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お米からつくられるライスミルクは、牛乳や豆乳とは異なる植物性のミルクだ。日本ではまだあまり普及していないものの、その健康面でのメリットや味わいから密かな人気を集めている。この記事では、ライスミルクの魅力と味、そして家庭でつくる方法を解説する。
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エレミニスト編集部
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ライスミルクとは、その名の通りお米を原料にした植物性ミルクだ。牛乳や豆乳に次ぐ「第3のミルク」として、健康志向の人々やベジタリアン、ヴィーガンの間で注目を集めている。
乳や大豆にアレルギーがある人でも安心して摂取できるほか、低カロリーでコレステロールゼロのヘルシーな飲み物だ。欧米ではすでに広く普及しているが、日本ではまだ知名度が低く、これから人気になる可能性を秘めている飲み物だ。
ライスミルクの主な原料は、白米や玄米だ。これに水と少量の植物油を加えて乳化させることで、まるで牛乳のようなクリーミーで滑らかな口当たりになる。使用されるお米の種類や製法によって、風味や甘さ、栄養価も変わる。玄米を使用した場合、食物繊維やビタミンがより豊富になる。とくにビタミンEが含まれている点が、白米との大きな違いだ。(※1)
一方、白米ベースのライスミルクは口当たりがよく、ほんのりとしたお米の甘さを楽しめて、幅広い料理や飲み物に合わせやすい。
ライスミルクの見た目は、甘酒や豆乳などの植物性ミルクと似ているが、製法や風味が違う。甘酒は発酵によってもたらされる独特の甘さと深いコクがあり、発酵食品としての栄養価も高い。
一方、ライスミルクは基本的には発酵させずにつくられるため、甘酒と比べてさっぱりとした味わいになる。豆乳のような大豆由来の風味や青臭さがなく、クセが少ないため、牛乳の代替としても使いやすい。またライスミルクは米が原料のため、グルテンフリーである点も注目されている。
ほんのりとした自然な甘さが、ライスミルクの特徴だ。米の持つ甘みが活かされ、まろやかでやさしい風味が楽しめる。牛乳特有の臭みがなく、豆乳のような青臭さも感じにくいため、多くの人にとって飲みやすいだろう。
甘さは控えめで、牛乳や甘酒ほどの濃厚さはないが、バランスがとれた味わいで料理にも合わせやすく幅広いシーンで活用できる。
ライスミルクは、コーヒーやティーラテに加えてクリーミーさを楽しんだり、フルーツスムージーに混ぜて栄養価をプラスしたりと、さまざまな使い方ができる。
ライスミルクの普及しているアメリカでは、シリアルやグラノーラにかけて食べることが多いようだ。
また調味料としても活躍し、スープやカレーのベースとして使用することで、料理にまろやかさを加えられる。多用途でヘルシーであることから、日々の食事に取り入れやすいアイテムといえる。
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ライスミルクは、栄養豊富でありながら低カロリーという点が魅力だ。主な栄養成分には、腸内環境を整える食物繊維、代謝をサポートするビタミンB群など、健康維持に役立つものが含まれている。ここでは、ライスミルクの主な栄養効果について解説する。
ライスミルクには、お米由来の食物繊維が多く含まれている。食物繊維は便秘解消だけでなく、腸内の善玉菌を増やして腸内フローラのバランスを保つ役割を持っている。とくに玄米ベースのライスミルクは、白米ベースと比べてさらに豊富な食物繊維を摂取できるため、腸内環境を整える効果が期待できる。現代人に不足しがちな食物繊維を手軽に補える点が、ライスミルクの大きなメリットだ。
ライスミルクは、牛乳や他の植物性ミルクと比べて低脂肪かつ低カロリーだ。そのため、減量中の人や脂質制限が必要な人にとって、ライスミルクは理想的な選択肢になるだろう。さらに牛乳と違いコレステロールが含まれていないため、血中コレステロール値が気になる人も安心して摂取できる。(※2)
お米にはビタミンB群が多く含まれている。ビタミンB群は糖質や脂質、タンパク質の代謝に関係する栄養素で、エネルギーを効率的に生み出すために欠かせない。日々の活動で消費されやすいビタミンB群をライスミルクを通じて補うことができる。
ライスミルクには、ミネラルの一つであるカリウムが豊富に含まれている。カリウムは体内の余分なナトリウムを排出し、むくみを改善する働きがある。塩分過多な食生活を送っている人や、デスクワークや立ち仕事で足のむくみに悩む人にとって、カリウム摂取は効果的だ。日常的に飲むことで、自然にむくみを軽減できる。
玄米を使ったライスミルクには、抗酸化作用を持つビタミンEも含まれている。ビタミンEは「若返りのビタミン」とも呼ばれ、細胞の酸化を防ぎ老化を遅らせる働きがある。肌のシワやシミの予防、血管の健康維持に効果が期待できるため、美容や健康を気にする人は積極的に摂取したい。
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ライスミルクは、健康志向や多様な食生活を送る方におすすめだ。ここでは、どんな人にライスミルクが向いているかについてみていこう。
乳糖不耐症は、牛乳に含まれる乳糖を消化できず腹痛や下痢などを引き起こす体質のことである。ライスミルクは植物性であり乳糖を含まないため、乳糖不耐症の方でも安心して飲めるだろう。胃腸にやさしく、日常生活での牛乳の代用に適している。
