プラスチックごみ問題とは 現状や環境への影響、発生する原因を解説

海外に打ち捨てられたプラスチックごみ

Photo by Beth Jnr on Unsplash

プラスチックごみ問題は世界が解決をめざす課題のひとつである。各国で対策がとられているが、プラスチックごみは今後も増える可能性が高い。プラスチックごみ問題の概要、各国の取り組み、個人でも手軽にできるアクションを紹介する。

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2023.02.03
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プラスチックごみ問題とは

プラスチックごみ問題とは、自然分解されないプラスチックの不適切な使用や廃棄が複数のセクターで引き起こす数々の環境問題をさす。地球温暖化・資源枯渇・海洋汚染がおもなセクターだ。いずれもプラスチックが地球の環境に悪影響を与えている。

現代のライフスタイルではプラスチック製品が無数に使われている。加工しやすく丈夫なプラスチックはリーズナブルな予算で生活に便利な製品を製造できるからだ。ふだん、なにげなく使っているデイリー用品のなかにも多くのプラスチック製品がある。飲食品の容器、電化製品、ペットボトル、レジ袋。現代のライフスタイルに欠かせないものも数多い。

「プラスチックごみ問題」とダイレクトに考えたことはなくても、「環境破壊につながる問題」として認識している人も多いのではないだろうか。

実際、世界ではプラスチックが環境破壊の要因のひとつだとして利用の見直しが進み、リサイクルや処分方法について関心が高まっている。日本も例外ではなく、一例としてレジ袋を有料にし、マイバッグの利用が推奨されたことが記憶に新しい人も多いだろう。

プラスチック製品のなかには使い捨てられるもの、いわゆる「使い捨てプラスチック」がある。前述のレジ袋は最たるものだ。ほかにも飲食料品の容器やストローなどが使い捨てプラスチックの代表格として知られている。

使い捨てられたプラスチックが最終的に行き着く先は焼却処分場か海だ。焼却処分は温室効果ガスを発生させる。海に流れ着けば海洋汚染を引き起こす。原料である有限な化石燃料を使い捨て、浪費する。環境問題と地球資源の両面で、使い捨てプラスチックは積極的に削減されるべきではないだろうか。

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マイクロプラスチックとは

プラスチックごみ問題のひとつとして、マイクロプラスチックの存在が危険視されている。マイクロプラスチックとは、5ミリ以下のサイズになったプラスチックだ。自然分解されないプラスチックはごく小さな破片になっても残り続ける。

マイクロプラスチックは2種類ある。「一次的マイクロプラスチック」「二次的マイクロプラスチック」だ。

一次的マイクロプラスチックはペレット(プラスチックの原料)や、洗顔料、コスメ用品に使われるマイクロビーズである。いわば誕生したときからマイクロプラスチックだったものにあたる。

二次的マイクロプラスチックは、もともとは大きなサイズのプラスチック製品が破損や粉砕によって小さくなったものをさす。ポイ捨てなどで破棄されたあと、紫外線や波などの自然環境のなかで5ミリ以下になったものだ。

マイクロプラスチックは海洋汚染の原因のひとつである。化学物質と相性がよく、製造段階や使用時に有害物質が吸着してしまうことも少なくない。有害物質を含んだまま海へ流れ出れば海が汚れる。また、海洋生物が餌とともに取り込み、体内に蓄積してしまう。海洋の汚染と生態系に深刻な影響を与えるのだ。食物連鎖がめぐり、人間や陸上動物が体内に取り込む可能性も否定できない。

海に流れ出たマイクロプラスチックは回収が不可能だと言われている。肉眼では見えないサイズになっても海を漂い続ける。海洋政策研究所がリリースした「海洋白書2021」によると、現代の海を1980年代と比較するとマイクロプラスチックが10倍にもなっているとのことだ。(※1)

プラスチックを取り巻く現状

プラスチック問題が注目される昨今、世界のプラスチックを取り巻く状況はどうなっているのだろうか。

1950年以降、世界のプラスチック生産量は83億tを超えている。(※2) そのうちの63億tが廃棄された。リサイクルされたのはそのうちのたった9%にすぎず、79%は埋め立てられたか海洋投棄された。

