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シスジェンダーは、トランスジェンダーと比較して耳慣れない言葉だ。どのような意味なのか、あらためて確認しておこう。シスジェンダーやセクシュアリティに関連する言葉とその意味を、わかりやすく解説。セクシュアルマイノリティに対する認識を深めよう。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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シスジェンダーとは、自分自身が認識している「心の性」と、生まれ持った「体の性」が一致している人を指す言葉である。自分自身を「男」だと認識しており、さらに生まれ持った性別も「男」である場合に、その人は「シスジェンダー男性」だ。同様に、「心の性」と「体の性」がともに「女性」である場合、その人は「シスジェンダー女性」となる。
シスジェンダーの対義語は、トランスジェンダーである。トランスジェンダーという言葉を耳にした経験はあっても、「シスジェンダーは聞いたことがない」と感じる人も多いのではないだろうか?それは、シスジェンダーが多数派を占める言葉であるためだ。
シスジェンダーという言葉は、トランスジェンダーとセットで生まれた。「トランスジェンダー」だけに特別な言葉を当てはめれば、その裏で、新たな差別が生まれかねないからだ。
たとえば、「トランスジェンダー」の対義語を「ノーマル」と表すのは危険である。非トランスジェンダーがノーマルなら、トランスジェンダーはアブノーマルと判断されかねないだろう。だからこそ必要とされたのが、マジョリティを示すための言葉であり、生み出されたのが「シスジェンダー」という言葉である。
ちなみに「シス」とは、ラテン語で「こちら側にものが集まっている状態」という意味の言葉である。対義語は「トランス」であり、同じくラテン語で「乗り越えて移動している状態」を示している。
現代社会においては、マイノリティであるトランスジェンダーに注目が集まりやすく、シスジェンダーという言葉を知らなくても、とくに問題はないかもしれない。実際に、トランスジェンダーの対義語として「非トランスジェンダー」という言葉を見かけることもあるだろう。
しかし、ジェンダーとそれに関わる問題をより深く認識するためには、トランスジェンダーを理解するだけでは不十分である。対義語としてのシスジェンダーにも、しっかりと目を向ける必要があるだろう。
しかし、ジェンダーとそれに関わる問題をより深く認識するためには、トランスジェンダーを理解するだけでは不十分である。対義語としてのシスジェンダーにも、しっかりと目を向ける必要があるだろう。
先ほど解説したとおり、シスジェンダーとは「生まれたときに割り当てられた性」と「心の性(性自認)」が一致している人のことだ。しかし、シスジェンダー男性・シスジェンダー女性だからといって、その性的趣向が必ずしも「異性」に向かうわけではない。同じシスジェンダーでも、その性的指向はさまざまだ。
・シスジェンダーであり、異性のみが恋愛対象になる人(シスジェンダーでヘテロセクシュアル)
・シスジェンダーであり、同性のみが恋愛対象になる人(シスジェンダーでゲイ、もしくはシスジェンダーでレズビアン)
・シスジェンダーであり、同性、異性の両方が恋愛対象になる人(シスジェンダーでバイセクシュアル)
・シスジェンダーであり、どちらも恋愛対象にならない人(シスジェンダーでアセクシュアル)
性自認と性的指向は、全く別の要素を示す言葉であり、シスジェンダーにも多様性がある。
セクシュアルマイノリティに対する関心が高まるにつれて、世界的に、ジェンダー平等・セクシュアルマイノリティに属する人々の尊重が叫ばれている。自分自身が考え、その立場を決定するために必要なのは、正しい知識だ。時代の流れに対応するため、セクシュアリティに関連する言葉と意味を知っておこう。
セクシュアリティという言葉を耳にする機会は多くても、そもそもの意味をよく知らない…という方も多いのではないだろうか。実はセクシュアリティという言葉に、明確な定義はないとされている。
性自認や性的指向、身体的性別など、幅広く「性」に関わることを、セクシュアリティと言う。人間の性のあり方を示す言葉として、用いられるケースも多い。
身体的性別とは、生まれたときに割り当てられた性のことを言う。一方で性自認は、自分自身の性をどう認識しているのかを指している。性的指向は、どのような性を恋愛対象にするのかによって定義される。
