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防腐剤としてのパラベン類を含まない「パラベンフリー」製品が注目を集めている。パラベンについての解説やその役割に触れたうえで、パラベンフリーが注目される背景を解説。またパラベンフリーのコスメのメリットおよびデメリット、製品選択の際の注意点についても紹介する。
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パラベンとは、化粧品・食品・医薬品などに含まれる防腐剤のひとつ。製品の安全性のために配合されているパラベンだが、その成分にはデメリットも存在する。そのためパラベンを用いない「パラベンフリー」製品が注目されている。(※1)
パラベン(「パラヒドロキシ安息香酸エステル(別名:パラオキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸)」)は有機化合物の一種で、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン等の総称である。(※2)防腐剤として使用される物質のなかでもとくに人体に対する毒性が低く、カビ等の微生物に対する抗菌作用が強いことからおよそ100年前から使用されてきた。
「化粧品基準」により日本の化粧品類においてはパラベンの配合上限は1%(100g中の1g)と定められているが、市販品の多くは0.1〜0.5%という低用量で使用されている。このように古くから使用されていること、および少量でも防腐性能を発揮できることから、パラベン類は比較的安全性の高い防腐剤として多用されてきた。またパラベン類の1種のみを使用しても十分な効果が得られるが、複数のパラベン類や他の防腐剤を組み合わせることでより優れた効果があるとされる。
「パラベンフリー」とは、パラベン類を使っていない製品を指す。ただし現在(2024年)において統一された明確な定義はなく、パラベンフリーを表示する製品は各メーカーが独自に提示しているものである。
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長年防腐剤として使用されているパラベンについても問題提起が行われている。それを受けて、パラベンの使用を排したパラベンフリーが注目される背景について解説する。
パラベンは、人や動物の体内から比較的短時間で排出される物質だ。しかし日常生活の多様な製品に含まれるため、常に人体内に存在するとも考えられる。ごく微量であっても長期的に体内にあることで健康被害を起こすのではないかとの疑問も絶えない。人体への危険性はいまだ明確にはなっておらず多くの研究が進められているが、消費者の不安解消や社会環境への配慮からパラベンフリーの製品が開発され注目を浴びている。
環境負荷に対する配慮としても、パラベンフリーが注目されている。2008年、パラベン類を含む化学物質がサンゴ礁の劣化や白化を引き起こすという論文が発表された。(※3)これを受けてパラオでは、2020年よりパラベンをはじめとするサンゴ礁に有害な成分を含む日焼け止め製品の持ち込みが禁止された。(※4、※5)
さらにタイでも、2021年から同様に国立公園での有害な成分を含む日焼け止め製品の規制が始まった。(※6)これらの国際的な動きを受けて、とくに海に直接流出する日焼け止めの成分を見直す流れが強まっている。
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パラベンフリーとされる商品の多くは、スキンケア商品を含むコスメアイテムだ。それらの商品のメリットを紹介する。
コスメアイテムは日常的・定期的に肌に接するものが多い。化粧品メーカーの研究ではメチルパラベンを含む化粧品の継続使用で肌への残存量が増加すること、および皮膚細胞においての実験で老化や角化に影響を与え、肌ストレスにつながる可能性が指摘された。(※7)
また自然科学研究機構生理化学研究所の実験論文では、とくにメチルパラベンが痛みを引き起こす侵害刺激受容体のひとつに作用し、皮膚刺激を引き起こす可能性が指摘されている。(※8)このような肌刺激への影響可能性からも、パラベンフリーの製品が注目されつつある。
ごく稀ではあるが、パラベンアレルギーの存在が確認されている。(※9)また化学物質過敏症の原因物質のひとつとして、パラベンが肌トラブルを引き起こす可能性も否定できない。そのような場合にパラベンフリー製品を選ぶことで、悪化を防げる可能性がある。パラベンを含む何らかの成分により肌トラブルの発生が疑われる場合は、まず皮膚科等専門機関に相談してほしい。
先にも触れたように、とくに日焼け止め製品に関してはパラベン類を含むものが禁止されている国がある。現地法によって定められたものであるため、海外旅行の際は必ずパラベンおよびその他禁止成分を確認し、法規に適した日焼け止めなどのコスメアイテムを用意しておきたい。
