お店の“らしさ”を生かす横の連携 「トリバグループ」が本気で取り組んだエシカルプロジェクト【前編】

Whitelyのカウンターで作業中のスタッフ
飲食業界に新しい風 トリバグループが大切にする"等身大"のエシカル

都内を中心に全7ブランド9店舗の飲食店を展開するトリバコーヒーグループ。人と環境にやさしいお店づくりを目指し、各店舗が独自のアクションを実践している。 業態も客層もまるで違うトリバコーヒーグループの店長が、ユニークな視点で取り組みへの思いを綴るコラム連載。今回は、エシカルプロジェクトの振り返りを各店長に語ってもらった。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2022.06.24
Promotion: 株式会社バードフェザー・ノブ

エシカルプロジェクトを振り返って

「エシカルプロジェクト」と銘打ち、店舗の脱プラスチックや生ごみの削減など、他の飲食店に先駆けたエシカル化を推し進める「トリバグループ」。

環境負荷をかけないお店のあり方を各店ごとにまとめた「エシカル宣言」の発表後も、自分たちのできることに向き合ってきた。前例のない取り組みの裏にはどのような努力があったのか。そして店長たちが見据える未来とは?

前編となる今回は、プロジェクトオーナーを担当したトリバコーヒー店長・阿部美咲さんに、意識して取り組んだことや自分ごと化するための工夫などを振り返ってもらう。そしてトリバコーヒー 銀座店・Whitely(ホワイトリー)・フラッグスカフェ 船橋店の各店長がプロジェクトの手応えを語った。

エシカル宣言を達成し、常にアップデートし続けたい

Whitelyの店内にある資材

店内の一角にはトリバグループが厳選したエシカルグッズを販売。お客さんとの会話のきっかけにも(Whitely)

阿部美咲さん:トリバグループ内で2020年11月にスタートしたエシカルプロジェクト。環境問題やSDGsについて学びながら、各店舗やブランドが持つ”らしさ”を生かしたアクションの実行を目指すものです。

まずはじめに考えたのが、私たちの生活からは遠い大きな問題を自分ごととして捉え、楽しみながら勉強するにはどうすればいいかということ。そこで、プロジェクトメンバー全員で気候変動の学習セミナーに参加したり、チャットツールでいつでも最新の情報をシェアしたりと、インプットの方法を工夫しました。

またミーティングを毎週開催し、Podcastの番組や隙間時間で勉強できる記事、Instagramの投稿のシェアなど、エシカルを身近に感じられる環境づくりにも積極的に取り組みました。そしてプロジェクトスタートから1年後、自分たちが目指すお店の姿をまとめたエシカル宣言の発表に至ります。

フラッグスカフェ船橋店の店内に掲示されたエシカル宣言

フラッグスカフェの店頭に掲示されたエシカル宣言のポスター。デザインは共通だが、内容はそれぞれの店舗ごとのオリジナルだ(フラッグスカフェ 船橋店)

このプロジェクトを通していい変化が2つありました。1つ目はお客さまからの共感や、お褒めの言葉をいただく機会が増えたこと。エシカル宣言の内容はもちろん、新しいメニューや、自分たちで考えた取り組みをお客さまに認めてもらい、メンバー全員の次の行動のモチベーションにつながっています。

2つ目はチームメンバーの行動が変わったことです。お客さまからの評価が自信につながったことで、チャットツールやミーティングでの発言の機会が増え、お店でのアクションが活発化しています。ミーティングでは、「プラントベースのパスタメニューを開発した」「捨ててしまっていた柑橘系の皮を使ってドレッシングをつくった」「やむなく廃棄していたパンの耳からつくったパン粉が好評」など、新たな取り組みやお客さまからのうれしい声を聞ける機会が増えました。

エシカルなお店として認知してくださるお客さまも増えてきましたが、自分たちが掲げたエシカル宣言を達成し、アップデートをし続け、会社としても成長し続ける。そしてお客さまにとどまらず、周りのお店や関わるすべての人々に伝え続けていきます。

続・エシカル宣言を貼り付けるスタッフ

2021年3月にエシカル宣言15ヶ条を発表した「トリバコーヒー 銀座店」。約一年後となる2022年3月、新たに10ヶ条を追加した「続・エシカル宣言」を発表した。エシカル宣言に記した15ヶ条の進捗状況もまとめている

