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現在、レジ袋を禁止・有料化しているのは世界60か国以上。地球温暖化や海洋汚染を防ぐために世界的に広まっている。世界で初めてレジ袋の規制を設けた国や、もっとも厳しい規制を設けた国など、世界各国の取り組みや日本での有料化の背景・成果などを紹介する。
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エレミニスト編集部
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近年、使い捨てプラスチック製レジ袋(以下、レジ袋)の使用を禁止・有料化する動きが世界中で見られる。ご存知のとおり、日本もそのひとつだ。
日常生活の一部だったレジ袋が禁止・有料化される背景には、深刻な環境問題がある。よく耳にするのは地球温暖化だ。
国連環境計画(UNEP)の2018年の報告書によると、2015年に世界で生産されたレジ袋は約4億t。そのうち3億tが廃棄されたという。(※1)廃棄されたレジ袋の多くは焼却処理される。その過程で発生する二酸化炭素が、地球温暖化に拍車をかけているのだ。
またポイ捨てされたレジ袋は、海洋汚染の大きな原因のひとつだ。街で捨てられたレジ袋が海に流れつき、そのレジ袋を誤飲したウミガメやクジラなどが命を落とすケースが多発している。
さらにプラスチック製レジ袋は自然分解されないため、紫外線や風などの影響で細かくなっても、分解されずにマイクロプラスチックとなったまま海を漂う。これを海洋生物が摂取することで、生態系に影響を及ぼしている。近年では、魚介類を通して私たち人間も摂取しているとみられ、健康被害が懸念されている。
レジ袋の有料化や禁止のルールが施行されると、「環境保護には意味がない」「プラスチックの全体の使用量からすると、レジ袋はたいしたことない」などと、否定的な意見も生まれたようだ。
実際、レジ袋有料化や禁止のデメリットとしては、プラスチック袋の使用量が減らなければ、環境への影響は変わらないことがある。またプラスチック製のエコバックを使っていたら、それを廃棄したときの環境負荷が大きいことも指摘されている。
だが、日々の生活においてもっとも身近なものであるレジ袋の有料化や禁止を行うことで、環境問題やプラスチック問題について目を向けるきっかけを与えていることが、このルールの目的だろう。実際、レジ袋の有料化や禁止をきっかけに、エコバックを持ち歩くようになったり、プラスチックごみについて考えるようになったりした人も多いはずだ。
国連環境計画の2018年の報告書によると、レジ袋や発泡スチロール製品の規制を行っているのは、世界60か国以上になる。(※1)代表的な国をここで紹介する。
バングラデシュは、2002年に世界で初めてレジ袋を禁止した。大洪水の際にレジ袋が排水システムを塞ぎ、状況を悪化させたことがきっかだ。しかし禁止令は効果を発揮しておらず、現在も生分解性ではないレジ袋が街中に溢れているという。
この現状を打破するべく、環境法律家協会が政府に働きかけている。まず、2024年1月までにホテルやレストランでの使い捨てプラスチック製品を段階的に廃止する計画を立てた。また、代替品として同国の特産品であるジュート繊維を使った買い物袋の普及にも取り組んでいる。
2017年にレジ袋を禁止したケニア。プラスチック製の袋を製造、販売、あるいは使用した場合、最大4年の禁固刑か4万ドル(約520万円)の罰金を科される。この法律は世界でもっとも厳しいと言われている。
さらに2020年からは、自然保護区域において使い捨てプラスチック製品の使用が禁じられている。指定区域内には、ペットボトルやプラスチック製のカップ、カトラリーなどを持ち込むことも認められない。プラスチック削減に積極的なケニアには、今後も注目したい。
イギリスでは、2015年からレジ袋が有料化されている。開始当初は1枚5ペンス(約8円)だったが、2021年5月から10ペンス(約16円)に値上がりした。
決められた料金を徴収しない小売店には、200ポンド(約33,000円)から最大2万ポンド(約330万円)の罰金が科せられる。レジ袋が有料化されて以降、同国内の主要スーパーマーケットではレジ袋の売り上げが95%以上減少したという。またイギリスでは、2022年4月から、リサイクル材料が30%未満のプラスチック包装材に「プラスチック税」を課す制度を導入している。
アメリカでは国としてレジ袋を禁止するルールは設けていないが、現在、カリフォルニア州、コネチカット州、デラウェア州、ハワイ州、メイン州、ニューヨーク州など、10の州でレジ袋を禁止する法律を制定している。
ハワイ州では、州法として定められてはいないが、エリアごとに取り組みがはじまり、事実上、州全体で禁止されている状態だ。その他、アメリカの複数の郡や市でも、レジ袋を有料化、禁止する動きが見られる。
オーストラリアでは、州ごとにプラスチック削減の取り組みが進められている。2022年6月1日から、ニューサウスウェールズ州がレジ袋の禁止令を開始。これにより、国全体でレジ袋が禁止された。
オーストラリアでは、2025年までにプラスチック製の使い捨てカトラリーや食器など合計8項目を段階的に廃止するナショナルプランを発表した。まずは、2022年12月までに食品用発泡ポリスチレン容器などを段階的に廃止する。現在、全8州のうち4州ではプラスチック製のマドラー、カトラリーもすでに禁止されている。
