ビジネスで自然を守る UMITO Partners 村上春二さんの「インパクト投資で挑む海洋サステナビリティ」

UMITO Partners村上春二代表

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ELEMINIST TALK 気になるあの人に聞いたエシカルライフ

今回のインタビュー連載には、「UMITO Partners(ウミトパ ートナーズ)」 代表取締役・村上春二さんが登場。海洋サステナビリティの第一人者として、海洋環境にポジティブな影響を与えられる方法を模索し奔放する姿と、自然とともに在る考え方についても伺いました。

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編集&ライター/エシカル・コンシェルジュ

フリーランスのライターとして、ファッションやウェディング分野にて活動後、コロナ禍をきっかけにエシカル分野へ転身。ウェルネスや食料問題の観点から、昔ながらの和食でゆる〜くプラントベース生活…

2026.07.28

「日本で魚が獲れなくなった」とのニュースがさほど珍しくもなくなってきた昨今。海洋サステナビリティ領域の課題解決は、魚大国の私たち日本人にとって重要課題だといえそうです。そんな分野で「ウミとヒトの関係を、ポジティブにつなぎ直す」と意気込むのが、UMITO Partners代表取締役の村上春二さんです。

徹底した現場主義による豊富な知見と、データサイエンスや環境へのポジティブな影響の可視化を武器に、ビジネスで海のレジリエンス(回復力)を取り戻そうとさまざまなアプローチで取り組んでいます。創業から5年、いかにインパクト(影響)を最大化できるかを指針に変容していく会社の姿は、生物のようにダイナミックで自由!

改めて海の資源の持続性について考えるとともに、村上さんの活動の軌跡と「一番影響を受けたのは自然」と言い切るバックグラウンドについても話を聞きました。

漁師さんが口を揃えて言う。「海の力が弱くなっている」

————村上さんが専門とされている海洋サステナビリティについて、少しずつ認知されてきたように思います。改めて、いまどんな問題に直面しているのか教えてください。

ひとことでいうなら、海の力が弱くなっている。これはもう、漁師さんたちが口を揃えていいますね。専門的な言葉で表現すると、海洋レジリエンス(回復力)が損なわれてきています。なぜ損なわれてきたのか。問題が交雑しているので一概にはいえないんですが、根本的な問題は5つだと思っています。

1つは、CO2排出量の増加による海水温の上昇、これが一番大きな理由ではないでしょうか。この影響としていままで獲れていた魚が獲れなくなったり、食害といって、もともと南にいた魚が北上してきて海藻を食べてしまい、そこに住む生き物の住処が奪われるなど、さまざまな連鎖が起きています。

2つ目は、魚の獲り過ぎ。世界の食用魚の約38%が漁獲の限度を超えている過剰漁獲資源となっていて、潤沢な水産資源は6割程度といわれています。つまり、サステナブルな資源がどんどん減っている状況なんです。

3つ目は、沿岸生態系の崩壊です。熱帯のサンゴが全体の半分に、二酸化炭素を吸って酸素を供給してくれるマングローブも2割も減っているといいます。他にも湿地帯、藻場の減少によって生態系が崩れてきているのも問題ですね。

4つ目は、みなさんもよくご存知のマイクロプラスチックによる海洋汚染。流出するプラスチックのおよそ8割は漁業由来だともいわれています。

そして最後は、水質の悪化です。実はこれは海だけの問題ではありません。農業や畜産業で使われた肥料が土壌を通じて海に流され、その豊富な栄養素を求めてプランクトンが大量発生する。プランクトンは酸素も同時に食べるので、海の中の酸素が少なくなり、他の生き物が生きられなくなる貧酸素化という状態を生み出しているんです。

このように海の問題は大小さまざまな問題が影響し合っていて、より複雑な構造になっているといえます。

環境や社会にもたらすポジティブな影響の可視化が必要

————これらの問題について、村上さんが代表を務めるUMITO Partnersでは、どんなアプローチで取り組んでいるのでしょうか?

僕たちの会社が掲げるパーパスは、「ウミとヒトの関係を、ポジティブにつなぎ直す」です。そのための具体的なアプローチとして、5つの方法をとっています。

まず、漁師さんの声を国の政策や規制管理に反映していく。実態が伴わない政策は響かないと思うんです。なので政治家が集まるようなイベントを催し、そこに漁師さんたちを招いて接点をつくり、現場の声を直接つなぐようなこともしています。

2つ目が、フェアな流通をつくる。やっぱり漁師さんが生活していくためには、魚は売ってなんぼ。環境保全などに尽力されている漁師さんを応援したい飲食店、例えばホテルや、カルチャーシーンを牽引するレストランなどに、魚を卸したりもしています。

