産されている。そして、安さを生み出すために生産者や労働者は深刻な事態に晒されているかもしれない。

例えば、生産者に正当な対価が支払われていなかったり、小さな子どもが学校に行けずに働かなければならなかったり、農地では必要以上の農薬が使われている場合がある。

生産者がおいしいもの、品質のいいものをつくり続けていくためには、生産者の労働環境や生活水準を改善し、自然環境の保護などをサポートすることが不可欠だ。公平な取引、引いては持続可能な世界の実現のために、フェアトレードは欠かせない。

国際フェアトレード認証とは

国際フェアトレード認証とは、開発途上国の原料や製品が公平な条件で取引されていることなどを認証する制度である。国際フェアトレード認証は、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)が定めた基準にもとづき行われる。

製品が完成品になるまでには、原料生産から、輸出入、製造工程などのプロセスを経る。それらの各工程に関わるすべての組織に対して定期的に監査が実施され、生産者に対する適正価格の保証やプレミアム(奨励金)の支払い、児童労働の禁止などの基準が遵守されているかチェックされている。

かつて、フェアトレード製品はフェアトレード専門ショップや協会などで販売されていたとされる。フェアトレード運動は1980年代ごろから盛り上がり、1988年にオランダで、フェアトレード基準を設定しラベルを製品に貼付する仕組みが、世界ではじめて始まった。

1997年、当時各国それぞれで展開されていたラベル推進組織を束ねるアンブレラ組織として、国際フェアトレードラベル機構が設立。現在では、日本を含む世界30か国のフェアトレード推進組織や、中南米・アフリカ・アジアの各生産者ネットワーク組織が、国際フェアトレードラベル機構に参加している。

国際フェアトレード認証ラベルの意味は?

国際フェアトレード認証ラベルは、フェアトレード認証製品であることを示すラベルであり、製品の原料が生産され、輸出入、加工、製造されるまでの間に、国際フェアトレードラベル機構が定めた基準が守られていることを示している。国際フェアトレード認証ラベルには、以下の種類がある。

国際フェアトレード認証ラベル(The FAIRTRADE Mark)

国際フェアトレード認証

生産から完成品となるまでの各工程で、国際フェアトレード基準が守られていることを証明するラベル。認証製品として出荷されるまで完全に追跡可能。認証原料100パーセントからなる製品に表示される。
例)コーヒー、バナナ

国際フェアトレード認証ラベル

右側に矢印がついたこの認証ラベルは、非認証原料を含む製品に使用される。ただし、フェアトレードの条件下で利用できるすべての原料はフェアトレード認証原料である必要があり、製品の全原料のうち20%以上を占めなければならない。
例)チョコレート、シリアル

またこのラベルは、「マスバランス(Mass Balance)」を使用して調達された一種類の原料からなる製品にも使用される。

マスバランスとは、物理的な追跡を行う必要はないが、 生産者への適正な価格、プレミアム(奨励金)の支払い等は通常通り保証されているシステムのこと。

マスバランスが適用されているのはカカオ、砂糖、フルーツジュース、茶の4産品のみだ。これらは、原産国での一次加工の過程などで、大きな加工所で非認証原料と混ぜて処理せざるを得ないことが多い。そのため物理的トレーサビリティを課すことが、 結果として小規模農家のフェアトレードとしての販売を阻害し不利益をもたらしかねない。

そこでマスバランスでは、物理的トレーサビリティを免除している。

国際フェアトレード認証コットンラベル (The FAIRTRADE Cotton Mark)

国際フェアトレード認証コットンラベル

国際フェアトレード基準を守ったコットンでつくられていることを示すラベル。生産のすべての段階で物理的な追跡が可能だ。混合繊維製品の場合、重量の50パーセント以上がコットンであり、すべてのコットンが認証コットンである必要がある。

国際フェアトレード原料調達ラベル / FSIラベル (FAIRTRADE Sourced Ingredient Marks)

国際フェアトレード原料調達ラベル/ FSIラベル

FSIラベルは、法人単位でのフェアトレード調達を促進する制度で使用される。単一のフェアトレード認証原材料の調達量を増やしていくことにコミットした企業が、FSIラベルを製品やWebサイトなどで使用することができる。

特定の原材料の持続可能な調達を望む企業に対し、幅広い製品への使用を可能にし、フェアトレード生産者の販売量を増大させることが目的だ。

右側のタブ部分に記載されている原料が、フェアトレード製品であることを示す。例えば、タブに「COCOA」と記載されたFSIラベルが貼付されている製品は、カカオ原料のみがフェアトレード認証原料であり、その他の原料は認証原料ではない。

3つの基準 国際フェアトレード基準とは

国際フェアトレード基準の最大の特徴は、生産コストをまかない、持続可能な生産と生活を支える「フェアトレード最低価格」と、生産地域の社会発展のための資金「フェアトレード・プレミアム(奨励金)」を生産者に保証している点だ。

他にも、持続可能な開発を促進するために多岐にわたって基準が設けられているが、基準の原則は「経済」「社会」「環境」の3つである。

経済的基準

・フェアトレード最低価格の保証
・フェアトレード・プレミアムの支払い
・長期的な取引の促進
・必要に応じた前払いの保証 など

社会的基準

・安全な労働環境
・民主的な運営
・差別の禁止
・児童労働、強制労働の禁止 など

環境的基準

・農薬・薬品の使用削減と適正使用
・有機栽培の奨励
・土壌・水源・生物多様性の保全
・遺伝子組み換え品の禁止 など

国際フェアトレード認証の生産国対象地域

国際フェアトレード認証の生産者としての対象国・地域は、国民一人あたりの収入レベルや経済格差、そのほか経済的・社会的な要素を考慮して決められている。とくに以下の3つの指針をベースに考慮され、開発途上国の国々が認証対象となるケースが多い。

