Photo by dhanya purohit
植物性ミルクとは、豆やナッツなど植物性の素材からつくられるミルクのこと。近年需要が高まり、スーパーやコンビニでも手軽に買えるようになった。本記事では、植物性ミルクと牛乳(動物性ミルク)の違いや、メリット・デメリットを解説。環境への影響などにも言及していく。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
豊かな生き方を「学び」、地域で「体験する」 旅アカデミー ローカル副業入門【座学プログラム編】
Photo by Nikolai Chernichenko on Unsplash
植物性ミルクとは、豆やナッツ、穀物など植物性の素材からつくられる飲料のこと。基本的には、植物の実や種を細かく砕いて、成分を水で抽出してつくられる。
牛乳をはじめとする動物性ミルクとの違いは、乳アレルギーの人でも飲めることや、タンパク質のひとつであるガゼインを含まないことなどが挙げられる。
これまでは、ミルクといえば牛乳が主流であったが、近年はさまざまな植物性ミルクがスーパーやコンビニで手軽に買えるようになった。
なぜこれほどまでに、植物性ミルクが注目されるようになったのだろうか。社会的・環境的な背景から解説していこう。
まず挙げられるのが、環境問題への意識の高まりである。2050年までにカーボンニュートラルを達成するために、世界中でさまざまな取り組みが行われている。
国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の温暖化ガスの総排出量のうち、畜産分野は14.5%を占めるそう。とりわけ牛は大量の餌や水が必要なほか、ゲップやおならにメタンが多く含まれGHGの排出量が多い(※1)。
そこで、植物性ミルクを選ぶ店や消費者、植物性ミルクを開発する企業が増えているのだ。
植物性ミルクは動物性素材を含まないため、牛乳アレルギーやラクトース(乳糖)不耐症の人でも口にすることができる。
飲料としてはもちろん、料理にも使われ、アレルギーを持つ人でも多彩な食が楽しめるようになった。
Photo by Anna Pelzer on Unsplash
健康志向の高まりや、ヴィーガンへの転向などライフスタイルの変化も、植物性ミルクが人気を集める背景にある。
ここからは、代表的な植物性ミルクの種類と、それぞれの特徴を紹介していく。
Photo by Daniela Paola Alchapar on Unsplash
おそらく日本人がもっともなじみのある植物性ミルクが、豆乳だ。水に浸した大豆をすりつぶし、加水して煮詰めたものをこすと豆乳ができあがる。
大豆を原料とする豆乳は、良質なタンパク質が豊富。さらに、大豆イソフラボンやサポニン、レシチンなどを含み、牛乳よりもカリウムやマグネシウムの含有量が多いこと、コレステロールを含まないことから人気を集めている。
Photo by Juan José Valencia Antía on Unsplash
アーモンドを原料とするアーモンドミルクは、低カロリーで強い抗酸化作用を持つビタミンEが豊富。
風味豊かで、ナッツの香ばしさやコクをしっかりと感じることができる。牛乳よりも低カロリーで低糖質、コレステロールもゼロなので、健康志向の人からも支持されている。
オーツミルクは、オーツ麦を原料とした植物性ミルクで、味や香りが強すぎず、やさしい甘味とクリーミーな味わいが特徴だ。
牛乳以上のカルシウムを含むほか、オーツ麦由来のポリフェノールを含むこと、食物繊維が豊富な点も特徴である。
白米や玄米を原料とするのが、ライスミルクだ。お米の甘みをほんのりと感じる、やさしい味わいの植物性ミルクで、日本人にとってはなじみのある味。
米由来の食物繊維やビタミンB群、ビタミンE、ミネラルなどを含み、乳や大豆にアレルギーがある人でも飲めることも特徴だ。
エスニック料理やカレーなど、料理に使われることが多いココナッツミルクも、植物性ミルクのひとつ。脂肪分が高く、濃厚で甘みのある味わいが特徴だ。
ココナッツミルクは、ココナッツ種子の固形胚乳からつくられており、中鎖脂肪酸やビタミンEのほか、カリウム、マグネシウム、ナトリウムなどのミネラルを多く含んでいる。
植物性ミルクを選ぶと、どのようなメリットがあるのだろうか。代表的なメリットを紹介していく。
まず挙げられるメリットが、植物性ミルクは乳製品アレルギーや乳糖不耐症の人でも飲めるということ。
近年ではカフェをはじめとする飲食店でも植物性ミルクを提供するところが増え、体質的に動物性ミルクを飲めない人も、さまざまな料理やドリンクを楽しめるようになっている。
環境にやさしい植物性ミルクを選ぶことで、環境負荷の軽減に貢献することができる。
世界の温暖化ガスの総排出量のうち、畜産分野は14.5%を占めるといい、なかでも牛は大量のエサや水が必要なほか、ゲップやおならにメタンが多く含まれている。そこで牛乳ではなく、植物性ミルクを取り入れることで、環境負荷の軽減につながるのだ。
しかし、植物性ミルクならすべてが環境にいいと言い切ることはできず、原材料の栽培のために熱帯雨林が破壊されていないかなど、背景にも注目して選ぶ必要があるだろう。
バリエーションが豊富な点も、植物性ミルクのメリットである。
味や栄養素など、自分に合ったものを見つけやすいほか、用途によって使い分けることができ、生活の楽しさが広がる。
植物性ミルクは、未開封であれば常温保存・長期保存が可能なものが多いこともメリットだ。
