都内を中心に全7ブランド9店舗の飲食店を展開するトリバコーヒーグループ。人と環境にやさしいお店づくりを目指し、各店舗が独自のアクションを実践している。 業態も客層もまるで違うトリバコーヒーグループの店長が、ユニークな視点で取り組みへの思いを綴るコラム連載。第7回は明天好好のプロデュースを担当した「DEPT」オーナーのeriさんが登場する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
フードウェイストと飲食店は切っても切れない関係にある。多くのお店が食品ロスの削減に取り組むなか、台湾フードカフェ「明天好好(ミンテンハオハオ)」は“ごみそのもの”が生まれない循環のかたちを探る。
同店のプロデュースを務めるのは、「DEPT」オーナーのeriさん。環境問題や社会課題の解決に取り組むアクティビストとしても知られ、早くからサステナブルなライフスタイルを実践した草分け的存在だ。飲食店のエシカル化を実現させるための道筋をどのように描くのか、その思いを語った。
明天好好では、プラントベースのメニュー構成をコンセプトの軸に据えています。台湾素食*に着想を得ていますが、看板メニューの豆花(トウファ)をはじめ、お店で提供しているメニューはすべてオリジナル。
魯肉飯(ルーローハン)や麻婆飯(マーボーハン)など、日本人にも親しみやすい料理を通して「こんなにおいしいのに、動物性食材を使っていないんだ!」という驚きや満足感を大切にしたいんです。
*肉を使わない野菜だけの料理。台湾の精進料理
(写真左上から時計回りに)冬瓜豆花(税込600円)、麻婆飯(スープ付き/税込900円)、バン麺(スープ付き/税込900円)、中国黒酢炭酸(税込800円)
リニューアルでとくに意識したのは、さまざまな人に開かれた場にするということ。年齢や性別関係なく、誰もが気軽に食事を楽しめる居心地のいい空間にできるよう気をつけました。
店内にはひとりでお食事ができるカウンター席もありますし、ベンチシートを採用したテーブル席はファミリーでもゆったりくつろげます。テラス席ではワンちゃん連れのお客さまを見かけますね。
座席とカウンターキッチンの距離が近い店内。「本物のお肉みたい」「これがプラントベースなんてびっくり」といったお客さんのうれしい声も聞こえるそうだ
あと上階にはヴィーガンベーカリーやヨガスタジオがあるので、パンを買ったついでに立ち寄ってくれたり、体を動かしたあとにひと息つきに来たり、ほんとうにいろいろな方に利用していただいています。
スタッフの多くがふだんからプラントベースの食事を取り入れ、環境問題やSDGsについて学んでいるという
私たちが解決したいのは、生ごみや食べ残しといったフードウェイストの問題です。いま考えているのが、コンポストで堆肥化した生ごみを畑に戻し、最終的にはそこで育った野菜を料理に使うという循環のかたちですね。下北沢reloadさんの協力もあり、施設での取組みからはじめ、東京の青梅市で有機野菜を栽培している「Ome Farm」さんとの協業も計画にあります。
さらにいえば、水分量の多いごみをどれだけ減らせるかも考えなければいけません。ごみに含まれる水分量が多ければ多いほど、焼却する際にたくさんのエネルギーを消費することになり、大量の二酸化炭素を大気中に排出してしまいます。
たとえば商業施設に生ごみを乾燥させる専用のドライヤーを設置して、各店ごとに乾かしたごみを出すとか、そういう取り組みも解決策のひとつだと思います。
コンポスト専用のボックスには「食べ残しはこちらへお返しください」というメッセージが。食べ残しを堆肥化する仕組みを伝えながら、お客さんと一緒にフードロス削減に取り組む
ゆくゆくは、生ごみや食べ残しが堆肥化されて自分たちが食べる料理に戻ってくるというループを、お客さまにも伝えられるように可視化していきたいですね。
紙ごみの循環も取り組まなければならないテーマです。トレー紙や紙ナプキンのごみは必ず出ますし、ポスターなども掲示期間が終わればごみになってしまいます。
この問題を解決するため、「吉川紙商事」との協業で、再生できる紙ごみや段ボールは捨てずに保管しておいて、吉川さんに回収してもらい、その再生紙を店舗で使用するという循環システムの構築に取り掛かっています。
いずれは、そこで製造された再生紙を使ってトレー紙やポスターをつくり、ごみになったら工場へ送るというサイクルを生み出したいですね。シングルユースのプラスチックもなくせるのがベストです。
ドリンクの種類によって揃えられた再生可能なストロー各種
もちろん、再生可能エネルギーを利用した店舗運営は継続していきたいと思っています。中目黒店の時代から「みんな電力」の再エネを利用していて。「reload」さんに移転する際も、施設の担当者にみん電さんを引き続き利用したいと相談したら、施設側も再エネを使いたいと言ってくださいました。ほんとうにいいループが生まれています。
大切なのは、何をするのがベターな選択かを考えてみること。環境負荷の高い素材の使用を減らしながら、お客さまとどのように取り組んでいけるかを考えていきたいですね。
eriさんがデザインしたオリジナルTシャツ
移転にあたっては、中目黒の店舗を壊さなければいけなくて。解体時にたくさんのごみが出てしまうのが心苦しく、どうにか減らせないかと思案しました。
すごく大変だったんですが、空調設備をそのまま移設したり、お店の天板やカウンターに端材を使ったりしています。あとは店内の意匠ですね。入り口のアイアン模様もそのまま移設したものです。店内の椅子もヴィンテージのもので、テラス席のテーブルと椅子は海洋プラスチックをもとにつくられています。
端材が使われている店舗入り口の意匠(写真左)とカウンター(写真右)
天然素材や環境に配慮された素材を使うのはもちろん、前のお店から再利用できる素材を使って、新しいものはなるべく買わない。どうしても出たごみは店内の装飾として活用する。そういう思いを内装にちりばめています。
取り組みのなかにも、できることとできないことはあります。だからこそ、ベターな選択をして自分たちで実践することで、誰かのヒントになればいいなと。
「明天好好でできているんだったら、私たちにもできるよね」と感じてもらえたらうれしいですね。エシカル化のノウハウや改善方法などを伝えていくことで、「お店にとってもメリットがあるんだ」とか、飲食店を運営している人たちが見たときも「そういうソリューションがあるんだな」という気づきにつながるのが理想です。
SNSでも取り組みを一方的に伝えるのではなく、「飲食店ってたくさんの生ごみが出るんだな」「生ごみってこういう問題があるんだな」というふうに、自分ごと化を促す発信を追求していきたい。それが、明天好好の存在意義だと思っています。
明天好好は、生活者のみなさんが新しい社会のあり方に触れられる入り口です。食事を楽しみながら、次のステップを実感してもらえる場を目指していきます。
Profile
eri|えり
アパレル会社経営・プロダクトのデザイン・古着のバイイング/販売を通して、繊維産業、地球の環境課題、気候危機に対してどうアプローチできるかを模索中。またアクティビストとしてあらゆる社会問題に関心を寄せ、またそれをどう市民が課題解決のためにアクションできるのかを考えシェアし、さまざまなプロジェクトを立ち上げ運営に携わっている。
明天好好
電話番号
03-6452-3102
住所
〒155-0031 東京都世田谷区北沢3-19−20 下北沢reload 1F
営業時間
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