3つ目は、お金の流れを変えていく。まだまだ海の分野は投資がいき届いていない領域なんですよ。ポテンシャルはすごくあるのに、情報格差が起きていて知らないから投資できていない。僕たちはそこにお金が流れるよう、ヨーロッパの会社とインパクト投資ファンドを立ち上げ、海洋環境をより良くしていくためのスタートアップに投資していこうとしています。

4つ目は、サステナブルな漁業のコンサルティング。漁業現場の方も、実は手さぐり状態。しかも自然が相手なので、コピペして横展開できるものじゃない。なので、どうすれば持続可能な漁業が実現できるのか、プロジェクトごとにテーラーメイドでつくって伴走するというスタイルをとっています。

5つ目は、みなさんの意識の変革です。意識が変わっていくことも大事だと思うので、海洋環境やサステナブル漁業について知ってもらうイベントなども開催しています。

僕たちがやっていることって本当に幅広いんですよ。なので最近は「魚屋からインパクトファンドまでやっている会社です」と答えています。

————会社の強みとして、理念だけではなく、データサイエンスや測定可能な評価など、影響を数値化されていることにあると感じました。

まず漁業についていうと、沿岸漁業はとくに科学的な根拠に基づく方法って、日本ではまだ浸透していないんですね。データはあるんですが、それよりも漁師さんが培ってきた勘とか経験の方が重要視されている。そこに魚がどれくらい生息しているのか、海の環境はどうなのか、どれだけの量までなら獲ってもいいのか。具体的な数値を出すことで、いろんな人と話すときの共通言語になり得る。また、良くも悪くも効果が可視化できます。

投資ファンドの方で考えると、いわゆるグリーンウォッシュ、表向きはインパクトファンドのような言い方をしているけど、実際はそうじゃない企業も投資対象に入っていることもあります。それを防ぐためにも、「Ocean Impact Navigator(OIN)」などの国際的なインパクト評価と照らし合わせることが重要で。やっぱり本質的なインパクトを生み出すためには、データや測定可能な評価というのは必要だと思いますね。

自然にいいこととビジネスは両立できる、その背中を見せたい

————UMITO Partnersの前は、いくつかのNGOを経験されていたと伺いました。非営利のNGOから営利の株式会社に転換されたのは、どんな思いがありましたか?

NGOの人なんですねという認識なのか、ビジネスの、株式会社の人なんですねという認識で話すのかによって、相手との関わり方や印象がすごく変わるなというのは感じていました。結局話す相手はビジネスの方が多いので、「環境団体だからビジネスのためじゃないんでしょ」と思われて、本気度を感じてもらいにくいというか。

もう一つは、自然にいいことでちゃんとお金稼ぎができるんだよっていう背中が見えないと、誰も真似しようと思わないよなと思って。勝手に感じている使命感もあって、株式会社化したというのもあります。

海洋の分野に投資を呼び込み、インパクトの最大化を目指す

日本各地の漁業・養殖業現場マップ

日本各地の漁業・養殖業現場をサポートし、サステナビリティに貢献。「B Corp認証」も取得している。

———近年はインパクト投資ファンドの立ち上げなど、より大きなスケールで取り組んでいらっしゃるように感じます。何かきっかけがあったのでしょうか?

実はUMITO Partnersの仕事って、非営利と営利の両方があるんですよ。国内外の財団からお金をもらって非営利な仕事をする業務と、コンサルティングなどの営利の業務。ただ、財団のお金は有限であって、いつまでも続くわけじゃない。この事実に直面したのが、視野を広げるきっかけになりました。

自分たちの生存戦略を考え直すとなったとき、同時に考えたことは会社を存続させることがゴールなのではなく、社会にとって存在する意義があるかどうかということでした。社内で議論した結果、やっぱり必要だから存続させようと。でも、僕たちはIPO(新規株式公開)やM&A(合併・買収)には関心がない。資本から自由になって、インパクトを与えて、生き物のように生きていきたい、縛られたくないというのがあったんですね。

とはいえ、海洋コンサルティングだけでは大手に負けることもあるしインパクトも弱い。じゃあどうするか。色んな選択肢が出たなかで、ファンドが一番インパクトを最大化できて、自分たちの存在も維持できるんじゃないか、と行き着きました。

この会議を僕たちは川でやったんですよ(笑)。毎年、リトリートで自然のなかに行くんですね。2024年は山梨県の川へ行って、みんなで泳いで。会社の未来について話すなら、会議室ではなく僕たちが大切にしている自然のなかで、自然を感じながら決めるがいいと思ったんです。

———今年の6月には、海洋スタートアップ創出を目指す国際的なネットワーク「1000 Ocean Startups」への参加がニュースになりました。どんな狙いがあるのでしょうか?

