サーマルリサイクルとは、廃棄物を焼却処理したときの熱を利用すること。日本は89%前後と、高いプラスチックのリサイクル率を誇る。それを支えるのがサーマルリサイクルだ。しかし、欧米では「リサイクルではない」とみなされている。サーマルリサイクルのメリットや事例、その問題点を解説しよう。
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そもそもひとくちにリサイクルと言っても、「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」そして、「サーマルリサイクル」の3つに大別されるのをご存じだろうか。
ここで注目する「サーマルリサイクル」とは、廃棄物の焼却時に生じる熱(サーマル)を再利用する手法のこと。
焼却する際に生まれるのエネルギーを利用して発電し、温水の熱源や冷房に用いられることが多い。ごみ焼却施設に隣接するスポーツ施設で、通年温水プールを利用できたりするのも、この方法を用いているためだ。
サーマルリサイクルの事例は、全国各地にある。
ごみ焼却施設に温水プールをつくり、通年で温水プールを利用できたりするのが、サーマルリサイクルのいい事例だ。多くの自治体でこのような取り組みを行っている。
ごみ焼却施設で出た熱で、その施設や隣接する工場などの暖房、給湯に使う事例も多い。大阪広域環境施設組合では、ごみ焼却場で出た熱を使って、工場内の暖房と給湯に利用。さらに、蒸気タービン発電機で発電し、工場の運転に利用している。
新潟では、地元の産業廃棄物処理場で出た熱をビニールハウスの温度管理に活用。雪国でおいしいバナナの栽培を実現した。このバナナは、「越後バナーナ」の名前で流通している。
サーマルリサイクルのメリットとして、いくつかのことが挙げられる。
ひとつめのメリットとして、現在の技術では、再資源化が難しいものや、分別の工程で差資源化にコストがかかるものを有効活用できることにある。サーマルリサイクルは、比較的低いコストで廃棄物を有効活用できるといえる。
リサイクルできない廃棄物などは埋立処分される。しかし埋立処分できる土地には限りがあるのが現状だ。サーマルリサイクルで埋立処分する廃棄物の量を減らすことができるという面がある。
Photo by Zuzanna Szczepańska on Unsplash
一方で、サーマルリサイクルにはデメリットも少なくない。
プラスチックなどを焼却すると、ダイオキシンなどの有害物質が発生する。燃焼技術の進化などで、その量は抑制できているが、それでも有害物質の発生を完全に防ぐことは難しい。
廃棄物を燃焼する際、二酸化炭素も排出される。地球の温暖化の要因とひとつとなっている。
日常生活のなかで恩恵の預かり、リサイクルされているのを実感しやすい「サーマルリサイクル」。しかしながら、「サーマルリサイクル」は世界的にはリサイクルとみなされないことも少なくない。
「サーマルリサイクル」は、別名「エネルギー回収」や「熱回収」などとも呼ばれる。ごみを燃やして消滅させたことで発生した熱エネルギーを、一定の目的に使用しているからだ。
通常、欧米ではリサイクルの概念に「燃焼」を含めないため、「サーマルリサイクル」をリサイクルととらえないこともぜひ知っておきたい。
日本は、プラスチックのリサイクル率が88.5%と高い。地球規模でマイクロプラスチック汚染が深刻化し、早急な改善が求められるなか、一見、誇らしい数字に見える。
だが、その内実の半数以上が「サーマルリサイクル」で占められている(※1)。先に述べたように、欧米で燃焼はリサイクルに含まないという考え方。
それにしたがって、改めて我が国の「リサイクル率」を見直してみると、わずか19%というのが他国から見た実情だ(※2)。これは、OECD加盟34か国のなかで、27位タイ。
下から数えたほうが早いレベルで、「リサイクル率」の指標についても日本のガラパゴス化の印象を禁じ得ない。
「サーマルリサイクル」を行うには、当然ながらごみの焼却が行われる。ごみの焼却というと、排ガスや発がん性物質などの発生を懸念する人もいるだろう。
近年では技術が進み、排ガスが抑えられ発がん性物質の「ダイオキシン」の発生も大幅に抑えられてきている。とはいえ、燃焼する過程でやはり「排ガス」はゼロではなく、わずかながら「ダイオキシン」が発生してしまうこともまた事実(※3)。
世界的には、リサイクルではなくリデュースへとシフトしているという。モノをたくさん消費して、すぐに廃棄するのではなく、必要なモノだけを賢く手に入れ、大切に使い続けるという美しい習慣を身につけたいものだ。
※1 世界基準からズレた日本の「プラごみリサイクル率84%」の実態
※2 日本のプラスチックごみ対策は遅れている! リサイクル率86%のカラクリや直面中の課題とは?
※3 廃棄物焼却と廃棄物からエネルギーまでの長所と短所(メリットとデメリット)
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