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新型コロナのパンデミックやウクライナでの戦争。さらに、レジ袋有料化、プラ製スプーン・フォークの有料化など、ここ数年間でさまざまなできごとがあった。SDGsの言葉が広く人々に浸透し、環境への意識が高まった人も多いのではないだろうか。そこで、改めてこの3年で生活や意識がどう変わっていったのか、ELEMINISTに携わった人々に聞いた。(敬称略)
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
「すだちの香り」で肌と心が喜ぶ 和柑橘の魅力と風土への慈しみあふれるオイル
ELEMINISTがローンチしたのは2020年。パンデミックをはじめ、ロシアのウクライナ侵攻など、さまざまな出来事があった。社会が大きく動いたこの激動のときを経て、生活や意識・価値観・考え方が変わった方も多いのでは。一方で、以前から大切に貫き続けていることもあるかもしれない。
そこで、ELEMINISTに携わった方々に、「3年前の自分」と「いまの自分」について改めて聞いた。
深本南 / ELEMINIST創設者として2020年にメディアを立ち上げる。現在は社会起業家・環境活動家として「EARTHDAY SHIMOKITA」を実施するなど幅広い領域で活動している。
3年前のわたし
「コロナ禍の先が見えない真っ暗闇の中、いまこそグリーンリカバリーや生物多様性の大切さを伝えられるチャンスという想いを込めて、2020年のアースデイ(4月22日)にELEMINISTを立ち上げました。世界中から毎日、さばききれないほど膨大な量の最新技術やサービスなどのニュースが届き、サステナビリティが時流に乗っていく明るい兆しを実感したことを覚えています」
いまのわたし
「気候危機を解決するために自分には何ができるのか調べていたところ、日本の森林が崩壊寸前であることを知りました。地球温暖化によって雪が積もらず越冬するニホンジカが増え、森の植物を食べ尽くし、死んでいく森を自分の目で確かめました。また、年間60万頭以上のニホンジカが駆除されているものの、その命が利活用されていない事実も知りました。
日本の森林で増えるニホンジカ。
大切な情報はメディアではなく現場にある。パソコンの前にいるだけでは知ることのできない社会課題、そしてそれらの解決を目指し奮闘している人々をサポートするため、2023年はアースデイにEARTHDAY SHIMOKITAを自主企画。焚き火によるジビエ料理の提供や、森林保全のためにビジネスをしている方々とのトークショーや物販などを行いました。
さらにELEMINIST SHOPでは、アニマルウェルフェアなペットフードなどを取り扱っていますが、日本の森で生まれたニホンジカの大切な命を無駄にしないためには、ジビエのペットフードを選択する方がよりエシカルだと気づき、その普及活動も始めています」
これからの3年間でやるべきことは?
「自分の場合は社会課題とビジネスをつなげて解決していくのが得意なので、自分の能力を最大限に活かしながら、地球のために貢献できることをライフワークにしています。それぞれの立場でできることは必ずあるし、一歩踏み出せば共感してくれる仲間は必ず存在すると思います。だからこそあきらめないこと、声に出し続けること、がんばってる人にその想いを伝えてあげること。大切なことは愛すること、ただそれだけだと思います」
有田千幸/国際薬膳師・家庭薬膳アドバイザー・ライター。ニュージーランド・台湾在住経験がある日・英・中の トリリンガル。
3年前のわたし
「3年前は、エコなこと、地球にいいことをしたいという思いはあったものの、何から始めていいかよくわからずにいました。ひとまず、エコバッグやテイクアウト容器を持参するようにしたり、コスメはできるだけ環境を意識したものを使ったり。コンポストを始めたのもこのころです」
いまのわたし
「コロナ禍と娘の離乳食が始まったことがきっかけで、食に関してとくに大きく意識が変わりました。仕事で本格的に食に携わるようになったこともあり、使う食材が、どこで、どのように育てられたかをより重視するようになりました。週4~5食は自宅でヴィーガンにしています。また、食について考えていたら原材料に行き着いたため、2023年から祖父母より受け継いだ田んぼと畑で作物の生産を始めることにしました」
これからの3年間でやるべきことは?
