【2021年】ジェンダーギャップ指数ランキング 日本と世界の現状、コロナの影響は

生き生きと働く女性たち

2021年3月、世界経済フォーラム(WEF)が「ジェンダーギャップ指数2021」を公表し、日本は156カ国中120位という結果だった。この記事では、世界のジェンダーギャップ指数ランキングや日本の現状、課題についてまとめている。新型コロナウイルス感染症が与える影響についても考察する。

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2021.09.10

ジェンダーギャップとは

テーブルに肘をかけて微笑む外国人の女性

Photo by LinkedIn Sales Solutions on Unsplash

ジェンダーは、社会的・文化的に形成された性別のこと。男性はこうあるべき、女性はこうあるべきという観念における性別ともいえる。つまり、ジェンダーギャップとは、男女の違いで生じている格差や観念により生み出された不平等のことを指す。

ジェンダーギャップは社会の制度や習慣などさまざまな分野に根強く残っており、この問題の解決は日本だけでなく世界的にも重要度の高い課題である。

現に、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)のうちのひとつに「ジェンダー平等を実現しよう」がある。すべての女性や女児が最大限に能力を発揮できる社会をつくること、性別にかかわらず平等に機会が与えられる社会をつくることが目的だ。(※1)

ジェンダーギャップの解消は、持続可能な社会の実現に向けても急務とされている。

ジェンダーギャップ指数とは

男女差を測る指標として、ジェンダーギャップ指数がある。ジェンダーギャップ指数とは、世界経済フォーラム(World Economic Forum/WEF)が2006年から毎年公表している指数であり、各国の発展レベルを抜きにして男女差のみに着目されているのが特徴だ。

各国のジェンダーギャップによる格差を数値化しランク付けしたもので、各国が自国のジェンダーギャップを把握し、男女格差を解消することを目的に公表される。

算出方法

世界経済フォーラムによるレポートでは、14の指標(小項目)を政治・経済・教育・健康の4分野に分け、男女格差をスコア化している。4分野それぞれのスコアの平均値を総合スコアとしてランキングが作成される。

スコアは基本的には「女性÷男性」で計算され、0が完全不平等、1が完全平等となる。スコアが1に近い国ほど男女が平等ということだ。

2021年のジェンダーギャップ指数

2021年3月に発表された「ジェンダー・ギャップ指数2021」によると、2021年の日本の総合スコアは0.656。調査対象である156カ国中120位という位置づけだ。前年のスコアは0.652で153カ国中121位であったことから、ランキングこそ1上がったもののスコア・順位ともに横ばいという状況だ。対象156カ国の最新ランキングは以下。

2024年のジェンダー・ギャップ指数の結果はこちらから。

順位国名スコア
1アイスランド0.892
2フィンランド0.861
3ノルウェー0.849
4ニュージーランド0.840
5スウェーデン0.823
6ナミビア0.809
7ルワンダ0.805
8リトアニア0.804
9アイルランド0.800
10スイス0.798
11ドイツ0.796
12ニカラグア0.796
13ベルギー0.789
14スペイン0.788
15コスタリカ0.786
16フランス0.784
17フィリピン0.784
18南アフリカ共和国0.781
19セルビア0.780
20ラトビア0.778
21オーストリア0.777
22ポルトガル0.775
23イギリス0.775
24カナダ0.772
25アルバニア0.770
26ブルンジ0.769
27バルバドス0.769
28モルドバ0.768
29デンマーク0.768
30アメリカ0.763
31オランダ0.762
32モザンビーク0.758
33ベラルーシ0.758
34メキシコ0.757
35アルゼンチン0.752
36ラオス0.750
37トリニダード・トバゴ0.749
38ブルガリア0.746
39キューバ0.746
40ジャマイカ0.741
41スロベニア0.741
42エクアドル0.739
43エルサルバドル0.738
44パナマ0.737
45クロアチア0.733
46エストニア0.733
47ジンバブエ0.732
48モンテネグロ0.732
49ジョージア0.732
50オーストラリア0.731
51スリナム0.729
52エスワティニ0.729
53ガイアナ0.728
54シンガポール0.727
55ルクセンブルク0.726
56ザンビア0.726
57マダガスカル0.725
58バハマ0.725
59コロンビア0.725
60イスラエル0.724
61ボリビア0.722
62ペルー0.721
63イタリア0.721
64東ティモール0.720
65バングラデシュ0.719
66ウガンダ0.717
67ホンジュラス0.716
68カーボベルデ0.716
69モンゴル0.716
70チリ0.716
71ボツワナ0.716
72アラブ首長国連邦0.716
73北マケドニア0.715
74ウクライナ0.714
75ポーランド0.713
76ボスニア・ヘルツェゴビナ0.713
77スロバキア0.712
78チェコ0.711
79タイ0.710
80カザフスタン0.710
81ロシア0.708
82タンザニア0.707
83キプロス0.707
84マルタ0.703
85ウルグアイ0.702
86パラグアイ0.702
87ベトナム0.701
88ルーマニア0.700
89ドミニカ共和国0.699
90ベリーズ0.699
91ベネズエラ0.699
92レソト0.698
93ブラジル0.695
94リベリア0.693
95ケニア0.692
96カメルーン0.692
97エチオピア0.691
98ギリシャ0.689
99ハンガリー0.688
100アゼルバイジャン0.688
101インドネシア0.688
102韓国0.687
103カンボジア0.684
104セネガル0.684
105トーゴ0.683
106ネパール0.683
107中国0.682
108キルギス0.681
109ミャンマー0.681
110モーリシャス0.679
111ブルネイ0.678
112マレーシア0.676
113フィジー0.674
114アルメニア0.673
115マラウイ0.671
116スリランカ0.670
117ガーナ0.666
118ギニア0.660
119アンゴラ0.657
120日本0.656
121シエラレオネ0.655
122グアテマラ0.655
123ベナン0.653
124ブルキナファソ0.651
125タジキスタン0.650
126チュニジア0.649
127ガンビア0.644
128モルディブ0.642
129エジプト0.639
130ブータン0.639
131ヨルダン0.638
132レバノン0.638
133トルコ0.638
134コートジボワール0.637
135パプアニューギニア0.635
136アルジェリア0.633
137バーレーン0.632
138ニジェール0.629
139ナイジェリア0.627
140インド0.625
141バヌアツ0.625
142カタール0.624
143クウェート0.621
144モロッコ0.612
145オマーン0.608
146モーリタニア0.606
147サウジアラビア0.603
148チャド0.593
149マリ0.591
150イラン0.582
151コンゴ民主共和国0.576
152シリア0.568
153パキスタン0.556
154イラク0.535
155イエメン0.492
156アフガニスタン0.444

