「エシカルなアクションの最初の一歩でありたい」ごみ拾いボランティア・グリーンバード代表の福田圭祐さん

福田圭祐さん
ELEMINIST TALK 気になるあの人に聞いたエシカルライフ

エシカルでサステナブルなライフスタイルを送る先人から、一歩を踏み出すヒントを学ぶインタビュー連載企画「ELEMINIST TALK」。今回ご登場いただいたのは、ごみ拾いボランティアのNPO法人「green bird(グリーンバード)」代表の福田圭祐さん。ごみ拾いだけにとどまらない団体の取り組みや、社会を動かすにはどうすればいいのか? そんなヒントについても伺いました。

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2025.10.05

街でおしゃれなグリーンのビブス(ゼッケン)を着用し、ごみ拾いをしているグループを見かけたことはありませんか? それがごみ拾いボランティアのNPO法人「グリーンバード」です。2002年に東京・原宿からたった5人の若者たちがスタート。それがいまや国内外に約80チーム、参加人数は年間3万人にものぼる組織へと成長しました。

福田圭祐さんは2019年より3代目代表に就任。元広告代理店だという経歴を活かしたクリエイティブなイベントや、企業とのコラボレーションが話題になるなど、「グリーンバード」の歴史に新たな1ページを刻む先駆者でもあります。

一方で福田さんが守り続けるのが、社会貢献の入門編という「グリーンバード」の立ち位置。決して意識高い層に向けた環境団体ではないと言い切ります。一般の人にエシカルなメッセージを届け、企業や団体を巻き込みながらどのように社会を変えていくのか? そんな福田さんのプロデューサー的視点には、ELEMINIST読者にとっても目から鱗が落ちるような学びがありそうです。

ごみ拾いで思わぬ経験。ふだん出会えない人と仲良くなれた

グリーンバード link

「グリーンバード」のサイトから参加したいチームを選び、日程を確認、申し込むだけ。誰でも自由に参加できる。

————福田さんと「グリーンバード」との出会いから教えてください。

2008年頃、高校3年生の夏休みに初めて参加したのがきっかけです。といっても、環境問題に興味は全くなく、大学の推薦入試に必要だったから。エントリーシートにボランティア経験の有無を書く欄があったんです。空欄で出したところ、先生から「ごみでも拾って、この欄を埋めてきなさい」って言われて(笑)。ネットで検索したところ、原宿・表参道近辺でまさにごみ拾いをしている団体「グリーンバード」がヒットしました。

福田圭祐さん

「グリーンバード」に参加したばかりのころ、高校生の福田さん。

————当時はSNSも今ほど盛んではなく、ボランティア活動自体めずらしかったと思います。参加してみた印象は?

参加する前は、勝手なイメージからゴリゴリの環境保護団体だと思っていました。なので、環境問題について聞かれてもいいように、想定問答まで用意していたほど(笑)。ところが、当日集合場所についてみると拍子抜けしたんです。10人ほどで自己紹介をする場面があったんですが、誰ひとり環境問題について語らない。それどころか「原宿で美容師やってます。お客さん探しているのでぜひ!」、「原宿の占いの母です。手相みれます!」など、実にカジュアル。

家に帰って母から感想を聞かれたときも、「楽しかった」というのが最初に出てきた言葉でした。ごみ拾いにやりがいも感じましたが、それ以上にふだん話せないような大人たちと仲良くなれたこと、「現役の高校生と話している!」と喜ばれたことが嬉しかったんですよね。そこから、高校、大学と定期的に参加するようになりました。

ボランティアに興味があっても参加経験のない人は6割

グリーンバード

このグリーンのビブスが目印。約70のチームがあり、地域周辺のごみ拾いを定期的に行う。

———ごみ拾いのボランティアに参加するようになって、周りの友人たちの反応はどうでしたか?