「もともとモノは少なければ少ない方がいいと思っていて、2つのスーツケースで日々移動していたCA時代が、いままででいちばん身軽で心地よかったと感じます。だから現在のシンプルな生活スタイルにたどり着いたのは自然な流れなのかなと思っています。これからは、環境問題などを自分ごととしてとらえ、できることから始めそれを続けること。そして、自分が行動に移すことで世界がよい方向へ向かうと信じることも大切だと思っています」
井浦あい/自然由来シャンプー「Kruhi」を夫の井浦新とともにプロデュース。世界的にもっとも厳しいと言われる環境認証「Grøn Salon認証」を取得している。
3年前のわたし
「食品に関しては、農薬や生産地、添加物、メタンガスの排出量の低い鶏肉豚肉を選ぶ、平飼い卵を選ぶといったことを留意していました。ただ、日用品、とくにヘアケアに関しては洗い流す水(モコモコの泡)が気になるなか、これを使い続けて果たして本当によいのだろうかという不安から、お風呂の時間が憂鬱になっていました」
いまのわたし
「これまでの意識に加え、購入するものの容器にプラスチックが最小限に抑えられているか、の意識をもっと持つようになりました。また、プラントベースのものも積極的に摂るようになりました。衣類やバッグも日用品が長く使えるものかどうか、じっくり考えるようになり、愛着をもてるものに溢れて、とても満たされています。
3年の間に劇的に変わったのは、石けんシャンプーを使い始めたことです。いままで何十年も当たり前のようにモコモコの泡を流していましたが、石けんシャンプーの実感できる効果と環境に循環する生分解性の高さに気付いてから、お風呂が劇的に楽しい時間になりました」
これからの3年間でやるべきことは?
「気付かなかったことに目を向けるようになったり、健康に不調が出て気付けるようになったり、何かを始めたり辞めたりするタイミングはひとそれぞれにあると思います。
環境のことも、健康のことも、この先も長くずっと続くことなので、毎日が楽しく、ハッピーに過ごせる要素を日常に散りばめることができたらいいなと思います。『こうでなければならない』ではなく『こういうのもいいよね』という会話を、いろいろな方とたくさんして、自分のもっているよい知識をシェアして、自分にもシェアしてもらって、たくさんの人と同じ未来に目を向けていけたらいいなぁと、3年後もとても楽しみです」
eri/DEPTオーナー、アクティビスト。メディアやSNSを通して、環境負荷のかからない自身のライフスタイルを発信し、気候変動などの問題をメインにアクティビストとしてアクションをとっている。
3年前のわたし
「3年前というと、自分の生活を見直し始めたタイミングでした。いかに自分の生活が地球に負担をかけていたのかを日々実感していました」
いまのわたし
「気候危機の理解が深まったことで、よりベターな選択をしていくことはもちろんですが、自分が豊かに楽しくなれるということを、同時に選ぶことができるようになったと思います」
これからの3年間でやるべきことは?
「よりクリティカルに気候危機にアプローチできる実践的なことと、誰もが生活に簡単に取り入れやすいことを同時に考え、シェアしていくことが大切だなと思っています」
大田由香梨/ライフスタイリスト。プラントベースカフェ「ORGANIC TABLE BY LAPAZ」をはじめ、衣食住が織りなすくらしを総括的にスタイリングする。
3年前のわたし
「2年前から古民家の改修の取り組みをはじめました。200年前の方々の暮らしのあり方、生き方の姿勢を感じることができ、多くのことを学ばさせていただいています」
いまのわたし
「いまも変わらず、今日よりも美しい未来を願い、一日一日を大切にしています。3年前よりも、環境に対する社会の関心が確実に高まり、私自身の活動にもより溶け込んできていると感じます」
これからの3年間でやるべきことは?
「桜の木々を見上げて感動する私がいるのは、何十年も前にこの景色をイメージして桜の木を植えてくれた人がいたから。花が咲くのは3年後、もしかしたら100年後かもしれませんが。私もしっかりと美しい未来をイメージをしながら循環の種を日々蒔いていきたいと思っています」
都築虹帆/プロサーファー。ReWaveアンバサダー。中学3年生で日本プロサーフィン連盟(JPSA)のプロテストに合格。愛知県強化指定選手。
3年前のわたし
「プロサーファーとして活動しているため、海や浜にごみを見つけたり、海の汚れや臭いに気づいたりしていました。でも3年前は、SDGsの言葉の意味は知りませんでした」
いまのわたし
「もともと環境に対して意識は高い方ではあったと思います。でも、自分の年齢が大きくなったり、周りの環境の影響があったりしたからなのか、3年以上前からマイボトルを持ち歩くようになっています」
これからの3年間でやるべきことは?
