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2022年7月、今年のジェンダーギャップ指数が公表された。日本の順位に注目するとともに、「そもそもジェンダーギャップ指数とは何なのか?」についても学んでみよう。スコアの算出方法や世界各国のランキングや取り組み状況を解説する。
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ジェンダーギャップ指数は、近年の国際社会において、高く注目される指標の一つである。
ジェンダーギャップ指数が初めて公表されたのは、2005年のこと。世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が世界各国の男女格差の状況をわかりやすく数値化し、ランキング形式で発表している。SDGsに「ジェンダー平等を実現しよう」という目標が盛り込まれたこともあり、ランキング上位国だけではなく、下位国にも注目が集まっている。
では早速、ジェンダーギャップとジェンダーギャップ指数について、より詳細な情報をチェックしてみよう。
ジェンダーギャップを日本語に直訳すると、「男女格差」である。性別の違いによって生じる、さまざまな格差を指す言葉だ。格差が生じるのは、社会全体においてのみではない。ときには家庭内の役割においても、ジェンダーギャップは生まれてしまう。より深く理解するため、具体例を挙げてみよう。
・雇用機会や賃金が男女平等ではない
・性別を理由に「学歴は必要ない」と言われる
・性暴力や人身売買の被害に遭う
・児童婚や強制結婚をさせられる
ジェンダーギャップを放置すれば、性別を理由に理不尽な扱いを受ける人が増加するだろう。とくに女性は、暴力や虐待の被害に遭いやすい。また妊娠や出産といった女性特有のライフイベントは、仕事に影響を与えやすい。雇用やキャリア、賃金といった面で、格差が生じる恐れがある。
WEFが毎年一度発表しているジェンダーギャップ指数は、「ジェンダーギャップ」という目に見えない要素を、数値化したデータである。「Gender Gap Index」の頭文字をとってGGIとも呼ばれている。日本語では、「男女平等格差指数」だ。
ジェンダーギャップ指数は、各国の数値をランキング形式で発表する。とはいえ、これは各国の分断を促すためではない。それぞれの国が、自国内の男女格差課題を把握し、解消するために具体的な行動を起こすことを目的にしている。
ジェンダーギャップ指数は、格差を当たり前にしないため、またより多くの人が当事者として問題意識を持つために公表されている。とくに男女不平等の社会においては、男性に比べ、女性が不利益を被りがちだ。ランキングは、世界を変えるためのきっかけと言えるだろう。
ジェンダーギャップ指数は、以下の4分野の統計データから算出される。
・経済(労働参加率・同一労働における賃金・収入格差・管理職の男女比・専門技術の男女比)
・政治(議会や閣僚など意思決定機関への参画・過去50年間の国家元首の在任年数における男女差)
・教育(識字率・初等教育就学率・中等教育就学率・高等教育就学率の男女比)
・保健(出生時性比・平均寿命の男女差)
これら4分野のスコアをそれぞれ導き出した上で、その平均値が最終的なジェンダーギャップ指数として公表される仕組みだ。
男女間の格差が全くない完全平等の状態が「1」、反対に完全不平等の状態が「0」である。つまりジェンダーギャップ指数が「1」に近い国ほど男女格差が存在しないことを示している。
2022年のジェンダーギャップ指数は、2022年7月13日に公表された。2022年のランキングには、世界の146か国が参加。日本の順位は116位である。WEFの「ジェンダーギャップ指数2022」から、世界各国の順位やスコアを紹介しよう。(※1)2024年のジェンダーギャップ指数ランキングはこちらから。
順位 | 国名 | スコア |
1位 | アイスランド | 0.908 |
2位 | フィンランド | 0.86 |
3位 | ノルウェー | 0.845 |
4位 | ニュージーランド | 0.841 |
5位 | スウェーデン | 0.822 |
6位 | ルワンダ | 0.811 |
7位 | ニカラグア | 0.81 |
8位 | ナミビア | 0.807 |
9位 | アイルランド | 0.804 |
10位 | ドイツ | 0.801 |
11位 | リトアニア | 0.799 |
12位 | コスタリカ | 0.796 |
13位 | スイス | 0.795 |
14位 | ベルギー | 0.793 |
15位 | フランス | 0.791 |
16位 | モルドバ | 0.788 |
17位 | スペイン | 0.788 |
18位 | アルバニア | 0.787 |
19位 | フィリピン | 0.783 |
20位 | 南アフリカ | 0.782 |
