天然資源や廃棄物を利用した「再生繊維」とは おすすめのアイテムも紹介

いろいろな色の糸

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近年、再生繊維を含む製品が私たちの生活にも身近になってきた。アパレルをはじめとしてさまざまな業界で活用されているものの、生産体系を効率化するためのインフラの整備も求められている。この記事では再生繊維の種類や特徴、メリットや課題について詳しく解説する。

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2024.12.14

再生繊維とは

青い糸

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再生繊維は、天然資源や廃棄物を原材料として新たな繊維に生まれ変わらせた素材である。その名が示す通り、元々存在する物質を化学的または物理的に処理し、再利用可能な形状に加工することでつくられる。これにより、資源の有効活用と環境負荷の軽減が実現できる。(※1、※2)

大きく分けて「天然由来」と「化学由来」

再生繊維は、その原材料の違いから大きく2つに分類される。木材や植物などを原料とする「天然由来の再生繊維」と、廃棄プラスチックや石油化学製品を再利用する「化学由来の再生繊維」である。(※2)

再生繊維の特徴

再生繊維は、天然資源の利用やリサイクル工程を通じて生産された、持続可能性を意識した素材だ。竹や木材などの植物資源からつくられるバンブーレーヨンや、使用済みペットボトルを原料とするリサイクルポリエステルは、本来捨てられるはずだったものを利用しており循環型経済に貢献する。

従来の合成繊維との違い

再生繊維と合成繊維は、環境負荷や製造プロセスにおいて大きな違いがある。再生繊維は竹や木材、廃ペットボトルなどの天然資源、リサイクル資源を原料とし、化学処理を施して繊維化することで生産される。合成繊維は石油・石炭を主原料とした化学物質を熱で溶融して繊維化することにより製造される。環境負荷の観点では、再生繊維は天然資源や既存のプラ製品を活用し、製造過程や使用後のリサイクルが環境に配慮されている。(※3)

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なぜいま再生繊維が注目されているのか

再生繊維が注目される背景には、繊維産業が抱える環境負荷の大きさと、それに対する社会的要請がある。近年、エネルギーや水、資源の大量消費が環境問題として指摘され、主にファッション業界においてサステナブルな取り組みが求められている。これに伴い、資源循環型の製品が投資家や消費者から注目を集めるようになり、ESG投資の拡大もその動きを後押ししている。

日本の繊維産業は海外拠点での生産が多く、国際市場への輸出にも依存している。そのためグローバルな競争力を維持するには、環境負荷を抑える技術と取り組みが必要不可欠である。具体的には、国内で年間約73万トンにのぼる廃棄衣料品のうち、全体の約65%が廃棄されている現状を改善することが課題となっている。この廃棄量を削減するために、衣料品のリユースが進展しているが、それだけでは十分でない。新たな解決策として、再生繊維が注目されているのだ。(※4、※5)

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再生繊維の代表的な種類と特徴

さまざまなカラーの布

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再生繊維といってもさまざまな種類があり、機能や特徴が異なる。ここでは、代表的な再生繊維を紹介する。

レーヨン

木材パルプを原料とし、絹の代替品として開発された。吸湿性が高く肌触りがいい一方で、水に濡れると強度が低下しやすい。(※1、※2)

リヨセル

ユーカリの木材パルプを使用。レーヨンの弱点である濡れた時の強度低下を改善し、高い光沢感と吸湿性を持つ。(※2)

キュプラ

綿花の種の産毛を原料とする。吸湿性と肌触りに優れ、生分解性が高い。土壌内で分解される特性を持つが、水に弱い。(※1、※2)

ビスコース

ビスコースはレーヨンを生成するための技術のことで、レーヨンとほぼ同様の特性を持つ。吸湿性が高く、光沢感がある。高級感が求められる用途に適している。(※6)

再生ポリエステル

使用済みペットボトルを再利用してつくられる。自然由来の素材に比べて強度が高く、撥水性にも優れる。資源循環の観点から、SDGsに貢献する素材である。(※2)

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再生繊維のメリット

再生繊維が普及することで得られるメリットとは何か。

環境への負担軽減

再生繊維の最大の利点は、環境への負担を軽減できる点にある。再生繊維は有限な新規資源を利用する代わりに、廃棄物や使用済み素材、再生可能な自然由来の原料を活用するため、エネルギーや水、資源の使用量を削減することが可能だ。従来の繊維製造に比べて、環境にやさしい製造方法を実現できる。(※4)

