人のマイクロプラスチック摂取量はどれくらい? 影響や対策を解説

マイクロプラスチックのイメージ

Photo by Sören Funk

プラスチックごみ問題が深刻化し、よく耳にするようになった「マイクロプラスチック」。本記事では、人間のマイクロプラスチック摂取量や人体への影響を解説していく。そのほかマイクロプラスチックが引き起こす問題についても触れながら、解決に向けてできることを考えていく。

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2024.11.29

マイクロプラスチック問題とは

環境問題の深刻化にともない、注目されているプラスチックごみ問題。なかでもよく耳にするのが、マイクロプラスチック問題だ。

マイクロプラスチックとは

プラスチックごみが海岸に流れ着いたイメージ

Photo by Sören Funk on Unsplash

「マイクロプラスチック」とは、その名の通り、小さな粒状のプラスチックのこと。具体的には、5mm以下のプラスチックをマイクロプラスチックと呼ぶ。

マイクロプラスチックには2種類あり、1つは、もともと小さいサイズでつくられた「一次的マイクロプラスチック」。製品の原料になったり、製品に配合されたりするプラスチックだ。

もう1つは、不法投棄やポイ捨てされたプラスチック製品が紫外線や雨など自然環境によって劣化し、細かく砕かれた「二次的マイクロプラスチック」(※1)。合成繊維の服を洗濯したときに発生するポリエステルやアクリルの繊維も、これに含まれる(※2)。

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引き起こされる問題

マイクロプラスチックによって引き起こされる問題はさまざま。ここでは代表的なものを紹介していく。

自然界にそのまま残る

マイクロプラスチックは、小さくて回収することが難しい。その上、多くのマイクロプラスチックは自然界の中で分解されないため、自然界にそのまま残ってしまうのだ。

しかしプラスチック製品の生産量は年々増加しており、それにともない、マイクロプラスチックも日々増加している。発生し自然界へ流出したマイクロプラスチックはほぼ回収できないため、減ることはなく増えていく一方なのである。

生態系への悪影響

海にプラスチックごみが落ちているイメージ

Photo by Naja Bertolt Jensen on Unsplash

生態系への悪影響も、マイクロプラスチックが引き起こす深刻な問題のひとつだ。

自然界に流出したマイクロプラスチックを生き物が間違えて食べてしまうと、内臓を傷つけたり、詰まったりして命を落とす危険がある。

また、不法投棄やポイ捨てされたプラスチック製品は、山に捨てられたとしても雨に流されて川に入り、水の流れとともに、最後には海に流れ込む。そうして海に流れ込んだマイクロプラスチックを、魚などの海洋生物が飲み込んでしまう恐れもあるのだ。

さらに、マイクロプラスチックの増加によって海洋汚染が進んで海の生き物の数が減ると、漁業や観光業などの産業にも影響が出る可能性がある。

人間の健康への影響

マイクロプラスチックは、その小ささから食品や水、空気を通じて、人体に取り込まれることがある。それによって、炎症やアレルギー反応を起こすなど、さまざまな健康問題を引き起こすことが懸念されている。

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人間が摂取しているマイクロプラスチックの量

クレジットカードのイメージ

Photo by Claire Abdo on Unsplash

マイクロプラスチックはとても小さいため、摂取していることを自覚している人は少ないだろう。しかし、オランダの大学で行われた研究によると、22人の血液を調べたうち、17人の血液からマイクロプラスチックが検出されたそうだ(※3)。

また、学術誌「Environmental Science and Technology」で発表された論文によれば、人は年間3万9000~5万2000個ものマイクロプラスチックを食物とともに摂取しているという(※4)。

さらに、WWFによるオーストラリア・ニューカッスル大学への委託調査をもとにしたDalbergの最新レポート『No Plastic in Nature: Assessing Plastic Ingestion from Nature to People 』では、「平均すると人は1週間にクレジットカード1枚分(約5g)のプラスチックを摂取していることがわかった」と発表(※5)。

これらのマイクロプラスチックは、水道水やペットボトルなどの水や食べ物を通じて口から入ったり、空気を吸いこんだときに入ったりと、さまざまなルートで人間の体内に入り込んでいる。

人体への影響は?