当時の大学生からしたら、ボランティアなんてまだまだ身近じゃない。ところが、mixi(ミクシィ)に写真をアップすると、「私もボランティアに参加してみたい!」というコメントがたくさん来たんですよ。そこで思い出したのが、「グリーンバード」の初代代表・長谷部 健さんが話していた「2・6・2の法則」でした。

内閣府による社会貢献に関する実態調査なんですが、「2・6・2」のうち、2割は興味があってすでにアクションを起こしている層、次の2割は興味もなく否定的な感情を持っている層、最後の6割が興味はあるけれど参加したことがない層、というもの。実際、「1人で参加すると意識高い系と勘違いされそうで恥ずかしい」と話している友人もいましたし、私自身も間違いなく6割に属する人間でした。そんな環境意識が高いわけでもない自分が参加していることに、存在意義を感じるようになっていきました。

広告の仕事で培った経験で、社会にムーブメントを起こしたい

———大学卒業後は、広告代理店に勤務されていたそうですね。そこからどういった経緯で「グリーンバード」の代表に?

広告代理店を辞めたころ、初代代表と2代目代表から呼び出しを受けたんですよ。2019年にはラグビーワールドカップ、2020年には東京オリンピックがある。その前に世代交代をしたいからどうだ? という打診でした。

私自身、「グリーンバード」で人生が大きく変わったといっても過言ではない。そこに迷いはありませんでした。もうひとつの思いとして、ごみ拾いやサステナブルな取り組みを多くの人に知ってもらうには、もっと大きな仕組みやムーブメントをつくる必要がある。そうでないと、「2・6・2の法則」の「6」の人たちは動かせない。広告代理店経験のある私だからこそ、ごみ拾いへの興味を喚起したり、環境問題について考えるきっかけづくりができるんじゃないか、そう思ったんです。

批判ではなく、意識を変えるユニークなアイデアを

グリーンバード

現在、東急プラザ原宿「ハラカド」がある場所に設置されていた、タピオカ専用BOX。どんなブランドの容器でも捨ててOK!

———福田さんが代表になられてから、「グリーンバード」の躍進には目を見張るものがあります。新しく取り組まれた事例など教えてください。

グリーンバードが目指す「ポイ捨てのない社会」を実現するためには、ごみを拾うだけでなく、ごみを生まない、ポイ捨てさせないというアプローチが必要です。捨てられたごみをどうするか、多面的にアプローチしてきたつもりです。

たとえば5年ほど前、東京・原宿でタピオカブームが起きたとき、原宿の街中にタピオカ容器のごみがあふれたことがありました。ここでポイ捨てした人を批判しても何の解決にもなりません。タピオカを飲んでいる人たちにどうアプローチすればいいのか。批判ではなく歩み寄ることを考えました。

そうしたなかで頭に浮かんだのは、飲んだ後にごみ箱に捨てたくなる仕掛けにすればいいんじゃないかと。そこでつくったのが、タピオカ容器の形をしたごみ箱です。ストローの部分からごみをどんどん入れてもらうんですが、ちょっと捨てたくなるし、インスタ映えも狙えるとのことで若者を中心にSNSをはじめ話題になりました。

ごみ袋でトライプロジェクト

「ごみ袋でトライプロジェクト」。ラグビーボール型のごみ袋を配布し、ごみのないスタジアムづくりに取り組んだ。

2019年のラグビーワールドカップのときも、試合後のスタジアムに放置されたごみが問題になりました。組織委員会の要請を受けて「グリーンバード」でごみ拾いの依頼があったのですが、ごみ拾いをするのはお客さんが帰った後の話なんですよね。会場はキレイになるかもしれないけれど、次の日にはまた同じようにごみであふれかえっている。はたしてこの活動に意味があるのか。タピオカの例と同じように、捨てる人の意識を変える必要があると感じました。

このときは試合会場で、ごみを入れて袋の上下を結ぶとラグビーボールの形になる仕掛けのごみ袋を配りました。これをただごみ箱に捨てるだけではつまらない。捨てたくなる仕掛けとして、試合会場の外にミニグラウンドをつくり、「みなさん、そのラグビーボール袋でここにトライしにきてください!」と呼びかけたんです。

そうなると、袋をボールの形に膨らませるにはごみが必要になります。必然的に、自分のごみだけではなく周りに落ちているごみも拾ってボールをつくり、トライしに(捨てに)来てくれる人が増えました。これには選手や地域の方も賛同してくださり、全45試合で70万枚もの袋を配るという偉業を達成しました。どちらの事例も、捨てる人に歩み寄る姿勢が功を奏したのだと思います。

「グリーンバード」から、環境問題への関係人口を増やす

———どれも楽しそう! 福田さんが広告代理店時代に培われた、クリエイティブなアイデアが生かされていますね。出てしまったごみに対してはどんな事例がありますか?

