エシカルでサステナブルなライフスタイルを送る人に、一歩を踏み出すヒントを紹介していただくインタビュー連載企画「ELEMINIST TALK」。今回はモデル、料理家として活動する浅野美奈弥さんに、浅野さんが主宰するケータリングサービス「美菜屋」のアトリエにてお話を伺いました。
堂坂由香
エディター
慶應義塾大学文学部卒業後、宝島社、世界文化社にて女性誌の雑誌編集者として紙媒体の編集に携わる。制作会社を経て2021年独立。コロナ禍でのライフスタイルの変化により、エシカル、サステナブル…
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学生時代から活動しているモデルの仕事と並行して2019年からケータリング「美菜屋」を始動し、出張ケータリングやお弁当の販売、レシピ提供などを通して、おいしく見た目も美しいバランスの取れた食事の提案をしている浅野美奈弥さん。インスタグラムではフードロスやごみ拾いの活動なども発信されています。
アース弁はひとつ1,200円で3つからオーダー可能。「野菜の皮、茎や根には栄養と旨味がぎゅっと詰まっているので、食べると本当にパワーが出ます」
—フードロスなどのテーマに興味を持ち始めたきっかけから教えてください。
きっかけは2020年の1回目の緊急事態宣言で世の中の活動がストップしたとき、美菜屋のオーダーもほとんど止まってしまって時間ができたので、そのときにふと、“いままで仕込みで当たり前に生ごみとして捨てていた野菜の皮や切れ端を食べてみたらどうなるんだろう?”と思って、興味本位で生ごみとして捨てていた野菜の部分を使ってお弁当をつくって食べてみたらとにかくめちゃくちゃおいしくて。それで“アース弁”っていう名前を付けてインスタにアップしてレシピも紹介したらすごく反響があって、「私も野菜の芯を捨てるのやめました」といったようなコメントが届くようになったんです。
この日のアース弁は大根の茎の煮物、野菜の皮の味噌きんぴら、ズッキーニのヘタのガーリック炒め、残ったベシャメルソースとバジルの茎のクリームコロッケ、ナスのヘタの山椒煮、小松菜の芯の黒酢炒め、大根の根の素揚げなど。「そのとき残っている野菜の皮や芯でつくるので、毎回内容は変わります」
それまではどちらかというと、自分一人がペットボトルを買わなかったからといって何も変わらない、みたいに思っているタイプでした。でもあのとき“食材の捨てていた部分でお弁当をつくって、それを発信する”というアクションをしたことで、周りから反響があって少しずつ広がっている実感が沸き、そこからそういったテーマにすごく興味を持つようになりました。
「アース弁もプロギングも、楽しいから自然と続けられます」
—アース弁をきっかけに、そこから取り組んでいったことはありますか?
他の取り組みとしては、私が主宰しているGo Girlというランニングコミュニティがあるのですが、そのプログラムのなかに“プロギング”というランニングとごみ拾いをかけ合わせたスウェーデン発のスポーツを取り入れることを始めました。軍手とごみ袋を持って走り、走りながらごみを拾う動作が筋トレになるんです。
みんなで一緒に取り組むことでメンバーの意識も結構変わってきて、「走ってないときでも街を歩いていてごみを見つけたら分別するようになった」といった声も聞こえてくるようになりました。やっていてすごくよかったと思う活動のひとつです。
—美菜屋のオンラインショップではお米や調味料のほかサステナブルなアイテムも販売されていますが、オリジナルの蜜蝋ラップや蜜蝋バッグは見た目もすごく可愛いです。
飲食店ってどうしてもラップを大量に使うため、飲食の現場からラップをなくすことは難しいのですが、それぞれの家庭でラップを使う頻度を減らせたらいいなと思い、オリジナルの蜜蝋ラップと蜜蝋バッグをつくりました。蜜蝋自体に抗菌作用や保湿作用があるため野菜が長持ちするので、買った野菜を使い切れずに捨ててしまうことが多い一人暮らしの方にもおすすめです。
ギフトとして誰かに贈るのもいいですよね。もらった人が家でごみを減らしたり、フードロスについて考えるきっかけになったらいいなと思っています。あと冷蔵庫の中がすごく可愛くなるので、料理するのが楽しくなります!