21位 | オーストリア | 0.781 |
22位 | 英国 | 0.78 |
23位 | セルビア | 0.779 |
24位 | ブルンジ | 0.777 |
25位 | カナダ | 0.772 |
26位 | ラトビア | 0.771 |
27位 | 米国 | 0.769 |
28位 | オランダ | 0.767 |
29位 | ポルトガル | 0.766 |
30位 | バルバドス | 0.765 |
31位 | メキシコ | 0.764 |
32位 | デンマーク | 0.764 |
33位 | アルゼンチン | 0.756 |
34位 | モザンビーク | 0.752 |
35位 | ガイアナ | 0.752 |
36位 | ベラルーシ | 0.75 |
37位 | ペルー | 0.749 |
38位 | ジャマイカ | 0.749 |
39位 | スロベニア | 0.744 |
40位 | パナマ | 0.743 |
41位 | エクアドル | 0.743 |
42位 | ブルガリア | 0.74 |
43位 | オーストラリア | 0.738 |
44位 | スリナム | 0.737 |
45位 | カーボベルデ | 0.736 |
46位 | ルクセンブルク | 0.736 |
47位 | チリ | 0.736 |
48位 | マダガスカル | 0.735 |
49位 | シンガポール | 0.734 |
50位 | ジンバブエ | 0.734 |
51位 | ボリビア | 0.734 |
52位 | エストニア | 0.733 |
53位 | ラオス | 0.733 |
54位 | モンテネグロ | 0.732 |
55位 | グルジア | 0.731 |
56位 | 東ティモール | 0.73 |
57位 | ケニア | 0.729 |
58位 | エスワティニ | 0.728 |
59位 | エルサルバドル | 0.727 |
60位 | イスラエル | 0.727 |
61位 | ウガンダ | 0.724 |
62位 | ザンビア | 0.723 |
63位 | イタリア | 0.72 |
64位 | タンザニア | 0.719 |
65位 | カザフスタン | 0.719 |
66位 | ボツワナ | 0.719 |
67位 | スロバキア共和国 | 0.717 |
68位 | アラブ首長国連邦 | 0.716 |
69位 | 北マケドニア | 0.716 |
70位 | モンゴル | 0.715 |
71位 | バングラデシュ | 0.714 |
72位 | ウルグアイ | 0.711 |
73位 | ボスニア・ヘルツェゴビナ | 0.71 |
74位 | エチオピア | 0.71 |
75位 | コロンビア | 0.71 |
76位 | チェコ共和国 | 0.71 |
77位 | ポーランド | 0.709 |
78位 | リベリア | 0.709 |
79位 | タイ | 0.709 |
80位 | パラグアイ | 0.707 |
81位 | ウクライナ | 0.707 |
82位 | ホンジュラス | 0.705 |
83位 | ベトナム | 0.705 |
84位 | ドミニカ共和国 | 0.703 |
85位 | マルタ | 0.703 |
86位 | キルギス共和国 | 0.7 |
87位 | レソト | 0.7 |
88位 | ハンガリー | 0.699 |
89位 | アルメニア | 0.698 |
90位 | ルーマニア | 0.698 |
91位 | トーゴ | 0.697 |
92位 | インドネシア | 0.697 |
93位 | キプロス | 0.696 |
94位 | ブラジル | 0.696 |
95位 | ベリーズ | 0.695 |
96位 | ネパール | 0.692 |
97位 | カメルーン | 0.692 |
98位 | カンボジア | 0.69 |
99位 | 韓国 | 0.689 |
100位 | ギリシャ | 0.689 |
101位 | アゼルバイジャン | 0.687 |
102位 | 中国 | 0.682 |
103位 | マレーシア | 0.681 |
104位 | ブルネイ・ダルサラーム | 0.68 |
105位 | モーリシャス | 0.679 |
106位 | ミャンマー | 0.677 |
107位 | フィジー | 0.676 |
108位 | ガーナ | 0.672 |
109位 | シエラレオネ | 0.672 |
110位 | スリランカ | 0.67 |
111位 | バヌアツ | 0.67 |
112位 | セネガル | 0.668 |
113位 | グアテマラ | 0.664 |
114位 | タジキスタン | 0.663 |
115位 | ブルキナファソ | 0.659 |
116位 | 日本 | 0.65 |
117位 | モルディブ | 0.648 |
