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日本や世界には意外なものを燃料にした発電方法やユニークな発想で電気を生み出す方法がある。それらはいずれも、"もったいない"という思いや、環境負荷の軽減のために研究・開発されている。ここでは、世界と日本の"おもしろい発電方法"と実用化が期待される"新しい再生可能エネルギー"を紹介。
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環境問題が深刻化している昨今、新たな発電方法はこれまで以上に注目を集めている。2022年度のデータによると、日本の発電の種類と割合は石炭が29.7%、液化天然ガス(LNG)が30.0%、石油が2.9%、そのほかの火力が7.7%、原子力が5.3%、水力が7.7%、太陽光が10.6%、風力が0.9%、地熱が0.3%、バイオマスが5.1%となっている。
このように、日本は発電の7割以上を石炭や天然ガスなどの火力発電に頼っているのが現状だ。一方、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは24%にとどまっており、全体を占める割合は未だ少ない点が問題視されている。(※1)
日本は火力発電の燃料となる石炭や石油、液化天然ガス(LNG)などの資源のほとんどを国内でまかなえず、9割近くを海外からの輸入に頼っている状態だ。このことから、海外エネルギーへの依存も問題視されている。(※2)
また、火力発電は燃料を燃やして発電する際にCO2を含む温室効果ガスを排出するため、環境への影響が危惧される。温室効果ガスによる地球温暖化、それに伴う気候変動や異常気象への対策が世界的に求められているなかで、日本においても火力発電からの脱却が目指されている。
そこで注目され、移行が進められているのが、温室効果ガスの排出がない、もしくは極端に少ない地熱・太陽熱・太陽光・水力・風力・大気中の熱、そのほかの自然界に存在する熱やバイオマスを利用する再生可能エネルギーだ。
日本政府は2030年度には再生可能エネルギー比率36〜38%程度を達成することを目指しており、FIT制度・FIP制度の実施など多様な取り組みを進めている。国内における再生可能エネルギー比率が80%を超えるスウェーデンやデンマーク、50%を超えるカナダやスペイン、ドイツ、ポルトガルなど(※3)と比較すると日本は導入が後れている状態だが、 2010年度の10%(自然エネルギーの年間発電量の割合)に比べ、2022年度には24%と倍増している。(※1)
今後、再生可能エネルギーへの移行がますます求められるなかで、温室効果ガスの発生を抑えた新たな発電方法や技術の開発も必要となるだろう。
水素発電やアンモニア発電など、実用化に向けて研究が進められている発電方法の他に、世界や日本には意外なものを燃料に使った発電方法やユニークな発想から生まれたおもしろい発電方法、自然の力を活用した新しい再生可能エネルギーが数々生み出されている。以下で例をみていこう。
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日本と世界のユニークなアイディアや発想の転換から生まれた"おもしろい発電方法"について、いくつかの例を紹介する。
うどん県で知られる香川県は、廃棄するうどんでつくったバイオガスから電気を生み出す「うどん発電」に成功している。バイオガスとは、えさとなるうどんを微生物に分解させ、メタン発酵させたときに生成される可燃性ガスのこと。発生したバイオガスは「メタン」という燃えやすい気体が含まれているため、エネルギー源として発電に利用できる。また、発酵残さ(微生物の食べ残し)は肥料として活用したり、バイオエタノールにしてうどんを茹でる燃料にしたりと、余すことなく活用している。
香川県で廃棄されるうどんは年間約3,000トンにもおよび、水分を多く含む食品は焼却時に大量の化石燃料を必要とする。廃棄されるうどんをバイオガス発電に活用することは、石炭・石油等の化石燃料による発電の代替になること、食品ごみの削減により焼却時の温室効果ガス発生を抑えること、この2つの点で環境負荷の低減に貢献できる。もちろんうどんだけではなく、ほとんどの食品廃棄物で応用が可能だ。(※4)