「1000 Ocean Startups」も手段のひとつだと思っていて。僕たちの役割って、海外と日本を接合する橋渡しをすることだと思っています。とくに海は日本人にとってアイデンティティみたいなところもある。日本からも革新的なスタートアップが創出されて、それが海外で認められ、大谷翔平選手のような偉大な人たちがどんどん生まれてきたらうれしいですね。

もっと具体的にいうと、日本の投資家がインパクト投資に関わってくれるのはすごく大事なことで。形だけSDGsに取り組んでいた時代から、やっぱり本質的にみる必要があるよねというフェーズまでいろいろありますし、企業さんも千差万別だと思います。これを機会に日本の投資家やそこに関わる企業の方々のマインドが変わってくれることは大事なことなので、そこに期待したいです。

———海洋スタートアップのなかでも、テクノロジー企業に注目されていると伺いました。例えば、どんな分野があるのでしょうか?

いま、漁業だけでなく農業も石油由来の製品も自然に頼り過ぎた結果、生産の限界を迎えています。結局、天然資源だけでは足りないんです。そうなると、タンパク質とか素材とか、自分たちに必要なものは自然に依存しすぎない形で、人工的につくり出せる社会にしないといけない。そのためにはイノベーションと、それを起こすためのテクノロジーが必要なんですよ。

なので、フードテック、バイオテック、ディープテック領域の企業に投資していきたいと考えています。例えば、新しいタンパク質や栄養素をつくるバイオテックと呼ばれるものでいうと、商品のイメージとしては、サプリメントや医薬品、化粧品などですね。海藻から抽出する技術を使えば、タンパク質の量は同じなのに製造過程でCO2排出量も抑えられるし、むしろ吸収してくれる。

他には素材。某ポテトチップスのパッケージで話題になりましたがインクとか、外科手術で使う糸なども海藻をベースにできたりする。結局、石油由来から代替していく必要があるので。他にもいろいろあるんですが、海ってポテンシャルが高いんですよ。

21歳で決めた生き方「ビジネスを使って自然を守る」

———いまや海洋サステナビリティの分野を牽引する村上さんですが、いつ頃からエシカルに興味を持たれたのでしょうか?

明確に、ビジネスを使って自然を守っていこうと決めたのは、21歳ぐらいでしょうか。その根っこにあるのは、地元・福岡での暮らしだと思います。海にも山にも近い場所だったんですが、父親は会社経営をしながらイノシシ猟をしていたり、釣りの大会でもいい成績を修めていたりという人でした。

高校生のとき、すぐ帰ってこいと家から電話があって早退したら、イノシシの解体の手伝いをさせられたことも(笑)。近所の人とイノシシと大根を交換したり、脱穀機が家にあって精米していたり。いまでいう食育というか、食を通して生きることの本質を体感していたというのは、バックグラウンドとしてありますね。

———高校卒業後は、アメリカに留学されたとか。そこから自分の道は「ビジネスを使って自然を守ること」だと決意するまでの経緯を教えてください。

そもそもアメリカに行こうと思ったのは、BMXという自転車競技をやっていたからなんです。大学進学にかこつけてアメリカに行ってBMXをやって。最初はグラフィックデザインに興味があったんですが、これは学校へいかなくても自分で学べるなと。次はそれを横展開するビジネスを勉強しようと思ったんですが、「なんやこれ?」ってなった(笑)。

20代のころ、30歳の自分に手紙を書くってことをやったんですよ。どういう家に住んで、どれくらい稼ぐのか、めちゃくちゃ経済主軸な夢を自分に託したわけです。そこであれ?って。「お金だけ追いかけてたら、俺、めっちゃ空虚な人になるやん…」。

そこから、バックパックにハマったんですよね。1ヶ月以上かけてヨーロッパを1周したり、南米のペルーへ行ってみたり、アラスカをヒッチハイクで周ったり、カリフォルニアの山のなかに1ヶ月間こもったこともありました。

そうするとまた、「空虚な人間になってしまうのでは」という不安がわいてきて、それで自然について勉強しようと。大学にもどって、ビジネスから自然地理学に専攻を変えました。卒論は「サケの産卵環境調査」です。

———帰国されてからはいくつかのNGOを経験され、その後、UMITO Partnersを立ち上げられたんですよね。

30歳までは、お金に関係なく好きなことをしようと決めていました。アウトドアが好きだったのと、企業理念に共感したのもあり、パタゴニアに入ったんです。同時にライターもしていて、釣り雑誌に連載もしていました。フライフィッシングが趣味だったので、どこか旅して釣りに行って寄稿して。

そのうち、限られた時間で環境インパクトを最大化したいという思いが強くなってきた。パタゴニアの売り子をしていてもインパクトは少ない。戦略的に考えて環境インパクトを最大化しているのはどこかといったら、アメリカの国際環境NGOだなと。てっとり早くパタゴニアが助成金を出している環境団体で働こうと思ったんです。

その後、アメリカや日本の複数の環境団体を経て、現場をサポートしたいとの思いから、2021年にUMITO Partnersを立ち上げました。なので、やっていることは一貫して変わらないんですが、母体が違うといった感じです。

表と裏ひっくるめて1つの自然。そう思えば心もぶれない

———UMITO Partnersの立ち上げから今年で5年。会社の形態も変わってきたとのことですが、一番大変だったことは何ですか?