「ジェンダー・ギャップ指数2021」のランキング上位は、例年どおり北欧諸国が占めている。1位のアイスランドに限っては、12年連続トップを維持し続けている。(※2) 2020年のジェンダーギャップ指数は以下の記事にまとめている。

日本の分野別ジェンダーギャップ指数

経済・政治・教育・健康の分野別における日本のスコアは以下だった。

分野スコア(順位)昨年のスコア(順位)
経済0.604(117位)0.598(115位)
政治0.061(147位)0.049(144位)
教育0.983(92位)0.983(91位)
健康0.973(65位)0.979(40位)

世界経済フォーラムによると、日本は政治分野においてスコアが上がり格差が縮小しているものの、いまだに女性の政治参加割合が低いとされている。国会議員や閣僚の女性割合が低く、女性国家元首の在位期間に至っては過去50年間0である。このような点が政治分野の評価を下げている要因だ。

さらに、政治分野のスコアが上がっているものの、順位が下がっている点にも着目したい。これは各国が格差縮小に向けて努力しているなかで、日本が遅れをとっていることを示している。(※3)

経済分野においても、女性管理職の割合の低さのほか、パートタイムの職についている女性が男性のほぼ2倍であること、女性の平均所得の低さなどが指摘されている。

また、教育・健康分野のスコアだけを見ると平等に近いような錯覚を覚えるが、この分野は世界的にも差が出にくい分、順位的には奮わない。教育・健康分野内の小項目まで見てみると、識字率や初等教育、出生児の男女割合の点で日本は世界トップの水準であるのに対し、中等教育(中学校・高校)、高等教育(大学・大学院)の項目で足を引っ張る結果となった。

日本はG7で最下位、ASEAN諸国よりも下位

日本の120位というランキング結果は、引き続きG7では最下位。先進国の中でも最低レベルである。また、102位の韓国や107位の中国、ASEAN諸国よりも低い結果となった。

この結果を受けても、日本国内におけるジェンダーギャップの解消は重要課題といえるだろう。

新型コロナウイルスなど、男女格差の原因は?

ボックス型の椅子に腰をかけてパソコンを操作する女性

Photo by Filip Bunkens on Unsplash

世界経済フォーラムによると、ジェンダーギャップ解消までに必要な期間は135.6年と試算された。これは、2020年に発表されていた99.5年から約35年引き延ばされた形となる。政治分野での平等の後退や格差解消のスピードが鈍化していることが原因とされる。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的拡大が影響していることも間違いないだろう。

ジェンダーギャップ指数ランキング上位国と下位国とでは、それぞれどのような傾向があるのだろうか。それぞれ考察したうえで、新型コロナウイルス感染症との関連についても触れる。

上位国の傾向

ランキング上位を占める北欧諸国は、差が出やすい政治分野で高いスコアを叩き出しているのが特徴だ。女性が政府首脳を務めている、もしくは務めたことがある国が上位国に多いのも偶然ではない。また、ランキング7位に位置するルワンダは、国会議員の過半数を女性が占めている。

