NEW ENERGY TOKYOレポート | 未来をクリエイトする3つのプロダクト

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デザイナーやアーティスト、企業がジャンルを超えて一同に集結するクリエイティブの祭典「NEW ENERGY TOKYO」が、9月8日から9月11日まで新宿住友ビル三角広場で開催。ローウェイストな循環型サービスを立ち上げた3ブランドのインタビューをお届けする。

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2022.10.19

時、価値観、人が交差する「現在」にある、希望に満ちたエネルギーの祭典

クリエイションコミュニティ「Blue Marble(ブルー マーブル)」がプロデュースを手がける合同展示会「NEW ENERGY TOKYO(ニューエナジー トーキョー)」が、9月8日から9月11日まで新宿住友ビル三角広場で開催された。

エシカルに取り組むブランドが集結 クリエイションの祭典「NEW ENERGY TOKYO」が開催

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ファッションやファッション雑貨、ライフスタイル雑貨、エシカル商品、ビューティー、フード、アート等、さまざまな分野の注目デザイナーやアーティスト、企業がジャンルを超えて一同に集結するクリエイティブの祭典。5つのエリアに分けられた場内には、趣向を凝らしたブースがずらりと並び、感性を刺激するクリエイティブな展示で来場者の耳目を集めた。

出展者インタビュー 未来をクリエイトするそれぞれの思い

社会課題や気候危機の解決を目指すアイデアが集結したイベントのなかでひと際異彩を放っていたのが、ローウェイストな循環型サービスやプロダクトを立ち上げたばかりの3ブランドだ。これからの時代に問われる“持続可能なビジネス”を独自に解釈し、人・社会・環境という三方よしのサービスへと昇華させた点で他のサービスとは一線を画す。

地球の現状を憂う彼ら彼女らはさまざまな課題とどのように向き合い、ビジネスを通して何を実現しようとしているのだろうか。

ヘアケアブランド「Kruhi(くるひ)」を立ち上げた井浦新さんと妻のあいさん、ゼロウェイストな梱包材「stible(スティブル)」を運営する88Base株式会社の望月大さん、フードロス削減に向けたペット用おやつを販売する「Mellowbear(メロベア)」の山本麻実さんに話を聞いた。

真面目と遊び心が詰まったヘアケアブランド「Kruhi」

NEW ENERGY 2022 Kuruhi

井浦新さん(写真右)と妻の井浦あいさん(写真左)

井浦新さん(以下、敬称略):ヘアケアの悩みは家族一人ひとりで異なります。井浦家の場合、僕は年を重ねるごとに細くなっていく髪、妻は髪のパサつき、子どもたちは成長による頭皮のにおいなどですね。ナチュラルな商品を選んでいたつもりでしたが、髪の悩み、潤いや頭皮環境はあまり改善しませんでした。

「これがヘアケアの限界なのかな」と感じながらも、諦めずに次々と新しい製品を試し続けていくと、いつしかバスルームがヘアケアグッズで溢れかえっていることに気づいたんです。そしてある日、妻が「きっとこのままでは解決しないよね。もう、私たちの手でつくろう」と持ちかけてきた。これが、Kruhi立ち上げのきっかけでした。

井浦あいさん(以下、敬称略):バスルームの排水は、海にたどり着きます。私たちは地球や未来に責任をもって消費をしないといけない。気候危機が深刻化するなか、一歩を踏み出さなければ何も変わりません。

Kruhiは石けんシャンプーなので、あまりメジャーではないカテゴリーなのかもしれないですが、環境に寄り添った生活を実践していくことを大切にしたかったんです。

井浦あいさんと井浦新さん

お子さんと一緒に環境問題について学んでいるという井浦さんご夫妻。地球にやさしい暮らしを家族ぐるみで実践している。

井浦新:人と環境にやさしい石けんシャンプーにも弱点はあります。石油由来の成分が入ったシャンプーのような泡立ちはありませんし、すぐには髪の潤いを感じにくい。でも、自然環境に排出されるものだと考えると、それ以外の選択肢はありませんでした。

そもそも石けんは、縄文時代にはすでに存在していました。焼いた獣の肉から滴った脂が灰と混ざり合い、偶然生まれたといわれています。一万年以上日本人が使い続けてきた生活道具をいまを生きる私たちが使い、それを未来へつなげていく。ルーツを知って、より石けんシャンプーのことを愛せるようになりましたね。

井浦あい:もう待ったなしの状況で、石けんシャンプーを使うという選択肢があるのを多くの人に伝えたくて、開発から1年弱という急ピッチで製品化に漕ぎ着けました。

本物を生み出すために

井浦新:この短期間で成し遂げられたのは、二人三脚で製造に取り組んでいただいた「ボタニカルファクトリー」(鹿児島県南大隅町)さんの協力のおかげです。よりよい製品をつくるためにブラッシュアップしていくなか、アルミ製のボトルを採用したのもこだわりのひとつです。

