「自分が楽しいからやる。その活動の先に伝わるメッセージがある」シンガーソングライターCaravanさん

Photo by 牧野 弘

ELEMINIST TALK 気になるあの人に聞いたエシカルライフ

エシカルでサステナブルなライフスタイルを送る先人から、一歩を踏み出すヒントを学ぶインタビュー連載企画「ELEMINIST TALK」。今回ご登場いただいたのは、シンガーソングライターのCaravanさん。ピースフルな音楽のみならず、ライフスタイルやインディペンデントな活動でも注目の人だ。茅ヶ崎・里山のごみ問題が発端だというイベント「HARVEST PARK」について、また不安定な時代をブレずに生きるマインドについても伺いました。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2026.01.01

Caravanさんの音楽の魅力を聞かれれば、そのライフスタイルともリンクしたピースフルな世界観を挙げる人も多いでしょう。まだ、エシカルやサステナブルという言葉が世に浸透していない時代から、自然と調和したスローなライフスタイルを教えてくれた人でもあります。

そんなCaravanさんが、ご自身の住む茅ヶ崎で食・農・音楽が楽しめるイベントを主催されていると聞き、取材させていただきました。「HARVEST PARK(ハーベスト パーク)」は、茅ヶ崎・里山のごみ問題が発端のイベント。メジャーな海側ではなく里山エリアの魅力にも気づいてもらえたら、そんな気持ちで立ち上げたといいます。

環境について考えるイベントといっても、「世界を変えよう!」と声高に叫ぶものではなく、食・農・音楽を通して発せられるメッセージは、心地よくおだやか。「自分が興味のあること、やりたいことだからやっている」からこそ、多くの人にメッセージが届くのだろうと感じました。私たちもエシカルな活動に携わるとき、ぜひ参考にしたいポイントです。

コロナ禍の鬱憤から救ってくれた田園エリアに恩返しがしたい

————「HARVEST PARK」は、Caravanさんの発案でスタートしたと聞きました。やろうと思ったきっかけを教えてください。

ちょうどコロナ禍の頃ですかね。ライブとかもできなくて塞ぎ込んでいた時期があったんですよ。そんな僕を見かねた友人のファーマーたちが「よかったら畑にこないか?」、「一緒にお米づくりをしてみないか」と誘ってくれて。

そこから海側ではなく里山のほうにも足を運ぶようになりました。僕が住んでいる茅ヶ崎というエリアはビーチタウンの印象が強いと思うのですが、実は北側の里山には美しい田園が広がっていて、農業を営んでいる仲間たちも多いんです。

当時は感染者数が毎日のように増えていくなかで、意見の対立や分断がすすみ、不安が助長されているように感じていました。それでも畑や田んぼに行けば、農作物は関係なくどんどん育っていて、すごく健やかで。「あぁ、慌てふためいているのは人間だけなんだな」という気持ちにさせられた。コロナ禍で悶々としていたのが、救われた部分がありました。そんなところから、茅ヶ崎の里山エリアに何か恩返しをしたいと思ったのがきっかけです。

茅ヶ崎の北側で知った、里山へのごみの不法投棄問題

里山クリーン

月1回の「里山クリーン」は、「ふるさとファーマーズ」と一緒にやっているそう。

————「何か恩返しをしたい」と思うなかで知ってしまったのが、茅ヶ崎・里山エリアのごみの不法投棄だったんですね。

海側はビーチクリーンも盛んなのですが、里山のある北側も実はエグいことになっていまして。オーガニックにこだわって育てている仲間たちの畑に、バイクが乗り捨てられていたり、家具やベッドが放置されていたり。ときには産業廃棄物のような液体まで捨てられていました。ポイ捨てレベルではなく、不法投棄が平然と行われている。そんな現状を目の当たりにしたんです。

メジャーな海側ではなく、北側の里山でイベントをすることで何かできないだろうか。ここがいい場所だということを知ってもらいたい、このエリアに関心をもち自分ごととして考えてもらいたい、そんな気持ちが湧き上がりました。

そこではじめたのが、「里山クリーン」です。世の中はすべて循環していて、上流のごみがやがて海へと流れていく。なので、上流のビーチクリーン的な意味合いでやっていこうと思ったんです。その延長線でスタートしたのが、「HARVEST PARK」です。

里山公園をフィールドに、仲間たちと手づくりの収穫祭を

HARVEST PARK

「八一農園」とCaravanさんの仲間たちが集ってはじめた、手づくり感のあるイベント。

————今年も11月3日に開催された「HARVEST PARK」、どんな内容のイベントなのか教えてください。

農業と音楽と食をテーマにした、収穫祭のようなイベントです。茅ヶ崎の里山公園を貸し切って、音楽ステージあり、ちょっと地球環境について学ぶトークステージあり。その周りを囲むように、収穫された野菜を販売するブースや湘南エリアのおいしい飲食店のキッチンカーが並んでいる、といった感じです。