マイクロプラスチックが人体へどのような影響を与えるかについての研究は始まったばかりで、現時点ではまだ完全には解明されていない。

しかし体内で蓄積されることで、粒子が消化器官や血液中に入り込み、内分泌系や免疫系の乱れを招いてアレルギーや炎症反応を引き起こすことが懸念されている。さらに肺に関する研究では、肺炎症、めまい、頭痛、ぜん息、がんなどの症状を引き起こす可能性があることが示唆されており、これらのリスクは無視できない深刻な課題である。

マイクロプラスチックによる人体への影響 心臓・肺・血液から検出される

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マイクロプラスチック問題の解決に向けてできること

環境や生態系、人体へさまざまな悪影響やリスクがある、マイクロプラスチック問題。解決に向けてできることや対策を考えてみよう。

プラスチック使用量を減らす

タンブラーを使っているイメージ

Photo by Christian Dala on Unsplash

マイクロプラスチックを減らすためには、まずプラスチックを使わないことが重要だ。身近なところで、レジ袋ではなくマイバッグを使ったり、プラスチックストローを紙ストローにかえたり、マイボトルを使ったりと、日常的に取り組めることがたくさんある。

プラスチックの使用量が減ればプラスチックごみを減らすことができ、結果としてマイクロプラスチック削減にもつながる。

また、プラスチックはペットボトルやストローなどのわかりやすいプラスチック製品のほか、歯磨き粉や洗顔料にスクラブ剤として含まれている場合もあるため注意が必要だ(※6)。

ごみを適切に処分する

ごみを分別するイメージ

Photo by Pawel Czerwinski on Unsplash

すべてのプラスチック製品をほかのもので代用するのは難しい。実際、プラスチックは性質の幅が広く、軽くて強度があるため便利で、多くのメーカーが活用している。

そこで重要なのが、使わなくなったプラスチックごみを適切に処分することだ。

ポイ捨てや不法投棄をしないことはもちろん、自治体のルールにしたがって「資源プラスチック」として出す、肉や魚が乗っていたトレイはスーパーなどで行われいてる資源回収に出すなど、できるだけごみにならないよう、適切に処分することが大切だ。

合成繊維の洗濯に注意する

洗濯機のイメージ

Photo by PlanetCare on Unsplash

マイバッグやマイタンブラーを積極的に利用している人でも意外と見落としがちなのが、衣料品から排出されるマイクロプラスチックだ。

合成繊維の衣料品を洗濯した際に出る合成繊維のくずは、プラスチックの一種。下水処理で処理しきれない繊維くずやマイクロプラスチックは、そのまま川や海に流出してしまう。

そこで合成繊維の衣料品を洗濯する際には、洗濯表示に従った洗濯を心がけることと、洗濯ネットを使うことが大切だ。細かい網目(0.05mm)の洗濯ネットが、マイクロプラスチックの放出防止に効果的とされてるほか、マイクロプラスチックの流出防止用に開発された洗濯ネットを使う方法もある。

近年では、マイクロプラスチック流出防止のため、生分解性繊維や繊維くずがでにくい衣服の商品化も進んでいる。これらの商品を積極的に選ぶのも、マイクロプラスチック問題解決に貢献できるアクションのひとつだ(※7)。

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マイクロプラスチックの流出・摂取量を減らすために

本記事で紹介したように、マイクロプラスチックは環境だけでなく、人間を含むさまざまな生き物に影響を与えている。このままプラスチックごみが増え続けると、2050年には海洋中のごみの重量が魚の重量を超えるという試算もあり、どれだけ危機的な状況なのかわかるだろう。

マイクロプラスチックごみを減らすためには、私たちの意識と行動を変えることが急務だ。買い物時やごみの分別時など、日常的にその選択や行動がマイクロプラスチックごみ排出につながらないか、いま一度しっかり考えていく必要がある。

※掲載している情報は、2024年11月29日時点のものです。

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