脱炭素に向けた新しい発電方法を紹介 注目される理由やメリット・課題も

風力発電

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再生可能エネルギーの利用が広まりつつあるなか、再生可能エネルギーと同様のクリーンでエコな新しい発電方法も登場している。この記事では、新しい発電方法の種類や新しい発電方法が注目される理由、メリット・課題について解説する。

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2024.08.17
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従来の発電方法とその課題

Thermal power generation

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まずは従来の発電方法と、そのデメリット・課題についてみていこう。

従来の発電方法と課題

2022年度の日本国内の年間発電電力量の割合は、化石燃料(石炭、LNG、石油)が約70%、原子力は約5%、自然エネルギーは約24%となっており、従来の発電方法である火力発電と原子力発電が多くを占めている。(※1)

日本の電力供給量の約7割を占めているのが火力発電だ。火力発電は、石炭や石油・天然ガスを燃やして水蒸気をつくり、その水蒸気でタービンを回して発電する。安定した電力供給ができるのがメリットだが、エネルギー源となる化石燃料を海外輸入に依存しているため、輸入先の国の情勢によっては供給が不安定になるのがデメリットだ。また電力をつくるときに二酸化炭素が排出されるのも、カーボンニュートラルを目指す現代にはふさわしくない発電方法といえる。

原子力発電は、ウラン燃料が核分裂を起こした熱によって水蒸気をつくり、その水蒸気でタービンを回して発電する。メリットは、少ない燃料で大量の電力を供給できることや、エネルギー源に化石燃料を使っていないため二酸化炭素を排出しないことだ。しかし事故発生時には、放射性物質の放出や環境汚染、健康被害といった甚大な被害が出てしまうのがデメリットだ。また、最終廃棄物の処分も課題となっている。

新たな発電技術が注目される背景

2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言し(※2)、2030年度までに温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目標に掲げた。(※3)

この目標を達成するためのエネルギー政策として、エネルギーミックスと「S+3E」という考え方を提唱。エネルギーミックスは、複数の発電方法を効率的に組み合わせて社会全体に供給する電気をまかなうことで、2030年度までに電源構成36〜38%の導入を目指す。(※4)

「S+3E」は安全性(Safety)を大前提として、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)を同時達成するという基本方針だ。2030年度までに自給率は30%程度、経済効率性は8.6〜8.8兆円、温室効果ガス排出量は2013年度から46%削減することを目標としている。(※5)

電源構成の進捗状況は、再生可能エネルギーが22%、原子力が6%、天然ガスが33%、石炭が31%、石油が8%で、総発電量は1兆82億kWhとなっている(2022年度)。(※6)

カーボンニュートラルの達成のために、新たな発電技術が注目されているのだ。

日本の発電割合は? 現状と再生可能エネルギーについても詳しく解説

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カーボンニュートラルの実現に欠かせない代表的な発電方法

hydroelectric power

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カーボンニュートラルの実現には、再生可能エネルギーを活用することが不可欠だ。ここでは、代表的な再生可能エネルギーの発電方法を解説する。

太陽光発電

太陽光発電は、太陽光を電力に変換して発電する。太陽光発電は設置する場所の制限がなく、住宅にも設置可能で、日本での導入量は増加している。

水力発電

水力発電は、水を高いところから低いところへ勢いよく流し、その水の流れを利用して水車を回して発電する。仕組みが簡単で、安定したエネルギー供給ができる発電方法だ。

風力発電

風力発電は、風のエネルギーで風車を回して発電する。風車の設置場所は、風が強い海の近くや洋上・高原などで、エネルギーの交換効率が高いのが特徴だ。

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バイオマス発電

バイオマス発電は、間伐材や生ごみ・廃油などを燃料にし、それらを燃やして水蒸気をつくりタービンを回して発電する。火力発電に似た発電方法ではあるが、化石燃料を使わないことや、二酸化炭素排出量が火力発電よりも少ないのがメリットだ。

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地熱発電

地熱発電とは、地下にあるマグマの熱などによってつくられた高温高圧の蒸気や熱水を利用して発電する方法。地球内部の熱エネルギーを活用するため、資源が枯渇する心配がなく、半永久的にエネルギーをつくり出すことができる。

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雪氷熱利用

温度の低い雪や氷といった資源もエネルギー活用できる。雪氷熱利用は、冬の時期に降り積もった雪や、冷たい外気によって凍った氷などを保管し、冷熱が必要となる夏場に活用する再生可能エネルギーだ。農作物の保存や、冷房などに使われる。

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カーボンニュートラルが期待される新しい発電方法

ocean energy

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ここでは、研究・開発中の新たな発電方法やエネルギーを紹介しよう。

水素発電

水素発電は、火力発電に使われる石炭や天然ガスの代わりに水素を用いて発電する。燃料を水素だけで発電した場合には、有害物質や二酸化炭素のような温室効果ガスが排出されないのがメリットだ。そのため、化石燃料を用いた火力発電に代わるクリーンエネルギーのひとつとして注目されている。