HARVEST PARK

巨大なキャンバスに体を使って絵を描く子どもたち。家族で楽しめる。

音楽を聞きたい人は聞けばいいし、話をしたい人はすればいいし、おいしいものを食べたい人は食べればいい。ひとつの空間にいろんな人が集まって、問題定義もふくめて本音で話し合えるというか。みんなが境界線なく遊べるイベントをイメージしています。

そこで出会いがあったり、新しい発見があったりするといいなって。「今年もお疲れ!」という、お疲れさま会的な意味もあります。みんなの意識を少しずつリードすることができたらと思ってはじめたイベントです。

————「音楽フェス」ではなく、「パーク」なのはなぜですか?

営利目的のフェスではなく、パークにしたくて。だから会場も公の公園、チケット代もとっていない無料のイベントです。ふだんみなさんが使う公園で、子どもから大人、おじいちゃん、おばあちゃんまで、みんなが楽しめるイベントにこだわりました。誰もが参加できる、1日だけの平和な公園をつくりたいと思ったんです。

————ゲストスピーカーの人選は一緒に主催されている「八一農園」さん、ミュージシャンの人選はCaravanさんだと伺いました。どんな方に声をかけられたのでしょうか?

音楽のジャンルといった表向きなものではなく、根っこの部分でシンパシーを感じる方々にお願いしました。活動の本質にメッセージを感じるというか。

HARVEST PARK

ギタリストの小沼ようすけさん。

例えば今年でいうと、ギターリストの小沼ようすけくん。ジャンルの垣根も国境すらも超えて、いろんなところでセッションをしている素晴らしいギターリストです。ひとつのところにとどまらず、自分というものがずっと変容し続ける、流れ続ける感じがすごくすてきだと思っています。

HARVEST PARK

BRAHMAN(ブラフマン)のボーカル、TOSHI-LOW(トシロウ)さん。

BRAHMANのボーカリスト・TOSHI-LOWくんは今年も参加してくれたんですが、彼は震災後、足繁く東北に通ってチャリティ活動をしていた経験がある。それも日常の延長でやっているんですよね。行政に頼らず「まずは行動してしまおう」というフットーワークの軽さだったり、「自分の責任でやってしまおう」という姿勢に共通するものを感じていて。僕らの「里山クリーン」と似た感覚だと思うんですよね。

マイ箸やマイカップ、リユース食器でごみゼロを目指す

————「HARVEST PARK」では、エシカルな取り組みもされているとか。具体例を教えてください。

電力は基本的にすべて、ガソリンを使わない太陽光発電の蓄電池で稼働しています。メインステージはもちろん、各ブースの出店者さんたちもみんな蓄電池のバッテリーで営業している。なので、会場を見渡してもエンジンが回っているような騒音はまったくありません。すごくクリーンな環境になっています。

そして食器はリユースできるものを使用しています。そもそも里山のごみ問題から端を発したイベントなので、このイベントでごみを出してしまったら元も子もない。だからごみ箱も設置していません。自分たちで食器を何千個と買い集めて、それを毎回出店者さんにお渡しして使っていただく。イベントが終わった翌日は、僕をふくめボランティアさんみんなで食器を洗浄する、そこまでがイベントです。

————2023年からスタートして今年で3回目。茅ヶ崎の街に根付いてきたな、という手応えはありますか?

一番それを感じたのは、昨年から地元・茅ヶ崎市の小学校の生徒さんと一緒に合唱をしたり、僕のライブに参加してもらうようになったことです。それによって、ご両親とか親戚の方とか、地元の方がイベントに来やすくなったという感じがあります。

HARVEST PARK

昨年から地元の子どもたちも参加してくれるように。

小学生の子どもたちが、ステージにあがるのをドキドキ・ワクワクしながら楽しみにしてくれて、毎日のように僕の歌を練習してくれている。そういうのを見ると何でしょう、やっぱりグッとくるというか、すごく胸が熱くなるものがありました。

今年も小出小学校の子どもたちが参加してくれたんですが、なかには「将来バンドやりたい!」とか、「ギターをやってます!」という子もいたりして。あと10年もすれば、もしかしたら彼らがライブハウスで歌っている可能性もありますよね。

「そういえばあのとき、『HARVEST PARK』でステージに立ったな」っていうのが心のどこかに残っていて、それがいい道しるべになればいいな、という思いもあります。そういう意味でも、11月3日・文化の日に開催していきたいですね。

Caravan / Life By Nature 【MUSIC VIDEO】
次ページ
世界を変えるには自分の足元から変える必要がある
※掲載している情報は、2026年1月1日時点のものです。

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends