ジェンダーフリーとは ジェンダーレスとの違いや普及への取り組み

手を触れ合わせようとする二人の人間

Photo by Hanna Morris on Unsplash

社会的・文化的な性的差別を遠ざけ、みずからの能力を自由に発揮するジェンダーフリー。男女、あるいはそのほかの性にとらわれず、個性や個人の資質を重視する考えかただ。しかし、いまだジェンダーに関してはさまざまな課題がある。ジェンダーフリーをはじめ、ジェンダーにかかわる課題や取り組みにつ

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2022.11.09

ジェンダーの定義とは何か

ジェンダーとは、社会的・文化的な都合からつくられる性別を指す。たとえば「男性として、または女性として生まれたのだからこの役割を負うべき」は、ジェンダーの概念で生まれた考え方だ。生まれながらの生物学的な性別(sex)が理由で、社会や文化が一方的に押しつけているものだとも言える。

ジェンダーは差別を生み出すケースが少なくない。「女性だから男性の言うことを聞くべき」「男性だから強くあるべき」など、人によっては耳にしたことがあるかもしれない。ジェンダーが周知される時代になったいま、これはれっきとした差別にあたる。

先進国では速度の違いはあっても是正が進みつつあり、ジェンダーが問題を生みやすい性質であること、解決するべき課題であることが認知され始めている。しかし開発途上国ではいまだ理不尽なジェンダーがまかり通っている地域が少なくないのも事実だ。

女性だから勉強は必要ないとされたり、ひどいときには理不尽な暴力にさらされる。ジェンダーの問題は権利の侵害や人権の蹂躙を招きかねないのだ。

SDGsのゴールには「ジェンダー平等を実現しよう」というものがある。ジェンダーにまつわる問題は人類共通の課題として解決するべきだととらえられており、人々はあらためてジェンダーに意識を向ける必要がある。

ジェンダーフリーとは

ジェンダーに関する言葉として「ジェンダーフリー」が挙げられる。ジェンダーフリーとは、誰もが性による社会的・文化的差別を受けることなく、自らの能力を自由に発揮するべきという考えかただ。

そのためには従来の常識のなかに根付いていた差別観を撤廃し、社会全体で是正に取り組むことが必要となる。

ただし、ジェンダーフリーとは決して「性別を撤廃し、中性化する」という意味ではない。たとえば性自認が男性と女性の人々のロッカールームを同一にするべきだろうか?それは社会的に正しいとは言えないはずだ。

ジェンダーフリーとはあくまで「社会的性別(ジェンダー)が生み出した不適切な固定観念や差別の撤廃」を根底に、性別にとらわれず、個々の能力の発揮に重きを置いたものである。

ジェンダーギャップ指数

ジェンダーフリーの普及や認知度合いは、ジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index)に大きく反映される。

ジェンダーギャップ指数とは、世界各国における男女格差をスコア化したものだ。いわばジェンダーフリーの指標と言える。

経済・教育・健康・政治の各エレメントを0~1の間でスコア化する。数値が1に近いほどジェンダーギャップが小さく、逆に0に近いほど大きい(問題がある)とされる。0に近いとされた国はジェンダーギャップについてあらためて考え、是正について啓発を進めるべきだろう。

2022年7月13日に公表されたジェンダーギャップ指数ランキングの1位はアイスランド(スコア:0.908)、2位はフィンランド(スコア:0.86)、3位はノルウェー(スコア:0.845)だった。北欧3国はジェンダー問題解決に熱心であり、つねに好成績を残している。

なお、日本は116位だった。完全なジェンダーフリーにはいまだ遠く、今後のさらなる啓発が切望される。ただし教育・健康のエレメントでは限りなく1に近いスコアをマークしている。これは世界でもトップクラスの結果だ。高い教育成果や健康意識を持つ優秀な人材をいかにして経済・政治エレメントで活躍できるようにしていくかが課題である。

【2022年】ジェンダーギャップ指数ランキング 世界と日本の現状・今後の課題は

関連記事

ジェンダーレスとの違い

ジェンダーに関連する用語として、ジェンダーレスも広く知られている。ジェンダーフリーとジェンダーレスは似た意味を持っていると思われるかもしれないが、実際は細かい違いがある。

前述のとおり、ジェンダーフリーとは「性による社会的・文化的差別を受けることなく、個々の自由に能力を発揮すること」だ。

いっぽう、ジェンダーレスは「社会に存在する社会的・文化的な性差をなくしていこうという考えかた」である。仕事や生活のなかにある男女の区別を撤廃することが目的だ。

たとえば「看護婦」「保母」「OL」などの呼称は「看護師」「保育士」「ビジネスパーソン」に。「男の子ならブルーの服を、女の子ならピンクの服を」といった固定概念を「男の子も女の子も好きな色を」とニュートラルに。

最近では男女ともにスカート・スラックスの両方の制服が選択できる学校もある。教育現場でのジェンダーレス化の推進は、未来をになう若者たちにとって大きなメリットをもたらすのではないだろうか。

性別によらず好きな制服を着用可能に ヴァージン・アトランティック航空

関連記事

関連する用語

ジェンダーレスのほか、関連する用語はある。そのいくつかを紹介する。また、ELEMINISTが過去にそれぞれをピックアップした記事もぜひご覧いただきたい。

LGBT

性的マイノリティを表す言葉。Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)の頭文字を取り、LGBTと表記される。

LGBTQIAとは? 意味とセクシャルマイノリティの多様化を解説

関連記事

ジェンダーニュートラル

男女を性差で二分することに疑問を持ち、性別にとらわれず、言葉や思考の中立的な状態を目指す考えかた。

男女差にとらわれない「ジェンダーニュートラル」の考え方とは 多様性を尊重する7つの事例

関連記事

シスジェンダー

生まれながらの性と性自認が一致している人を指す。生物学的に男性(女性)として生まれた人が「自分は男性(女性)だ」という認識を持っていること。

シスジェンダーとは 多様性に富んだ性的指向を知る

関連記事

ノンバイナリー

みずからの性を男女に分類しない人を指す。第三の性とも呼ばれる。

第三の性「ノンバイナリー」とは? トランスジェンダーとの違いも解説

関連記事
次ページ
ジェンダーに関するさまざまな問題
※掲載している情報は、2022年11月9日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends