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海外セレブやアスリートなど、実践者が増加している「ヴィーガン」とは。地球環境に対する認識の高まりや動物愛護の観点などから、一般人の食生活にも大きな影響を与えている。概念の成り立ちや経緯などについて、まずは正しい知識を確認することが重要である。
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ヴィーガンは、「菜食主義者」という点でベジタリアンの一種ではあるが、単なる食生活の忌避範囲にとどまらない「完全菜食主義者」として区別されている。ベジタリアンは植物性の食品のみを摂取するのに対し、ヴィーガンは食生活のみならず、その主義性や思想性に沿った生活スタイルすべてにおいて、動物性のもの、動物由来のもの一切を忌避するという大きな特徴を持つ。
ヴィーガンであることを貫き、その信条を全面的に裏打ちしている理念の根底には、徹底した「ヴィーガニズム」と呼ばれる主張的主義が存在しているといえる。
ヴィーガニズムについては、「ヴィーガン協会」により以下のように定義されている。
「食物、衣類、またはその他の目的での動物のあらゆる形態の搾取および残虐行為を、可能な限り排除しようとする哲学と(あるいは美学と)、生き方の様式である。しいては、動物、人間、環境の利益のために、動物を含まない代替品の開発と使用を促進する。食事用語では、それは動物から全体的または部分的に派生したすべての製品を省く慣行を意味する」(※1)
ヴィーガンに共通する1点として、肉や魚はもちろんのこと、甲殻類などの魚介類、昆虫、牛乳・乳製品全般、卵、蜂蜜やゼラチンといった二次的な動物性タンパク質の類など、すべての動物性食品を忌避する。
また、食生活のみならず、動物由来の材料で人工的につくられたものや動物でテストされた製品、動物実験、娯楽のために動物を使用する場所を避けるというような、一切が植物ベースの生活様式の維持に、積極的に努めるという部分で特徴的である。
1944年、第二次世界大戦終戦間ぎわのイギリス。菜食主義者であったドナルド・ワトソンが「ヴィーガン協会(The Vegan Society)」を設立した。当初は慈善団体として登録されたようである。途中、レスリー・J・クロスという人物が「ヴィーガニズムの定義が欠けている」と指摘。それは、後の「人間による搾取からの動物の解放の原則」という徹底した概念の基となった。
これは後に、「食物、商品、仕事、狩猟、生体解剖、および人間による動物の生命の搾取を含む他のすべての用途のための人間による動物の使用の終了を求めること」として、より鮮明な主義となり、「すべての生物の権利を尊重する」といった、環境やさまざまな権利についての認識を新たにしはじめた世界的な潮流にも乗りながら、社会に浸透していくこととなる。
こうした中、ヴィーガニズムにおける定義と社会への慈善活動は、長きにわたって、修正と洗練を繰り返してきたというストイックな歴史を持つ。
ヴィーガンとは「ベジタリアンの一種」ではあるが、主義主張の部分で、それと全く意を別としている。しかしながら、単語上は「vegan」=「vegetarianの短縮形」(※2)とされているようだ。また、両方の単語のスペルにある「vege-」は、ラテン語由来で「活気のある」「生きいきした」「鮮やかな」(※3)という意味を持ち、「vegetable(野菜)」の語源となっている。
また、ヴィーガンの「食の様式」については、前述の通り、べ(ヴェ)ジタリアンとは基本的に全く異なる。特筆すべきは、ヴィーガンには「動物由来の食品をどの程度まで許容するか」あるいは「究極的に拒否するか」などという点で、さまざまな境界が存在しているという点である。また、それらには、宗教的な規律や観念が影響しているものもある。
ヴィーガンは、ベジタリアンの一種であることがわかったが、では、ベジタリアンにはどのような種類があるのだろう。ベジタリアンは、「植物性食品のみを摂取する食生活を送る」という点で共通しているが、その種類は、主義や信念などによりさまざまにカテゴライズされている。その背景についての考察と多様な種類、それぞれの呼称や特徴についてまとめてみた。
植物性食品の摂取をベースとするが、時と場合によっては、肉や魚も食すことがある。比較的柔軟な食生活を送るベジタリアンだといえる。
肉は一切摂取しないが、魚、卵、乳製品は摂取する。ベジタリアンの中では、制約的なハードルが低いといえる。
肉や魚は一切摂取せず、牛乳や乳製品、卵は摂取する。エビは摂取するという場合もある。いわゆる一般的に認識されているベジタリアンは、これに該当する。
