楽しさと責任を追及 ママベビーが目指す「みんながハッピーになる持続可能なかたち」

MammaBaby(ママベビー)アップサイクルキット
未来への一歩

企業や個人がサステナビリティを意識し、アクションを起こし始めて数年。中長期的な取り組みを模索する企業が増えるなか、無理なく楽しく、そのうえで着実に歩みを進めているブランドがある。子ども向けに、環境再生型オーガニック製品を提供する「MammaBaby(ママベビー)」だ。2021年にカーボンニュートラルを実現し、2023年5月には、ベビー・キッズカテゴリーにおいて国内初の国際認証「B Corp」を取得した。企業としての「楽しさと責任」を追求しながら、ブランドの枠を超えた取り組みを実践する原動力や想いを聞いた。

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2025.06.25
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捨てられる容器に新たな命を 業界とユーザーを巻き込んだ「ゼロウェイストチャレンジ」

MammaBaby(ママベビー)の日焼け止め(UVミルク)

中身は同じUVミルクだが、容器の色が異なる商品が販売されている。他店では見られない、思い切った施策だ。

コスメショップに「中身は同じで、見た目が違う日焼け止め」が並ぶーーそんな“普通ではない”光景を実現したのが、MammaBabyのゼロウェイストチャレンジだ。

MammaBabyでは、2021年からゼロウェイストチャレンジとして、廃棄されるはずだった容器の活用を行っている。

化粧品メーカーから発注を受けて容器をつくる容器メーカーでは、業界のスタンダードや、化粧品メーカー側から求められる品質基準に沿って、容器を製造する。だが、製造工程では小さな傷や斑点などが入り、それらの基準を満たさないものがどうしてもできてしまう。そして、それらは廃棄されるのが通例だ。つくる容器の量が多くなれば、捨てる量もかなりのものになる。

ゼロウェイストチャレンジは、そんな毎日大量に廃棄されている容器に着目し、使えるにも関わらず廃棄される容器を救済するプロジェクトだ。

第1弾では、容器業界で求められてきた厳格な基準を理由に廃棄対象となっていた容器を活用。安心安全の担保を大前提に、小さな傷や斑点のある容器をそのままプロダクトとして活かす判断を行った。これにより、13%の廃棄率が3%まで大幅に減少した

MammaBabyのゼロウェイストチャレンジ、色の切り替えタイミングでの容器を再利用

冒頭で紹介した、「中身は一緒でも、容器が異なる商品」の販売は、続く第2弾。容器を生産する際、ブランドごとに色を切り替えるタイミングで必ず色が混ざった容器が発生する。これらはグラデーションになり、一見“カワイイ”が、規格外の不良品として全数が廃棄される運命を辿る。それらの色が混ざった容器を活用したのだ。

2021年12月10日〜2022年3月3日に生産された「ノンケミカルUVミルク」の容器5万本に対して、色混ざりが起こったのは2,880本。割合にすると5%程度にあたるこれらも、全数そのまま活用し、廃棄率は0%となった

第3弾では、他ブランドの廃棄容器にも目を向けた。他ブランドで廃棄されるはずだった容器を買い取り、自社のレフィルとオリジナルステッカーとともに「アップサイクルキット」として販売。子どもたちが、容器にMammaBabyのキャラクターのステッカーを貼って、世界にひとつだけのマイボトルをつくる。そんなユニークな取り組みには、「ものづくりの一員になった気分で楽しい」「親として新たな気づきを得た」など、喜びの声が寄せられた。

「このキットは、少数でも世の中に存在することに意味があります。プロダクトは、同じ色・同じ形が当たり前という社会のなかで、“こうじゃないといけない”という当たり前に縛られず別の選択肢があることを子どもたちに感覚的に伝えられたら嬉しい」と、MammaBabyの開発担当者は話す。

きっかけは容器メーカーとの対話 容器は何をもって「美しい」?