2022年6月、OECD(経済協力開発機構)は2060年までに世界のプラスチックごみは急速に増加し、現状のままでは3倍になるだろうとの報告書をリリースした。2019年には4億6,000万tだった消費量が2060年には12億3,100万tになるとのことである。消費量の増大は人口と所得の増加が原因だと予測している。(※3)

2019年に9%だったリサイクル率は2060年に17%になるとの予測もされているが、あまりよい予測とは言えない数値だ。報告書の内容を受け、マティアス・コーマンOECD事務総長は「より厳しい世界的な協調行動をとるべきである」との声明を発表した。

プラスチックごみ問題の啓発と解決に力を入れるエレン・マッカーサー財団によると、いまのままでは2050年に魚よりも海洋に投棄されるプラスチックごみのほうが多くなるとのことだ。(※4)

2050年は遠い未来ではない。コーマンOECD事務総長の発言どおり、世界はより厳しい協調行動が望まれるフェーズに入っているのではないだろうか。

プラスチックごみによる影響

プラスチックごみ問題は地球の環境に大きな影響を与える。諸問題を4つのセクターに分類して見てみよう。

生産時の大気中へのCO2排出

生産時、プラスチックはCO2を放出する。CO2は温室効果ガスの一種であり、温室効果ガス全体の約75%を占める(※5)。温室効果ガスは地球温暖化を進める原因だ。

地球温暖化もプラスチックごみと同様、環境問題として非常に重要な位置付けになっている。SDGsのゴール13「気候変動に具体的な対策を」にかかわるファクターだ。プラスチックの生産量や使用量をコントロールし、CO2の排出量を考える必要がある。

海洋汚染や生態系へのダメージ

前述のとおり、プラスチックごみは海洋汚染や生態系に大きなダメージを与える。「海洋プラスチックごみ問題」として単独で取り上げられることも少なくない。

なぜ海にプラスチックごみがたどり着くのか。それは使用者が適切な捨て方をしないことが多いからだ。多くの人はプラスチックごみを分別してごみの日に出すだろう。しかし一部ではポイ捨てや不法投棄をする人がいる。彼らが不適切に捨てたごみが川から海へ流れ着くのである。

また、廃棄されたプラスチック製の漁網が問題を引き起こすこともある。身体を漁網に絡め取られる海洋生物は決して少なくない。流れ着いたポリ袋のようなプラスチックごみを餌と勘違いし、食べてしまうこともある。どちらも怪我や命を落とすことがある危険な状況だ。

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廃棄時の問題

プラスチックは廃棄の問題もある。方法は「リサイクルする」「埋める」「燃やす」のいずれかだ。リサイクルは前述のとおり全体量の9%にとどまっている。今後の啓発が望まれる。

燃やす場合にはCO2の発生が懸念される。プラスチックは生産時だけではなく、燃焼廃棄時にもCO2を発生させる。なお、プラスチック1tを焼却した際、排出されるCO2の量は1.92tである。

資源の枯渇

プラスチックのおもな原料は化石燃料(石油)である。化石燃料は枯渇が懸念される資源だ。プラスチックの生産量が増大すればするほど消費され、枯渇を進めてしまうことになる。

近年は石油の代わりにバイオマス資源を原料にする動きもある。地球の資源を守るとともに、焼却時に発生するCO2が原料の光合成由来のものであるため、温室効果ガスを増やさず、カーボンニュートラルのための選択としてもふさわしい。

プラスチック問題が起こる原因

プラスチック問題が起こる大きな原因は2つある。生産や廃棄のシステム、そしてプラスチックの特性だ。

大量生産大量廃棄のシステム

利便性の高いプラスチックを求める消費者は多い。そのため、企業は大量生産して流通させる。大量生産されれば廃棄もまた大量になる。

プラスチックをできるだけ使わないことがシステムを変化させる鍵になる。プラスチックごみ問題が注目されるようになったいまでも、ライフスタイルを急激に変化させるのは難しいだろう。

自然に分解されないプラスチックの特性

一般的なプラスチックは自然分解されない性質である。焼却処分しなければいつまでも残ることになるが、焼却時にはCO2が発生してしまう。自然に還せない性質が、プラスチックごみの早急な解決が困難な理由のひとつであることは間違いないだろう。

