化粧品の防腐剤を正しく知る 危険視される理由と安全性の考え方

美しくディスプレイされたオイル

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しばしば警戒される化粧品の防腐剤。防腐剤は本当に避けるべき成分なのだろうか。本記事では、防腐剤の役割や種類、安全性の基準、フリー表示の落とし穴を解説する。化粧品を納得して選ぶための参考にしてほしい。

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2026.01.21

なぜ「化粧品の防腐剤」が気にされるのか

化粧品のテクスチャーのアップ

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まずは、化粧品の防腐剤がなぜここまで警戒されるようになったのか、背景を整理していこう。

防腐剤=危険というイメージの背景

「防腐剤」と聞くと、「肌に刺激がありそう」「体に悪そう」という印象を持つ人は少なくないだろう。とくにSNSや口コミでは、「防腐剤フリー」「無添加」などの言葉が強調される傾向にあり、防腐剤=避けるべき成分というイメージが広がってきた。

背景には、一部の成分が人によっては刺激因子になり得る事実や、そうした注意喚起がメーカーや専門家によって繰り返されてきたことも影響していると考えられる。(※1)また、子どもや敏感肌、妊娠中などのライフステージと結びつくことで、不安がより強調されやすくなっている側面もあるだろう。

しかし、防腐剤は本当に、入っているだけで危険なのだろうか。役割や使われ方を整理すると、見え方は少し変わってくる。

この記事でわかること

本記事では、化粧品に配合される防腐剤の役割や、種類、安全性の考え方を中立的に解説する。「防腐剤フリー」「無添加」といった表示の意味や注意点にも触れながら、必要以上に怖がらず、自分に合った化粧品を選ぶための判断材料を整理していく。

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みずみずしいテクスチャー

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防腐剤は、化粧品の安全性を支えるための基本的な成分のひとつだ。以下で、詳しく見ていこう。

防腐剤の基本的な役割

化粧品に使われる防腐剤のおもな役割は、微生物の繁殖を防ぎ、製品の品質と安全性を保つことにある。とくに、菌やカビといった微生物は、一定の条件がそろうと短期間で増殖するため、日常的に使用する化粧品ではスルーできない存在だ。(※2)

防腐剤は、化粧品そのものを長持ちさせることにとどまらず、使用中の雑菌の増殖を防ぎ、肌にとって望ましくない状態になるリスクを下げるために配合されている。(※3)防腐剤は、化粧品を安全な状態で使い切るために欠かせない役割を担っている。

なぜ化粧品に防腐剤が必要なのか

化粧品のなかには、水をベースにつくられているものも多くある。水は使用感をよくする一方で、微生物にとっては増殖しやすい環境でもある。とくに、化粧水や乳液などは、開封後に空気や指が触れることで、外部から菌が入り込む可能性が高い。

防腐剤が配合されていない場合、製造直後は問題がなくても、使用を重ねるうちに品質が変化するリスクが高まる。見た目やにおいの変化だけでなく、肌トラブルにつながるおそれもあるため、一定期間、安全に使える状態を保つために防腐剤が必要とされている。(※4)

防腐剤がないと起こるリスク

防腐が不十分な化粧品は、菌やカビが増殖する可能性がある。こうした状態の製品を使い続けることで、肌荒れや炎症などのトラブルが起こることも否定できない。(※2)

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化粧品に使われる主な防腐剤の種類

化学的な器具が並ぶ様子

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化粧品に使われる防腐剤には複数の種類があり、それぞれに特徴がある。合成由来か、天然由来かといった分類だけでなく、役割や使われ方の違いにも目を向けたい。

合成防腐剤の代表例

化粧品に使われる合成防腐剤のなかで、代表的なものとして知られているのが「パラベン」や「フェノキシエタノール」だ。

パラベンは、古くから使われてきた防腐剤のひとつで、微生物の増殖を抑える力が安定していることが特徴。少量でも効果を発揮しやすく、処方全体のバランスを取りやすいことから、長年多くの化粧品に採用されてきた。(※5)一方で、人によっては稀に刺激を感じる場合があることから、「避けたい成分」として名前が挙がることも多い。

フェノキシエタノールは、化粧品や医薬品などで防腐目的に使われている成分だ。製品の使用中に微生物が混入しても、その増殖を抑え、変色や不快なにおいといった品質の劣化を防ぐ役割を担っている。スキンケアやメイクアップ、ヘアケア製品だけでなく、赤ちゃん用のスキンケア製品にも使用されてきた実績がある。(※6)

ほかにも、「安息香酸」をはじめ、さまざまな防腐剤が使われることもある。いずれも防腐効果や処方との相性を考慮しながら選ばれている。

天然由来・自然派防腐成分とはどのようなもの?

