「ジェンダーニュートラル」とは、性やジェンダーにしばられない考え方。性別を意味するジェンダーと、中立を意味するニュートラルを組み合わせた言葉で、性別を越えた中立的な状態を目指す思想である。広がりを見せるジェンダーニュートラルの事例を中心に紹介する。
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「ジェンダーニュートラル」とは、男女の性差にとらわれない考え方である。「女はこうあるべき」といった伝統的に根付いた性別による役割認識をはじめ、性やジェンダーにしばられない言葉や思考、社会制度などを指す。
ジェンダーニュートラルは、性別を意味するジェンダー(gender)と、中立を意味するニュートラル(neutral)を組み合わせた英語。性別を越えて中立的な状態を目指すもので、性別をないものと考える「ジェンダーレス」と同様に、男女に二分することに疑問を呈する言葉だ。
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こうしたジェンダーに関する考え方は、女性の社会進出が進み顕在化した社会的・文化的な男女差別によって生まれたと言われている。1960年代には先進国を中心に、女性の権利や束縛から解放を求める「ウーマンリブ運動」が起こり、日本においても1970年代から「ジェンダーフリー運動」が継続的に行われている。
加えて近年は、トランスジェンダーやLGBTQの存在によって、性別にとらわれず個性を認め合う思想が広まった。こうした背景から、現在、ジェンダーニュートラルな思想をとり入れたものや言葉がさまざまな場面で見られるようなったのだ。
英語ではポリスマン(警察官)など、男性を表す「man」が使われる職業や固有名詞が存在する。職業の名称を男女で分けることが疑問視され、現在は「police officer(ポリスオフィサー)」という言葉が一般に普及している。日本でも、「看護婦」などの言葉は廃止され、「看護師」などジェンダーニュートラルな表現が用いられるようになった。
公共交通などで耳にする「「Ladies and gentleman.」のアナウンス。「淑女・紳士」を区別せず、どちらにも含まれない人々に配慮するため、ロンドンやニューヨークでは2017年よりこのアナウンスを停止している。日本航空でも2020年10月に同様の機内アナウンスを停止した。
ファッションはジェンダーニュートラルの動きに大きな影響を受けている。街中でも、ユニセックスな服や着こなし方をするファッションも多く見られるようになった。GucciやJW Anderson、Givenchyなどメゾンブランドのファッションショーでも、さまざまなジェンダーのモデルがランウェイを歩いたことで注目を集めた。
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メイクは「女性だけがするもの」という考えはもはや古いかもしれない。メイク中心のメンズ総合コスメブランド「FIVEISM × THREE(ファイブイズム バイ スリー)」は、「男性が身だしなみを整えるマナーとしてのメイク」はもちろん、女性も使用できるジェンダーニュートラルなアイテムを提案する。
アメリカ・ニューヨーク市では2017年から、共有スペースのないトイレはすべてジェンダーニュートラルにすることが義務づけられている。「All Gender」、「Gender Neutral」というサインが掲げられた景色は、まさにダイバーシティを具現化した都市と言える。
スウェーデンのデザイン会社が開発したアプリ「Gender EQ」は、音声認識に基いて会議で男性と女性が話した時間の割合を測ってくれる。女性社員と男性社員の発言量を測定し、実際の評価と比較することで、無意識なジェンダーの偏見の有無を可視化するためのツールだ。
スウェーデンのデザイン会社が開発したアプリ「Gender EQ」は、音声認識に基いて会議で男性と女性が話した時間の割合を測ってくれる。女性社員と男性社員の発言量を測定し、実際の評価と比較することで、無意識なジェンダーの偏見の有無を可視化するためのツールだ。
バービーの製造元であるMattel社は、ジェンダーニュートラルな時代を反映したドールシリーズ「Creatable WorldTM」を発表した。「おもちゃは性別の役割に支配されてほしくない」という子どもの声から生まれたシリーズで、人種が異なる6つのアイテムがあり、ショートやロングなどヘアスタイルも好みで変えられる。
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2019年、アメリカで「今年の言葉」に選ばれたのは、ジェンダーの概念を含まない「they」だった。近年この「they」は、「she」「he」だけでなく、一人の人物に対しても使われることがあると言う。
スウェーデンでも、男女ともに使える代名詞「hen」が2012年に誕生した。言葉は、いずれ行動や思考を変える可能性を持つ。ジェンダーニュートラルな言葉や考え方は、これからの未来をより自由に広げていくかもしれない。
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