「目の前の環境課題に対して、一人ひとりがより積極的に取り組む必要があると思いますね。私はマイボトルやエコバッグを使ったり、地元産の食材を買ったり、ごみ拾いに参加したり。小さくても自分にやれることをやっていくべきだと思っています」
露木しいな/環境活動家、SHIINA organic代表。2001年生まれ。気候変動枠組条約締約国会議であるCOP24、25に参加したほか、環境問題についての講演活動を行なっている。
3年前のわたし
「ちょうど3年ほど前のコロナ禍になってから、環境活動家として全国の小学校・中学校・高校・大学での講演を始めました。まずは地球環境の現状を知ってもらいたいと思い、毎日全力で講演をしていました」
いまのわたし
「3年前から引き続き、環境に関する活動を続けています。私は高校時代、インドネシアにある"世界一エコな学校”といわれる『Green School Bali』に通いました。これが、環境に対する自分の考え方や生活が変わっていったきっかけになっています」
これからの3年間でやるべきことは?
「環境問題の一番の原因は、人々が『いつか、誰かが、解決してくれる』と考えることだと思います。地道ではありますが、一人ひとりの意識改革が近道だと信じて活動していきたいです」
ベイカー恵利沙/モデル、スタイリストなどとして活躍した後、2017年よりニューヨークに拠点を移す。現在はファッションのみならず、サステナブルなライフスタイルなどもInstagramを中心に発信している。
3年前のわたし
「2019年から暮らしをよりサステナブルに変革しようとしていたので、2020年はその真っ只中。手に取るもの、選択、すべてがサステナブルで自分が納得できるものでないと自分を許せなくて、それをしばらく続けていました」
いまのわたし
「厳しい基準のくらしをしばらく続けた結果、疲れてしまって。『これでは続かない』と気がついて、自分の選択ひとつひとつを厳しくしすぎるのをやめました。学びを深めることで、個人のライフスタイルの変化だけでなく、政治に目を向けたり署名活動に参加したり、社会に変化を起こす方法が他にもあると気付いたことも大きいかもしれません!」
これからの3年間でやるべきことは?
「使い捨てや大量生産・大量消費が当たり前の社会を大きく変えていきたい。そのためには、『なぜその変化が必要なのか』をより多くの人が、自分の中で理解して納得することが必要なのかなと思います。そのことを考える時間や機会がもっと増えていくといいなあ。私もその変革の一部となれるよう、自分のできることを学び続け実施し続けていきたいですね」
四角大輔/執筆家・森の生活者 ・Greenpeace Japan&環境省アンバサダー。レコード会社プロデューサーとして活躍後、ニュージーランドに移住。湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営んでいる。
3年前のわたし
「2019年から仕事の大半を手放し、『超ミニマル主義』の執筆と環境活動に専念しました。3年前というと、可能な限りサステナブルな暮らしを営み、エシカルなものを選んでいました」
いまのわたし
「気候変動による自然災害が世界中で大型化し増えています。そんなことから、より自分のベストを目指して生活するようになっています。できる限り新しいものを買わない、そもそも消費をしないということを常に心がけていますね」
これからの3年間でやるべきことは?
「自分を見失うと本来人間が持っている愛情や思いやり、やさしさといった人間としての良心も失った状態になり、それが気候危機や環境破壊など、すべての社会問題につながっていると思います。本来の自分を取り戻す人が一人でも多く増えると、あらゆる問題が改善していくと思います。まずは自分でやれることに注力し、次に大切な人に行動を促すことができるといいですね」
和田愛莉紗(わだあり)/SDGsインフルエンサー、Z世代キャリアディレクター。2000年生まれ、埼玉県出身。Z世代向けに「SDGsの認知」「キャリア支援」の二つを軸にした活動を行なっている。
3年前のわたし
「SDGsの言葉も意味も知りませんでした。フードロスの現状についても、重く捉えておらず、その日に使う食材を買うときも、賞味期限の新しいものを手に取り購入していました」
いまのわたし
「Z世代キャリアディレクターとして、Z世代とオトナをつなげるようになり、社会的問題を解決しようとしている“オトナ”から話を聞いたり、同世代でSDGsの認知活動をしている友だちと出会って、SDGsに対して当事者意識を持つようになったりして。ものを買うことを意識的に減らし、いまあるものを長く使えるようにリメイクしたり、捨てずに人にあげたりするようになりました。その日に使う食材は、賞味期限の近いものから買うようにしています」
これからの3年間でやるべきことは?