アルミはリサイクル効率が高く、プラスチックに劣らないぐらい強度が保てます。地球温暖化を止めるために、製造や廃棄で生じる二酸化炭素を抑えたかったんです。Kruhiは僕たちの真面目さをすべて注ぎ込んだプロダクトだと自信をもって言い切れます。核となる部分に真剣さがないと、“本物”を生み出すことはできません。

ただ同時に、遊び心も忘れたくありませんでした。たとえば、パッケージ裏のバーコードから一本の小さな芽が生えていたり、生産国名を「Made in Japan」ではなく「Made in Kagoshima」としていたり。長年デザインやものづくり、表現に関わってきましたが、マニアックなものを伝える際は、いかに楽しくわかりやすく工夫するかが大切だと思っています。あとは、ロゴデザインもね?

井浦あい:私の9歳の甥っ子がクレヨンで書いたデザインをベースに、デザイナーさんに仕上げてもらったものなんです。

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Photo by Kruhi

「洗練された見た目のアルミボトルのなかに、自然の恵みがギュッと詰まっている。そういうギャップも狙いました」(井浦新さん)

森でお菓子の家を探すような体験を

井浦新:そういう意味では、香りから伝わる楽しさやワクワクも大切にしているんです。じつは俳優の仕事をする際、配役に合わせた香りを自分で調香して役をイメージをしているんですね。演技は感情を動かす仕事なので、スイッチのいい切り替えにもなりますし、かれこれ10年以上は続けています。

ティーツリーやラベンダーなどはシンプルで誰からも好かれるかもしれませんが、ここでもオリジナルにこだわった。そこで、9種類のエッセンシャルオイルを使って「キャンディーフォレスト」という香りを設計しました。

手に取ったときはデザートのような甘い香りが楽しめます。頭につけるとエッセンシャルオイルの香りが際立ち、洗い流すと森の香りが全体を包み込む。お菓子の家を探しながら森のなかを歩いているような風景をイメージしました。

一見、ナチュラルな製品だと伝わりづらいアルミボトルのなかに、縄文から続く自然の恵みが詰まっていて、洗髪すればやさしい香りに癒される。Kruhiを使って、髪と心が潤うバスタイムを楽しんでいただきたいですね。

人と人が手を取り合って未来を変えるリユース梱包材「stible」

stibleの望月さん

望月大さん/88Base株式会社代表

望月大さん:私たちは、リユース梱包材の循環型サービス「stible」というサービスを運営しています。名前の由来は「still usable(まだ使える)」という言葉を省略した造語です。「まだ、使える。」というキーワードには“1つを大切に長く使う”という思いと、使えなくなっても捨てずに“資源として、まだ使える”というメッセージが込められています。

EC市場が活況を呈している一方で、配送に使われる梱包材の環境負荷が問題になっています。リユース可能なstibleを導入いただければ、ストアさまはstibleに商品を入れてお客さまに発送いただき、お客さまは折りたたんでポストに投函いただく。クリーニングや修理をすれば、20回以上繰り返し使えます。

いずれは、再利用型の梱包材をカルチャーにしていきたいと思っています。マイボトルやマイバッグを持つように、stibleをポストに投函することが日常になるよう認知を広めていきたいですね。

社会課題の解決にはポジティブな+1が重要

stibleのブース

丈夫な素材を使用しているので、リサイクルはもちろん、アップサイクル、資材として提供など、使用後の再利用の可能性は広がる。

この事業を立ち上げようと思ったのは、数年前のフィリピン滞在がきっかけでした。現地でストリートチルドレンや貧困に苦しむ子たちを目の当たりにしたときに、「自分はなんて恵まれていたんだ」と気付かされたんです。経済的に恵まれている自分のリソースを使って、子どもたちのために何か力になりたいと思った。

そこで、自分で会社を立ち上げて子どもたちへ利益を循環させるという発想に至ります。2年ほど検討した結果、たどり着いたのが梱包材でした。人と企業がつながる仕組みだと思うので、立ち上げ時に掲げた「共創し共感し共有する社会を創る」というミッションからズレないよう意識しています。

みんなで一緒につくり上げ、さまざまな人に共感してもらう。そこで得た知識や技術を共有して、共創を生み出す。コロナ禍で人と人、人と企業のつながりが薄まっているいまだからこそ、手を取り合って何かを成し遂げていくことが重要だと思っています。

もし一人の人間が100歩進むのであれば、100人が集まって一緒に一歩を踏み出したほうが気が楽だと思います。地球を思って行動するのも大事ですが、厳密すぎても続かないし、それぞれの歩調があってもいい。社会課題の解決へ前進させるためには、ビジョンにも入れている「ポジティブな+1」の積み上げが大切だと考えています。