トリバコーヒー 銀座店

もっともっと、ローウェイストなコーヒー豆屋を目指して

阿部美咲さん(エシカルプロジェクトオーナー兼トリバコーヒー店長):プロジェクトがスタートするまでは、考えたこともなかった「エシカル」。何をどんなふうに考えて解決するのか、想像がつかないなかのスタートでした。

気候変動やプラスチックごみの何が問題なのかもわからない。まずは、自分たちが現状を知ることが必要だと感じ、さまざまな本やサイトを通して気候変動の原因となっている事柄を学び、問題を見つけるところからはじめました。

テーブルに置かれた『地球環境のしくみとはたらき図鑑』

阿部さんが毎日1ページずつ読み進めている書籍。知識の定着を目的に、内容をかみくだいて個人のInstagramでアウトプットしているという

そして、問題や最新情報を調査・勉強し、理解したうえでスタッフにシェアする。勉強するなかでおもしろかったコンテンツをおすすめしたり、閉店後のお店で環境問題に関する映画を観たりしたこともありました。いつでも知識を吸収できるように、会社に小さな図書館もつくったんです。

Instagramでは環境問題の学びをお客さまにもシェアしていますが、投稿する写真をスタッフと一緒に撮影したり、文章を考えたり、みんなで一緒に考えることを積極的にしてきました。

納品時に使用される緩衝材の再利用や、フードロスを出さないよう賄いを食べ切る簡単なルールづくりは、スタッフのアイデアから生まれた取り組みです。スタッフが興味関心を持てるかどうかは、店長の姿勢や言動、行動が大きいです。いかに声を拾ってアクションを起こすかが大切だと感じます。

stojoを持って微笑むスタッフとメッセージカード

スタッフの間ではstojoを持ち歩くことが習慣に。エシカルの楽しさ、気持ちよさに気づいてほしいという阿部さんが願いを込めてプレゼントしたものだ

トリバコーヒーはコーヒー豆屋です。お店では、バルブつきの密閉された袋に入れて販売していますが、シングルユースのプラスチック製バッグはごみになってしまう。キャニスターなどのマイ容器での購入を広めながら、無理なくエコにお買い物ができるよう、コンポスタブルなコーヒー豆袋をつくりたいと思っています。

もっともっと、ローウェイストなコーヒー豆屋を目指していきたいです。

ゼロからつくった「エシカル宣言 15ヶ条」 トリバコーヒーが綴る“居心地のいい空間”ができるまで

Promotion

Whitely

私たちと一緒に、最初の一歩を

宮城咲子さん(Whitely店長):「お店だからごみが出るのは仕方がない」「忙しいから手間をかけられない」という考えを変えることが、Whitelyの課題でした。でもやっているうちに、最初の一歩を踏み出せば答えが見つかると実感しています。汚れが落ちにくい界面活性剤不使用の洗剤は、コツを掴めば問題なく使えましたし、地元の野菜も八百屋さんとコミュニケーションをとれば届けてもらえました。

ショーケースのなかに陳列された焼きたてのパン

グルテンフリーメニューの開発にも力を入れるWhitely。環境や健康に配慮しながら、ふだんと変わらない食事が楽しめる。そんな心地いいお店づくりを目指す

週に一度のミーティングの内容も参考になったと感じます。あるときから、繰り返し使えるベーキングシートを使いはじめたんですが、ミーティングで「使い捨てオーブンシートは焼き菓子の型紙にしか使わなくなりました」と発表したところ、パウンドケーキ型に使えるテフロンシートがあることを教えてもらって。十分に工夫ができていると思っていても、誰かと共有することでもっといいアイデアがもらえると思った経験でした。

当店はエシカルに関心のあるスタッフが多く、誰かに教えるというよりみんなで情報交換をしているような感覚です。スタッフ間で会話を重ねたことで、お客さまにも日常会話としてエシカルについて話せるようになりました。

肩を組むWhitelyのスタッフたち

ヨガ講師、アニマルライツの活動家、ヴィーガンの活動家、法律を学ぶ大学生……多様な背景を持つスタッフたちがお店の個性をカラフルに色づける

私自身、以前からエシカル・サステナブルな行動は意識していましたが、「意識高い系」「偽善」「貧乏くさい」などと言われることを気にしていました。いまは一緒に話し合って行動できる仲間ができたことで、安心して一生懸命考え、発言できるようになったと感じます。

