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日本におけるペットボトルのリサイクル率は88.5%。50%を下回る欧米諸国と比べて非常に高いのはなぜか。またペットボトルはどのようにリサイクルされ、何に姿を変えるのか。リサイクルの出し方やリサイクルの手順とあわせて解説する。
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エレミニスト編集部
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石油を原料とした「ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)」という樹脂からつくられるペットボトル。軽くて丈夫なうえ加工しやすく、さまざまな飲料や調味料の容器として利用されている。だが、ペットボトルが大量に廃棄されており深刻な問題となっている。
とくに家庭ごみのうち約6割は、ペットボトルをはじめとしたさまざまな容器や包装だ。そのような背景を受けて、家庭から出る容器包装のごみをリサイクルする「容器包装リサイクル法」が制定された。
ペットボトルはこのリサイクル法の対象となっており、使用されたペットボトルは自治体と事業者の2つのルートで、以下のような工程でリサイクルされる。(※1)
1. 家庭から排出されたペットボトルを収集分別する
2. 異物や汚れがひどいものを選別する
3. 圧縮梱包(ベール化)により容量を減らす
4. 再商品化を行う事業者に引き渡すまで保管する
1. 交通機関・公共施設・自動販売機・オフィスなどで排出されたペットボトルを収集分別する
2. 選別・洗浄などをおこなう
3. 約8mm角に裁断した「フレーク」、フレークを加熱融解して粒状にした「ペレット」の2種類の再商品化製品に加工する
こうしてペットボトルは再びペットボトルになったり、食品用トレイ、パウチ、衣類などの繊維に生まれ変わったりする。
実際にリサイクルされるペットボトルの量はどれくらいだろうか。
PETボトルリサイクル推進協議会の「2021年次報告書」によると、2020年度に日本国内で販売された指定ペットボトル*の販売量は55万1,000t(前年比−7.1%)。うちリサイクルされた量は48万8,000t(前年比−4.3%)。リサイクル率は88.5%(前年比+2.6%)となり、推進協議会が目標とする「85%以上の維持」を上回っている。(※2)
*指定ペットボトル:しょうゆ、みりん、酢などの特定調味料、飲料、酒類などに使われるペットボトル
過去10年間のリサイクル率の推移を見ても、80%以上の高い数値を維持している。
2020年度:88.5%
2019年度:85.9%
2018年度:84.6%
2017年度:84.9%
2016年度:84.0%
2015年度:86.7%
2014年度:82.6%
2013年度:85.8%
2012年度:85.0%
2011年度:85.8%
一方、世界に目を向けてみると、欧州のリサイクル率は39.6%(2019年度)、米国にいたっては18.0%(2020年度)と非常に低い(※3)。欧米と比べ、日本のリサイクル率がこれほど高いのはなぜか。
ポイントとなるのがボトルの回収率だ。欧州は57.5%(2019年度)、米国は26.6%(2020年度)に留まるなか、日本の回収率は96.7%(2020年度)と世界トップクラスを誇る。それを可能としているのが、先にあげた「容器包装リサイクル法」である。
1997年から施行された容器包装リサイクル法は、消費者に分別排出を、市町村には分別収集を求め、ペットボトル製造業者はリサイクルを行うことが義務づけられている。日本では回収の起点となる消費者の分別協力があるからこそ、高い回収率を維持することができるのである。
日本におけるプラスチックのリサイクル方法として、「マテリアルリサイクル」、「ケミカルリサイクル」、「サーマルリサイクル」の3つがある。
マテリアルリサイクルは、モノからモノにかわるリサイクル方法。ケミカルリサイクルは化学の力で資源を分解する方法。そしてサーマルリサイクルは、廃棄物を燃やしたときに出る熱を回収して利用するリサイクル方法だ。
ペットボトルのリサイクルでは、「ボトル to ボトル(水平リサイクル)」と「カスケードリサイクル」の2つが行われている。これらは、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルに該当する。
なお、ペットボトルリサイクル推進協議会のウェブサイトによると、指定法人ルートでのPETボトルのリサイクル方法として、サーマルリサイクルは承認されていない。指定法人ルート以外で回収されたPETボトルについても、原料に戻す工場が有償で購入し、それをフレークやペレットへ仕上げ利用されている。(※3)
ペットボトルをフレークに原料化(リサイクル)し、新たにペットボトルとして再利用することを「ボトル to ボトル」や「水平リサイクル」という。