2021年ごろからはビーチクリーンもしているんですが、そうすると日本各地から回収された海洋プラスチックごみが集まります。当時、アパレルブランドさんが余剰在庫を捨てずにアップサイクルして、新たな商品に生まれ変わらせるという取り組みを打ち出していました。

たしかに、自分たちがつくり過ぎてしまったゆえに生まれたごみを、アップサイクルすることは正しいとは思います。でも、私たちが拾った海洋プラスチックごみを何かに生まれ変わらせることができたら、そこにもっと価値が生まれるんじゃないか、そう思ってはじめたのがアップサイクルブランド「buoy」とのコラボレーションです。

RePLAMO(リプラモ)

RePLAMO/リプラモ プラモデル 1,650円。集めた海洋プラスチックごみによって色もデザインも変わる。世界に一つのウミガメのプラモデル。

これからの未来を担う子どもたちが、楽しみながら海の環境問題を身近に考えるきっかけを提供したいとの想いから、アップサイクルプロジェクト「RePLAMO(リプラモ)」を立ち上げました。これは日本各地でビーチクリーンを実施し、そこで自分たちが拾った海洋プラスチックごみが1ヶ月半後にウミガメのプラモデルとして生まれ変わり、自分の手元に戻ってくるというもの。

もうひとつご紹介したいのが、「海の自由研究フェス」です。これも子どもたちに向けたプロジェクトで、毎年夏に開催しています。2018年からはじめたのですが、最初は400人程度だった参加者も、今年は5000人にのぼるほど大きくなりました。

内容は、ゲストのトークショーやワークショップを体験しながら、海の環境問題について学ぼうというもの。例えばマイクロプラスチックごみを使ったスノードームをつくりましょう、海洋の酸性化について学びながらバスボムをつくりましょう、生分解性の漁網を使ったバッグをつくりましょう、といった具合です。

イベント名を「海の環境フェス」ではなく、「海の自由研究フェス」と名付けることで、「夏休み 自由研究」というワードで検索する親御さんを取り込めたら、という目論見が当たったのだと思います。

こうやって見ていくと、ただ参加者を増やすだけではなく、ごみ拾いに参加しなくても、「グリーンバード」を通じて何かしら環境問題にアクションを起こした人を増やす、いわゆる関係人口を増やすということが、私が代表になってから力を入れてきたことかもしれません。

他の団体やパートナー企業とのつながりをつくりたい

グリーンバード

都市部ではごみがごみを呼ぶ現象が起こりやすい。「近年はごみが増えてきている危機感がある」と福田さん。

————これからどんな活動に力を入れていきたいですか?

私たちがアプローチしたいのは「2・6・2の法則」の6の人たち、はじめて参加した頃の私のような、環境意識が高いわけではない一般の人たちです。いまの時代、学校や企業の取り組みなどで環境問題については勉強されている。その中で「グリーンバード」がやっているのは、フィジカルに体を動かして「マイクロプラスチックって本当に海に落ちているの?」とか、自分の目で見て学ぶ機会を提供すること。学ぶだけではなく実際にアクションを起こす最初のきっかけ、というのがあるべき姿なのだと思っています。この社会貢献の入門編という立ち位置は、23年間、ずっと変わっていません。

そう考えると、ごみ拾いから環境問題へ興味を持ってくれた人の次の受け皿として、横のつながりを増やしていきたいと思っています。それは、企業やアプローチの異なる団体かもしれませんし、大学の研究機関かもしれません。私たちがハブとなり、アクションを起こしてくれた人たちのアウトプット先として、サービスや商品とつなげる、そんな役割を担っていけたら。