118位 | ギニア | 0.647 |
119位 | レバノン | 0.644 |
120位 | チュニジア | 0.643 |
121位 | ガンビア | 0.641 |
122位 | ヨルダン | 0.639 |
123位 | ナイジェリア | 0.639 |
124位 | トルコ | 0.639 |
125位 | アンゴラ | 0.638 |
126位 | ブータン | 0.637 |
127位 | サウジアラビア | 0.636 |
128位 | ニジェール | 0.635 |
129位 | エジプト | 0.635 |
130位 | クウェート | 0.632 |
131位 | バーレーン | 0.632 |
132位 | マラウイ | 0.632 |
133位 | コートジボワール | 0.632 |
134位 | コモロ | 0.631 |
135位 | インド | 0.629 |
136位 | モロッコ | 0.624 |
137位 | カタール | 0.617 |
138位 | ベナン | 0.612 |
139位 | オマーン | 0.609 |
140位 | アルジェリア | 0.602 |
141位 | マリ | 0.601 |
142位 | チャド | 0.579 |
143位 | イラン、イスラム共和国 | 0.576 |
144位 | コンゴ民主共和国 | 0.575 |
145位 | パキスタン | 0.564 |
146位 | アフガニスタン | 0.435 |
ジェンダーギャップ指数が発表されると、日本でもたびたび、その順位の低さが話題になる。日本のジェンダーギャップ指数が低い原因はどこにあるのか、算出元の4分野のスコアからチェックしてみよう。
分野 | スコア(順位) | 昨年のスコア(順位) |
経済 | 0.564(121位) | 0.604(117位) |
政治 | 0.061(139位) | 0.061(147位) |
教育 | 1.000(1位) | 0.983(92位) |
保健 | 0.973(63位) | 0.973(65位) |
それぞれのスコアから、日本の順位について考察してみよう。
日本の各分野のスコアをチェックしてみると、教育分野では世界トップレベルである。前年の0.983からさらにスコアを上げ、2022年度は1.000、つまり「完全平等」と言われる状態を達成している。
一方で、大きくおくれをとっているのが経済、そして政治分野である。とくに政治分野においては、数値が非常に0に近い。ほぼ完全不平等の状態と言えるだろう。
ジェンダーギャップ指数は4分野のスコアの平均値で求められるため、指数を上げるためには経済・政治分野での男女平等が必要不可欠である。より積極的な取り組みが求められるだろう。
今回、唯一スコアを下げたのが経済分野である。経済分野でとくに数値が低かったのは、「管理職の男女比」。以前と比較すると、管理職への女性登用を推進する企業も増えてきている。とはいえ、まだまだその取り組みは充分ではない。また女性が管理職としてバリバリ仕事をこなせるだけの社会的環境が醸成されていない点も、今後の課題と言えるだろう。
「ジェンダーギャップ指数2022」からわかる男女格差の現状は以下のとおりである。上位国・下位国それぞれの傾向からチェックしてみよう。
ジェンダーギャップ指数上位には、北欧諸国が並んでいる。過去の結果から見ても、もはや常連と言っていいだろう。上位国には、「4分野のスコアがそれぞれ安定して高い」という特徴がある。
また、ルワンダやニカラグア、ナミビアなど、アジアやアフリカ各国も上位に名を連ねた。男女格差の是正に向けて、積極的な取り組みを行った結果と考えられる。
たとえばルワンダでは国会議員の半数以上が女性である。過去に激しい内戦を経験したルワンダでは、男性国民の数が激減。その穴埋めをするために、女性を多く登用する制度がつくられた。国としての機能を維持するための施策が、ジェンダーギャップ指数の向上にもつながったのだ。
下位国の傾向としては、「スコアのなかで著しく低い項目を持つ」という点が挙げられるだろう。政治・経済分野が足を引っ張る日本も、同様の傾向を持つ国の一つだ。今回のランキングで最下位になったアフガニスタンでは、経済分野のスコアがわずか0.176。全体的にスコアの低い南アジア各国のなかでも、とくに低い結果となった。
イランやアフガニスタン、ブータンなど、ランキング下位国で目立ったのが、労働参加率や収入格差のスコアダウンである。ここ数年、世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。その影響はとくに経済界において顕著である。女性は男性よりも、職を失ったり収入が減少したりするリスクが高いと言われており、今回のスコアダウンにも影響していると考えられる。(※2)
「ジェンダーギャップ指数2022」において、WEFは「ジェンダーギャップがなくなり、完全な男女平等を実現するためには132年かかるだろう」と予測。
