タンパク質繊維とは? 定義やもたらす効果などをわかりやすく紹介

カラフルな糸が並んでいるイメージ

Photo by Kate McLean

近年注目を集めている、「タンパク質繊維」。環境にやさしいとされているが、そもそもタンパク質繊維とは何を指すのだろうか。本記事では、タンパク質繊維の定義や目的、もたらす効果などについて詳しく紹介していく。

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2024.01.18
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タンパク質繊維とは

「タンパク質繊維」とは、その名の通りタンパク質からなる繊維のことを指す。タンパク質繊維と一口にいっても、ウールやアルパカ、アンゴラ、モヘアといった獣毛からなる「天然繊維」と、人工的につくられた「人工タンパク質繊維」がある。

人工タンパク質繊維とは、植物などのなかに存在するタンパク質のなかで繊維形成能を持つものを選び、加工して繊維状にした再生繊維の一種のこと。「人造タンパク質繊維」や、「合成タンパク質繊維」とも呼ばれており、人工タンパク質繊維には、トウモロコシタンパクや落花生タンパク、牛乳カゼインなどを原料につくられたものがある。

上記のように、大きく分けると2種類のタンパク質繊維があるが、一般的に「タンパク質繊維」というと、人工タンパク質繊維を指して使われることが多い。

この人工タンパク質繊維は、たくさん研究されているものの、食料との兼ね合いやコストがかかることなどから、市販されているものは少ない状態だ。

しかし、2019年には、アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」が、Spiberが開発した素材微生物による発酵プロセスによりつくりだされる構造タンパク質Brewed Protein™素材を使用したアウターを、限定50着で世界で初めて市販し、多くの注目を集めた。さらに2023年9月には、同素材を使用したプロダクト5型を発売。そのほか、有名ブランドがコレクションで人工タンパク質繊維を使用したアイテムを発表するなど、注目と需要の高さがうかがえる。

ザ・ノース・フェイス定番アイテムにSpiber開発素材「Brewed Protein™」を採用

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タンパク質繊維の定義

2021年11月1日に、繊維の一般名称に係る国際規格(ISO2076)の改定版が発行されてから、タンパク質繊維は「タンパク質成分が重量ベースで80%以上のもの」と定義されている(※1)。

改訂版発行以前は、天然由来のタンパク質のみがタンパク質繊維とされており、人工構造のタンパク質については明記されていなかった。それゆえ海外では、タンパク質がごく少量で大部分が石油由来の材料で構成される繊維でも、タンパク質繊維として売られている例が見られていた。改訂前の国際規格によるタンパク質繊維の定義では、そのような繊維がタンパク質繊維として認定される可能性が残されていたのだ。

そこで、タンパク質繊維に関する用語規格において、人工的に製造されたタンパク質を含め、かつ繊維中のタンパク質成分の含有量を多いものをタンパク質繊維とするよう、日本から国際規格改正の提案をおこない、現在の定義へと改定された。

現在は、「タンパク質成分が重量ベースで80%以上のもの」であれば、人工構造のタンパク質を使用しているものも、タンパク質繊維として認められている。

タンパク質繊維の目的

天然のタンパク質繊維や、既存の化学繊維がありながら、人工タンパク質繊維を開発したり、普及させたりするのはなぜだろうか。

それには天然のタンパク質繊維が動物に由来していることや、現在使用されている繊維の多くが石油などの枯渇資源を原料としていることが背景にある。ここから、詳しく説明しよう。

枯渇資源に依存しない繊維の開発

現在、洋服などに使用されている繊維の多くが、石油などの枯渇資源を原料としたポリエステルやナイロンなどの化学繊維だ。

石油は長い年月をかけてつくられた化石燃料で、広く知られているように、限りがある資源だ。いまのペースで使い続けると、50年以内には使い切ってしまうと予想されている(※2)。そんな石油由来の化学繊維は、原料が枯渇する可能性があり、持続可能とは言い難い繊維なのである。

そのほか、石油由来の化学繊維は海洋汚染につながるマイクロプラスチックを放出することや、製造から廃棄に至るまで、多くの二酸化炭素を排出することが問題視されている。

しかし、人工タンパク質繊維は、原料を枯渇資源に依存しないため持続可能な繊維といえる。さらにマイクロプラスチックを放出しないので、環境にもやさしいとされており、これからさまざまな製品に使用されていくことが期待されている。

動物由来による温室効果ガスの削減

ウールやカシミアなどの動物由来の繊維は、原料となる毛をもつ羊やヤギといった家畜が、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを発生することによる環境への負担が懸念されている。

しかし同じタンパク質繊維でも、人工タンパク質繊維は家畜の必要がなく、動物が排出する温室効果ガスを抑えることができる。気候変動が深刻化し、ゼロカーボンの実現が求められる背景もあり、動物に依存しない人工タンパク質繊維が近年注目されているのだ。

さらに、人工タンパク質繊維の多くは、植物由来の糖を主原料に微生物発酵で生産することから、最終的に分解されて自然界に還る能力に優れているため、生分解性という面でも環境への負荷が低い素材であるといえるだろう。

タンパク質繊維の効果

ここからは、人工タンパク質繊維が普及することで、地球環境に対してどのような効果が期待できるのか紹介していこう。

マイクロプラスチックの削減

マイクロプラスチックとは、5ミリ未満まで小さくなったプラスチックのかけらのこと。ポイ捨てや、間違ったごみの分別など、マイクロプラスチックが発生してしまう原因は多岐にわたるが、石油由来の化学繊維を使った衣類を洗濯する際にも、マイクロプラスチックが川や海に流れ出てしまうことがある。

一度自然界に流れ出たマイクロプラスチックは、細かすぎて回収するのが困難だ。回収できずどんどん増え続けてしまうので、マクロプラスチックをはじめとする海のなかにたまったプラスチックごみの重さは、2050年までに魚の重さを超こえるとさえいわれている。

さらに、魚介類が海水と一緒にマイクロプラスチックを飲み込んでしまうことで、死にいたることもあり、生態系への悪影響が出ているのが現状だ。

マイクロプラスチックを放出しないとされる人工タンパク質繊維が普及し、現在汎用的に使用されている石油由来の化学繊維の代用品となれば、このマイクロプラスチックを削減することができるだろう。

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ゼロカーボンの実現に貢献

石油由来の化学繊維だけでなく、天然のタンパク質繊維であるウールやカシミアなどの代用品となることで、動物から排出される温室効果ガスを削減することも期待されている。

また、人工タンパク質繊維は生分解性があるものが多く、再資源化も可能だそう。再資源化できれば、廃棄による二酸化炭素の排出も抑えることができる。

これらのことから、人工タンパク質繊維が普及することで、長い目で見てゼロカーボンに貢献できるといえるだろう。

いまの地球に必要なタンパク質繊維

枯渇資源や動物由来の原料に依存しない、画期的な人工タンパク質繊維。コスト面などから量産がむずかしいとされているが、持続可能で環境にもやさしく、気候変動や海洋汚染などの危機に瀕した、いまの地球に必要な繊維といえるだろう。

いまはまだ、人工タンパク質繊維でつくられた衣類を購入できる機会はあまり多くないが、それ以外のアイテム選びにおいて、環境や社会にやさしい、エシカル消費を心がけることも大切だ。いち消費者として、「地球にやさしいものを求めている」という意志を表明していくことで、人工タンパク質繊維の研究や開発も加速し、より手軽に購入できる日が早く訪れるかもしれない。

※掲載している情報は、2024年1月18日時点のものです。

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