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アンモニア発電

アンモニア発電は、アンモニアを燃料とした発電方式だ。アンモニアは燃やしても二酸化炭素を排出しないことから、クリーンエネルギーとして期待されている。また水素よりも輸送や貯蔵が容易で、既存の技術で管理できることや、火力発電所の既存の設備をそのまま使えることも利点だ。

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海洋エネルギー発電

海洋エネルギー発電は、海に存在するさまざまなエネルギーを使って発電する。海洋エネルギーには、海洋温度、波力、潮流、洋上風力、潮汐力、海洋濃度などがある。日本は海に囲まれていることから海洋エネルギーのポテンシャルは高いとされ、実用化に向けて開発が進められている。

重力発電

重力発電は、コンクリートブロックなどの重りを上げ下げすることで発生する位置エネルギーを利用して発電する方法だ。構造がシンプルで汎用性が高く、場所さえあれば設置できる。また重力は常に存在しているため、エネルギー源がなくなる心配がないことが特徴だ。

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積雪発電

積雪発電は、雪をエネルギー源として活用する発電方法だ。雪で冷やされた不凍液と、ボイラーの燃焼によって生じた熱が発電機に送られ、その温度差でピストンが駆動して発電する。これまで莫大なコストをかけて処分されていた豪雪地帯の雪を有効活用できるのがメリットだ。国内では研究が進められ、実証実験が行われている。

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常識を打ち破る!おもしろい発電方法

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従来の常識にとらわれない、まったく新しい発電方法やエネルギーについて紹介する。

体温発電

世界各国で体温による発電の研究・開発が進められている。

東京工業大学は、人間の体温を用いて発電できるデバイス構造のマイクロ熱電発電モジュールを開発。この技術を使って、今後はウェアラブルコンピュータやエッジコンピュータへの活用が期待されている。(※7)

また、ヘルスケア分野で事業を展開する「メディロム」は、体温から発電する「温度差発電技術」を搭載した活動量計「マザーブレスレット」を販売している。常に発電しているため、充電の必要がないのが特徴だ。(※8)

ダンス発電

イギリス・ロンドンのナイトクラブ「Surya」は、ダンスフロア発電を取り入れている。ダンスフロアに、圧力がかかると電力が発生する電圧性結晶を内蔵し、フロアの上で人が踊ることで電力が発生する。(※9)

牛の排泄物を使った発電

北海道野付郡別海町で行われているのが、牛の排泄物を使った発電だ。酪農家から供給される牛の排泄物を発酵させ、発生したメタンガスを燃料にして発電している。(※10)

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新しい発電方法が社会にもたらすメリット

electricity

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新しい発電方法は、社会にどのようなメリットをもたらすのだろうか。

脱炭素社会の実現

新しい発電方法のほとんどは、地球温暖化や気候変動の原因となる温室効果ガスを排出しない。そのため、脱炭素社会の実現につながる。

エネルギー自給率の向上

新しい発電方法のエネルギー源には海や雪・重力などがあり、それらは自国で調達できる資源だ。輸入に頼る必要がなく、純国産エネルギーとして位置づけることができ、なおかつエネルギー自給率を向上させられる。

環境負荷の削減

新しい発電方法は発電時に二酸化炭素を排出しないため、化石燃料に代わるエネルギーとなる。よって、環境への負荷を削減できる。

新たな産業の創出と地域活性化

新しい発電方法やクリーンエネルギーは、農林水産業や観光業などに役立てることができる。そのため新たな産業を生み出し、地域活性化にもつながるのがメリットだ。

新しい発電方法の課題

power transmission

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新しい発電方法にはメリットがある一方、課題もある。どのような課題があるのか解説する。

新技術の導入コスト

新しい発電方法には研究開発や技術開発にコストがかかり、また導入にあたり新しい設備の建設やインフラの整備などのコストがかかるのがネックだ。また、発電環境が制限されることも多い。

出力が不安定

従来の発電方法にくらべ、新しい発電方法は出力が不安定であることも課題だ。自然の力を活用した場合には、状況により出力が左右され、需要に応じた供給ができない可能性がある。

新しい発電方法の普及に向けて私たちができること

新しい発電方法は、環境にやさしく、カーボンニュートラルの実現にも貢献する。普及に向けて私たちができることは、世界のエネルギー事情について理解を深め、再生可能エネルギーやクリーンエネルギーを積極的に導入することだ。もちろん、節電することも重要である。個人の小さな取り組みが、新しい発電方法の普及につながるだろう。

新しい発電方法でカーボンニュートラルな社会へ

energy

Photo by Riccardo Annandale on Unsplash

新しい発電方法は、環境にやさしく、クリーンなエネルギーだ。これらの技術は、地球温暖化の抑制にも貢献する。カーボンニュートラルな社会を実現するために、新しい発電方法でつくられた電力を積極的に使っていくことも、私たち一人ひとりができる貢献だ。そういったひとつの選択が、持続可能な未来をつくる大きな一歩となる。

※掲載している情報は、2024年8月17日時点のものです。

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