プラスチック廃棄物の処理問題が世界中で深刻化している昨今。マテリアルリサイクルの重要性がますます注目されている。また、身近なところで、私たち一人ひとりにできることは何だろうか。まずは、リサイクルの仕組みや内容について正しい知識や理解を持つことから始めよう。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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リサイクルという言葉やアクションが一般的になってきた昨今。日頃から、さまざまなかたちでリサイクルに努めているという読者も多いことだろう。
ところで、リサイクルには、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの三つの分類があるのをご存知だろうか。なかでも、私たちの身近なところにあるのはマテリアルリサイクルだろう。
“マテリアル”は原材料を意味する言葉だ。文字どおり、廃棄物を原材料として再利用することを指す。
例えば、使用済みの缶を潰し、溶かし、再び固形化することで新たな缶製造の原材料としたり、おなじみのペットボトルは、粉砕して、加工処理を加えることで線維化させ、衣類の原材料となっている。
このように限りある資源の再生循環を生みだし、有効に活用するマテリアルリサイクルは、私たちの生活において、もはや欠かせないものとなっている。以下、他の二つのリサイクルについても見てみよう。
廃棄物を単に焼却処分するだけではなく、焼却した際に発生する熱エネルギーを回収し、利用するのがサーマルリサイクルだ。
“サーマル”という言葉は“熱による”を意味する。焼却時に排出された熱エネルギーは、主に発電や温浴施設、暖房設備の熱源として効率よく使用される。
廃棄物に化学的な処理をして原料に戻してからリサイクルすること。石油から作られたプラスチックを再び油化、ガス化して化学原料としたり、燃料油やコークス炉の化学燃料として再利用する。畜産の汚物によるバイオガス化などもよく知られた例だ。
サーマルリサイクルを語るとき、必ずともなうのがプラスチックごみのリサイクル問題だ。
プラスチック廃棄物の場合、純粋な原料単位での分離・分別や仕分け処理が非常に難しい。これらを単純に焼却することで排熱を利用し、発電などに有効利用するサーマルリサイクルは、日本では合理的なリサイクルのかたちと考えられている。
ところが、欧米では事情が違う。廃棄物を原材料へ再生をするわけでもなく、二酸化炭素の大量排出が問題となるサーマルリサイクルは、リサイクルのかたちとは見なされていないのが事実だ。
地球温暖化問題への取り組みが世界的に最優先とされる昨今、やはり将来的には、もっとも環境にやさしく、資源の再生循環が可能なマテリアルリサイクルの重要性がさらに注目視されるのは必至だ。
プラスチック循環利用協会の2016年の統計*によると、日本のプラスチック廃棄物処理の現状は、サーマルリサイクルが約57%、マテリアルリサイクルが23%、ケミカルリサイクルが4%だ。
比較してEU全体を見てみると、サーマルリサイクル処理以外でのプラスチック廃棄物のリサイクル率は41%にものぼる**。
ちなみに、日本のマテリアルリサイクル率23%のうち、16%は海外への廃棄物輸出依存によるものだ。日本の実質的なマテリアルリサイクル率は7%。
そして、その多くはペットボトルのリサイクルだ。中国をはじめとするアジアの国々が、ペットボトル以外のプラスチック廃棄物の輸入を拒否し始めた昨今、すべてのプラスチックごみにおいてマテリアルリサイクル処理へのシフト転換が喫緊の課題となっているのだ。
プラスチックごみのマテリアルリサイクル拡大には、リサイクルしやすい製品の設計、分別方法の開発、プラスチック識別・選別技術の開発など、システム全体のイノベーションが求められている。
日本はペットボトルのマテリアルリサイクルの技術では、欧米よりも優れた先進技術を持つと言われる。その実績は大いに注目されるものだ。現在、そのノウハウを活かし、とくに民間企業が一丸となって、マテリアルリサイクルのシステムの改善と向上に日々取り組んでいる。
しかし、どんなに優れた技術を駆使してリサイクルや再生を行ったとしても、やはりプラスチック製品に生まれ変わってしまう率が高いのは否めない。重要なのは、一人ひとりがプラスチック製品の扱いの難しさを正しく認識し、この物質の使用を極力削減することにある。
参考までに、日本の環境省の循環型社会形成推進基本法***によって定められたリサイクルの優先順位は、リデュース(削減)→ リユース(再利用)→ マテリアルリサイクル→ ケミカルリサイクル→ サーマルリサイクルの順だ。
かけがえのない地球環境の未来のために、リサイクルにおける基本の基本――リデュース(削減する)――を、あなたのライフスタイルの一つのアクションとして今日から加えてみてはいかがだろうか。
※1
一般社団法人 プラスチック循環利用協会
http://www.pwmi.or.jp/
※2
一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター『リサイクルデータブック2019』/EU28か国の容器包装廃棄物のリカバリー率、リサイクル率の推移(2016年の統計)
※3
循環型社会形成推進基本法|環境省
https://www.env.go.jp/recycle/circul/recycle.html
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