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成層圏で地球を覆っている「オゾン層」。このオゾン層破壊によって、地球上の生物が危機にさらされている。本記事では、オゾン層破壊の現状と原因についてわかりやすく解説。また、破壊されたことによる影響についても紹介していく。
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エレミニスト編集部
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「オゾン層」とは、成層圏(約10~50km上空)で地球を覆っている層のこと。
「オゾン」とは、酸素原子3個からなる気体のことで、雷の放電や紫外線から発生し、私たちの周りにもごく低い濃度で存在している。大気中のオゾンの90%は成層圏に存在しており、このオゾンが一番多い層を、一般的にオゾン層と呼んでいる。
オゾン層の大きな役割は、太陽からの有害な紫外線を吸収し、人間や動植物を保護すること。紫外線には、UV-A、UV-B、UV-Cの3種類が存在しており、なかでも”有害な紫外線”とされているのが、UV-B、UV-Cだ。オゾン層は、このUV-Bの大部分を吸収し、UV-Cを完全に吸収するため、人間や動植物を紫外線から保護してくれている。
また、紫外線を吸収して成層圏の大気を温める効果もあり、地球の気候形成にも大きく関係している(※1)。
地球上で暮らす人間や動植物にとって重要な役割を果たしているオゾン層だが、1980年代以降破壊が進み、人間をはじめとする地球上の動植物は危険にさらされている。
オゾン層に何が起きているのが、具体的に現状を見ていこう。
オゾン層の量を見ると、熱帯域を除いて地球全体で長期的に減少傾向が続いている。
なかでも1980年代から1990年代前半にかけて、オゾンの量は地球規模で大きく減少。その後、減少傾向が緩和し、1990年代後半からはわずかな増加傾向がみられるものの、1979年と比べると、2010年には平均で約2.1%オゾンの量が減少しており、1970年代と比べると現在は少ない状態が続いている(※2)。
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南極の春(毎年9月〜10月頃)には、上空にオゾン層が薄くなって穴のように見える「オゾンホール」が観測される。
オゾンホールは、オゾン層の破壊が進むにつれて大きく現れるようになるといわれており、オゾンホールの規模は1980年代から1990年代半ばにかけて急激に拡大した。しかし、1990年代半ば以降では、長期的な拡大傾向は見られなくなった。
2022年には、オゾンホールが大きな規模を維持して長期間継続。これは、オゾン層破壊を促進させる極成層圏雲が例年より維持されたことが影響していると考えられている(※2)。
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オゾン層の破壊の主な原因は、フロンだとされている。本来オゾンは、オゾン層において分解や生成を繰り返し、一定のバランスが保たれているものだが、フロンなどの化学物質の影響でこのバランスが崩れはじめたのだ(※3)。
フロンとは、自然界に存在しない人工的につくり出された物質で、「フルオロカーボン(フッ素と炭素の化合物)」の総称である。もっともフロンが使われているのが冷媒用途。1928年に開発されて以来、一般家庭やビルのエアコン、バスや自動車などの乗り物のエアコン、スーパーやコンビニの冷蔵冷凍ショーケースなど、幅広い機械に使われてきた。
フロンは、機械を使っている間にも漏れ出している上、使用後の回収処理も進んでいないことにより、処理の段階でも大気中に漏れ出てしまっているのだ(※4)。
地球上で発生したフロンが成層圏に到達すると、太陽からの紫外線をうけて、フロン分子に含まれる塩素原子(Cl)を放出する。この塩素原子がオゾンと化学反応を起こし、オゾンを分解してしまうのだ。
しかも、塩素原子は安定することなく、繰り返しオゾンを破壊し続け、なんと1個の塩素原子で破壊するオゾン分子の数は数万個にものぼるという(※5)。
オゾン層が破壊され、太陽からの有害な紫外線を吸収してくれるものがなくなると、地上に到達する有害な紫外線の量が増えることになる。
ここからは、オゾン層破壊による人間や動植物への代表的な影響を3つを紹介していく。
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オゾン層が破壊されると、これまでオゾン層によって大半が吸収されていた、UV-Bの量が増えて、地球上の多くの生態系に影響を与えると考えられている。
人間への影響として懸念されているもののひとつが、皮膚がんの増加だ。1991年の環境影響パネルの報告では、オゾン全量が10%減少すると、光感受性の人種では悪性黒色腫を除く皮膚がんの発症率が26%増加すると予測されている。さらに、1994年の同パネルでは、成層圏オゾンが1%減少すると皮膚がんの発生が約2%増加すると推定されているのだ(※6)。
UV-Bの増加は、人間の細胞に傷をつけ、目の病気や皮膚の病気を引き起こすため、皮膚がんのほかに白内障の増加も懸念されている。さらに、免疫力を低下させるため、感染症の増加も心配されている。
また、紫外線が地上に降り注ぎ、地上付近の酸素が反応することで対流圏オゾンが増えて、光化学スモッグの原因にもなりうるそうだ(※7)。
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オゾン層破壊の影響を受けるのは、人間だけではない。有害な紫外線が増加すると、海洋生物や動植物の成長をさまたげてしまう可能性があるのだ。
また、プランクトンなどの微生物のなかには、有害な紫外線の影響を受けやすいものもある。有害な紫外線によって影響を受けやすい微生物が減り、影響を受けにくいものが残ると、海の生態系が変化してしまう。
実際に、オゾン層破壊で有害紫外線が増えたことによって生態系が変化した例が、南極大陸沿岸の冷たい海に生息する「ナンキョクオキアミ」だ。ナンキョクオキアミは、クジラやペンギンのえさとして重要な生物で、ナンキョクオキアミのえさとなっているプランクトンがオゾン層破壊の影響で変化したことで年々減少している。ナンキョクオキアミが減ってしまうことにより、ナンキョクオキアミが関わる食物連鎖にも影響が出てしまうのだ(※7)。
有害な紫外線の影響は、生物だけでなく物質にもおよぶ。
プラスチックなどは劣化しやすくなり、窓ぎわや屋外に置いてあるものなどの色があせたりするのも紫外線の影響だ(※7)。
また、オゾン層破壊に伴う紫外線の増加と気候変化の相互作用によって、世界遺産や文化財をはじめ、数多くの建築物や製品に損傷がもたらされることが予想されている。
オゾン層が破壊されると、人間をはじめ海洋生物や動植物に多大な影響が出てしまう。エアコンや冷蔵庫などの冷却機械は、私たちの生活に欠かせないアイテムだが、だからといってオゾン層破壊を抑制するために何もできないわけではない。
近年登場している、フロン類を使用しない「ノンフロン製品」を選ぶほか、フロン類を使用した冷蔵庫やエアコンを廃棄するときには適切に処理するなど、できることはある。まずはオゾン層破壊の現状についてしっかり理解し、できることから行動していこう。
※1 気象庁|オゾン層とは
※2 令和4年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書について|環境省
※3 オゾン層って、なんだろう?|環境省
※4 フロンって何?|NPO法人 ストップ・フロン全国連絡会 (JASON)
※5 オゾン問題に関するQ&A|ビルソリューションジャーナル
※6 太陽紫外光による影響(1ページ目)|環境省
※7 オゾン層破壊の影響(1ページ目)|ストップ・フロン全国連絡会
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