プラスチックスマートとは 海洋プラスチックごみ問題の解決へ向けて

整然と並べられたプラスチック製のボトル

Photo by Jonathan Chng on Unsplash

2018年に環境省がスタートさせたプロジェクト「プラスチックスマート」。プラスチックごみのポイ捨て撲滅を徹底し、分別回収、排出抑制、リサイクル・リユースなどの推進が目的だ。プラスチックスマートが始まった背景やSDGsとの関係性、具体的な取り組み内容などを詳しく解説していく。

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2022.10.06
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プラスチックスマートとは

プラスチックスマートのロゴマーク

プラスチックスマートとは、プラスチックごみによる環境汚染対策として環境省がスタートさせたキャンペーンだ。

2018年、環境省は世界的なプラスチック問題の解決アクションとして、「プラスチックとの賢い付き合い方」を主軸にした取り組みを進めると発表した。プラスチックスマートキャンペーンはそのひとつである。

キャンペーンに参加できるのは、個人・自治体・NGO・企業・研究機関など幅広い。これらの層が「プラスチックスマート」のシンボルを掲げ、プラスチックごみのポイ捨て撲滅を徹底し、分別回収、排出抑制、リサイクル・リユースなどを推進する。その取り組みは国内外に発信される。

また、キャンペーンに賛同するすべての層がプラスチックスマートのロゴマークを使用可能だ。「海洋プラスチックごみ問題の解決に貢献している」という証明になるとともに、目にした人々への啓発効果を発揮する。

背景にある海洋プラスチックごみ問題

プラスチックスマートが推進された背景にはプラスチックごみ問題がある。当問題には大気汚染や海洋汚染が深く関わっており、プラスチックスマートはとくに海洋プラスチックごみがフォーカスされている。

海洋プラスチックごみ問題は深刻だ。海に流れ込むプラスチックごみは年間800万トンにもおよぶ。イギリスのNGOエレン・マッカーサー財団では、2050年までに海の生き物よりも海洋プラスチックごみのほうが多くなると推測している。(※1)

このままの状態を放置しておけば、いずれ海のすべてがプラスチックごみに覆われてしまうという可能性が否定できない。通常の日常生活すらままならなくなる。

海洋プラスチックごみ問題は海に生きる生物の安全もおびやかす。2015年、オーストラリアのグレートバリアリーフに生息する珊瑚が海岸に流れ着く小さなプラスチックをエサにしている事実が判明した。食物としてとうてい消化しきれるものではなく、珊瑚、ひいては生態系への悪影響が懸念される。

珊瑚のほかにもプラスチックの破片で身体を損傷したり、遺棄されたプラスチックの漁業網に絡まってしまったりと、プラスチックごみによる海洋生物の受難は数多い。

海洋プラスチックごみ問題は海洋汚染とともに生態系にも悪影響をおよぼす。プラスチックスマートをはじめとした施策の前進が求められる。

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SDGsとプラスチックスマート

プラスチックスマートはSDGsにも深く関わっている。SDGsのゴール14は「海の豊かさを守ろう」だ。海と海の資源を守り、持続可能な方法で使用することを目的とする。(※2)

海洋プラスチックごみ問題が世界規模で深刻化しているいま、プラスチックごみを削減する目的のプラスチックスマートは、重要な施策だと言っても過言ではないだろう。

プラスチックを完全に使わない社会の実現は難しいが、排出量の削減やリサイクル・リユースを前提にした設計・生産、バイオマス素材への転換を目指すことは可能であるはずだ。すでに各国の企業は取り組みをはじめている。プラスチックスマートを推進することにより、さらにその意識が高まり、いい結果へと結び付くだろう。

また、プラスチックスマートは個人での参加が可能な点も注目したい。大規模な排出量の削減や効果のある設計・生産は個人では難しく、問題を自分ごととしてとらえにくかった。しかしプラスチックスマートは個人でも参加しやすいアクションを紹介し、啓発につとめている。(※3)