MammaBabyのゼロウェイストチャレンジ

MammaBabyでは、廃棄を減らす試みとして、かたちや色が異なるさまざまな容器を採用している。

ゼロウェイストチャレンジのきっかけは、7年ほど前まで遡る。MammaBabyの担当者が、容器メーカーとの会話のなかで、容器の製造現場で起きている大量廃棄について知ったことが始まりだ。

容器メーカーの現場では、廃棄される容器が大量に回収されていく様子を日々目にしており、心を痛めていたという。化粧品メーカーの人ですら知らなかったという、容器メーカーの製造現場で起きている廃棄。MammaBabyの担当者はその現実に触れ、「廃棄予定のボトルに一見、キズが見当たらないものも多く、使えるのに捨てられるのが素直にもったいないと感じた」という。

日本のものづくりの品質において、美しさが重視されてきた歴史がある。キズや欠陥がないことを「美しい」と定義し、それが当たり前となったことで、品質基準はどんどん厳格化。そして、それに伴い、容器の廃棄も増加した。

「ものづくりにおいて、人間の視点で美しさを追求し、頑張ってきた背景があります。人間視点でいくと、キズがないことが美しい。一方で、地球の視点で『美しいかどうか』を考えたとき、キズがあるから捨てて、運んで、焼却して、エネルギーを使って……資源が循環していない。美しくない側面があると感じました」と、MammaBabyの担当者は語った。

「美しさの視点はさまざま」「使えるのに廃棄するのはもったいない」と考えるMammaBabyでは、品質基準をユーザーに相談する機会を設けた。丁寧な説明を徹底したこともあり、これまでの「美しい」を覆す製品の販売に対する小売店やユーザーの反応は、いずれもポジティブだったという。

多方にメリットがあるからこそ実現した持続可能なかたち

MammaBabyのゼロウェイストチャレンジ

ゼロウェイストチャレンジでは、容器メーカーから廃棄容器を通常より安く買い取っている。

結果、容器メーカーは廃棄量を減らして廃棄のコストを削減できるうえに、なかった売上が上がり、利益が増える。MammaBabyは、容器のコストを抑えられる分、利益がアップする。その分をユーザーに還元することで、ユーザーはお得に購入できてオーガニック製品購入のハードルが下がる。地球環境にとっては、廃棄が減って、よけいな資源を使わずにすむ。三方よしであり、地球環境にも配慮した取り組みが無理なく成り立っていくというわけだ。

「『取り組みがすてき、だから買おう』とお客様に選択を迫るのではなく、お客様にも、私たちの事業としてもメリットがあることがポイント。みんながハッピーだからこそ続いていくんだと思います

ゼロウェイストチャレンジを経て、MammaBabyでは容器の品質基準を見直し、いまでは、かつてなら廃棄されていた容器を当たり前に使用している。

この動きは、他ブランドにも波及しているという。依頼する側とされる側という縦の構造ゆえに閉鎖的になりがちな容器業界では、依頼するメーカー側は、容器の大量廃棄の実態を把握できないことが多い。MammaBabyが廃棄容器を「使えるボトル」に格上げしたことで、問題を認知し、厳格すぎる品質基準を見直すブランドが出始めているそうだ。

3年におよぶ準備期間を経て、B Corpを取得

ママベビー(MammaBaby)がBコープ取得

2023年5月には、日本で初めて、ベビー・キッズカテゴリーにおいて国際認証のB Corpを取得した。B Corpとは、環境や社会に配慮したビジネスを行う、公益性の高い企業に与えられる認証のこと。認証取得のためには、約200のさまざまな審査項目に対して、最終的に80点以上を獲得する必要がある。MammaBabyでは、2020年から社員一丸となって取得に向けて取り組んだ。

環境・コミュニティ・ユーザー・ガバナンス・ワーカーズの5つの分野の項目一つひとつに対して、「自分たちにとって何が最善か」を深く考え、議論したという。

そもそもMammaBabyは、オーガニック製品を扱うブランドとして、以前から地球環境のことを考えてきた。生態系を破壊しないうえにCO2を吸収する「環境再生型農業」にこだわり、海洋生態系にやさしい製品も開発している。B Corp取得においても、環境に関して高い評価が得られたそうだ。

「ゼロウェイストチャレンジもそうですが、ビジネスとして利益が増え、環境にもよくて、お客様もハッピーで。さらに、地球の視点があるからこそ、新たなクリエイティブにもつながっている。すべてがバラバラではなく、無理がないからこそ続けられる、このサステナブルな循環を、もっとも評価をしていただいたと認識しています」

一方で、取得を通じて、新たな学びも得られた。B Corpの項目は国際認証ということもあり、人種・文化・宗教もすべて異なる人々がいる前提の内容も多い。MammaBabyでは元々、個を尊重するカルチャーが根付いていたが、取得後は、さらに一人ひとりのライフスタイルや価値観を理解し合い、会社の制度に反映していった。

B Corpの取得は、企業としての持続可能性を考えるいいきっかけにもなったという。自分の意見をオープンにし、話し合い、都度アップデートしていく。これこそ持続可能だとMammaBabyは考える。

MammaBaby「B Corp認証」取得 カーボンニュートラルへの取り組み

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2021年から実現 「カーボンニュートラルの約束」に込めた想い

