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マイクロプラスチックとは、環境汚染の要因として深刻化している極小のプラスチック。マイクロプラスチックは、環境や私たちにどのような影響を与えるのだろう? また、企業や自治体が行う取り組み事例と、個人でできることを紹介する。
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マイクロプラスチックとは、微細なプラスチックごみの総称で、5mm以下のもののことを指す。発生過程により「一次マイクロプラスチック」と「二次マイクロプラスチック」に分類される。
一次マイクロプラスチックは、工業的に小さい状態で生産されるものである。具体的には、洗顔料や化粧品などのスクラブ剤などがある。
二次マイクロプラスチックは、街中などで捨てられたプラスチックごみが、川を伝って海へ流出し、長い年月をかけて環境中で破砕され小さくなったもののことをいう。紫外線による劣化で分解されたものや、波の物理的な力で砕けたものなどが該当する。
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マイクロプラスチックは、人体、生態系、環境への影響があるといわれている。それぞれどのような影響があるか解説しよう。
マイクロプラスチックは、食品や水、大気を通じて人体に取り込まれる可能性がある。体内でマイクロプラスチックが蓄積すると、分泌系や免疫系の乱れを招き、アレルギーや炎症反応を引き起こす恐れがあると考えられている。
マイクロプラスチックは、海洋生物に悪影響を及ぼす。これは多くの海洋生物が、海に流れ込んだプラスチックをエサと間違えて誤食することにある。魚類、海鳥、海洋哺乳動物、ウミガメなどが、プラスチックによって生命の危機にさらされている。
とくにマイクロプラスチックを魚が食べてしまうことが問題となっている。プラスチックの加工時に使われる添加剤には、内分泌撹乱作用を起こす可能性のある化学物質が含まれているものもあるといわれている。魚がマイクロプラスチックを食べると体内にその物質が蓄積し、魚を食べる人間にも影響を及ぼす恐れがある。
マイクロプラスチックによる海洋汚染は深刻な問題である。海水中に漂うマイクロプラスチックからは、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、ダイオキシン、DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)、ディルドリンといった残留性有機汚染物質(POPs)である環境ホルモンが検出されている。マイクロプラスチックが海を移動することで、環境ホルモンによる海洋汚染が拡大しているのである。
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ここでは、国や自治体、企業によるマイクロプラスチック問題に対する取り組み事例を紹介する。
マイクロプラスチックは、世界的にも深刻な問題となっている。そのため、多くの国が使い捨てプラスチックの規制に動き出している。規制の対象となっているものには、使い捨てのレジ袋、食品容器、ストロー、カトラリーなどがある。使用自体を禁止している国もあれば、有料化することで削減していくという方針の国もある。なお、使い捨てプラスチック容器の使用が禁止されている国には、EU(欧州連合)、イギリス、カナダなどがある。
大阪ブルー・オーシャン・ビジョンは、日本が2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す取り組みの一環。2019年に開催されたG20大阪サミットで共有された。海洋プラスチックごみ対策実施枠組みとしては、適正な廃棄物管理や海洋プラスチックごみの回収、革新的な解決策の展開、各国の国際協力などを実施するとしている。(※1)
プラスチック新法とは、2022年4月1日よりスタートした法律である。正式名称を「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」という。この法律は、プラスチックごみがもたらす環境負荷を減らすため、削減・リサイクルの推進を目的としている。(※2)
新法の対処を求められる対象者には、プラスチック使用製品の製造事業者や特定プラスチック使用製品提供事業者(小売・サービス事業者など)、市区町村、プラスチック使用製品の販売事業者、排出事業者である。
プラスチック新法では、製造業者が自主回収する取り組みを推進するほか、自治体でも各家庭向けのプラスチック分別収集・リサイクルなどが求められる。
マイクロプラスチックが発生する要因のひとつに、衣料から出る合成繊維の繊維くずがある。この繊維くずによるマイクロプラスチック問題に着目し、繊維くずが抜けにくい素材の開発をした企業が帝人フロンティアだ。
同社は、マイクロプラスチック問題に対応する素材として、非起毛加工の「立毛構造」を開発。この生地は、起毛加工品の保温性や肌触りといった特性はキープしつつ、繊維くずの抜け落ちを抑制できるのが特徴だ。マイクロプラスチック問題に、生地づくりを通して挑んでいるのである。
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マイクロプラスチックを減らすために、個人でできる取り組みはたくさんある。できることからはじめよう。
買い物の際にはマイバックを持参し、レジ袋はもらわないようにすること。出かけるときにはマイボトルを持参し、ペットボトル飲料の購入を減らす。マイバック、マイボトルを持参することで、プラスチックの使用量を減らすことにつながる。また、マイカトラリーを持参し、極力プラスチックカトラリーはもらわないようにしよう。
いま持っているものを大切に使うことで、プラスチックごみの排出を減らすことができる。また詰め替え用ボトルなど、繰り返し使えるものを選ぶのも効果がある。
包装の少ない商品を選ぶことも有効だ。昨今では、ラベルレスの商品もたくさん登場しており、こういったラベルレス商品を選ぶことはプラスチック削減につながる。
合成繊維の衣類を洗濯すると、マイクロプラスチックファイバーが出る。この流出を減らすために、マイクロプラスチック流出を防ぐ洗濯ネットを使うのがおすすめだ。なお、洗濯ネットは天然繊維や環境に配慮した繊維を使用した素材のものを選ぶようにしたい。また、洗濯機のフィルターにたまった糸くずやホコリはごみとして捨てること、衣類やタオルをコットンやリネンなどの天然繊維に切り替えるのも、マイクロプラスチックファイバーを流出させない対策になる。
プラスチックごみは適切に処理することが大切だ。適切な処理によって、回収したプラスチックのリサイクル、リデュースにつながる。
プラスチックごみを適切に処理する具体的な方法は、家庭ごみの分別を徹底することだ。燃やせるごみ、リサイクルごみ、資源ごみをしっかり分別すれば、プラスチックごみはもちろん、ごみの量自体も減らすことができる。ごみの分別は基本的なことだが、いま一度見直してほしい。
マイクロプラスチックは海洋汚染を引き起こし、さらには、人体、生態系、環境への悪影響も指摘されている。
重要なのは、いかにプラスチック製品の使用を減らし、マイクロプラスチックを発生させないようにするかだ。できるだけ使い捨てプラスチックを使わない、プラスチック製品をリユースするなど、個人でも日ごろからできる取り組みからはじめよう。
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