オリジナルの蜜蝋ラップと蜜蝋バッグ。「バッグは野菜のほかパンの保存におすすめ。保湿効果があるのでパンのパサつきを防いでくれます」
可愛いとか楽しいっていうことが何かを続けるためには結構大事だと思っていて、この蜜蝋ラップや蜜蝋バッグも見た目が可愛い生地を選んでつくりました。プロギングもごみ拾いと走ることを同時にできて、宝探しみたいにゲーム感覚で自分たちが走った場所をきれいにできることがすごく楽しかったり、アース弁も見た目が可愛いとテンションが上がって、これをみんなに食べてもらいたい! って思ってまた作ろうってなったり。私の活動は全部そういう感じで、楽しみながらできることだと自然と続けられると思うんです。
—オンラインショップではドッグフードも販売されています。
これは兵庫県の鹿肉を使用した完全無添加のドッグフードで、美菜屋のスタッフの一人のご家族が開発したものなんです。素材は害獣駆除で大量に処分され、廃棄が課題となっている鹿肉を有効活用していて、製造は廃校になった学校の給食センターを利用しています。鹿肉はとっても栄養価が高く、犬の長生きサポートや健康維持、食いつきに効果的。またこのフードはグレインフリーなので穀物アレルギーの子も食べられます。
(左から)鹿肉入りのドッグビスコッティ、鹿肉ドライフード、鹿肉ジャーキー。「赤ちゃんから成犬まで、どの年齢の子でも食べられます」
「何か特別なことをしなくても、友だち同士でエシカル、サステナブルな話題を出すことだって立派なアクションのひとつじゃないかなと思います」
—キッチンの清掃などに使う雑巾は着られなくなった洋服やタオルを再利用していると伺いました。
私の実家では着なくなった服を切って雑巾として使う習慣があったので、上京して一人暮らしをしてからも続けていました。あるとき会社でもやろうと思い、少しでもキッチンペーパーの使う量を減らすため、キッチンの最後の油汚れの掃除や床掃除に使っています。
「私の実家にあったTシャツや美菜屋のスタッフが持ってきてくれた洋服をこんなふうに小さく切って使っています」
—モデルという仕事柄、日々さまざまなファッションに触れる機会も多いと思うのですが、洋服の買い方に変化はありましたか?
若いときはただ値段が安いからっていう理由で買いがちでしたが、最近はちゃんと長く着れるものを選ぶようにしています。あとは環境問題などに積極的に取り組んでるブランドの背景のお話を聞いたり自分も購入することで、その活動に一緒に取り組めていることが実感できますよね。
古着もよく着ます。昔から結構買っていて、当時はただ流行っているからという理由で購入していましたが、最近はちゃんと人から受け継いだものを着ていきたいと思うようになりました。なるべく捨てるのではなく、着たい人に着てもらいたいなと思ってフリマも定期的にやっています。
アース弁をつくったりするまではエシカルとかサステナブルなことを話題に出さなかったし、話題に出てもちょっと避けていたんです、わからないし知らないから。でもだんだんと、友だち同士の会話の中でサステナブルな話題とかこういうことやってるとか、そいういう話を以前よりするようになりました。例えばごはんを食べにいったときとかに、ちょっとそういう話題を出すだけでみんなの意識が変わったり考え方が広がったりするので、話題に出すことは結構大事だなと思うようになりました。
最近は地球環境のことなど、みんな普通に話すマインドになってきていますよね。サステナブルな話題は話すことも知らないことを知ることもすごく楽しいので、話題に出す人がどんどん増えていくといいなと思います。
浅野美奈弥/学生時代からモデル活動をスタート。過度なダイエットで体調を崩したことをきっかけに健康を見つめ直し、料理家を目指す。2019年にケータリング「美菜屋」を始動し、2021年にアトリエをオープン。ケータリング事業に加えて店頭でのお弁当販売をスタートし、キッチン付きレンタルスペースも併設。会員制ランニングコミュニティ「Go Girl」を主宰するなど料理家、モデル、ランナーとして幅広く活躍。@minami_asano
美菜屋
電話番号
03-4288-8014
住所
〒154-0001 東京都世田谷区池尻3-3-7東京
定休日
当面の間日曜定休(詳細は美菜屋インスタグラムをご確認下さい)
撮影/猪原悠 取材・執筆・編集/堂坂由香(ELEMINIST編集部)
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