地元・山梨県で起業 いずれは林業への挑戦を視野に

stibleのブース

シンプルな構造で、「たたむ」、「広げる」を感覚的に、簡単にできるのもこの商材の魅力だ。

私たちの会社は、生まれ育った山梨県の南アルプス市にあります。東京で起業する選択肢もありましたが、やはり家族の近くで仕事をしたいですし、あとは山梨に新しいカルチャーを持ってきて地元を盛り上げたい。

山梨県には日本屈指の原生林が広がっています。stibleの事業が軌道に乗ったら、社会課題のひとつとなっている国産材の需要上昇にも取り組んでいきたいと思っています。森林伐採によるさまざまな問題が世界中で起きている一方、日本では計画的な間伐を実施しない森が育ちません。

ゆくゆくは国産材を使ったブランド化を進めるなど、林業への挑戦も視野に入れて地元への貢献を続けていきたいですね。

楽しみながらよりよい選択を応援するペットブランド「Mellowbear」

Mellowbear山本麻実さん

山本麻実さん/Mellowbear代表

山本麻実さん:「Mellowbear」を立ち上げたのは、フードロス問題の解決に少しでも貢献したいという強い思いがあったからです。ふだんは会社員として働いているんですが、行動を起こすのはいましかないと思い立ち、今年に入ってローンチしました。

もともと地元愛媛県に帰省した際に、瀬戸内海の海をビーチクリーンをしたり、愛犬との散歩中にごみ拾いをしたりしながら、地球に対してなにか自分なりにできることはないかと模索していました。そんなときにフードロスの実態を知って、ふだんから手づくりしている愛犬のおやつとかけ合わせれば、まだまだ食べられるのに捨てられている食品をアップサイクルできるとひらめきました。

販売しているおやつは、すべて私の手づくりです。自宅近くの商店街にある八百屋さんなどから譲っていただいた廃棄野菜を材料に、保存料不使用やグルテンフリー、無添加にこだわって、おいしくて安全な製品開発を心がけています。

ふだんは会社員 両立に苦労した日々に差した光明

Mellowbear

カラフルなパッケージには、一つひとつ手書きで使用した食材が書かれている。これも愛する仲間への気遣いだ。

立ち上げた当時は、仕事と、ブランドの両立のバランスを見つけるのに工夫が必要だと感じる場面が多かったです。思いや実現したいことは明確にあるものの、まず何をすればいいのかもわからない日々。「フードロスの食材を活用した犬のおやつをつくりたいです。賛同してくれませんか?」と自作のビラを作成し休みの日に、街の商店街などを自転車で回り、お話ししていきました。

はじめのうちは「そんなものは渡せない」「食材に責任を持てない」と断られることが多くて。泣きそうになりながら声をかけ続けていると、ある八百屋の店主さんが「すごくいいね」と共感してくれて。そこから少しずつ軌道に乗りはじめました。

どうやって進めていくべきなのか、誰に聞けばいいのか、自分がやろうとしていることは合っているのか。など、不安もたくさんありましたが、それでも思い切ってチャレンジしてみると、周りの人たちがアドバイスをくれたり、協力してくれたりしました。

やはり、はじめの一歩はとても重く感じましたが、いざ踏み出してみると意外と物事がとんとん拍子に進んでいくんだなと実感しました。

ベストにこだわるではなく、ベターを選び続けるということ

Mellowbear

初めて商品化したマグロのせんべい。つなぎを使用していないので、練る手間はかかるが、シンプルな材料でつくることができた。

おやつなので、おいしいということや、身体にいいということが前提で、その先に、フードロスの食材を活用しているということがあり、Mellowbearのおやつを通し、少しでもこの地球について考えるきっかけになればいいなと思っています。

おいしさや素材へのこだわりはもちろん、ロゴもポップで楽しいカラーにこだわっています。ブランドのコンセプトに「We just wanna have fun.」と掲げているのは、そういう理由なんです。楽しくないと何事も続かないので、「楽しい」という感情はとても大切にしたいと思っています。

はじめからベストを目指すのではなく、「こっちのほうがよりよいかも」というように、ちょっとずつベターな選択をしていくことが大切だと思うんです。試行錯誤しながら、少しずつ理想に近づいていきたいです。

会場に訪れたすべての人が未来をクリエイトするプロダクトやアイデアに触れた4日間。はじめは小さくて個人的な“思い”かもしれないが、その思いがかたちとなり、集い、エネルギーとなった。この場所からはじまる“新しい力”が、時代を突き動かす変化の波へとなっていくはずだ。

撮影/Chisako 取材・執筆・編集/ELEMINIST編集部

※掲載している情報は、2022年10月19日時点のものです。

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