これら3つの要素に、「性表現」(自分がどのような性に見られたいのか、その表現方法)を加えて、自身のセクシュアリティが決定される。
ジェンダーとは、社会的・文化的な観点による男女の性差を指す言葉だ。主に身体的性別によって「男性だからこうあるべき」「女性だからこうあるべき」と、社会的な役割を与えられたり、差が生まれたりするケースも少なくない。このような、ジェンダーによる差別を撤廃するために生まれたのが、ジェンダーフリーやジェンダー平等に向けた取り組みである。
1990年代から注目されたジェンダーフリーだが、本来の意味である「ジェンダー差別からの解放」ではなく、「性差そのものからの解放」を目指すものとして、誤解される場面もあった。ジェンダーフリーの本来の意味を伝え、より積極的な取り組みを行うために使われるようになったのが、
ジェンダー平等という言葉である。ジェンダー平等は、SDGsの一つとしても掲げられている。2030年に向けて、日本および世界において、さらなる取り組みが期待されている。(※1)
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セクシュアリティを示すための言葉にも、さまざまな種類がある。それぞれの正確な意味を把握しておこう。
ヘテロセクシュアル→性的指向が「異性のみ」である人
ゲイ・レズビアン→性的指向が「同性のみ」である人
バイセクシュアル→性的指向が「異性・同性の両方」である人
アセクシュアル(エイセクシュアル)→同性・異性にかかわらず恋愛感情を抱かない人ストレート→シスジェンダーかつヘテロセクシュアルである人
ストレートアライ→ストレートであり、LGBTを理解し支援する人
トランスジェンダー→性自認と身体的性別が一致していない人
先ほども解説したとおり、トランスジェンダーの対義語がシスジェンダーである。しかしシスジェンダーだからといって、ストレートとは限らない。シスジェンダーのなかにも、ゲイやレズビアン、バイセクシュアル、アセクシュアルの人は少なくないのだ。
また近年注目されつつある言葉に、「シスジェンダー・プリビレッジ」がある。プリビレッジとは、生まれながらにして持っている「特権」のことだ。
シスジェンダーにとって「当たり前」のことが、トランスジェンダーにとっては「そうではない」という事実を示している。特権を持ち、さらにそれを意識する機会が少ない人ほど、「生きにくさ」を感じにくいと言えるだろう。
シスジェンダー・プリビレッジの具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
・自分の性自認を公表することで、社会から不適切な扱いを受けない(暴力や性的虐待、職場での離職勧告、近隣からの冷たい目など)
・公共トイレの性別による区別を気に病んだ経験がない
・入院や収容によって、性による誤った区別をされるのでは、と不安になることがない
・自身のセクシュアリティを知られることを恐れ、医者にかかれず健康を損なう恐れがない
マジョリティであるストレートは、自身が生まれながらにして持つ特権を「当たり前のもの」として捉えがちだ。ごく普通に生活しているだけで、「特権」という認識を持っていないケースも多いだろう。
しかし、マジョリティにとっての「普通」が「特権」であると知ることは、マイノリティの生きづらさの理由を知るきっかけにもなる。トランスジェンダーを含む、性的マイノリティが、どのような点で不自由・不安を抱えているのかを知れば、ジェンダーおよびセクシュアリティに関する課題の解決策も見えてくるのではないだろうか。
トランスジェンダーの対義語であるシスジェンダー。しかしシスジェンダーのすべてが、異性を恋愛対象とするわけではない。シスジェンダーのなかにも、セクシュアリティの多様性が存在している。
単一の枠組みで捉えて議論するのは、極めて難しいと言えるだろう。だからこそ重要視されるのが、お互いのセクシュアリティを認め合い、受け入れ合うことだ。
「LGBTQ+」や「LGBTQIA」といった言葉が世界的にも認知されるようになったいま、セクシュアリティやジェンダーについて、これまで以上に深く考える人も増えてきている。本コラムをきっかけに、理解を深めてみてほしい。
※ “男女平等を実現し、すべての女性と女の子の能力を伸ばし可能性を広げよう”
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/5-gender/
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