植物エキスや有機酸、アルコールなど、天然由来とされる成分が防腐目的で使われることもある。自然派化粧品やオーガニック化粧品では、こうした成分を組み合わせて防腐機能を持たせているケースが少なくない。(※7)

しかし、天然由来だから刺激がないとは限らない。天然由来成分は品質にばらつきが出やすいほか、人によっては使用されている植物に対してアレルギー反応を起こす可能性もある。(※8)

防腐剤以外の防腐の工夫

防腐剤に不安を感じる人に向けて、防腐剤を使わずに、微生物の増殖を抑える工夫も進められている。たとえば、空気が入りにくいエアレス容器の採用や、水分量を抑えた処方設計によって、菌が繁殖しにくい環境をつくる方法だ。

また、抗菌作用を持つ成分を組み合わせて防腐機能を補うケースもある。こうした工夫は、防腐剤フリーを目指す際の選択肢のひとつだが、品質管理や保存条件への配慮がより重要になってくる。(※9・10)

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防腐剤は本当に危険?安全性の考え方

日向で目を閉じて前を向く人

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化粧品の防腐剤に関して、「危険」「安全」の二択で捉えられがちだ。しかし、実際にはもう少し広い視点で考える必要がある。

日本・海外の安全基準と規制

防腐剤の安全性は、各国・地域で法規制としてしっかり管理されている。日本では、化粧品に配合できる防腐剤の種類や条件が「ポジティブリスト」として規定されており、リストにない成分は配合できない仕組みになっている。(※11)

化粧品メーカー各社は、国の基準に加えて独自の安全評価基準を設けてテストを行い、製品ごとに安全性を確認している。(※9)安全方針を公表しているメーカーも少なくない。

一方、海外では、EUの規制が代表例だ。EUでは、化粧品に使われる防腐剤や抗菌成分について、あらかじめ安全性が確認された物質だけを使用できる仕組みが設けられている。そのひとつが「EU承認済み生物殺菌活性物質リスト(BPR)」だ。これは、菌の増殖を抑える働きを持つ成分について、専門機関が安全性を評価し、問題ないと判断されたものだけをリスト化して管理する制度である。EUでは、このように成分そのものの安全性を事前に確認する厳格な枠組みのもとで、化粧品の品質と消費者の安全が守られている。(※12)

「刺激が出る人がいる」理由

防腐剤に限らず、化粧品成分はすべての人に同じように合うわけではない。肌質や体質によって、刺激やアレルギー反応が出る可能性もある。

誰にでも絶対に安全な成分は存在しないことを前提に、自分の肌との相性を考慮することが大切だ。

危険性が誤解されやすい理由

化粧品の防腐剤に関する危険性が誤解される背景には、過去の動物実験や一部の研究結果が、現在の使用条件や濃度と切り離して伝わってきた側面があるだろう。情報の一部だけを切り取って判断するのではなく、使われ方や評価の前提条件を含めて捉える視点が求められる。

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「防腐剤フリー」「無添加化粧品」の落とし穴

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「防腐剤フリー」や「無添加」という表示は、安心材料として受け取られやすい。一方で、その意味を正確に理解していないと、誤解につながることもある。

防腐剤フリーとはどういう意味か

「防腐剤フリー」や「防腐剤無添加」とは、一般的に、化学添加物としての防腐剤を配合していないことを指す表示のこと。ただし、防腐剤フリーだからといって、微生物対策を何もしていないわけではない。多くの場合、防腐剤の代わりに、抗菌作用を持つ天然由来成分を組み合わせることで、防腐機能を補っていると考えられる。(※2)

防腐剤フリー化粧品は、防腐の考え方や仕組みが異なるだけで、時間の経過や使用環境によって品質が変化する可能性がある。そのため、使用期限が短く設定されていたり、保存方法に注意が必要だったりする場合も少なくない。

防腐剤フリー化粧品のメリット・デメリット

防腐剤フリー化粧品のメリットは、特定の防腐剤に敏感な人でも使いやすい可能性がある点だ。成分設計がシンプルな製品も多く、肌状態によっては安心感につながることもあるだろう。