街のごみも、東京に関していうと増えてきている印象がある。文化の違いでもあるんですが、インバウンドの方のリテラシーが非常に低いのが一因です。結局、私たちがしているごみ拾いの先には、集積所や埋立地がある。埋立地、いわゆる最終処分場の容量が限界を迎えつつあることを考えると、このままごみ拾いを続けても解決にはつながっていません。

やはりごみを減らすこと、ペットボトルを捨てるならキャップとラベルを剥がしてリサイクルすること、資源を循環させることが必要です。私たちには使う責任があり、企業にはつくる責任がある。自治体も街のごみ箱を減らすのではなく、その受け皿になるものを用意する必要があると思います。みんながそれぞれの役割を担わなければいけない。

私たちの活動でも徐々にそういったことを伝えていきたいですし、ごみ問題に興味を持ってくれた人に、次の受け皿を用意してあげたい。「グリーンバード」はあくまで社会貢献の入門編なので、他の団体やパートナー企業と連携していきたいですね。

身近にできるアクションや、その意味を伝えていく

グリーンバード

————ふだんの生活の中で、どんなエシカルなアクションをされていますか?

もし私がストイックな環境活動家だったとしたら、それを参加者のみなさんにも押し付けたくなると思うんですよ。なので、目指しているのはみなさんの一歩先をいく、先輩的な立ち位置でしょうか。

例えば、マイボトルを携帯したいけど、こんなに暑かったらすぐに空っぽになってしまうし、給水スポットもまだ少ないよね、そう悩んでいる人がいたとします。そしたら、「mymizu(マイミズ)」というアプリを使えば家の近くに給水スポットが見つかるかもしれないよ。なかったらペットボトルを買えばいい。でも捨てるときはスーパーに行けば、キャップとラベルを剥がした状態で回収してくれる。街中のごみ箱に捨てるのと何が違うのかというと、リサイクルに向いているかどうか、とか。

あるいは、急に雨が降ってきてビニール傘を買おうか悩んでいる人に向けて。コンビニで買うと高いよね。しかもすぐ壊れたり、紛失することも多い。「アイカサ」っていう傘のシェアリングサービス知ってる? 山手線の全駅に設置されていて、モバイルバッテリーのシェアリングと同じ感覚で使える。それなら傘を持ち歩く必要もないし、コンビニで買うより安いよ、とか。

こんなふうに、身近に取り入れられるエシカルな情報をインプットして、みんなに教えてあげる。小さな一歩を踏み出せるよう橋渡しをする。それが、私のやっているエシカルなアクションかな、と思っています。

相手のレベルに合わせて話せる、エシカルの伝道師に

————エシカルな暮らしをはじめたいと思っているELEMINIST読者に向けてアドバイスをお願いします。

環境リテラシーの高い読者の方が多いかと思います。そんなみなさんにはぜひ、ELEMINISTで得た情報や、持っている知識・ノウハウを、周りの人に伝える伝道師になってほしい。強制することも、押し付けることもなく、「ちょっとやってみない?」と周りに広めるということを積極的にやっていただきたいと思います。

私たち「グリーンバード」も参加を強制しない、ごみ拾いをストイックにやらないことを心がけています。大事なことは、世の中の「6」の人たち、社会貢献に興味はあるけれど参加したことがない層を動かすには、相手の立場にたって、ちょっと身近にできることをシェアしてあげる。これこそが、実は大きなアクションなのではないでしょうか。

福田さん

福田圭祐(ふくだ・けいすけ)/「greenbird(グリーンバード)」3代目理事長(2019年〜現在)。1990年生まれ。株式会社アサツーディケイを退職後、2016年にNPO法人green birdへ参画。副代表を経て、2019年に3代目の代表に就任。タピオカ専用BOXやラグビーW杯でのごみ袋プロジェクト、海洋プラスチックごみ問題に取り組むアップサイクル事業や子ども向け環境イベントなど、アイデアや知見を活かし、団体の新たな可能性に挑戦中。

Instagram :@greenbird_official
WEBサイト:https://www.greenbird.jp

写真提供/グリーンバード 取材・執筆/村田理江 編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)

※掲載している情報は、2025年10月5日時点のものです。

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