資源の有効活用

再生繊維は、限りある資源を効率的に活用する手段として注目されている。植物系の再生繊維では、綿花の採取後に残るコットンリンターを原料とすることで未利用部分を有効に使える。一方で石油由来の再生繊維は、廃ペットボトルを原料として利用することで石油資源の消費量を抑えられる。(※7)

吸湿性や放湿性が高い

一見、着心地が悪そうな印象の再生繊維でつくられた生地だが、吸湿性や放湿性が高いという特徴を持つ。例えば、レーヨンはソフトな風合いで肌触りがよく、光沢、吸湿性、染色性に優れており吸湿発熱性があるため、背広の裏地や肌着、ストールなど、肌に直接触れる部分に使われることが多い。(※1)

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再生繊維の課題

仕立て屋

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一方で再生繊維にはいくつかの課題があり、普及の妨げにもなっている。また再生繊維の製造工程においても、環境負荷が発生することも知っておきたい。ここでは、再生繊維の課題について解説する。

製造コストと技術的な制約

再生繊維の製造には、通常の繊維製造より高いコストがかかる場合が多い。品質を保った生地生産の技術開発など、さまざまな繊維を効率的に生産させるためには多額の投資が必要だ。(※5)

化学処理による環境負荷

再生繊維を生産する際には、化学処理が必要となる場合が多い。この過程で使用される薬品が不適切に廃棄された場合、環境汚染を引き起こす可能性がある。また生産者にとっても、化学物質による健康リスクが懸念されている。こうした問題を回避するための、適切な管理体制が求められる。(※7)

強度の問題

再生繊維のなかには、強度不足や水に弱い点という特徴を持つものも多い。そのため、取り扱いや着用シーンが限定される場合がある。この弱点において、繊維メーカーでは強度の改善などの開発に取り組んでいる。また、化学繊維との併用や混合などで解決する場合もある。(※2)

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再生繊維の活用事例

衣類

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すでに再生繊維は、私たちの生活の身近なものになりつつある。ここでは、実際の活用例をいくつか紹介する。

ファッション業界での使用

ペットボトルをリサイクルした繊維は、近年多くのファッションブランドで採用されている。例えばユニクロは一部製品にリサイクル素材を使用しており、回収されたペットボトルを原料にした繊維を衣類に活用している。またアウトドアブランドのパタゴニアは、再生ペットボトルからつくられたフリースをいち早く採用したことで知られる。(※9、※10)

インテリア製品

インテリア分野では、再生繊維を活用した製品開発が進んでいる。その一例として、タイルカーペットが挙げられる。東リ株式会社は、タイルカーペットの素材を分離せずに溶融し、再利用可能なチップ状素材へ加工する技術を確立している。廃棄されるカーペットが新たな製品として再生される仕組みが整えられ、インテリア製品のライフサイクルを延ばし、廃棄物の削減に貢献している。(※11)

その他の産業用途

再生繊維は衣類やインテリア製品だけでなく、さまざまな産業分野での活用が広がっている。例えば自動車産業では、手放された衣類を内装材や断熱材として再利用する事例が報告されている。(※12)

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再生繊維を使ったおすすめのアイテム

再生繊維が使われており、なおかつ使いやすいアイテムをピックアップした。

バンブー120 バスタオル - 2色展開|IKEUCHI ORGANIC(イケウチオーガニック)

IKEUCHI ORGANIC(イケウチオーガニック)

バンブー120 バスタオル - 2色展開

4,620円

※2022.08.15現在の価格です。

竹由来の再生繊維である、バンブーレーヨンを使用したバスタオル。シルクのような滑らかな肌触りと優れた吸放湿性を持ち、コットンの1.7倍の速乾性を誇る。タオルのベースにはオーガニックコットンを用い、柔らかさと耐久性を両立。静電気が起こりにくいのも特徴だ。竹は短い成長サイクルを持つ循環型資源で、環境への負荷が少ない素材として注目されている。速乾性やサラリとした拭き心地を求める人に最適なエシカルアイテムである。

ECOPET® ニットバッグ|ECOPET®

ECOPET

ECOPET® ニットバッグ

6,600円

※2024.12.05現在の価格です。

リサイクルポリエステル繊維「ECOPET®」を使用したニットバッグ。運動後の汗で濡れた衣類や旅行時の着替え入れに最適で、抗菌防臭機能を備えている。使用済みペットボトルやポリエステル繊維の廃材を再利用し、リサイクル性も高い設計。一般的な抗菌加工剤を使わないため、環境にもやさしい。家庭で洗濯可能な実用性を兼ね備え、サステナブルな暮らしをサポートするアイテムだ。

長袖カットソー - W|takes.(テイクス)

takes.

