フロンによるオゾン層問題とは? 破壊の仕組みと現状をやさしく解説

地球を真上から俯瞰で眺めている図

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フロンはオゾン層を破壊するといわれているが、なぜ破壊が起こるのか。その仕組みや影響、モントリオール議定書によるフロン規制の成果、「問題は解決したのか?」という現在の状況までを整理する。

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2026.02.20

フロンと“オゾン層問題“の関係とは

暗闇で光る地球儀を持つ様子

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フロンは成層圏に到達すると、オゾン層を壊し、地球を紫外線から守る働きを弱めてしまう物質だ。

この問題が深刻な環境問題として認識されるようになったのは、1970年代後半から1980年代にかけてである。1970年代半ば、フロン(CFC類)がオゾン層を破壊する可能性が科学的に指摘され、観測データによって、1980年代を中心に世界全体でオゾン量が減少していることが明らかになった。(※1)

こうした状況を受けて国際的な規制が進められ、フロンの使用量は世界的に大幅に削減された。ただし、この問題はすでに完全に解決したわけではない。オゾン層は現在も回復の途中にあり、破壊が顕著になる以前の水準には戻っていないとされている。

フロンとオゾン層の問題は、便利さと環境への影響が衝突した典型例といえる。人類が生み出した物質が、思わぬ形で地球規模の環境問題を引き起こした経緯を知ることは、現在の環境問題や持続可能な社会のあり方を考えるうえでも重要な視点となる。

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冷たいイメージの氷

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ここからは、そもそもフロンとは何なのか、なぜ広く使われるようになったのかを整理する。

フロンの定義と誕生の背景

フロンとは、正式には「CFC(クロロフルオロカーボン)」「HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)」などと呼ばれる、人工的に合成された化学物質の総称である。炭素にフッ素や塩素などが結びついた構造をもち、自然界にはほとんど存在しない。(※2)

フロンが開発されたのは1920年代、工業化されたのは1930年代だ。当時、冷蔵庫などで使われていた冷媒には、毒性が強いものや、引火しやすいものが多く、安全性が大きな課題となっていた。そこで登場したフロンは、無色・無臭、不燃性、高安定性といった性質をもち、「夢の物質」として急速に普及していった。(※3)

フロンの主な種類

フロンにはいくつかの種類があるが、オゾン層との関係を理解するうえでは、「どの世代のフロンか」を押さえておくことがポイントだ。

まず、「CFC(クロロフルオロカーボン)」は、冷蔵庫やスプレーなどに広く使われていた初期のフロンだ。安定性が高く扱いやすい一方、成層圏で分解されると塩素原子を放出し、オゾン層を強く破壊することがわかった。この性質が問題となり、現在は製造・使用が禁止されている。

次に登場したのが、「HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)」である。CFCよりもオゾン層への影響を抑えた“つなぎのフロン”として使われてきたが、塩素を含む点は変わらない。そのため、HCFCも段階的に削減・廃止が進められている。

現在主流となっているのが、「HFC(ハイドロフルオロカーボン)」だ。HFCは塩素を含まないため、オゾン層を破壊しないとされている。この特性から、エアコンや冷蔵庫など多くの機器で使われてきた。

ただし、HFCには地球温暖化を進める性質が強いという別の課題がある。そのため近年は、より環境負荷の小さいHFO(ハイドロフルオロオレフィン)や、CO2、アンモニアといった自然冷媒へと移行する動きが進んでいる。(※4)

このように、フロンは「オゾン層を壊すかどうか」だけでなく、「温暖化への影響」も含めて進化と見直しが重ねられてきた物質だといえる。

私たちの身近にあるフロン製品

フロンは、冷蔵庫やエアコンの冷媒、スプレー製品の噴射ガスなど、私たちの身近な製品にも広く使われてきた。

現在では、オゾン層を破壊するフロンの使用は禁止され、多くの製品は代替フロンや自然冷媒へと切り替えられている。ただし、過去に製造された古い機器や、適切に回収・処理されずに廃棄された製品から、フロンが大気中に放出される可能性は残っており、この問題は完全に過去のものになったわけではない。(※5)

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暗闇から明るい穴を見上げた様子

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ここで改めて、フロンが影響を与える「オゾン層」について、把握しておこう。

オゾン層の位置と働き

オゾン層とは、地表から約10〜50km上空の成層圏に存在するオゾン(O3)が多く集まった層のこと。オゾンは酸素原子3個からなる気体で、太陽から降り注ぐ紫外線を吸収する性質をもつ。とくに有害性の高い紫外線を吸収することで、生物が地表で安全に生きられる環境を保っている。(※6)

オゾン層がなければどうなる?

