近年、日本でもLGBTが話題になっている。しかし、すでにジェンダーはこの言葉だけでは語れなくなっている。そこで注目を集めるのが、男性でも女性でもない第三の性「ノンバイナリー」だ。ノンバイナリーとは何か、トランスジェンダーとの意味の違いを解説する。
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ノンバイナリーとは、自分の性認識に男性か女性かという枠組みをあてはめようとしない考え方を指す。バイナリー(binary)とは二つの要素で構成されているものを指す言葉で、ジェンダーバイナリー(gender binary)に由来する。
ジェンダーバイナリーは、性別を男性か女性の二択のみの生物的性で分類する考え方のことであるのに対して、ノンバイナリーとは男女二元論にとらわれない考え方と言ってよいだろう。
ノンバイナリーとよく似た言葉に、Xジェンダーやクィアがある。Xジェンダーは、自分自身の性別に対する認識である性自認だけを指すものであるのに対して、ノンバイナリーは自分がどの性としてふるまうのか、という性表現の面にも男性・女性の枠組みを当てはめない。
3つうちもっとも広い概念を持つのはクィア。すべてのセクシャルマイノリティーを含む言葉で、性的指向に対する概念も含む。概念の広さを整理すると、クィア>ノンバイナリー>Xジェンダーと整理できるだろう。これらは同じものとして扱われがちだが、それぞれ微妙な違いあることに留意したい。
ノンバイナリーは、生まれた性別とは別の自認を持つ「トランスジェンダー(LGBTのT)」と混同されることがある。
しかし、両者には大きな違いがある。トランスジェンダーがどちらかの性を強く認識している人が多いのに対して、ノンバイナリーは自分の性別を定義していないということだ。
クエスチョニングは、自身の性や性的指向が定まっていない人を指す。「自身の性がわかららない」「決めかねている」「考えが流動的である」場合があてはまる。
ノンバイナリーは自分の性認識をあえて当てはめないのに対して、クエスチョニングは「自身の性や性的指向について考えている最中」である点が異なる。
第三の性は、男性にも女性にもあてはまらない性別のこと。ノンバイナリーとほぼ同義語として使われる。
ジェンダーレスは、男性と女性で人を区別しない考えのこと。中立を意味するニュートラル(neutral)を組み合わせて、ジェンダーニュートラルという言葉も同じような考えを言う。
英語をはじめとした外国語には、男性名詞と女性名詞があり、男性を意味する「man」が含まれる「警察官(policeman)」のような言葉も存在する。そのような言葉を廃止し、ジェンダーレス・ジェンダーニュートラルな考えにしようという動きが世界中で生まれてきている。
ジェンダーレス、ジェンダーニュートラルは男女の区別を行わない考え方を指すのに対し、ノンバイナリーは性自認と性表現を表す点が異なる。
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米国・カリフォルニア州では、2019年1月、運転免許証や身分証明書などで、ノンバイナリーを自分の性別として選択できる法律が施行された(※1)。
この法律により、性別欄にはこれまでの男・女に加えてノンバイナリーと記載できるようになった。2021年6月末時点で、ノンバイナリーが選択できるの米国の州は20にのぼる(※2)。
さらに2021年6月、アメリカ国務省はアメリカ市民の出生報告書とパスポートの性別欄に、従来の「男・女」以外の選択肢を設ける方針を発表(※3)。システムや技術面の変更にはまだ時間がかかるが、近い将来、ノンバイナリーを選択できるようになる。
現在、出生証明書やパスポートなどで法的にノンバイナリーを選べる国はインド、ネパール、パキスタン、オーストラリア、ニュージーランド、ドイツ、オーストリア、アルゼンチン、マルタ(※4)。ノンバイナリーの敬称は、Ms.やMr.ではなく「Mx.(ミクス)」や「X」が使われる。
また、ノンバイナリーの概念は人称代名詞にも影響を与えた。英語のノンバイナリーの人称代名詞は「they」。そのことは、アメリカでもっとも信頼されている辞書のひとつ『メリアム・ウェブスター辞典』にも書かれている。
ヴァージン・アトランティック航空は、性自認に関するポリシーを改訂し、性別を問わずスカート、パンツなどの好きな制服を選んで着用できるようにした。また、「She」「He」など、自分について呼んでほしい代名詞をバッジでアピールできる。
さらに、パスポートの性別を「X」や「U」などジェンダーニュートラルに選択した顧客は、その性別で発券できるようにシステムをアップデートしている。
ジェンダーギャップ指数とは、世界各国の男女の格差の状況を数値化したもの。経済、政治、教育、保健の4分野それぞれで、男女格差がないかスコアを算出している。2022年に発表された最新のジェンダーキャップ指数ランキングで、日本は世界116位。その低さから、たびたびニュースなどで取り上げられている。
ノンバイナリーをカミングアウトしている有名人の一人、ノア・カルロス(Noah Caros)さん。
2018年にモデルになった2年間でアレキサンダーワン(AlexanderWang)やコーチ(coach)、ヴィヴィアン・ウエストウッド(VivienneWestwood)などのランウェイを歩くトップモデルとなった。ノアさんのジェンダーを超えた世界観は、多くの人々をひきつけている。
実はノンバイナリーの概念そのものは新しいものではない。ナバホ族などのネイティブアメリカン、ニュージーランドのマオリ族、オーストラリアの先住民には、昔からノンバイナリーが社会で認められていた。
なお、リベラルな風土のカナダではノンバイナリーのバービー人形が販売されている(※5)。
また「男性」「女性」といった従来の性別にとらわれず、「男性名詞」「女性名詞」を廃止するるほか、性別を限定しないジェンダーニュートラルトイレを設置するなど、世界で性やジェンダーにしばられない考え方が進んでいる。
参考サイト
※1Senate Bill No. 179|California State
http://www.leginfo.legislature.ca.gov/faces/billTextClient.xhtml?bill_id=201720180SB179
※2'X' Passports in US Mark Shift Toward Respecting Gender Diversity | Human Rights Watch
https://www.hrw.org/news/2021/06/30/x-passports-us-mark-shift-toward-respecting-gender-diversity
※3Proposing Changes to the Department’s Policies on Gender on U.S. Passports and Consular Reports of Birth Abroad | U.S. Department of State
https://www.state.gov/proposing-changes-to-the-departments-policies-on-gender-on-u-s-passports-and-consular-reports-of-birth-abroad/
※4Gender X Passports | Employers Network for Equality & Inclusion
https://www.enei.org.uk/resources/news/gender-x-passports/
※5Trophy Wife Barbie | Instagram
https://www.instagram.com/p/BGHOTlIPwXv/?utm_source=ig_embed
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