世界の取り組み事例

プラスチックごみ問題の解決のため、世界は次々に取り組みをスタートさせている。各国の代表的な取り組みを紹介する。

EU:EUプラスチック戦略

2018年、EUは「EUプラスチック戦略」を策定した。リユース・リサイクルの重視、再生プラスチックに関する項目、使い捨てプラスチックに対する法的スコープの実施、海洋ごみのマッピングなど多数の項目が盛り込まれている。2030年までに使い捨てプラスチック製品をリユース・リサイクル可能にするなど、企業の積極的な参加を求める内容もある。

ほかにも、プラスチックごみ問題解決に有益だと考えられるサーキュラー・エコノミーに向けた投資と技術開発の拡大、国際的な活動の要請・欧州外部投資計画など、国際的アクションの醸成が重視されている戦略だ。

アメリカ:Save Our Seas 2.0

世界最大のプラスチック廃棄国であるアメリカでは、2020年に「Save Our Seas 2.0」を制定した。プラスチックごみを含む海洋ごみ全般への対策である。

対策研究の強化や国際的なアクションへの指針に加え、プラスチックごみ対策のイノベーションに対する懸賞システムのリリース、プラスチックごみのインフラへの利用、リサイクルしやすいインフラの強化など、民間にも目を向けた項目が多数盛り込まれている。

中国:プラスチック袋・一部プラスチック製品の規制

中国では2022年末までにプラスチック袋の利用を禁止する政策をとった。生鮮食品が対象であれば2025年まで利用が可能だが、段階的な禁止が進んでいる。また、2025年には宿泊施設でプラスチックを使ったアメニティの無料提供が規制される。

アフリカ諸国:プラスチック袋の禁止

一部の国を除いたアフリカ諸国ではプラスチック袋が禁止された。54カ国中30カ国が該当する。もともとアフリカ諸国は脱プラスチック先進国と言われるほどプラスチックごみ問題への関心が高い。人口増加やプラスチック袋が原因で起きた洪水や家畜の誤飲事故がきっかけだと言われている。南アフリカ共和国においては2003年に世界に先駆けてプラスチック袋の使用が禁止されていた。

アフリカ諸国は今後の人口増加が予想されている地域でもある。プラスチックごみ問題は人口の増加も関係していると考えられているが、アフリカ諸国の今後の取り組みによっては問題解決のためのロールモデルになるかもしれない。

インド:使い捨てプラスチックの禁止

2022年7月、インドは使い捨てプラスチックの利用を全面禁止した。インドはプラスチックごみを管理するインフラが確立されておらず、国内での環境悪化が目立つようになったことが原因の一端だ。

同時にプラスチックごみの最小化・分別・リユース・リサイクルについて厳格な基準を定め、プラスチック関連業者に遵守を求めるにいたった。

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UAE:使い捨てプラスチックを禁止

アラブ首長国連邦(UAE)政府は、2024年より使い捨てプラスチックの使用禁止を発表した。さらに2026年からは、プラスチック製のカトラリー、ドリンクカップなどの輸入禁止措置を取ることを決定しており、世界に先がけた規制といえる。

リサイクル素材でつくられたレジ袋や、海外輸出時の製品に必要なプラスチックなどは禁止令の対象外となる見込みだ。

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日本の取り組み事例

日本でもプラスチックごみ問題の解決に向けてさまざまな取り組みをおこなっている。いくつかの事例を紹介する。

プラスチックスマート

2018年、環境省は海洋プラスチック問題の解決に向けたキャンペーン「プラスチック・スマート -for Sustainable Ocean-」を展開した。プラスチックごみのポイ捨て撲滅の徹底・分別回収・排出量の抑制・リサイクル・リユースを推進するキャンペーンだ。

企業やNGO、学術機関をはじめ、個人でも参加が容易なシステムでスタートしたプラスチックスマートは、海洋プラスチック問題を民間へ啓発する機会としても有益だ。2023年のいまでも続けられており、参加希望者はいつでも登録・参加できる。

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プラスチックオフセット

プラスチックオフセットは、プラスチック消費量を削減するために取り入れられたシステムだ。シンプルに言えばカーボンオフセットのプラスチックバージョンである。削減努力をしてもどうしても出てしまうプラスチックごみを、資金提供によって相殺しようという内容だ。