一方で、デメリットとして理解しておきたいのが、使用期限や保存管理への配慮が必要になるケースが多いこと。防腐剤による長期保存を前提としていないため、開封後の使用期間が短く設定されている製品もある。(※13)防腐剤フリー化粧品は、「新鮮なうちに使い切る」という前提で選ぶことが大切だ。

無添加表示の見方と注意点

「無添加」「無配合」「不使用」といった表示には、一定のルールがある。日本では、成分を配合していないことを示す場合、何を配合していないのかを明示することが求められている。たとえば「パラベン無添加」「紫外線吸収剤無配合」などがそれにあたる。(※14)

しかし、「無添加」と書かれていても、すべての添加物が使われていないわけではない。パラベンフリーでも、別の防腐成分が配合されているケースはめずらしくない。無添加表示は「何が入っていないか」を示す言葉であり、「何も入っていない」という意味ではない点に注意したい。(※15)

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敏感肌・子ども・妊娠中の人はどう選ぶ?

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防腐剤への不安は、肌が敏感な人や、妊娠・出産などライフステージに変化があった人ほど強くなりやすい。ただし、重要なのは「防腐剤が入っているかどうか」だけで判断しないことだ。

肌タイプ別の考え方

一般的に、敏感肌の人や刺激を感じやすい人は、成分数が少なく、処方がシンプルな化粧品のほうが、肌状態を把握しやすいとされている。必要以上に多くの成分が配合されている製品よりも、自分の肌に合うかどうかを確認しやすい。「低刺激処方」などのパッケージ表記にも注目しながら選びたい。

防腐剤を避けるべきケースと問題ないケース

アレルギー体質の人や敏感肌の人は、稀に、防腐剤が刺激となってしまう可能性がある。もし過去に、特定の成分で刺激やトラブルを感じた経験がある場合は、その成分を避けることを検討しよう。

一方で、防腐剤全般を一律に避ける必要があるとは限らない。多くの防腐成分は使用目的や濃度が管理されており、肌との相性によって受け取り方が異なる。

成分表示でチェックすべきポイント

化粧品に配合される防腐剤の代表格は、パラベン類。具体的には、「エチルパラベン」「メチルパラベン」「ブチルパラベン」「プロピルパラベン」などがある。また、薬用化粧品(医薬部外品)では、「パラオキシ安息香酸エステル」という名称で表示される。ほか、「フェノキシエタノール」「安息香酸ナトリウム」なども防腐剤の一種だ(※15)。

防腐剤が配合されていない製品は、「防腐剤フリー」の表記がパッケージに明記されているケースが多い。表示の言葉だけでなく、実際に成分表示で確認することが、安心感につながる。

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サステナビリティ・SDGs視点で考える防腐剤

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近年、防腐剤は、環境や社会との関係でも見直されつつある。

防腐剤は「環境に悪い」のか?

防腐剤は環境負荷が懸念されることもあるが、すべてが問題視されているわけではない。近年は排水として流れた後に水中でどう分解されるのか、どの程度残留するかといった点を踏まえた評価も進んでいる。(※16)

一方で、防腐剤によって品質劣化を防ぐことで、化粧品の廃棄ロスを減らせる側面もある。(※17)

SDGsとの関係

SDGsでは「つくる責任 つかう責任」や、人々の健康を守ることが重要なテーマとして掲げられている。化粧品においても、品質を保ち、安全に使い切れる設計は前提条件のひとつだ。防腐剤の有無だけで判断するのではなく、製品を無駄なく使い、肌や生活に合った選択をすることが、持続可能な消費につながるだろう。

これからの化粧品

これからの化粧品づくりでは、低刺激と環境負荷の軽減の両立が重要なテーマになりつつある。核となるのが、資源や環境への負担を減らす「グリーンケミストリー」の考え方だろう。(※18)

この考え方は、防腐剤の選び方や処方設計にも応用できる視点といえる。すべての成分・工程において環境への配慮を意識しながら、安全性と使いやすさを両立する取り組みが今後ますます注目されそうだ。

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化粧品の防腐剤は「正しく知って選ぶ」成分

化粧品に配合される防腐剤は、安全性・品質・環境への配慮、そのバランスのなかで使われている成分だ。大切なのは、自分の肌質や使い方、ライフスタイルに合っているかどうかを見極めること。正しく知ることが、納得できる化粧品選びにつながるだろう。

※掲載している情報は、2026年1月21日時点のものです。

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