もしオゾン層がなければ、有害な紫外線がそのまま地表に届く。人の皮膚がんや白内障といった病気のリスクが高まるだけでなく、植物の成長障害や、海洋プランクトン減少など、地球の生態系全体に深刻な影響がおよぶと考えられている。(※7)

オゾン層は目に見えない存在でありながら、地球上の生命を根本から支える重要な役割を果たしているといえる。

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フロンがオゾン層を破壊する仕組み

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ではなぜ、フロンは地表では安定しているにも関わらず、オゾン層を破壊してしまうのだろうか。詳細を見ていこう。

フロンが大気中で起こす化学反応

フロンは安定した物質で、地表付近ではほとんど分解されない。そのため長い時間をかけて大気中を漂い、やがて成層圏に到達する。

成層圏では、強い紫外線を受けてフロンが分解され、塩素原子が放出される。この塩素原子がオゾンと反応して酸素分子に変えてしまう。(※1)

さらに重要なのは、塩素原子が触媒となり、繰り返しオゾンを分解し続けることだ。たった1個の塩素原子が、何万個ものオゾン分子を破壊するともいわれている。(※8)

なぜ南極でオゾンホールが発生したのか

オゾン層の破壊は世界中で起こるが、とくに顕著だったのが南極上空だ。南極では冬季に極端に低温となり、「極域成層圏雲」と呼ばれる特殊な雲が発生する。この雲が塩素によるオゾン破壊反応を加速させる。

春になり太陽が戻ると、反応が一気に進み、オゾンホールが発生する。(※9)1982年に日本の観測隊によりオゾンホールが観測され、オゾン層問題が世界的に注目されることとなった。(※10)

「一度壊れると戻りにくい」理由

オゾン層は本来、自然につくられ分解される循環のなかで保たれている。しかし、フロンが大量に放出されると、その破壊のスピードが自然な回復を上回り、オゾン量が減ってしまう。

さらに、フロンは大気中で非常に長く残る性質をもつ。使用をやめた後も過去に放出されたフロンが影響をおよぼし続けるため、回復には時間を要する。(※11)オゾン層は対策後すぐに元に戻るわけではなく、回復には数十年単位の時間が必要とされている。

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オゾン層破壊による影響と実際に起きた問題

美しい海

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オゾン層の現象は、理論上の話にとどまらず、実際のリスクとして確認されてきた。(※7)

人体への影響(皮膚がん・白内障など)

紫外線量の増加は、皮膚がんや白内障の発症リスクを高めることが科学的に示されている。また、免疫機能への影響も指摘されており、健康面での懸念は大きい。

生態系・農業・海洋への影響

植物は紫外線に弱く、作物の収量低下や品質劣化につながる可能性がある。また、海洋では食物連鎖の基盤となるプランクトンが紫外線の影響を受け、生態系全体に波及するリスクがある。(※12)

オゾン層問題は、人間だけでなく、地球全体の生命活動に関わる問題だと捉えたい。

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世界はどう対応した? モントリオール議定書

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ここまで解説してきた深刻な状況を受け、国際社会は比較的早い段階で対策に動いた。

モントリオール議定書とは

1987年に採択された「モントリオール議定書」は、オゾン層を破壊する物質の製造・使用を国際的に規制する取り組みだ。CFCをはじめとするフロン類の段階的削減・全廃を定め、多くの国が参加した。(※13)

フロン規制の成果と評価

モントリオール議定書の規制により、フロンの大気中濃度は減少に転じ、オゾン層もゆっくりと回復傾向を示している。国連などの報告によると、2066年頃には1980年以前の水準に近づく可能性があるとされている。(※14)

なぜ“成功した国際環境条約”と呼ばれるのか

モントリオール議定書が成功例として評価される背景には、いくつかのポイントがある。

まず、先進国だけでなく、途上国も含めて規制を進めたことだ。単に厳しいルールを決めるだけでなく、すべての国が参加できる仕組みになっている。

また、途上国が規制を実施できるように先進国からの資金協力や技術支援の仕組み(多数国間基金)が設けられていることも重要だ。途上国であっても、オゾン層保護の取り組みを無理なく進められるように工夫されている。

さらに、フロンの削減はオゾン層保護だけでなく、温室効果ガスの削減にもつながるという副次的なメリットもある。環境全体への好影響も意識されたことが、国際的な評価を高めている。(※15)

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フロンの使用が国際的に制限されているいま、その代わりとなる冷媒として、ノンフロンや代替フロンが広く使われるようになっている。オゾン層を壊さないという点では前進といえるが、それだけで「環境にとって完全に安心」と言い切れるわけではない。ここでは、代替フロンの特徴や課題を整理する。

代替フロン「HFC」はオゾン層を壊さない?