人が歩くときに床に伝わる振動を、床に組み込まれた圧電素子によって電圧に変換することにより発電する「床発電システム」。日本の会社、グローバルエナジーハーベストが開発した技術だ。それを通勤ラッシュ時の駅で活用する実証実験をJR東日本が過去3度に渡って実施した。駅構内や改札を乗降客が歩くだけで発電できるという仕組みだ。(※5)
床発電システムは電源に接続する必要がないため、停電時や災害時に避難誘導灯としての役割も期待される。
三井造船株式会社は、北海道別海町と共同で「別海バイオガス発電株式会社 」を設立。地域循環型の再生可能エネルギーの強化と、地域のバイオマスを活用した産業創出の取り組みを実施した。酪農家から供給された牛などの家畜の排泄物を原料とし、発酵により発生させたメタンガスを燃料にして発電する仕組みである。(※6)
ダンスフロアの熱を利用して再生可能エネルギーにした発電方法も存在する。プロジェクト名は「BODYHEAT」。この発電方法は、ダンスフロアで踊る人たちの体温を熱エネルギーとして利用する。従来のヒートポンプシステムを使用し、ダンスフロアの熱を集めて掘削孔で地下へと送りこみ蓄えておき、冷暖房システムに利用する仕組み。(※7)
ゼーベック効果を利用し、体温から発電する温度差発電技術を使った活動量計も登場している。「MOTHER Bracelet」は、世界初の24時間365日充電不要な活動量計だ。(※8)
ゼーベック効果とは、ある物質の両端に温度差を与えると、その両端間に電位差(起電力)が生じる効果のこと。その効果を利用して、火力・原子力発電所から体温に至るまで 大小さまざまな熱源から電力を取り出すことが可能だ。(※9)エストニアの物理学者トーマス・ゼーベックによって1821年に発見されたことから、その名がついている。
水や土のある植物発育環境から、自然エネルギーを電気に変える発電方法がある。これは、植物の根から発生する微生物や糖、水中の微生物や水草の循環作用により発生するエネルギーを電極に集めて発電させる仕組みになっている。日照不足であっても水草の微生物や植物が育つ状態であれば、水や土壌に電極を埋めるだけで発電が可能だ。
この発電方法は、マグネシウムが劣化した場合は植物の肥料となるだけでなく、有機物を分解するエネルギーが汚染土壌の浄化効果に役立つといったメリットもある。すなわち、環境への悪影響がない新しいクリーンエネルギーだ。
電力供給が困難な地域や太陽光が届かない場所でも発電できるため、災害対策用の充電器や多くの用途で有効活用できるといわれている。(※10)
人の声で発電する方法がある。すでに人の声(空気の振動)を電力に変えてLEDを発光させる実験に成功しており、「音力発電」の技術を応用して道路の騒音を集めて発電する遮音壁の開発もされている。これが完成すれば、騒音エネルギーを電気エネルギーに変換できるだけでなく、騒音も抑える効果が期待できる。(※11)
Wi-Fiの電波で発電するスピントロニクス技術が開発された。すでにLEDを1分間光らせることに成功している。この技術を発展させることにより、これまで電力源としては捨てられていたWi-Fi電波からの電力抽出が可能となる。今後はワイヤレス・バッテリーフリーな無線IoTセンサー・プロセッサーなどのエッジ情報端末への応用が期待されている。(※12)
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日本でも再生可能エネルギーの割合は年々増えつつあるが、他国と比べて圧倒的に少ないのが現状だ。問題解決のヒントとして、ここでは太陽光や水力、風力、地熱といった自然の力を利用した再生可能エネルギーの新たな発電方法について紹介する。
潮流発電は、潮流もしくは潮汐(ちょうせき)にともなう潮位差を利用してタービンを回すことで発電する仕組みだ。これまでの太陽光発電などとは異なり、潮流発電は一定した潮汐力によって年間をとおして安定した発電が可能となる。
日本は世界と比べると潮流発電に関してやや後れをとっている状態のため、海洋再生可能エネルギーの早期実用化を目指し、2024年には国内初の導入も計画されている。(※13)