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パラベンフリーの製品を使うことによるデメリットも存在する。メリットやデメリットをよく理解したうえで使い分けたい。
パラベンフリーコスメを専門に扱うメーカーは、多くはない状況がある。自分の肌に合ってかつパラベンフリーというコスメアイテムに出会うのは難しいが、各大手化粧品メーカー内でもパラベンフリーの製品が展開されつつある。(※10)現状の選択肢は少ないが、今後の製品開発に期待したい。
パラベン類は高い抗菌・防腐性能を持つため、それを排除すると雑菌の繁殖およびそれにともなう品質劣化が加速する。代わりに他の防腐剤を配合することで雑菌の繁殖を防ぐものもあるが、パラベンほどの効果を示すかは物質と配合量しだいである。パラベンフリーのコスメを選ぶ際には成分を確認し、開封後は品質に注意しながら使うことが望ましい。
パラベンは防腐剤として安価なうえ、少量でも優れた効果を示す。そのためパラベンの代わりに他の防腐剤成分を配合する場合はコストがかかり、商品価格に転嫁されてその分高価になることが多い。また防腐剤を用いる以外での品質保全のために、使い切り・少量でのパッケージングになる場合もあり、大容量製品に比べてコストがかかる。
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ここまで述べたように、パラベンフリーであれば安心という訳ではない。とくにコスメを選ぶ際に注意したい点を説明する。
パラベンフリー製品は防腐剤としてのパラベンを使用しない代わりに、代替の防腐剤が入っている場合も多い。(※11)そこで多く用いられるのがフェノキシエタノールだ。こちらも人体への安全性は高いが、パラベンに比べて抗菌作用が落ちるため多量に配合されることもある。成分表示をよく確認したうえで選択する必要がある。
パラベンフリーという理由だけでコスメを選ぶことは難しい。基本的に化粧品は各個人の肌質やトラブル改善の目的に沿ったものを選ぶことが重要だからだ。パラベンフリーというだけでなく、必要としている機能に適した商品を選び、実際に肌に合っているかを確認しながら使用したい。
コスメの特徴として「天然由来」や「オーガニック」と表示されるものもあるが、それはパラベンフリーの概念とは異なる尺度である。上記の表示があってもパラベンをはじめとする合成添加物が含まれる場合もある。またパラベンは、天然物中にも存在している。(※2)原料の植物や野菜・果物にパラベンが含まれる場合もあるため、パラベンフリーのコスメを探す場合は注意したい。
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コスメアイテム以外にもパラベンが含まれる製品は広く普及している。その具体的な例を紹介したい。
・しょう油
・果実ソース
・酢
・清涼飲料水とシロップ
・果実や果菜の表皮
(参考:食品添加物パラオキシ安息香酸エステル類について|食品安全委員会)(※12)
・経口剤(内服薬)
・局所麻酔注射
・外用剤
・眼科用剤
・耳鼻科用剤
・口中用剤
など
・シャンプー
・コンディショナー
・ボディーソープ
・入浴剤
・歯磨き粉
・制汗剤
・身体拭きシート
など
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優秀な抗菌・防腐剤であるパラベン類だが、人体の安全性への不安や環境負荷への影響などの懸念事項がある。そのため、近年パラベンフリーの製品は普及し注目を集めている。また実際にパラベン類の使用が禁止されている地域もあり、そのような場合にはパラベンフリーコスメを選択するべきだ。しかしパラベンフリーとすることでのデメリットももちろん存在する。製品選択の際には自分の身体状況や使用環境をよく把握し、また成分をよく確認したうえで購入したい。
※1 No423_防腐剤フリー、パラベンフリーについて|一般財団法人ボーケン品質評価機構
※2 パラベン|上野製薬株式会社
※3 Sunscreens Cause Coral Bleaching by Promoting Viral Infection|National Library of Medicine
※4 サンゴ礁に有害な成分を含む日焼け止めの禁止について(お知らせ)|外務省
※5 サンゴ礁に有害な成分を含む日焼け止めの禁止について|在パラオ日本国大使館
※6 【タイの国立公園】サンゴ礁に有害な成分を含む日焼け止めの持込・使用を禁止|タイ国政府観光庁
※7 化粧品中の防腐剤は皮膚に残り、肌にストレスを与える _ 研究開発レポート _ 研究開発|FANCL ファンケル
※8 メチルパラベンがTRPA1チャンネルを活性化して疼痛を引き起こす|生理学研究所
※9 接触性皮膚炎 各論 そのⅫ パラベンミックス│東豊ひふ科
※10 パラベン類|花王
※11 防腐剤とは何ですか?なぜ、化粧品には防腐剤が入っているのですか? _ お客さまサポート|資生堂
※12 食品添加物パラオキシ安息香酸エステル類について|食品安全委員会
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