都内を中心に全7ブランド9店舗の飲食店を展開するトリバコーヒーグループ。人と環境にやさしいお店づくりを目指し、各店舗が独自のアクションを実践している。 業態も客層もまるで違うトリバコーヒーグループの店長が、ユニークな視点で取り組みへの思いを綴るコラム連載。第3回はヴィーガンカフェ「Whitely」の澤辺小友美さんと宮城咲子さんが登場する。
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エレミニスト編集部
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葉山・森戸神社のほど近く、相模湾を一望できる好立地にあるヴィーガンカフェ「Whitely(ホワイトリー)」。晴れた日には富士山を望む大パノラマが広がり、かすかに波音が聞こえるおだやかな場所だ。
外の様子とは打って変わって、店内は活気と笑いにあふれる。あるテーブル席では、スタッフとお客さんがヴィーガン料理の話に花を咲かせる。「プラントベースの料理って、こんなにおいしいんだね」と誰かが驚きの声をあげれば、「私も初めて食べたときはそう思いました」と常連客がほほ笑む。
Whitelyが目指すのは、エシカルをわかりやすく、そして楽しく伝えること。「頭で理解してもらうのではなく、心でわかるような工夫を大切にしています」と、店長の澤辺小友美さんははにかんでみせる。
トリバコーヒーグループ全9店舗の店長たちが、エコフレンドリーなお店づくりへの思いを綴るコラム連載(全9回)。第3回は、店長の澤辺さんとスタッフリーダーの宮城咲子さんが登場し、個性豊かなスタッフとお店づくりに邁進する日々をそれぞれの目線で語る。
今回登場する澤辺小友美店長(中央右)と宮城咲子(中央左)さん。おおらかで楽天家の澤辺さんとしっかり者の宮城さんのタッグでお店づくりに奮闘中
澤辺小友美(以下、澤辺):ヴィーガンの人もそうでない人も、誰もが気軽にプラントベースの食事が楽しめるお店を目指して、Whitelyは誕生しました。ハンバーガーやサンドイッチ、スイーツはどれもプラントベース。そうと言われなければわからないような満足感のあるメニューづくりを意識しています。
一番人気の葉山バーガー(税込1,050円)
店名は白亜の外装になぞらえていて、白紙のキャンバスにみんなで一から描いていこうという思いも込めているんです。
お客さまは老若男女を問わず、いろんな世代の方がいらっしゃいますね。お子さん連れのご家族が食事にいらしたり、老夫婦が仲よくコーヒー飲んでいたり。もちろんカップルもいますし、男性がひとりでいらっしゃることも珍しくありません。
宮城咲子(以下、宮城):ヴィーガンの人がヴィーガンではない友達を誘って来てくれることも多いです。横須賀ベースで働く外国人の方で行列ができたこともありました。この前は、外国人の方からヴィーガンピザの差し入れがありましたね。
澤辺:ついその方と話が盛り上がっちゃって。そしたら「今度つくってきてあげるよ」と言われて、次にいらしたときはアメリカンサイズのピザを持ってきてくれたんですよ。
宮城:小友美さんに「友達なんですか?」と聞いたら、「いや、よくいらしてくださるお客さまよ」って。スタッフの間でも、どんどんお客さまとの会話を増やそうとは話しているんですが、この人のコミュニケーション能力には追いつけません。
澤辺:たぶん憧れられてはいないですけどね(笑)。
宮城:スタッフだけじゃなくて、初めて会った人にも同じキャラクターでいるから、それをすてきだと思ってくれるお客さまもいっぱいいて。そそっかしいし、店長の威厳とかはないんですけど、親戚のおばちゃんのようなフランクな感じが、Whitelyらしさにつながっているのは間違いないですね。
宮城:小友美さん筆頭に、ほんとうに個性豊かなメンバーが集まっているんですよ。
澤辺:ヨガを教えている子、マクロビを勉強している子、動物愛護の活動家、法律を学んでいる大学生、ロシア人のママさん、海の近くだから働きたいという子。それぞれがエシカルを本気で実践している子たちばかりです。
だからこそ、意見を否定はしないよう意識しています。難しいのが、肯定することとイコールではないこと。私が同調しすぎると「ブレないでください!」と言われて(笑)。お店が向かう方向とスタッフの個性を、どういうふうにすり合わせていくのか考えるのがすごく大変。
宮城:小友美さんはフィーリングの人だから(笑)。そういう意味で、いまは二人の間で定量的な目標を設定しようという話をしています。まずは私たちでまとめて、わかりやすい言葉でみんなに伝えられるかが課題ですね。
澤辺:私たちは、新しくなにかを買い足すということはほぼしていないんですよ。食器やテーブル、椅子、インテリア、ライト、掃除用具にいたるまで、Whitelyが入居する前のテナントで使っていたのものを再利用しています。
宮城:そこにある2本のウクレレは、私とスタッフの持ち込みです。家族連れが多いので、お子さんに喜んでもらえるとかな思って。あと植物も私が持ってきました。
澤辺:そこにあるアボカドの苗も、本来は捨てるはずだったアボカドの種から育てたもの。あるスタッフがお店で出た種を自宅に持ち帰って、発芽させてからまた持ってきてくれたんです。すくすく元気に育っています。