2020年までは100年以内の数値が示されていただけに、世界各国でのギャップ解消に向けた動きが停滞していることがわかる。停滞の大きな原因となったのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックである。
2021年のデータでWEFは、完全平等達成までの期間を「136年」と予測していた。わずかに改善傾向が見られるものの、コロナ禍以前の水準に戻せるほどではない。パンデミックによる打撃はいまだに大きく、とくに女性は不利な環境に置かれがちだ。日本においても例外ではない。(※3)
女性就業者数の低下幅は、男性就業者数に比べて大きいことがわかっている。とくに製造業、飲食業、生活・娯楽業における女性就労者の減少が大きいという。
とはいえ、世界的に見ればジェンダー平等に向けた動きがすべて停滞しているわけではない。
2021年11月には、EUが「2025年まで新たな対外的活動の8割以上でジェンダー平等の実現を目指す」ことを表明。多くの途上国を支援する予定だ。すでに460億ユーロ(約5兆9000億円)の資金を動員し、130以上のパートナー国を支援している。今後も、女児教育への支援や女性の健康に関するサービスへのアクセス改善など、幅広い分野で継続的な支援が行われる予定だ。
また、政治分野への女性の進出を促すため、政治分野での男女間格差を是正する施策をとる国も多い。クオータ制度は、女性議員の数が一定以上になるよう調整するための制度であり、世界の多くの国で導入されている。
ジェンダー・クオータ・データベースによると、2022年8月時点で、世界の136の国が何らかの形でクオータ制度を導入している。この制度を導入している国々の女性議員割合の平均は、27.6%に上る。クオータ制を導入していない日本における女性議員の割合は、この数値に遠く及ばない。(※4)
2022年7月8日時点での日本の衆議院の女性議員数の割合は、1割にも満たない。参議院の女性議員数の割合は28%である。2022年7月に行われた選挙の結果に基づくデータであり、過去最高の割合として話題になった。(※5)
少しずつ変化が見られるものの、その動きはまだまだ十分ではない。女性の議員数は男性に比べて極端に少なく、女性の意見を反映させづらい環境と言えるだろう。諸外国と比較して、日本の現状はおくれており、今後さらなる努力が求められる。
一方で、経済分野においては2022年7月より、新たな取り組みがスタートしている。女性活躍推進法の制度改正により、全労働者について男女間の賃金格差の情報開示を義務化。これにより、男女間の賃金格差の解消を目指す。なお、今回の制度改正で対象となるのは、常用労働者301人以上の事業主である。(※6)
まだスタートしたばかりの制度であり、その効果は未知数である。男女間の賃金格差の変化に注目していこう。
日本が抱える当面の課題は、経済・政治分野でのジェンダーギャップの解消だろう。各界のリーダーや専門職に女性をより積極的に登用していく必要がある。とはいえ、それは、ただ単純に「女性の登用を推奨すればいい」というわけではない。女性が安心して能力を発揮できるような仕組みや環境を、社会全体で整えていく必要があるだろう。
昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、家事や育児、介護といったケアワークの重要性が増している。もともと女性は、男性よりも多くのケアワークを担いがちであったが、自粛生活でその傾向はより顕著になった。ケアワークにおける男女の分担比をそのままに、女性が社会で活躍するのは簡単ではない。
日本の男女格差の状況は、主要先進国中、最下位である。男女格差がもたらす不利益について一人ひとりが学び、格差解消のために何ができるか、考えるべき時期に差し掛かっている。
※1 Global Gender Gap Report 2022|WORLD ECONOMIC FORUM
※2 Globa Gender Gap Report 2022 INSIGHT REPORT JULY 2022(22ページ~23ページ)|WORDL ECONOMIC FORUM
※3 Globa Gender Gap Report 2022 INSIGHT REPORT JULY 2022(5ページ)|WORDL ECONOMIC FORUM
https://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2022.pdf
※4 GENDER QUOTAS DATABASE|IDEA
※5 議員一覧|衆議院議員情報|参議院
※6 共同参画 特集 女性版骨太の方針2022 他(5ページ)|男女共同参画局
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