世界共通の課題である政治・経済分野のジェンダー平等に向けて動き出し、成果が出ている国が上位国に名を連ねているのだ。

下位国の傾向

下位国は、差が出にくい教育・健康分野のスコアが低いケースが多い。一方で、日本のように、政治・経済分野のスコアが著しく低いがゆえに下位に位置しているケースも多い。

さらに、新型コロナウイルス感染症が流行したことで、男女格差は世界的にさらに広がる結果となった。国際通貨基金(IMF)が、「この30年間の努力を消してしまうほどに女性の経済的な機会が損なわれる恐れがある」と警鐘を鳴らしたことからも深刻さが伺える。

日本でも非正規雇用の女性たちに深刻な影響が出ているが、世界的に見ても男性に比べて女性のほうがパンデミックの影響をダイレクトに受けている。新型コロナウイルス感染症による主な影響は、経済活動の停滞による失業率の高さや外出制限下における女性の家事負担の増加である。

とくに、ランキング下位に位置する発展途上国では、女児が学校を辞めて働くことで世帯収入を補うケースも少なくない。

世界的な動向と日本の現状

パソコンを前に話し合いをしている三人の女性

Photo by Mimi Thian on Unsplash

ジェンダーギャップの解消や女性のエンパワーメントは持続可能な開発目標(SDGs)の中心課題であり、SDGs達成のために不可欠であると考えられている。(※4)

とくに、政治・経済分野におけるジェンダーギャップ指数は世界の平均値でも低く、世界規模の課題といえる。候補者の一定数を女性に割り当てるクオータ制の導入や法制化により各国がジェンダー平等に向けて取り組んでいるとはいえ、まだまだ平等には程遠いのが現状だ。

日本でも以下のような取り組みが成されているが、ジェンダーギャップ指数における評価が著しく低い状態が続いている。

ジェンダーギャップ解消に向けた日本の取り組み

女性活躍推進法
2016年に安倍内閣が成長戦略の柱として施行。働く女性が個性と能力を十分に発揮できる社会を実現するために、国や地方公共団体、民間企業などの事業主に対して女性の活躍推進に向けた行動計画の策定や公表を義務付けた。(※5)

政治分野における男女共同参画の推進に関する法律
2018年に民主政治の発展に寄与するために施行。選挙における男女の候補者数の均等を目指すべく、政党などが男女それぞれの候補者数について目標を定めることを促す目的。また、男女が個性や能力を十分に発揮できることを基本原則としている。(※6)

育MEN(イクメン)プロジェクト
男性の育児参加を促すために、2010年に発足したプロジェクト。社会全体で男性の育児参加のための環境づくりに取り組むことを中心に、男女の仕事と育児の両立支援を目指している。(※7)

ポジティブ・アクション
女性の活躍推進や格差解消に向けて実質的な機会均等を実現することを目的とする暫定的な措置。具体的にとられる方法としては、女性の採用を拡大したり女性の職域を拡大したりすることで、女性管理職の増加につなげるといったものがある。職場での女性の活躍を推進するために、厚生労働省が中心となって取り組んでいる。(※8)

日本の課題と今後の男女格差

日本においては、とくに、政治・経済分野などリーダーシップを発揮すべき分野で男女格差が著しいのが特徴だ。一定の分野にかかわらず、どの分野においてもいえることだが、ジェンダーギャップを生む根本原因は「女性はこうである」「男性はこうである」などのアンコンシャス・バイアスが残っており、それを取り払えないことにあるのではないだろうか。

ジェンダーギャップを縮小していくためには、男女で支え合うための環境づくりが欠かせない。そのためには、一人ひとりがまずは身の回りの小さな違和感に声をあげていくことが必要だろう。そして、男女格差問題をクリアすることが、持続可能な環境の整備やさらなる発展への近道だということを忘れてはならない。

※1 国連開発計画(UNDP) 駐日代表事務所ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
https://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sustainable-development-goals/goal-5-gender-equality.html
※2 WORLD ECONOMIC FORUM Global Gender Gap Report 2021
https://www.weforum.org/reports/ab6795a1-960c-42b2-b3d5-587eccda6023
※3 男女共同参画局 「共同参画」2021年5月号
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/202105_05.html
※4 国際連合広報センター ジェンダー平等を実現しよう
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/sustainable_development_goals/gender_equality/

※5 男女共同参画局 法律、基本方針、関係法令等https://www.gender.go.jp/policy/suishin_law/horitsu_kihon/index.html
※6 男女共同参画局 政治分野における男女共同参画
https://www.gender.go.jp/policy/seijibunya/index.html
※7 イクメンプロジェクト プロジェクト趣旨
https://ikumen-project.mhlw.go.jp/project/concept/
※8 厚生労働省雇用均等・児童家庭局/都道府県労働局(雇用均等室) 女性が輝く社会の実現に向けて(P2)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/seisaku04/pdf/140523-01.pdf

※掲載している情報は、2021年9月10日時点のものです。

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