ママベビー(MammaBaby)

MammaBabyは、創業者の子どもが重度のアトピーをもって生まれたことをきっかけに誕生した製薬会社発のボディケア&ヘアケアブランド。自然生態系のなかで育まれたオーガニックにこだわり、子どもたちを健やかに育む製品を展開している。かわいらしいパッケージのファンも多い。

2021年にはカーボンニュートラルを実現し、国際規格「PAS2060」を取得した。環境再生型農業の取り組みによって、水質改善や生態系の回復など、多角的なアプローチで地球視点のアクションを行うなかで、カーボンニュートラルの約束には一際こだわった。

「カーボンは、環境問題におけるたったひとつの指標でしかないですが、みんなにわかりやすい指標。子ども向けのプロダクトを展開する私たちは、『子どもの未来というすごく重い言葉を使っていてそれを使う以上、責任があると考えています。環境のことをパッケージに書くのなら、容器や紙の素材といった‟点のアクション”にとどまらず、カーボンニュートラルをきちんと約束するべきだと思いチャレンジすることにしました」

また、こうも考えている。

「事業活動を行う限り、CO2の排出をゼロにするのは不可能かもしれない。しかし、カーボンニュートラルは、クレジットなどの手段を使えば実現できること。小さな会社だからこそ、できることでもあるかもしれませんが、企業の責任として環境のことを掲げる以上、カーボンニュートラルの約束がスタートラインだと思っています

「無理・無駄は削減できる」 約束したからこその気づきも多々

カーボンニュートラルを掲げたはいいが、売上が増えるほど、CO2の排出量が増える難しさに直面した。最終的にどうしても削減できない排出量をオフセットするとなると、リアルなコストがかかるわけだ。

MammaBabyでは、排出量削減のアクションとして、製品・エネルギー・素材・物流の4カテゴリで8項目のチャレンジを行っている

例えば、航空便の削減がそのひとつ。基本的にはCO2の排出量が少ない船便を利用しているが、急な欠品に対応するために航空便に頼ることもある。まずは、航空便を減らすことを考えた。さらに、小売店に欠品を理解してもらえるよう努め、そのうえで、生産計画の精度をアップ。結果として、航空便のコストが減り、代わりに社内の生産管理の精度が上がって機会ロスが減り、売上はアップしたという。

2023年4月に行ったECサイトのリニューアルも、大きなチャレンジだったそうだ。月に1回、必要なアイテムだけを1箱にまとめて送る、いわば“御用聞き”のような買い物システムを新たに構築。関わる人や環境にとってのあらゆる無駄を省いた結果、ユーザーからは「受け取りの手間が減った」と好評だ。

ここに挙げたのは、ごく一部の施策。あらゆることにおいて、「無駄や無理があることは、基本的に削減できる」と気づいたそう。

「地球環境も生態系も痛い思いをしている。私たちもビジネスとして、オフセットによるコストで痛い思いをしたからこそ、より真剣になりました。きちんと向き合ったことで、アイデアが生まれ、ビジネスの構造もしっかりしてきたと感じます」

ほんとうの持続可能性って何だろう?

ママベビー(MammaBaby)

自分たちの役割は、小さな哲学者を世界にたくさん送り出すこと」だと、MammaBabyは考える。ここでいう「小さな哲学者」とは子どもを指す。地球と共生する感性と知性を育む製品やサービスをこれからも提供し続けるために大事にしているのが「楽しさと責任」だ。

子どものブランドであり、ビューティーのブランドでもあるMammaBabyの軸は、「どっちのほうが楽しいか?美しいか?」ということ。非常にシンプルだ。

「子どものための事業を行っているのに、子どもの未来にネガティブだと矛盾している。それは、楽しくないし、美しくない」。この共通認識で、社員みんなが子どもたちや家族に対して誇れることだけを実行している。だからこそ、心地いいし、続くのだ。

「カワイイものはカワイイし、楽しいことは楽しい。もしかしたら、地球からしたら迷惑かもしれないけれど、全部をなくすのは難しいし、やめたくないこともある。でも、それをやるのであれば、きちんと責任を果たす形で行うということを続けていきたい」

無理をしたり、我慢したりするのではなく、誰もがハッピーになる方法。地球を含むあらゆる視点で考えてこそ、答えを導き出せるだろう。サステナビリティの本質も、ここにある。

取材・執筆/吉田友希 編集/佐藤まきこ(ELEMINIST編集部)

※掲載している情報は、2025年6月25日時点のものです。

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