プラスチックスマートは従来の取り組みに加え、幅広い層の意識を啓発するキャンペーンである。SDGsのゴール14に向け、大きな効果を発揮することが期待できるだろう。

自治体や企業でのプラスチックスマートの取り組み内容

自治体や企業ではプラスチックスマートへの取り組みがおこなわれている。そのいくつかを紹介する。

香川県 海底堆積ごみ回収・処理システム

香川県では漁業者を含む三者が協働し、海底堆積ごみを回収・処理する取り組みをはじめた。漁業中に底引き網などが引き揚げた海底堆積ごみを港まで持ち帰り、漁業者が一時保管するボランティアだ。一時保管のあとは行政が運搬・処理をおこない、処理費用は県と全市町が負担する。

NPO法人Blue Earth Project 高校生対象のワークショップなど

NPO法人Blue Earth Projectでは、全国の高校を訪問して環境ワークショップを開催した。ほかにも全国各地での啓発イベントの開催、SNSやFM放送などでの情報発信、省庁・自治体との連携など積極的なアクションをおこなっている。

ホテル日航関西空港 バイオマスアメニティの導入

ホテル日航関西空港では、客室へ植物原料由来のバイオマスアメニティを導入した。歯ブラシ・レザー・ヘアブラシ・コームなどをバイオマス素材に切り替え、プラスチックごみの削減につとめている。また、独自のリサイクル技術をもちい、エコマーク認定を取得したティッシュボックスも提供している。

mymizu 給水アプリのリリース

mymizuは給水アプリをリリースした。世界各地にある約20万箇所の公的水飲み場や給水パートナーであるカフェ・店舗・ホテルなどを検索することができる。ユーザーと給水情報を結び付けるアプリだ。

外出中、気軽にマイボトルやマイカップに給水できるため、ペットボトルの削減に繋げられる。削減したペットボトルの本数やCO2の排出量のトラッキングも可能になっており、視覚的にプラスチックスマートへの貢献を実感できるのも小さな楽しみになるだろう。

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私たちができるプラスチックスマートなアイデア

プラスチックスマートは個人でもトライできる。暮らしのなかで実践しやすいものを無理なく取り入れていこう。

ごみになるものを減らす

単純なアクションかもしれないが、実際に大きな効果に結び付きやすい。たとえば買い物の際、小分けにするポリ袋の使用を減らしてみる。食品の保存は蓋付き容器やシリコンラップを使えばプラスチック製のラップを使わなくても済む。商品購入のときには原料をチェックし、バイオマス素材を意識してみるのも有効だ。

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リユースが可能なものを使う

いまや定着したエコバッグ(マイバッグ)を使えばレジ袋を削減できる。マイボトルやマイ箸で使い捨て容器やカトラリーを断りやすくなるだろう。洗剤やバスグッズのような消耗品は詰め替えボトルを活用しよう。

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リサイクルを意識する

リサイクルもプラスチックごみの削減に大きく貢献する。ごみの分別を徹底し、外出時に出たごみは自宅へ持ち帰ろう。再生プラスチック製品を積極的に使うのもクレバーな選択だ。自治体や企業ではリサイクルボックスを設置していることもあり、ライフスタイルのなかで自然にトライしやすい環境が整えられている。

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クリーンアクションへの参加

環境保護の一環として、クリーンアクションをおこなっている自治体やNGOもある。具体的には河川敷や海岸などの清掃活動だ。無理のない範囲での参加を検討してみてはいかがだろうか。

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プラスチックスマートがみちびくSDGsのゴール

プラスチック製品を使い続ける限り、海洋プラスチックごみの問題は解消されにくい。しかし自治体や企業だけではなく、個人でも参加できるプラスチックスマートによって、問題解消に貢献できる層が厚くなった。ライフスタイルのなかで手軽にできるアクションを取り入れ、解決とSDGsのゴール14への前進を目指していこう。

※掲載している情報は、2022年10月6日時点のものです。

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