空飛ぶ風力発電は、ヘリウムガスを充てんした風洞型気球を高さ約600mの位置に浮上させ、一定した強風を受け続けることにより発電させる仕組みだ。従来の風力発電設備と比べても同程度で約2倍以上の電力発電が可能なため、大いに期待されている。
そのほか「風力発電カイト」も存在する。カイトに乗った風力発電設備は、プロペラ飛行機のような形状をしており、風力発電機をカイトに乗せて洋上のブイにロープで係留したのち、凧揚げ(たこあげ)のように空中を浮遊させて発電する仕組みである。
カイト式は凧のようにして風力発電設備を空中に浮かせるため、従来の風力発電と比べてコンクリートや鉄鋼の使用量が少ない点がメリットだ。低コストで効率よく発電が可能なため、大いに期待されている。(※14)
海洋温度差発電は、海洋を循環する冷たい深層海水と太陽からの熱エネルギーによって温められた表層海水の温度差を利用してタービン発電機によって電力に変換する発電方法だ。
この発電方法は気候や天候に左右されず、環境にも負荷をかけることなく安定した電力を供給できるため、再生可能エネルギー発電の一つとして世界中から注目を集めている。(※15)
宇宙太陽光発電は、宇宙に巨大な太陽光電池とマイクロ波送電アンテナを配置し、太陽光エネルギーを電気に変換したのちに、マイクロ波に変換して地球上に設置した受電アンテナへと送電する仕組みだ。その後は地上で電力に再変換し、エネルギー源として用いる仕組みになっている。(※16)
ヤンマーエネルギーシステム株式会社(ヤンマーホールディングス株式会社のグループ会社)は、温泉廃熱を利用した小型のオーガニックランキンサイクル式発電機(ORC発電機)の開発に成功し、すでに試験機を諏訪市のあやめ源湯へ設置している。
ORC発電機は水よりも沸点の低い媒体を利用し、低温の蒸気や熱水を発電に利用することができる。この発電方法は、これまで使用されていなかった温泉熱や工場廃熱などを有効活用でき、さらに化石燃料由来のエネルギーとは異なり、温室効果ガスが発生しない点が大きなメリットといえる。(※17)
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脱炭素化が急がれるいま、再生可能エネルギーをはじめとする環境負荷の少ない発電方法への期待はますます大きくなっている。
発電量が少なく実用化がほど遠いと思われる発電方法でも、今後の開発やイノベーションにより実用化の可能性はゼロではない。ここで紹介してきた"おもしろい発電方法"や"新しい再生可能エネルギー"も、いずれ私たちにとって欠かせないクリーンなエネルギーになる日がくるかもしれない。
※1国内の2022年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報) | ISEP 環境エネルギー政策研究所
※2エネルギー資源の現状 | 中部電力
※3統計|国際エネルギー | 自然エネルギー財団
※4うどんをまるごと循環させる | うどんまるごと循環プロジェクト
※5床発電システムの実証実験|JR東日本
※6国内最大規模のバイオガス発電事業を開始 | Mitsui E&S
※7ダンスフロアの熱を再生可能エネルギーに?踊るほどサステナブルになるクラブ「SWG3」 | Always Listening
※8MOTHER Bracelet | MEDIROM
※9ゼーベック効果(熱→電気)|名古屋大学
※10植物発育環境から自然エネルギーの発電 | Nisoul
※11音力発電 | 株式会社グローバルエナジーハーベスト
※12Wi-Fiの電波で発電するスピントロニクス技術を開発 | 東北大学
※13潮流発電について | 環境省
※14未来の再エネ(その1空飛ぶ風力発電) | NEF
※15夢の発電・海洋温度差発電の実用化に向けて | PUBLIC RELATIONS OFFICE GOVERNMENT OF JAPAN
※16宇宙太陽光発電システム(SSPS)について | JAXA
※17温泉廃熱を活用した小型ORC廃熱発電機を諏訪市に試験導入 | YANMAR
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