異物の完全除去をおこない、フレークは高純度の原料となるため、石油からつくるペットボトルと遜色のないきれいなペットボトルをつくれる。何度も再生することができる高度な循環型リサイクル方法である。
2020年度に国内でペットボトルから再商品化されたもののうち、30%がペットボトルになっている。(※2)
フレークやペレットから、ペットボトル以外の製品をつくるのが「カスケードリサイクル」。通常、リサイクルを行うと品質の劣化が起こるため、品質の劣化に応じてその原料で許容できる製品にリサイクルを行う。ペットボトルのカスケードリサイクルでできる製品には、以下のようなものがある。
食品トレイ・卵のパック・食品用中仕切り(カップ麺のトレイ、中仕切り)・防草シート・下敷きなど。ペットボトルで再商品化されたもののうち40.7%が、これらシート類に生まれ変わっている。
ワークウェア・白衣・アウター・ネクタイ・肌着・バッグ・靴など。ペットボトルから再商品化されたもののうち、16.5%が繊維製品になっている。
例えば、日本の気鋭デザイナーが手がけるシューズブランド『Öffen(オッフェン)』は、すべてのシューズにペットボトルからリサイクルされた糸を使用。環境に配慮した素材ながら、デザイン性に富むスタイリッシュなブーツやパンプスは必見だ。
食品用パウチ・粘着ラベル・日用品用パウチ・ラミネート包材など。
台所用洗剤ボトル・セロテープ・定規・空き容器リサイクルボックスなど。
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世界最高水準を誇る日本のリサイクルだが、課題もある。とくに「ボトル to ボトル」の比率について、この10年で4倍ほどに増加してはいるものの、販売量に対してボトル to ボトルリサイクルされた割合は15.7%に留まっている点があげられるだろう。
多くがリサイクル頻度の少ない「カスケードリサイクル」に流れてしまっているのが現状である。より高度な循環リサイクルを生むため、推進協議会は2030年度までに「ボトルtoボトル」の比率を50%となるよう目標を掲げている。
リサイクル率をさらに高めるために私たちがやるべきことは、使用したペットボトルをルールにしたがって分別・排出すること。以下のポイントをしっかり押さえよう。
1. ペットボトルのマークが付いているか確認する
「PET」のマークがついている場合は、そのボトルが指定ペットボトルであることを意味しており、私たちは分別しなければならないペットボトルだとわかる。
2. 必ずキャップをはずす
キャップをはずした後に残るリングや、しょうゆボトルの中栓などは無理にはずす必要はなく、そのままでOK。
3. ラベルをできるだけはがす
4. ペットボトルの中をすすぐ
5. 横方向につぶす
なお各自治体の処理施設などの事情によって、リサイクルのルールが若干異なる場合がある。各自治体が定める手順にしたがって排出することが好ましいが、より質の高いリサイクルにつながるとして、PETボトルリサイクル推進協議会では上記の手順を推奨している。
・中身は残さない、中に異物を入れない
内容物が入った状態だとペットボトルの品質が損なわれ、リサイクルに支障をきたす可能性がある。また、回収されたペットボトルは手作業で分別されることが多い。異臭の原因となったり、中に溜まったガスによりキャップを開けた際に破裂するなど、作業員に危険がおよぶ可能性もあるため必ず空にして捨てよう。
・リサイクルボックスにペットボトル以外を入れない
ペットボトルが汚れてしまい、リサイクルに支障をきたす可能性があるので、異物は入れないようにしよう。
私たちの生活に欠かせない存在となったペットボトル。災害時では、飲み水のペットボトルが配布されたり生活用水に使われたりと、人々の役に立つことが多い。
しかし、「日本のリサイクル率は高いから、ペットボトルを使っても平気」と考えるのは早計だ。どれほどリサイクル化が進もうと、冒頭で説明したようにペットボトルの原料は石油である。日本では2020年度に217億本ものペットボトルが販売され、石油資源が大量に使用されている。
そのうえ、一からつくっても、ボトル to ボトルでリサイクルしても、焼却処分をしてもCO2が排出されてしまい、環境に負荷がかかるのだ。また、放棄されたペットボトルやプラスチックによる海洋汚染、生態系への影響も深刻な問題である。
だからこそ、ペットボトルを使ったらリサイクルすることを忘れてはいけないだろう。そして、ペットボトル以外の代替品でも間に合う場合は、ペットボトルを極力買わない・使わない選択肢を選んでいきたものだ。
※1 リサイクルの流れ|PETボトルリサイクル推進協議会
※2 PETボトルリサイクル年次報告書2021
※3 リサイクルに関し、マスコミ・メディアの影響により最近多く寄せられるご質問特集|PETボトルリサイクル推進協議会
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