消費者やプラスチック排出企業は排出量に応じたプラスチッククレジットを購入する。購入金はプラスチック廃棄に関する団体やプロジェクトに投資される。クレジットを挟まず、ダイレクトに投資してもかまわない。投資されたクレジットは団体やプロジェクトで有効活用され、クレジット購入者は間接的にプラスチック排出量の削減に貢献できる。

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海洋プラスチック問題の解決に向けた宣言活動

日本プラスチック工業連盟は海洋プラスチック問題に対し、業界を挙げて解決への対策をとる宣言活動をスタートした。活動に賛同する企業や団体が参加している。対策内容は各企業の自主性に任されているが、企業ごとの報告に日本の高い技術力があらわれ、問題解決へのロールモデルとしても活用できそうだ。

たとえば総合化学メーカーのデンカ株式会社ではプラスチック容器を扱っているが、プラスチックの使用量を大幅に削減できる素材で軽量容器を開発した。プラスチック樹脂であるポリスチレン樹脂のケミカルリサイクルにも注力している。

2023年1月には、参加企業が58社、団体が20団体になった。今後もプラスチックを扱う企業だからこその有効な対策が期待される。

私たちにできること

国や企業だけではなく、個人でもプラスチックごみ問題の解決に貢献できる。難しい方法を選ぶ必要はない。日常生活のなかの手軽なことからはじめられる。

マイボトルを持ち歩く

外出の際にマイボトルを持ち歩く習慣をつければ、出先で喉がかわいてもペットボトル飲料を買わずにすむ。もし飲み干してしまっても給水アプリで無料の給水スポットが探せるため、暑い時期の外出時も安心だ。マイボトルに対応しているカフェを使うのも大きな貢献になる。

ELEMINIST

エレミニスト限定ストージョ カップ - 355ml

1,870円

※2023.01.23現在の価格です。

レビュー (1)

  • ★★★★★
    デザイン+実用性◎

    友人に誕生日ギフトで送りました。コーヒーが大好きな子なので毎日持ち歩いてくれています。コンパクトに畳めてバッグに入れて持ち歩けるので、とっても便利でオシャレなデザインも気に入ってくれました!自分用にも購入したいです。

    mimi on Jun. 10, 2022

マイクロビーズ入りの洗顔料や歯磨き粉を使わない

デイリープロダクトの洗顔料や歯磨き粉にマイクロビーズが使われていたら、不使用の製品に取り換えよう。マイクロビーズはいわゆるマイクロプラスチックのことだ。使用後に水に流せば最終的に海へ行き着き、海洋プラスチックごみになってしまう。

マイクロビーズは成分表にポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリウレタン、コポリマーなどの名称で記載されている。

プラスチック製のカトラリーを使わない

使い捨てのプラスチックスプーンやフォークの代わりに、マイ箸やマイスプーンを使おう。プラスチック製のストローも、マイストローがあれば断りやすい。

ELEMINIST

カトラリーセット

2,970円

※2022.08.17現在の価格です。

レビュー (1)

  • ★★★★★
    持ち歩きたくなる。

    ケースもスプーンもフォークもナイフも使いやすいし、サイズ感いいし、ちょっと重たい気もするけど、何よりめちゃめちゃかっこいいし、これは買うしかないっしょ。もう1セット欲しい。

    2児ワーママ on Jun. 10, 2022

ペットボトルのリサイクルにほんの少しの手間を

ライフスタイルによってはペットボトルを完全に使わないわけにはいかないかもしれない。もしもペットボトルを使ったのなら、ごみに出すときにほんの少しだけ手間をかけよう。

「キャップとラベルが外してある」「中身が空になっている」これだけでリサイクルの規格を満たすペットボトルが多くなり、結果としてプラスチックごみが削減できる。

手軽にはじめられるプラスチックごみ問題解決への参加

プラスチックごみ問題は早急な対策と解決が求められる環境問題のひとつだ。環境問題というと個人での取り組みが難しいように聞こえるが、毎日の生活のなかで手軽にはじめられることが案外多い。

プラスチックの使用量は増大傾向にある。プラスチックごみ問題も深刻さを増すだろう。できることから取り入れて、解決アクションに参加してみよう。

※掲載している情報は、2023年2月3日時点のものです。

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