代替フロンとして広く使われてきたのが「HFC(ハイドロフルオロカーボン)」だ。HFCは塩素を含まないため、成層圏でオゾン層を破壊しないという特徴をもつ。この点が注目され、CFCやHCFCに代わる冷媒として普及が進んだ。

キガリ改正と次の課題

モントリオール議定書は、採択後も改正を重ねてきた。2020年には、先進国においてオゾン層を破壊する特定フロンの製造・使用が全廃となっている。

さらに、オゾン層を破壊しない代替フロンについても、地球温暖化への影響が問題視されるようになった。これを受けて2016年に採択されたのが、モントリオール議定書の「キガリ改正」である。キガリ改正では、代替フロンについても段階的な削減が定められており、先進国では2036年までに生産量を85%削減することが目標とされている。(※16)

自然冷媒という選択肢

フロン類が抱える課題を受けて、近年注目されているのが「自然冷媒」だ。自然冷媒とは、もともと自然界に存在する物質を冷媒として利用する考え方で、環境負荷が比較的小さい点がポイントだ。代表的なものには、アンモニア、二酸化炭素、水、空気、炭化水素などがある。

これらの自然冷媒は、フロン類のようにオゾン層を破壊せず、地球温暖化への影響も抑えられる場合が多い。そのため、冷凍・空調機器に自然冷媒を採用することで、環境負荷の低減が期待されている。(※17)

一方で、自然冷媒は物質ごとに性質が異なるため、機器の設計や使用環境に応じた配慮が求められる場合もある。また、従来のフロン機器に比べて導入コストが課題となることもあり、補助制度を通じて普及を後押しする動きもある。(※18)

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フロンとSDGsの関係

夕日に照らされた美しい自然

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これまで見てきたフロン問題は、オゾン層だけでなく、SDGsが掲げる複数の目標とも深く関わっている。

SDGs目標13・14・15との関係

フロンや代替フロンの扱いは、気候変動への対応を掲げる目標13「気候変動に具体的な対策を」と密接に結びついている。また、紫外線増加による海洋生態系への影響は目標14「海の豊かさを守ろう」、陸上生態系への影響は目標15「陸の豊かさも守ろう」とも関連する。

オゾン層の保護や冷媒の見直しは、特定の環境問題にとどまらず、地球全体の生態系を守る取り組みの一部と捉えることができる。

個人・企業ができること

個人レベルでは、環境負荷の低い製品を選ぶことや、エアコン・冷蔵庫などを適切に廃棄・回収することが重要だ。企業にとっても、冷媒の選択や管理方法を見直すことは、環境対応の一環として求められている。

フロンとオゾン層問題のこれから

植物の苗を大事に抱える人

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国際的な規制の成果により、オゾン層はゆっくりと回復に向かっているとされている。ただし、回復には長い時間がかかり、完全にもとの状態に戻るまでには数十年単位の取り組みが必要だ。(※14)

また、代替フロンや新しい冷媒の扱いなど、課題の形も変化している。オゾン層だけでなく、地球温暖化や資源循環などの視点を含め、国際社会は引き続き、制度の見直しと技術の更新を進めていく必要があるだろう。(※19)

フロンとオゾン層問題は、終わった環境問題ではなく、現在進行形で向き合い続けなければいけないテーマだといえる。

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フロンと“オゾン層問題“の関係を正しく知り、これからのヒントに

フロンとオゾン層の問題は、国際協力によって改善が進んだ数少ない環境問題のひとつである。重要なのは、「解決した問題」と捉えるのではなく、なぜ問題が起き、どう対応してきたのかを理解することだ。

オゾン層の回復には時間がかかり、代替フロンをめぐっては新たな課題も生まれている。一方で、国際的な取り組みによって確実に前進してきたのも事実である。この歴史を知ることは、環境問題を考えるうえでの大切なヒントになるだろう。

※掲載している情報は、2026年2月20日時点のものです。

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