教えてもらうことからはじまり、いまは知識と実行力がついてきたので、今後はもっと外に向けた活動もしていきたいです。エシカル宣言にもある通り、お店近くの森戸海岸でビーチクリーンをする計画も始動させたいですし、私たちが実践していることや使っているアイテムをSNSなどで発信したい。

「やりたいけど、何からやろう?」と思ってる人たちの最初の一歩を一緒に踏み出せるようなお店になりたいです。

白いキャンバスに描く十人十色のエシカル 誰もが笑顔になるヴィーガンカフェ「Whitely」

Promotion

フラッグスカフェ 船橋店

新しい考えに触れ、お店の成長を実感

塩釜紘さん(フラッグスカフェ店長):プロジェクト発足時にまずやったのが、「エシカル」の意味について調べることでした。それからインターネットやSNSなどで、エシカルについて他社の取り組みを知りました。気候変動についての講義では、地球全体の環境問題について、大きなショックを受けましたし、それを止めるために、自分たちのなかに落とし込んでいくことに、大きな不安があったのを覚えています。

フラッグスカフェでは、フードロスによる生ごみと使い捨ての消耗品のごみが非常に多いことに気づきました。まずはすぐに取り組める消耗品から変えていくことに。さらに、フードロス削減に向けたメニューの入れ替えをしていくうちに、目に見えてごみが減っていき、たしかな手ごたえを感じました。

フラッグスカフェで取り扱うエシカルな資材

ストローはもちろん、おしぼりも環境に配慮したものに。とにかくしっかりしたつくりで、年配の方からは「手が拭きやすい」と好評だ

備品を購入する前には、まずはほかの店舗で余っていないかを会社全体で共有するようになりました。それまで各店がバラバラに動いていたことが、エシカルを通してひとつにまとまって進んでいくことにやりがいを感じています。

スタッフとのコミュニケーションでも、なるべくカタカナの専門用語を使わないように心がけ、抽象的な目標もできるだけ他店の取り組みや実例などとセットにして説明し、自分たちができそうなアクションを模索。まわりのスタッフも賛同してくれて、徐々に積極的な提案をしてくれるようになったんです。

一方的に業務を進めるのではなく、双方向に意見を交わすことでよりよい商品、サービスができることに気づきました。少しずつステップアップすることで実現できることがわかり、やりがいや楽しさを見出せるようになりました。

コーヒーを淹れるフラッグスカフェスタッフ

目指すは、お客さんが自然とエシカルなものを選択できるお店づくりやメニュー開発。ベテランスタッフから学生アルバイトまで、一丸となってエシカルな取り組みを進めている

サステナブルやエシカルという言葉が、世間に浸透しつつあります。いままではできなかったドギーバッグやマイ容器の持参などで、一層のフードロス削減、最終的にはフードロスゼロに向けて進めていきたいです。

約1年という期間のなかで、これだけ意識や行動が変わることに驚いています。またこれまではなかった新しい考え方に触れて、お店も自分も成長していることに喜びを感じます。

くつろぎながら、いつもの場所で エシカルな体験ができる「フラッグスカフェ」

Promotion

後編では、真さか・はまの屋パーラー 後楽園店・SUPERIORITY BURGER(スペリオリティバーガー)の振り返りをお届けする。

トリバコーヒーグループのInstagramアカウントはこちらから

トリバコーヒー 銀座店
https://www.instagram.com/toriba_coffee/
ヴィーガン居酒屋 真さか
https://www.instagram.com/vegan_izakaya_masaka/
SUPERIORITY BURGER JAPAN
https://www.instagram.com/superiorityburgerjapan/
明天好好
https://www.instagram.com/mingtenghaohao/
Whitely
https://www.instagram.com/whitely_by_toriba_coffee/
フラッグスカフェ
https://www.instagram.com/flagscafe_funabashi/

はまの屋パーラー 日比谷店
https://www.instagram.com/hamanoya_hibiya/
はまの屋パーラー 有楽町店
https://www.instagram.com/hamanoyaparlor/
はまの屋パーラー 渋谷店
https://www.instagram.com/hamanoya_shibuya/
はまの屋パーラー 後楽園店
https://www.instagram.com/hamanoya_korakuen/

※掲載している情報は、2022年6月24日時点のものです。

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