肉、魚、乳製品は一切摂取しない。卵や卵製品は摂取するため、ラテン語で「卵」を意味する「オボ」という単語が用いられている。
肉、魚と卵は一切摂取しない。かわりに、牛乳や乳製品は摂取する。「ラクト」ラテン語で、「乳」を意味する。上記4「オボ・ベジタリアン」と対比させると理解しやすいだろう。
特定の時間、もしくは短時間だけ肉や魚を摂取しないヴィーガンのことを指す。例えば、「週に数回」「月に数回」など、期間を定めた上で、動物性食品の摂取を控えるというような形態をとる。
Raw Vegan。 「ロー」=raw(生)の意。生の野菜や果物のみを摂取する。肉、魚、卵、牛乳、はちみつ、ゼラチン類は摂取しない。
果実常食者と呼ばれる。ヴィーガンよりも厳格な、いわゆる「完全菜食主義者」とされている。
ヴィーガンが増えている背景には、世界のセレブやアスリートなどといった世界的著名人たちの情報発信などによる影響だけでなく、身体に直接的に与える物理的なプラスの面もあるようだ。ヴィーガンにしか味わえないメリットについてみてみよう。
ヴィーガンにおいては、「全体の食事摂取量、あるいは摂取カロリーにおいて、絶対量として抑制されうる」という点を踏まえると、個々の基礎代謝量により差異があるものの、まず期待されるのは、いわゆる「ダイエット効果」であるといわれている。
あくまでも参考値として記すならば、日本人の成人男性の場合は、2,000~2,400kcal/日、成人の女性の場合は、1,400~2,000kcalが目安とされているので、参考にしたい(※年齢や仕事などによって個人によって異なる。(※4)
ヴィーガンは、肉類を忌避することから、一般的な通常の畜肉類に含まれる抗生物質などの影響を回避している、といえる。畜肉類の飼料には、病気の予防などを目的とされた抗生物質などが含まれていることもあり、農薬を含め、できるだけケミカルな物質の一切を忌避する、という主義や信念にも合致する。
「サステナブル」という概念のもと、地球環境や人体、動物を含む生物すべてに積極的に配慮する、というライフスタイルを、ヴィーガンは体現しながら、その精神性を高めようと試みているのかもしれない。
一方、ヴィーガンの実践におけるデメリットにはどのようなものがあるのだろう。デメリットについてもあらかじめ理解し、より快適なヴィーガンライフを目指そう。
ヴィーガンの場合は、「食事の絶対量の抑制が摂取カロリーの抑制と連動している」といえる。摂取カロリーについて留意し、急激な体重減少による体調の変化などに気をつけよう。
ヴィーガンの食事スタイルは、摂取カロリーが結果的に抑制されるとともに、肉や魚に含まれるたんぱく質やビタミンB群の不足、あるいは欠乏といった、身体機能上の問題につながる恐れもある。医学的な見地では、身体機能を維持するために必要な栄養のバランスが崩れやすい、とする見方もある。
ヴィーガンが摂取する食品のクオリティは、通常のものより高いため、食費についても必然的に高くなるといわれている。また、外食のケースにおいても、ヴィーガンは、通常の肉や魚など、通常の様式で提供される食品類を忌避するため、通常の外食が難しくなることも想定される。
ヴィーガンを取り入れる際は、どのようなことに注意すればよいのだろう。あらかじめ知り、身体のコンディション管理への意識を深めよう。
ヴィーガンのメリットとデメリットについてよく理解し、自身の体調などを確認しながら実践に移すようにしよう。
ヴィーガンの実践は、体重や体格などの個人差が大きく影響することも考えられるため、栄養面の基礎的な知識を、事前にできるだけ深めておくとよいだろう。
肉や魚に多く含まれるビタミンB群の不足は、身体機能に直接影響する場合もある。ヴィーガン用のビタミンB群サプリメントを摂取して補うなど、急激な欠乏を避けるようにしよう。
SDGs(持続可能な開発目標)などの地球環境に対する高まりや動物愛護の観点、さまざまな権利についての認識を高めるという点で、ヴィーガンは一つの考え方のきっかけとなろう。自身の身体の状態を知り、体調などについても十分に把握した上でチャレンジするのもよいかもしれない。
※1 Definition of veganism|he Vegan Society
※2「英語語源辞典」研究社刊 P1519:「vegan」
※3「羅和辞典」改訂版 研究社刊 P707:「vegetus」
※4 一日に必要なエネルギー量と摂取の目安|農林水産省
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