長袖カットソー - W

12,100円

※2024.12.13現在の価格です。

レビュー (1)

  • ★★★★★
    大好き!

    肌触り、形、洗濯しても崩れない、環境にやさしいどこを取っても良い!形が綺麗なのでかっこよく着れるし、生地がしっかりしているので透けません。1枚でサラッと着れます。半袖やワンピースも欲しい!

    Aquio18 on Jun. 10, 2022

竹繊維を使用したTAKEFU(竹布)とオーガニックコットンを組み合わせた素材のカットソー。吸水性・吸湿性に優れ、シンプルなデザインでオン・オフどちらの場面にも対応可能だ。柔らかな肌触りと快適な着心地が特徴で、インナーとしても活用できる。100%堆肥化可能な素材でつくられており、環境への配慮も十分。必要最小限の包装も選べるエシカルな選択肢となっている。

square - SLIPSIMP|Öffen(オッフェン)

Öffen

square - SLIPSIMP

18,150円

※2024.12.05現在の価格です。

使用済みペットボトルから再生したポリエステル糸でつくられたニット素材のローファー。軽量で柔らかく、まるで裸足のような履き心地を実現している。洗濯が可能で繰り返し使えるため、持続可能な暮らしにも貢献。やさしいカラーリングとフェミニンなデザインで、さまざまなコーディネートにマッチする一足である。

pointed - CROWNP|Öffen(オッフェン)

Öffen

pointed - CROWNP

17,600円

※2024.12.13現在の価格です。

波を連想させるカーブデザインが特徴のペットボトル由来ニットシューズ。軽量かつ履き心地がよく、足に自然に馴染む。環境にやさしいリサイクル素材を使用しながら、デザイン性も兼ね備えたアイテムである。

バンブーショーツ|unleash(アンリーシュ)

unleash

バンブーショーツ

5,940円

※2024.12.13現在の価格です。

竹レーヨンと天然由来繊維でつくられたショーツ。深めの股上と広いクロッチ設計で、締め付けを抑えた快適な履き心地だ。竹素材特有の抗菌・抗カビ性により清潔さを保つ。エコテックス認証を受けた工場で生産され、環境負荷の低減を徹底したエシカルアイテムだ。

バンブーキャミソール|unleash(アンリーシュ)

unleash

バンブーキャミソール

9,680円

※2024.12.13現在の価格です。

竹レーヨンを使用したカップ付きキャミソール。アンダー部分の締め付けがなく、背中が大きく開いたデザインで洋服に響きにくい。抗菌性を持つ竹素材が清潔さを保ちながら快適な着心地を提供。パッドが縫い付けられており、洗濯時の形崩れも防げる。サステナブルかつ高機能なインナーである。

バンブーサニタリーパッド - 昼用(普通の日〜多い日用)- 24cm 羽付き|limerime(ライムライ ム)

limerime

バンブーサニタリーパッド - 昼用(普通の日〜多い日用)- 24cm 羽付き

385円

※2024.12.13現在の価格です。

竹、とうもろこし、木製パルプを使用した生分解性の高いサニタリーパッドだ。竹の持つ抗菌・吸湿性により快適さを維持し、ムレや不快感を軽減。従来の石油由来製品に代わる環境配慮型の生理用品として「便利さ」と「エシカル」を両立する選択肢である。

ペット用ベッド(ラウンド型) - ダークインディゴ|anela(アネラ)

anela

ペット用ベッド(ラウンド型) - ダークインディゴ

38,280円

※2024.12.05現在の価格です。

再生コルク、ポリエステル、廃棄デニムを使用したペット用ラウンドベッドだ。コルクの弾力性とフィット感が、ペットに快適な寝心地を提供。デニムカバーはハンドメイドで個性を持ち、取り外して洗濯が可能だ。再生素材を活用したエシカルな商品でありながら、実用性とデザイン性も兼ね備えている。

身近に楽しめる再生繊維ファッション

カラフルな服

Photo by David Dvořáček on Unsplash

環境意識が高まるなか、年々再生繊維でつくられた衣類の選択肢が増えてきている。有名なアパレルブランドでも再生繊維を使ったラインアップが増え、ファッション性も上がってきた。ファッションを楽しみながら、エシカルな選択肢をチョイスしたい。

※掲載している情報は、2024年12月14日時点のものです。

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