・OECD開発援助委員会(DAC)、政府開発援助(ODA)受取国・地域リスト
・世界銀行ジニ係数(国内経済格差を測る係数)
・人間開発指数(各国の社会の豊かさや進歩の度合いをはかる指標)

国際フェアトレード認証の対象製品

市場で野菜や果物を売る女性

Photo by Photo by Alex Hudson on Unsplash

代表的なフェアトレード認証製品には、コーヒーやチョコレートがある。これ以外にも、コットン、紅茶、バナナ、花、スポーツボー ルなど多岐に渡る。ここでは、以下の5つについて紹介する。

コーヒー

コーヒーのほとんどは開発途上国で生産されているのに対し、買取価格が決められているのは、ニューヨークとロンドンの国際市場だ。国際市場では価格が激しく変動し、小規模農家たちは不安定な生活を余儀なくされている。

国際フェアトレード基準では、フェアトレード最低価格が定められており、輸入業者は最低価格以上を保証する必要がある。また、輸入業者から生産者組合に保証されるプレミアム(奨励金)によって、生産地域の社会発展に成果が現れているところも多いという。

フェアトレードといえばコーヒーというイメージを持っている人も多いのではないだろうか。スターバックスは、国際フェアトレード認証のコーヒーを購買したり、独自の調達ガイドラインを設けたりして、エシカルな調達を大切にしている企業のひとつである。(※1)

チョコレート(カカオ)

開発途上国では、1400万人もの人々がカカオ豆の生産によって生計を立てているという。現在世界の子どもの10人に1人にあたる約1億6,000万人が児童労働に従事しており、その温床のひとつがカカオ豆農園だ。

フェアトレードによって、児童労働を生み出す要因である貧困を断ち切ることができれば、子どもが働かない生活が可能になるかもしれないし、プレミアム(奨励金)で社会基盤の充実を図ることが可能になる。また環境的基準により、自然環境に配慮しながらカカオの生産が可能になる。

コットン

アフリカやアジア地域の開発途上国にとって、コットンは人々の生活を支える需要な輸出農産品だ。その一方で、開発途上国の多くのコットン生産者は、低価格による厳しい状況を強いられている。また生産性を上げるため必要以上の農薬が使用され、環境被害や健康被害も深刻である。

国際フェアトレード基準では、オーガニック栽培を奨励するために価格の上乗せが保証される。実際に農薬による病がなくなったり、村に小学校がつくられたりと社会発展が実現している。

インドや東アフリカ諸国などの茶園で働く労働者を取り巻く環境は、茶葉の市場価格下落により悪化しているいう。

フェアトレードでは、適正賃金や労働環境が守られる。インドのプタリホラ茶園の合同委員会では、電力供給支援や小規模ビジネスの元手貸付などにプレミアム(奨励金)が活用され、地域の発展に寄与している。

切り花生産の環境負荷や安全な労働環境整備、労働者への低賃金などの課題に対応するため、2004年に国際フェアトレード基準が設定された。東アフリカ諸国やラテンアメリカ諸国を中心に生産される切り花が、日本でも2006年からフェアトレードフラワーとして販売されている。

国際フェアトレード認証の成果と課題

個々の対象製品を取り巻く背景を見てみても、フェアトレードが生産者に与えるインパクトが大きいことがわかるだろう。

国際フェアトレードラベル機構の認証機関であるフェアトレード・ラベル・ジャパン(FLJ)は、国内での国際フェアトレード認証の成果と課題について、以下のようにまとめている。(※2)

これまでの成果

フェアトレード・ラベル・ジャパン(FLJ)は、2018年に東京都から認定NPO法人の認定を受け、組織運営により力を入れている。企業でのフェアトレード勉強会やビジネスセミナーを実施し、年に一度開催しているステークホルダー会合では国際フェアトレード認証製品取扱い企業や検討企業が集まり情報交換を行う。

近年のSDGsへの関心の高まりも相まって、実際に国際フェアトレード認証の市場は年々拡大している。2020年度事業報告書によると、国内での国際フェアトレード認証参加組織数は221(前年は217)、市場規模は131億円(前年は124億円)となった。

認証商品を商品別にみると、79.0%がコーヒーともっとも多い。コーヒーの後に、茶、カカオ、果物、コットンと続く。

課題

課題は、より多くの人たちにフェアトレードを応援してもらうことだろう。とくに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、改めてフェアトレードの重要性が浮き彫りになったとされる。

パンデミックにより多くの小規模農家や労働者が窮地に立たされている。そんななかでも、最低価格の支払いが約束されていれば生活を守ることができるだろう。

また、プレミアム(奨励金)の活用によって衛生用品や食糧配給が可能になる。生産者コミュニティを整備しておけば情報交換や助け合いの場ができる。フェアトレードが生産者にもたらすインパクトの可能性は無限大だ。

フェアトレードをさらに加速させるためにも、フェアトレード調達にコミットする企業を増やすための働きかけや学校教育、行政を通しての認知向上が欠かせない。

フェアトレードでサステナブルな世界の実現を

フェアトレードは公平な貿易であり、人や環境を犠牲にすることなく持続可能な世界を目指すための取り組みだ。消費者である私たちがフェアトレード製品を買うと、開発途上国の貧困問題の解決や地球環境保全につながるということを覚えておきたい。サステナブルな世界の実現のために、まずはできることからはじめてみてはいかがだろうか。

※掲載している情報は、2021年11月17日時点のものです。

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