2020年7月1日からレジ袋の有料化が日本全国で一斉スタートした。有料化の目的は、何気なく受け取っていたレジ袋に値段を設定することで、マイバッグの持参を促すなど、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすること。そして、プラスチック製レジ袋の排出抑制を推進することである。
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2020年7月1日より日本全国で一斉スタートした「レジ袋有料化」。“プラスチック製の買い物袋”を扱うすべての事業者に、レジ袋を提供する際に値段をつけることが義務化される。
価格は一律ではなく、消費者のライフスタイル変革を促すという制度の目的を踏まえ、各事業者がそれぞれで設定する。
有料化に向けて、経済産業省は2019年12月27日に「容器包装リサイクル法」の関係省令を改正しており、実施に向けて公表されたガイドラインによると、大体一枚2〜5円ぐらいが相場になりそうだ。
セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートのコンビニエンスストア大手3社は、一枚3円からにすると発表している。なおセブン-イレブンでは、特大サイズを5円で提供するという。
レジ袋有料化の目的は、消費者が何気なく受け取っていたレジ袋に値段を設定することで、プラスチック製買い物袋の過剰な使用を抑制し、私たちがライフスタイルを見直すきっかけとすることだ。
2018年6月に発表された UNEP(国連環境計画)の報告書「シングルユースプラスチック」によれば、日本は「一人当たりの使い捨てプラスチックごみ発生量」がアメリカに次ぐ世界2位となっている。
また海洋プラスチックごみ対策はG20の主要テーマであることから、政府は2019年5月に「プラスチック資源循環戦略」を策定。使い捨てプラスチックを2030年までに25%削減するという目標を掲げた。
レジ袋の有料化はその取り組みの一環である。これを機に、私たち消費者も身近なエコについて考えていくことが求められている。
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レジ袋の有料化は、生活にどんな影響を与えるのだろうか? 対象となる事業者やレジ袋について、次のように定められている。
レジ袋の有料化は、プラスチック製の買い物袋を扱うすべての小売事業者*が対象となる。コンビニエンスストアやスーパーマケット、薬局だけでなく、百貨店や専門店、個人商店のほか、製造業やサービス業であっても事業の一部として小売業を行う場合は対象になる。
* 各種商品小売業、織物:衣服・身の回り品小売業、飲食料品小売業、自動車部分品・附属品小売業、家具・じゅう器・機械文具小売業、医薬品・化粧品小売業、書籍・文房具小売業、スポーツ用品・がん具・娯楽用品・楽器小売業及びたばこ・喫煙具専門小売業
レジ袋の仕様にも規定がある。有料化の対象となるのは、購入した商品を持ち運ぶために用いる、“持ち手のついたプラスチック製”の買い物袋。紙や布の袋、持ち手のないものは対象から外れる。
この制度の目的は、ワンウェイ(使い捨て)のプラスチック製品をなくし、環境に配慮した素材への転換を進めていくことだ。そのため、プラスチック製であっても、環境性能が認められた次の3点は対象外だ。
プラスチックのフィルムの厚さが50µm(マイクロメートル)以上のものは対象外となる。丈夫で繰り返し使用できるため地球にやさしく、プラスチック製買い物袋の過剰な使用抑制につながるためだ。
「生分解性プラスチック」とは、微生物の働きによって水と二酸化炭素に完全に分解される素材のことを指す。海中で分解されず問題になっている海洋プラスチックごみ問題の解決に寄与するといわれている。
再生可能な生物資源(バイオマス)が、25%以上配合されている「バイオマスプラスチック製」の袋も対象外。バイオマスはトウモロコシやサトウキビなどの植物由来で、二酸化炭素の増減に影響を与えないといわれている。
プラスチックは軽量で加工しやすく丈夫であることから、洋服や自動車、建築資材まで私たちの生活のあらゆるものに利用されてきた。しかし、レジ袋の多くは使い捨てだ。消費者にとっては便利な反面、過剰使用によって海洋汚染を深刻化させた。
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ポイ捨てされて海へと流出したプラスチックは完全には分解されず、小さな「マイクロプラスチック」となって海を汚染する。これが、海洋プラスチックごみ問題を引き起こしている。またウミガメやイルカが海に漂うレジ袋を誤飲してしまい、命を落としてしまうケースも多発している。
世界では毎年約800万トンものプラスチックごみが海に捨てられ、2050年にはその重量が魚の重量を上回ってしまうと予測されているほど。プラスチックごみ削減は、陸上のみならず海の生態系を救うことにもつながるのだ。
捨てられたレジ袋の多くは焼却処分されている。レジ袋の使用量を減らすことができれば、焼却の際に発生する二酸化炭素が削減され、地球温暖化防止につながると期待されている。
プラスチックの原材料である石油もまた、限りある地球の資源だ。石油の消費を抑制していくためにも、レジ袋の過度な消費を減らしていかなければいけない。
国内のレジ袋の廃棄量は年間約20万tで、プラスチックごみ全体の約2%程度。わずかな数ではあるが、レジ袋は私たちにとって生活に直結した身近な存在だ。有料化で必要性を考えてもらうことで、国民の環境問題への関心を高めていくことが、世界を変える第一歩となるだろう。