組織づくりが大変だったかもしれません。組織ってやっぱり生き物じゃないですか。人間という生物の集合体だから本当に生き物のようにうごめいていると思うんです。最初は、いわゆる財団のお金が確定していたのでやることも明確だったんですよ。逆に、何をしてもいいよとなった瞬間に、どうする?ってなった。

僕のリーダーシップのあり方も順応していかないといけなかったし。やることが変われば、一緒に働いているメンバーへの期待値も変わるし、既存のメンバーからしたら当初思っていた内容と違うと感じることもある。この5年間は、大きな学びがあったのと同時にすごく大変でしたね。

———壁にぶつかったり心が折れそうなとき、助けになる考え方があれば教えてください。

新しい提案をしても相手がぜんぜん理解してくれないときは、やっぱりシュンとなります。そんなとき思うのは、僕たちは自然だということ。自然って、高気圧もあれば低気圧もある。雨が降る日もあれば、晴れの日もあったり、結局すべて相対関係にあると思うんですよ。

どんな事象にも表と裏がある。それをひっくるめて1つの自然なんだって。だから、違う意見の人もいれば賛同してくれる人もいて当たり前というか。すべてがつながって1つになるとわかれば、いちいち心がぶれることもなくなりました。

自然のリズムを感じることが、自然を想う基盤になる

————海洋サステナビリティのために、読者が明日からできることがあればアドバイスをお願いします。

旬の魚を食べる。魚の旬を知るってすごく大事なことだと思っていて。実は旬もめちゃくちゃ深いんですよ。獲れる時期、漁期がここだと定まっているから旬と呼ぶものもあれば、脂がのっていておいしいから旬と呼ぶものもある。いろんな内訳があるんです。

例えば、春先にはアジが日本海側で増えてきて、豆アジが九州で獲れはじめる。今度は真鯛が獲れだして、そのうちブリが出はじめる…。旬を知ると、海のリズムがわかってきますよね。そうすると、自然を感じられるようになるし、この海を守ろうという気持ちもわいてくる。サステナブルとかエシカルの前に、まずはおいしいものを食べて楽しむことが、個人的には大事かなと感じます。

————UMITO Partnersの今後について、どんな展望をお持ちですか?

経営のあり方としては、マングローブの木のようなイメージ。ひとことでいうと、新しいギルド体制を想定しています。通常は、僕たちが仕事をとってきて委託するケースがほとんどだと思うんですが、そうではなくて、UMITO Partnersがこれまで培ってきた知識やネットワークはオープンソースにしていきたいと思っているんです。

自然ってだいたいそうじゃないですか。閉じている自然なんてない。ELEMINISTさん含め、他の会社が僕たちの知見やネットワークを使ってこんな事業をやってみたいという要望があれば、存分に使っていただければと思っています。そうやって生態系のように、森ができて、山になって豊かに育っていくといいなと。僕個人でも会社でも、ご提案いただけるアイデアがあれば、ぜひお待ちしております!

UMITO Partners村上春二代表

村上春二(むらかみ・しゅんじ)/株式会社UMITO Partners 代表取締役。福岡県出身。サンフランシスコ州立大学にて、自然地理学とビジネスを専攻。帰国後はパタゴニア日本支社での勤務とフリーランスのライター、国際環境NGO・Wild Salmon Centerの日本コーディネーターを経て、オーシャン・アウトカムズの設立メンバーとして日本支部長を務める。2018年株式会社シーフードレガシーと合併し、取締役副社長/COOに就任。2021年に創業した株式会社UMITO Partnersでは、「ウミとヒトの関係を、ポジティブにつなぎ直す」をパーパスに、海洋サステナビリティのコンサルティングやブルーファイナンス事業を通して、海の再生と経済の成長を同時に実現するニューブルーエコノミーの実現に取り組んでいる。

Instagram :@umitopartners
WEBサイト: https://umitopartners.com

写真提供/UMITO Partners 取材・執筆/村田理江

※掲載している情報は、2026年7月28日時点のものです。

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