中国は、2021年からレジ袋を禁止。同時に、プラスチック製のストローを飲食店で提供することも制限された。2022年中に、このルールが中国全土の市や町で施行される見込み。ただし生鮮食品を扱う店は、2025年まで対象にならないという。同国は2025年までに、段階的にプラスチック製品の製造や販売を禁止する予定だ。
国が定めたルールに従わない場合、1万元から10万元(約19万円から190万円)の罰金が科せられる。さらに2022年末までに、マイクロプラスチックを含む化粧品の製造と販売の停止も計画中だ。世界最大のプラスチック生産国と言われる中国も、大きく変わりつつあるようだ。
フランスは、2016年に薄さが50マイクロメートル未満のレジ袋を禁止した。小売店は、レジ袋を有料で販売することも認められていない。
2022年からは法律が改定され、その他の使い捨てプラスチックの使用もさらに制限されることとなった。例えば、野菜やフルーツなどの使い捨てプラスチックパッケージ、新聞や広告を配送する際のビニール袋などが対象だ。同国では、プラスチック使用量の45.5%が包装材と推測され、この改定がプラスチック削減に大きく貢献すると期待されている。
デンマークは、1993年に世界で初めてレジ袋の税制をつくった国だ。1枚あたり4デンマーククローネ(約75円)が課税され、一部は税金として残りは店舗の収入になっていたそう。
2021年からルールが変わり、リサイクルできない薄手のレジ袋は禁止されることとなった。食品廃棄物管理や食品衛生などの理由から、果物や野菜に使われる薄いレジ袋はまだ合法とされる。しかし、将来的には再利用できる厚手のプラスチック製買い物袋の廃止も考えており、プラスチック削減には積極的だ。
カナダでは現在の、特定の地域でのみレジ袋が禁止、有料化されている。しかし政府は、2021年末に同国全域でレジ袋をはじめとする使い捨てプラスチックを禁止する計画を発表した。2022年後半に実施される予定だ。
同国では、プラスチック廃棄物のわずか9%しかリサイクルされていないそう。政府は、2030年までに国内のすべてのプラスチック包装にリサイクル原料を50%以上使用すること、飲料用プラスチック容器のリサイクル率を90%にするという目標を掲げている。
インドは、2022年7月1日から使い捨てプラスチック製品の禁止を開始する。レジ袋のほか、ストロー、リサイクルできないペットボトル、食品の包装などもこれに含まれる。12月31日からは、厚さ120ミクロン以下のプラスチック製買い物袋の使用も禁止される。
インドでは、年間約946万tのプラスチック廃棄物が発生している。このうち約1万tは回収されずに道端や沿岸に散乱しているという。各生産者や小売店に対する政府のサポートが成功への鍵となるだろう。
レジ袋の有料化や禁止は世界のスタンダードになりつつあるが、さらなるプラスチックごみの削減を目指した動きが出てきた。それが、ニュージーランドの生鮮食品用の薄いプラスチック袋の禁止だ。
ニュージーランドでは2019年からレジ袋を禁止しているが、2023年には生鮮食品用の薄いプラスチック袋まで対象を拡大。レジ袋だけでなく、生鮮食品用の薄いプラスチック袋も禁止したのは、ニュージーランドが初めてだ。今後は、同様の動きが世界で出てくる可能性がある。
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日本は、2020年7月よりレジ袋有料化に踏み切った。世界的にみると、この取り組みは決して早いものではない。プラスチック使用削減を進める世界的なトレンドに、ようやく沿ったかたちだ。
対象となるのは、小売業を営むすべての事業者。小売業がメインではなくても、事業の一部として行っているのであれば有料化の対象だ。(※2)
有料になったレジ袋は、持ち手があり厚さが50マイクロメートル未満の薄手のもの。繰り返し使える厚手のものや、海洋生分解性プラスチック100%のもの、バイオマス素材の配合率が25%以上のものは対象外だ。
価格設定は「1円以上」というルールはあるものの、各事業所に委ねられている。レジ袋を有料化している他国では、価格設定は政府が担っている場合が多く、価格も日本より高い。世界の流れにあわせて、日本でもレジ袋の価格上昇や使用禁止となる日もやってくるかもしれない。
賛否両論があったレジ袋有料化だが、実際にレジ袋の使用量は大幅に減少している。環境省の2022年の発表によると、1週間レジ袋を使用しなかった人は、有料化前の2020年3月は30.4%だったが、有料化後の2020年11月は71.9%に増加。レジ袋の辞退率は、コンビニエンスストアでは23%から75%、スーパーでは57%から80%に増えた。(※3)
また国内のレジ袋の流通量も、約20万tから10万tと半減。有料化によってプラスチックの使用量を大きく削減する結果となっている。
レジ袋の削減は、環境問題のなかでも地球温暖化や海洋汚染に効果があるとされている。現代では、これらの問題が世界的に影響を及ぼしているため、多くの国がレジ袋削減に取り組んでいるのだ。
一方でレジ袋削減は、複雑な環境問題を解決するための方法のひとつだということを忘れてはならない。必要以上に数多くのエコバックを持ち過ぎることもエコとは言えないため、必要なものだけを使うことが大切だ。問題をあらゆる方向から見て、よりよい選択をするために考えることが、今求められている。
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