牛乳アレルギーや大豆アレルギーを持つ方にとって、ライスミルクは安全かつ栄養価の高い代替品となるだろう。乳や大豆由来のアレルゲンが含まれていないため、動物性ミルクや豆乳が飲めないという人も心配せずに飲むことができる。牛乳や豆乳を食生活に取り入れたいが体質的に難しかった人々にとって、ライスミルクは新しい選択肢となる。
動物性食品を避けるヴィーガンやベジタリアンにとって、ライスミルクは理想的なミルクだ。動物由来の成分が含まれていないため、制限された食生活のなかでも安心して利用できる。また味わいや使い勝手の面からも、食生活に取り入れやすい。
ライスミルクは低脂肪かつ低カロリーであるため、ダイエット中にも適している。牛乳に比べてカロリーが控えめながら栄養価が高いため、健康的な減量を実践可能だ。ただし糖質がやや多めのため、糖質制限中の方は注意が必要だ。
ライスミルクは、従来の牛乳や豆乳とは異なるさっぱりしたやさしい味わいが特徴だ。また料理や混ぜ物としても使いやすく、食卓の幅が広がるだろう。日本であまり普及していない新しい食品を試してみたいという人におすすめしたい。
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ライスミルクは、私たちの体の健康だけでなく地球環境に対してもよい影響をもたらす。ここでは、ライスミルクが環境に与える利点について考えていく。
ライスミルクの生産は、牛乳に比べて温室効果ガスの排出が大幅に少ない。オックスフォード大学の研究によると、1杯の牛乳を生産する際に排出される温室効果ガスは植物性ミルクの約3倍に達する。(※3)
日本国内でも、乳用牛の温室効果ガス排出量は畜産全体の45%を占めており、環境負荷の大きな要因となっている。(※4)そのためライスミルクは牛乳と比較して、環境への負荷が少ない選択肢となる。
ライスミルクの生産において、日本国内で栽培される米や米粉を使用することは、食糧自給率の向上につながる。国産の原料を活用することで、輸入に頼ることなく安定した供給が可能となり、地域経済も活性化されるだろう。その土地で生まれたものを、その土地で消費することで、輸送による環境負荷の軽減も達成される。
ライスミルクは牛乳よりも少ない水量で生産できるため、水資源の効率的な利用が可能だ。オックスフォード大学の研究によると、グラス1杯の牛乳を生産するにはおよそ120リットルもの水が必要だが、ライスミルクは54リットル程度で済む。(※3)
環境負荷の低減につながるのはもちろん、乾燥地域や水資源が限られている地域においてこの点は大きなメリットとなるだろう。
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ライスミルクは市販品もあるが、甘酒のように自宅でもつくることが可能だ。
ライスミルクをつくるには、まず炊いた米や玄米を用意する。これをミキサーにかけ、水を加えて滑らかになるまで混ぜる。米の種類や分量によって水の量は変わるが、だいたい米の量の5倍程度が目安となる。
混ぜた米と水を、目の細かい布やフィルターで濾して滑らかにしていく。残った米のかすは、スムージーに加えるなどして無駄なく使う。
ライスミルクはそのままでも飲みやすいが、好みに応じて砂糖や塩を少量加えることでよりおいしく仕上がる。バニラエッセンスやシナモンなどを加えて、独自のアレンジを見つけてみるのも面白い。
自家製のライスミルクは、保存料を使用していないため冷蔵庫で保存し、2〜3日以内に使い切ることが望ましい。使い切れない場合は、小分けにして冷凍保存も可能だ。しかし風味が落ちるため、なるべく早めに消費したい。
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ここでは、日本で購入できるおすすめのライスミルクを紹介する。いずれも、国産の原料にこだわってつくられている。
お米と米糀を合わせてつくったライスミルクだ。通常のライスミルクとは異なり、発酵させているのが特徴。まろやかでクセのない味わいでそのまま飲んでもおいしい。抗酸化作用を持つ希少アミノ酸のエルゴチオネインが含まれている。
日本国内で生産されたお米だけを使ったライスミルク。お米と水だけしか使っていないため、牛乳や豆乳が体質に合わない人も安心して楽しめる。原材料には地元山梨の「梨北米」と、山梨県北杜市白州町にある尾白川の伏流水を使用しており、厳選された素材でつくられている。
福光屋の「発酵ライスミルク」は、ヴィーガン認証を取得した発酵飲料だ。契約栽培米を麹で発酵させており、ビタミンや必須アミノ酸が豊富に含まれている。乳糖不耐症やアレルギーの方に適し、料理や飲料としても活用できる。
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ライスミルクは栄養価にすぐれ環境にも配慮した食品ながら、まだ日本ではあまり知られておらず販売商品数も少ない。しかし私たちの主食であるお米が活用されているため、これから日本でも広がっていく可能性がある。家庭にあるお米から簡単にできるため、試しにつくってみることをおすすめする。牛乳や豆乳が苦手な方でも飲みやすいさっぱりした味わいで、好みの調味料と混ぜて独自のアレンジを加えてみても面白いだろう。
※1 穀類/こめ/[水稲穀粒]/玄米 - 01.一般成分表-無機質-ビタミン類|食品成分データベース
※2 乳類/<牛乳及び乳製品>/(液状乳類)/普通牛乳|食品成分データベース
※3Climate change: Which vegan milk is best?|BBC
※4畜産・酪農をめぐる情勢|農林水産省
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