最近では災害時への備えとして、植物性ミルクをローリングストックすることもおすすめされている。種類によっては、タンパク質やビタミンなど、不足しがちな栄養素を災害時にも補うこともできるため注目されているのだ(※2)。
メリットを理解したところで、植物性ミルクの注意点や改善点、デメリットについても解説しよう。
植物性ミルクのデメリットのひとつが、商品や種類にもよるが、動物性ミルクと比較してタンパク質量が少ないものが多いことである。
タンパク質を摂取したいときは、植物性ミルクのなかでも大豆を原料とする豆乳を取り入れるのがおすすめだ。
市販の植物性ミルクには、添加物や砂糖を含有するものがある。
「健康のために」と積極的に飲んでいても、結果として糖質をとりすぎてしまうこともあるため、飲みすぎないようにするほか、購入前に成分表を確認するといいだろう。
植物性ミルクは「環境にやさしい」というイメージがあるが、一部の原料の生産においては、環境負荷が問題視されているものもある。
たとえば、アーモンドミルクは製造過程の温室効果ガスや土地の利用の面では環境負荷が少ないとされているが、ほかの主要な植物性ミルクと比較すると水の使用量が著しく多い。
また、世界のアーモンドの80%以上がカリフォルニアで生産されおり、製造や消費において輸送時に温室効果ガスが排出されるという問題もある。
植物性ミルクは環境にどのような影響を与えるのだろうか。ポジティブな影響と課題をそれぞれ解説していく。
イギリスのオックスフォード大学の専門機関が発表した、ミルクごとのコップ一杯あたりの温室効果ガスの排出、土地の利用、水資源の利用を比較したものによると、牛乳(動物性ミルク)は植物性ミルクと比較して全体的に環境負荷が高い(※3)。
植物性ミルクのなかで一番温室効果ガスの排出量が多いとされるライスミルクと比較しても、牛乳は倍以上の量を排出しており、動物性ミルクを植物性ミルクに置き換えた方が温室効果ガスの排出量を削減できることがわかる。
Photo by Anne Zwagers on Unsplash
牛乳の生産のためには、高品質の水の供給は不可欠だ。水は、牛が消費するほか、牛乳の冷却、機器の洗浄、作物の灌漑、糞尿の移動、牛舎の洗浄などに使用され、カリフォルニア大学の研究によると、1Lの牛乳をつくるのに必要な水の量は628Lと言われている。
アーモンドミルクは植物性ミルクのなかで水の使用量が著しく高いものの、牛乳ほどではなく、植物性ミルクを選ぶことで水資源の使用量削減につながるのだ。
温室効果ガスや水の使用量を見ると、植物性ミルクは環境負荷が少ないように思える。しかし、原料となる植物を大量生産することによって、環境に負担をかけている場合もあるのだ。
たとえば、豆乳の原料となる大豆を大量生産するためには、広い土地が必要。そのため、森林を伐採して農耕地を確保している場合もあり、豆乳をはじめとする大豆製品は森林破壊に影響が大きいとして世界的に注目されている(※5)。
これまで動物性ミルクを飲んできた人にとって、植物性ミルクは少し抵抗があるかもしれない。しかし、植物性ミルクはバリエーションが豊富なこともあり、さまざまな使い方ができる。
植物性ミルクの活用方法や、選び方、使い方のポイントを紹介しよう。
Photo by Demi DeHerrera on Unsplash
植物性ミルクにまだなじみがない人は、コーヒーやスムージーなどに混ぜて飲むのがおすすめだ。
豆乳やアーモンドミルク、オーツミルクはカフェで取り扱っていることも多く、コーヒーとも合わせやすい。スムージーなら他の食材とミックスされてミルク自体の味が気になりにくいため、プラスしたい栄養素を重視して選ぶといいだろう。
植物性ミルクは料理やお菓子づくりでの代替材料として使うこともできる。
だたし、動物性ミルクとは脂肪分などが異なるため、あらかじめ植物性ミルクを使ったレシピを調べてつくると失敗が少ない。
朝食のシリアルやグラノーラに使うのもおすすめ。手軽に栄養価をプラスできる上、いつものシリアルやグラノーラが一味変わり、いろいろな味を楽しむことができる。
アーモンドミルクを使用すれば、ナッツの香ばしさとコクが加わり満足感もアップ。オーツミルクはほんのり甘みがあるため、甘さ控えめのシリアルとも相性がいい。
今後、植物性ミルクは環境問題への意識の高まりや健康志向などによって、世界的に需要が増えていくと予想されている。それにともない新しい商品の開発が進み、市場はさらに拡大するだろう。
また、日本においても国産のお米を使用したライスミルクの普及など、地域特産物を活用した植物性ミルクが多く開発される可能性も考えられる。持続可能な農業と連携した植物性ミルクなど、環境にやさしい商品が登場する可能性もあるだろう。
種類が豊富で、味や栄養素など自分に合ったものを選ぶことができる植物性ミルク。デメリットもあるが、牛乳と比較して温室効果ガスや水の使用量を削減できるなど、メリットもある。スーパーやコンビニでも手軽に購入できるため、まだ試したことがない人は一度飲んでみてはいかがだろうか。
※1 畜産由来の温暖化ガスとは 全排出の14.5%占める|日本経済新聞
※2 災害食にも豆乳!?|豆乳生活
※3 Which vegan milk is best?|BBC
※4 Milk Alternatives: Nutritional and Environmental Impacts|Morning Sign Out at UCI
※5 ヤクルト本社、森林破壊ゼロのコミットメント発表|日経ESG
ELEMINIST Recommends