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レジ袋の使用を抑えるための取り組みは、世界の多くの国で始まっている。日本は主要国のなかでは動き出しが遅いほうだ。すでにレジ袋有料化・廃止をしている各国の取り組みを紹介する。
イギリスでは、2015年からレジ袋の有料化に踏み切り、一枚5セント(約7円)が徴収される。有料化の施工後、国内の7大スーパーにおけるプラスチックレジ袋の消費量を調査したところ、2014年は年間約76億枚を無料配布していたが、2018年の販売数は10億枚だった。つまり、約85%も減少したことになる。
フランスでは2016年7月より、生分解性プラスチック製ではない使い捨てのプラスチック製レジ袋が全面禁止に。バイオマスを原料とする生分解性プラスチック製レジ袋も、厚さが50µm未満の場合は同じく使用禁止となっている。
さらに2020年1月には、「使い捨てプラスチック製品」の一部の販売禁止を世界で初めて導入。プラスチック製のストローやコップ、綿棒の購入が禁止されている。
また、ルイ・ヴィトンなどを展開しフランスを代表する企業LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は、温室効果ガスの削減となる活動の推進を宣言。国全体で環境問題に対する意識が高まっている。
2016年よりレジ袋の無料配布を禁止したオランダ。それ以降、レジ袋の使用率は71%減少し、廃棄されるレジ袋の数も40%減少したという数字が報告された。
首都アムステルダムでは、市をあげてサーキュラーエコノミー(循環型経済)の確立を目指しており、プラスチックフリーの商品を集めた世界初のスーパー「Ekoplaza LAB(エコプラザラボ)」のオープンも話題を呼んだ。
中国では2021年よりレジ袋の使用を禁止している。2025年まで段階的にプラスチック製品の製造や販売を禁止する予定だ。
レジ袋の禁止に踏み切るのは先進国だけに限らない。ケニアでは2017年にレジ袋を禁止し、プラスチック製の袋の製造や販売、使用には最大4年の禁固刑か4万ドル(約520万円)の罰金を科される。
手提げのついたレジ袋が開発されたのは昭和47年。それまで使われていた紙袋に比べて安価で強度も高いことから、1970年代から一般に広まり、約50年の間で、生活の必需品ともいえる存在になった。
レジ袋をただ使い捨てるのではなく、ごみ袋や汚れ物を入れとして再利用している家庭も多い。そのため「レジ袋だけが有料化になるのはおかしい」「買い物が気軽にできない」など、有料化を反対する声があることも忘れてはならない。反対意見もくみ取りつつ、エコへの“ニュースノーマル”を定着するための行動を、それぞれ模索する必要があるのだ。
レジ袋の代替品として登場したのが、マイバッグを持参するという習慣だ。しかし、「マイバッグ=エコ」と単純に結びつけてはいけない。
マイバッグまたはエコバッグと呼ばれる、ポリエステル製やナイロン製などの買い物袋をつくる際、レジ袋一枚より多くの石油を消費するためだ。資源を長く大切に扱っていこうという、サステナブルな姿勢を持つことが重要である。
「Patagonia(パタゴニア)」を日本で展開するパタゴニア日本支社は、今年4月より全店でショップバッグの提供を廃止。それに伴い、大量に出回ってきたエコバッグを店頭で回収し、ショップバッグを必要とする人に貸し出すサービス「エコバッグ・シェアリング」をスタートさせた。自宅で眠っていたマイバッグが、誰かの役に立つかもしれない。
すでにマイバッグを所持している人は、これをきっかけに生活スタイルに合った新たなものを追加してみてはいかがだろう。日本の機能美である風呂敷は、マイバッグに限らず多用途に使うことができる。
スキンケアブランドのLUSHが販売する「Knot Wrap(ノットラップ)」は、ペットボトル2本分のリサイクルプラスチック素材や、インドのフェアトレードの布でつくられた風呂敷だ。カラフルでデザインも豊富。Webサイト上では、贈り物を包んだり、バッグにしたり、頭に巻いたり、さまざまな使い方が提案されている。
「MOTTAINAI(もったいない)」を世界に広めたノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイさんが2005年に来日したとき、当時環境大臣を務めていた小池百合子都知事がプレゼントしたのが、伊藤若冲の絵柄をあしらったリサイクル繊維製の風呂敷。オリジナリティーやストーリーのある風呂敷を贈れば、思いがより伝わるかもしれない。
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レジ袋有料化は、何気なくもらっているレジ袋が本当に必要かどうかという疑問視から、環境問題について考えるきっかけを与えてくれている。
持続可能な社会を実現し、次世代に豊かな環境を引き継いでいくために、私たちにできることは何か、いま一度考えてみよう。日々の暮らしにおける、一つひとつの行動をぜひ見直してみてほしい。小さな一歩が、世界を変えるきっかけとなるはずだ。
参照サイト
プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン|経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/document/guideline.pdf
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