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プラスチックは生活に利便性をもたらした。一方で、環境問題や資源問題の話題になれば頻繁に登場する存在であるのも確かだ。サステナブルが重視される現代、生活のなかでプラスチックをどのように取り扱うべきだろうか。プラスチックの原料や生産方法、海洋ごみ問題などを解説する。
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プラスチックの原料はふたつある。ひとつは天然由来資源である石油、もうひとつは使用済みプラスチック製品を主としたリサイクル資源だ。
リサイクルとはいえ、もとは石油までさかのぼることになり、結局は石油だと言われるかもしれない。しかし「回収したプラスチックを再生樹脂として生まれ変わらせるため、おおもとの原料となる石油を無駄にしなくて済む」という一面がある。
しかし総利用量の内訳を見ると、2020年の国内樹脂総生産量は963万t。うち再生樹脂は100万tにとどまっており、石油を原料とするプラスチックの生産のほうがはるかに多い状況だ。(※1)
石油からつくられたプラスチックは、リサイクルしなければ埋める、あるいは焼却する処分方法しかない。だがプラスチックは埋めても自然に還らず、半永久的に地中に残る。また燃やせば二酸化炭素の排出は避けられず、地球温暖化の原因になる。いずれも環境に大きな負担をかける事実であることは間違いない。
リサイクルし、再生樹脂にして新たなプラスチックへ生まれ変わらせる手法は、環境保護にとって大きな意味を持つだろう。
プラスチックとペットボトルには切っても切れない関係がある。ペットボトルの原料はポリエチレンテレフタレート(Poly Ethylene Terephthalate)、石油からつくられる樹脂である。おおもとが石油である点はプラスチックと変わらない。
原料や処分方法など、プラスチック同様にやはり環境への負荷に注目が集まることが多い。しかし昨今ではリサイクル意識の高まりを受け、植物由来成分の原料を増やす、いずれは原料の100%を植物由来成分に置き換える方針など(※2)、サステナブル化を目指す企業の取り組みなども積極的に進められている。
現在は技術が発達し、製造過程において有毒な成分を発生させることなく、使用後は安全に処分・リサイクルできる設計でプラスチック製品がつくられるようになった。プラスチック製造の一連の流れを見てみよう。
原料となる原油を熱し、成分ごとに分けて精製する。成分はガソリン・ナフサ・灯油・軽油・重油・アスファルトの6種類。このうちプラスチックに使われる成分はナフサである。なお、日本では精製したナフサだけでは必要量に満たないため、近年では原油のほかにもナフサを輸入している。
ナフサを加熱し、エチレン・プロピレン(気体)やベンゼン(液体)などをつくる。これらの分子を結びつけ、ポリエチレンやポリプロピレンがつくられる。このポリエチレン、ポリプロピレンがプラスチックの材料となる。
プラスチックの材料に、柔らかくする・壊れにくくする・着色添加剤を加えるなどの加工をし、ペレット状態にする。
成形機を使い、ペレットをプラスチック製品にする。金型に入れ、冷やせば完成。
脱プラスチックの声が高まる世情だが、プラスチックが人々の生活に利便性をもたらし、生産・使用され、現在でも世界の総生産量が増加している事実は確かである。世界の主要国はどの程度のプラスチックの生産量なのだろうか。
日本プラスチック工業連盟の資料によると、2016年から2018年における主要国のプラスチック生産量は各年度で以下になる。(※3)
国名 | 2016年 | 2017年 | 2018年 |
---|---|---|---|
日本 | 11t | 11t | 11t |
中国 | 81t | 102t | 108t |
EU(+ノルウェー、スイス) | 53t | 64t | 61t |
NAFTA(アメリカ・カナダ・メキシコ) | 50t | 62t | 65t |
ラテンアメリカ | 11t | 14t | 14t |
アフリカ、中東 | 20t | 24t | 25t |
CIS | 記載なし | 9t | 11t |
アジア全体では、主要国のなかでもトップの生産量に位置しているのが中国で、生産量は群を抜いている。日本は比較的低い傾向に見えるが、日本で原油が生産できないことや人口を考えれば決して少ないわけではない。
環境保護に注力しているEU圏や北欧では増加から減少に転じ、今後の対応しだいではさらに変動が生じるだろう。
いっぽう、アメリカ合衆国・カナダ・メキシコによって構成されるNAFTA(北米自由貿易協定)での生産量は増加傾向にある。2018年8月の合意に北米製の鉄鋼・アルミニウム・ガラス・プラスチックの利用を義務付ける流れが含まれたためであるかもしれない。
プラスチックは海洋の環境に目を向けたとき、大きな問題の原因として注目される。近年問題になっている海洋プラスチックごみは、環境にとって避けて通れない課題だ。適切な処理がされないプラスチックごみは、海洋に少なからぬ悪影響を与える。
すでに世界の海では1億5,000万tものプラスチックごみが存在している。ごみの流入はさらに続き、年間800万tが次々に追加されている状態だ。(※4)
プラスチックは自然に還ることがなく、半永久的に残り続ける。このままでは大げさでなく、海がプラスチックごみで埋まりかねない。海から漂着したプラスチックごみに海岸を埋め尽くされる可能性もあるだろう。
実際、2050年にはプラスチック製品の生産量が4倍になり、それにともなって海洋プラスチックごみの量が海にいる魚の数を上回るだろうという予測もある。決して楽観視できないことがわかる。
海洋プラスチックごみの具体的な問題のひとつとしてマイクロプラスチックの存在が挙げられる。波や紫外線で5mm以下の大きさになったプラスチックごみを指すものだ。
マイクロプラスチックのなかには有害物質が含まれているものも多い。海洋ごみとして半永久的に海中に残るのであれば、有害物質が海洋の生態系に取り込まれる可能性がある。結果として人間をはじめとした生物の体内に取り込まれる事例も発生している。
「プラスチックのストローごみが鼻にささったウミガメ」。そんなショッキングな写真を見たことがあるだろうか。海洋プラスチックごみがおよぼす生態系への影響は広く知られつつある。
海洋プラスチックごみにより、約700種類以上もの海洋生物が傷付けられ、ときには命を落としてしまう。流れるポリ袋をエサと間違えたり、廃棄された漁業網に絡まったりといった問題が世界中の海で発生している。
プラスチックはたしかに便利なものだが、抱える問題も決して少なくはない。原料になる石油の資源問題や環境問題がつねにつきまとう。生産量・消費量は一部でいまだ増加しており、今後の環境への影響が懸念される。
しかしいっぽうでは、原料をリサイクル資源へと転換する意識も高まっている。適切な方向への舵取りとともに、社会への啓発にさらに期待したいところだ。
※1 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(2ページ目)|一般社団法人 プラスチック循環利用協会
※2 植物由来原料100%使用ペットボトルの開発に成功|SUNTORY
※3 世界のプラスチック生産量(2016~2018年)|日本プラスチック工業連盟
※4 【増え続ける海洋ごみ】今さら聞けない海洋ごみ問題。私たちに何ができる?|日本財団
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