宮城:もしどうしても新たに買う必要に迫られたときは、「それってほんとうに必要かな?」とスタッフ同士で会話しています。その分「これ、つくりたいんだけどいい?」「家にあるんだけど、持ってきていい?」という会話はよくしていますね。たとえば、入り口にあるクリスマスツリー。
澤辺:ロシア人のママさんが、ビーチで拾ってきた貝殻やビーチグラスを貼り付けてつくったんですよ。
宮城:あと、マイ容器・マイマグカップの持ち込みを歓迎しているんですが、サトウキビストローの提供もしています。ちょうどこの前使用済のストローの回収をかけたところで、いまは回収先のマッチング待ちの状態です。ほかにも生分解性のプラスチック容器を使ったり、テイクアウト容器は紙製のものを使ったりしています。
宮城:こういう施策を取り入れているお店はたくさんありますが、なによりも大事にしたいのが“心地よさ”です。どれだけ環境によくても、提供する側の私たちやお客さまにとって不便だったり、不快だったりしたらまったく意味がありません。
「結局エコなアイテムって、使いづらくて面倒くさい」と思われないよう、とにかく使いやすさを基準に容器などは選びます。
澤辺:ハンバーガーの包み紙であれば、油がしみたら使い心地よくないので、少し厚みがあるものを用意する。薄いほど使う素材は少ないかもしれないですが、破けてしまって二枚使ったら元も子もないですよね。
宮城:テイクアウトのお客さまには、食べ終わったあとでその場にごみ箱がなければ、お店に持ってきてくださいねとお声がけもしています。ゼロウェイストだからといって、ごみ箱を用意せず、お客さまがごみをポケットにしまうというのは、私たちらしくないと思うんです。
澤辺:いまはグルテンフリーのメニュー開発に力を入れているんですが、アレルギーを持っているお子さん用にホールケーキを買いにきたお母さんが「Whitelyのケーキなら安心」とおっしゃってくださいました。環境や健康に配慮しながら、ふだんと変わらない食事が楽しめるというのも心地よさにつながると思っています。
グルテンフリーの「チョコチップクッキー」(税込350円/写真上)、「キャロットケーキ」(税込530円/写真右下)。写真左下の「アップルパイ」(税込600円) はプラス280円でヴィーガンアイスクリームトッピングができる
宮城:今後はよりいっそう、情報発信の方法は考えないといけません。たとえば、お客さまとのコミュニケーションで伝えきれない場合は、店内ポップを活用するようにしています。以前ストロー回収をしていた際は、下げ台に回収用のビンを置いて「ここに入れてくださいね」と口頭と伝えていただけでした。やっぱり、回収率はかなり低かったんです。
それでスタッフみんなで相談をして、ストロー置き場にポップを貼るようにしたら、徐々に効果が表れはじめました。「これはコンポスタブルなストローです。返却口でも回収していますよ」とメッセージを書いておくだけで、お客さまはひと目で理解できますよね。
澤辺:お客さまに「やってみれば意外と簡単なんだ」と、“感じて”もらえるのが理想です。Whitelyに来ればエシカルとは何かがわかる、という状態にしていきたい。もちろんちょっとずつ変えてはいるんですが、ちょっとずつしか取り組めていないのが現状です。
ただ、ほんの小さな一歩かもしれませんが、来店をきっかけにヴィーガンの方の身近な人たちの行動を変えられているんだという手応えは感じています。この前お客さまとおしゃべりしていたら、「私がいくら言ってもボーイフレンドがプラントベースの料理を食べてくれなかったんだけど、ここのお店のハンバーガーはおいしいからまた来たい」と言ってくれたみたいで。
宮城:エシカルやヴィーガンを実践しているお客さまも多くて、「また会ったね!」と再会の場にもなっていますね。Whitelyを通じて、人と人とのつながりも生まれています。
澤辺:お店って、舞台だと思うんです。それぞれの役柄が明確になっていけば、いろんな取り組みに挑戦できるし、もっと心地のいい空間がつくれるはず。私はビシバシ率いていくというより、うしろのほうでやさしく見守ります(笑)。
宮城:舞台監督の役割は私が担当ですね!(笑)。
さまざまな色が混ざり合えば、真っ白なキャンバスも黒く染まってしまう。しかしWhitelyのキャンバスは白いままだ。光が交差する場所が白く映るように、一人ひとりの輝きがそうさせているのかもしれない。
ときに笑い、ときに泣き、ときに海に沈む夕日を眺めながらお店の行く先を語らう––。Whitelyらしいエシカルを目指して、これからも突き進んでいく。
第4回はSuperiority Burgerの店長が登場する。次回もお楽しみに。
2022年1月1日・2日・3日の三日間、Whitelyではお正月メニューを提供予定。いずれの日も葉山バーガーのドリンクセット(税込1,500円)を販売。マイ容器・マイマグカップの持参も大歓迎(営業時間:9時〜15時)
Whitely
電話番号
046-876-6869
住所
〒240-0112 神奈川県三浦郡葉山町堀内997-20
営業時間
定休日
ラストオーダー 17:30
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トリバコーヒー 銀座店
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明天好好
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