「SDGsの課題に当事者意識を持ち、みんなで解決に向かって動き出すことだと思います。 私が同世代のSDGs活動から影響を受けたように、たくさんの人に少しずつでも意識してもらうことが大事だと思っています。地道ではありますが、私たちがオトナになり、子ども、孫がよりいい社会で暮らしていけるように先を見据えて、いまから動かないといけないということを一生懸命伝えていきたいと思います(笑)。手をとりあって一緒に活動できたら、やれることも発信力も何倍にもなると思っています。SDGsを意識していることが『カッコイイ』『あたりまえ』というカルチャーを根付かせていきましょう!」
「ELEMINIST Followers」は、サステナブル・エシカルな暮らしを実践しているELEMINISTのコミュニティだ。そんなELEMINIST Followersのメンバーにも、この3年間での変化について聞いた。
3年前のわたし
「プラスチックが環境汚染になることを知らず、安いとか便利という理由でプラスチック製品を購入していました」
いまのわたし
「鼻にストローが刺さったウミガメの動画を見て、プラスチックによって生態系に影響が出ていることを知り、プラスチック製品を購入しないプラフリー生活を心がけています」
これからの3年間でやるべきことは?
「エシカルな書籍を読んで環境問題を勉強したり、環境イベントに積極的に参加するようになりました。一人でも多くの人に環境問題を意識してもらうことが大切だと思います」
3年前のわたし
「環境問題の原因について知識のアップデートがなされていなかった(とくに畜産の影響に関して無知)。断捨離をいいものと思っていた(いまはそもそも捨てるものが多くならないように買い物自体を見直すように)。ペットボトルの水を買うのに躊躇がなかった」
いまのわたし
「お肉の代わりにソイミートを食べる、洗剤をエコフレンドリーなものに変えるor控える、マイボトルは完全に定着しました。また、身近な生活だけでなくレストランを選ぶ、ホテルを選ぶ、洋服を選ぶときにも、せっかくならいい取り組みをしている企業を応援の意味をこめて購入するという意識が定着しました」
これからの3年間でやるべきことは?
「身近な生活を変えるだけでなく、政治的アクションも積極的に行うこと。せめて署名活動や投票などすぐできるアクションは必ず行うことが大切だと思います」
3年前のわたし
「コスパ(コストパフォーマンス)、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視していた。洋服もデザイン重視で割と頻繁に購入していました」
いまのわたし
「コロナ禍で静の時間ができ、生活スタイルを見直したり、学び直しをしたことにより、QOLや本当の豊かさ、将来について考え直しました。洋服を含めて、モノを購入するときには、その生産過程も気にするようになった。また不用品を捨てるときには、本当に捨てていいのか、直して使えないか、など慎重になりました」
これからの3年間でやるべきことは?
「サステナブル、エシカルという言葉の認知度が上がるなか、一過性のトレンドではなく、こういった取り組み自体が持続的になり、定着するようにすべきだと思います」
3年前のわたし
「エコバッグなどもそこまで浸透していなかったように思います。お買い物をしては袋をもらったり、それが当たり前のような毎日でした」
いまのわたし
「エコバッグやマイカップなどおしゃれのひとつとして取り入れやすくなり、その日の気分やお洋服に合わせたり、一部分として導入しやすいアイテムがたくさん増えたと感じます。日常的なあたりまえが変わってきた気がします。なにごとも決めつけたり、完璧を求めたりすると苦しくなりますが、自分なりのサステナブルや、エシカルなアクションを楽しむようになりました」
これからの3年間でやるべきことは?
「"1人の百歩より100人の一歩"という言葉を、サステナブルやエシカルに触れ始めたらたくさん耳にしました。少しのアクションでもたくさんの方に広まれば大きな一歩になります。その歩幅をジャッジせずに、できる範囲で楽しく取り入れていくことかなぁと思います!」
3年前のわたし
「家庭ごみの分別はしっかりしていましたが、ごみを出さない工夫まではしていませんでした。また、エシカルという言葉も知らず、見れば何でもほしくなって買っていました」
いまのわたし
「ごみを出さないように心がけています。またドネーションされる商品を買ったり、自らもドネーションすることが増えました。大きく変わったのは、会社を立ち上げ食品ロス削減や地域創生、雇用創出などに少し貢献する生活環境を持てたことです」
これからの3年間でやるべきことは?
「自身が楽しみながらエシカルな生活を送ること。楽しんでる様子を周りの人に見てもらうことがいいのではないかと思います」
ELEMINISTがロンチした3年前から、環境に意識を向けてなんらかの行動を起こしていた人もいるが、そうでなかった人も多い。でも、そんなふうに何かのきっかけがあって、サステナブルやエシカルな取り組みに興味を持つ人が一人でも多く増えれば、それが未来を変えていく一歩になるのかもしれない。
これからの3年は、私たちがつくる未来。たとえ小さな取り組みであっても、地球や環境のことを思って行動をおこすことが大切。ささいなことでも大丈夫。明るい光にあふれた未来に向けて、私たちが自分にできることを始めていこう。
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