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地域の環境を守りながら、誰でも気軽に参加できる清掃活動ボランティア。身近な場所から社会に関わるきっかけとして、注目が高まっている。本記事では、清掃活動ボランティアへの参加方法やメリット、探し方、活動事例までをわかりやすく解説。運営側として関わりたい人もぜひ参考にしてほしい。

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エレミニスト編集部
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清掃活動ボランティアを理解するには、まず「どのような活動が範囲に含まれるのか」「なぜ関心が高まっているのか」を把握したい。以下で、それぞれについて解説する。
清掃活動とは、ごみを拾ったり掃除をしたりなど、空間をきれいに保つための活動のこと。また、ボランティアとは自発的な意志で社会に貢献する行為を指し、自主性・社会性・無償性などの特徴が挙げられる。(※1)。
つまり、清掃活動ボランティアとは、地域や自然環境をよりよく保つために、個人や団体が自主的に参加する清掃・美化の取り組みのこと。「ごみ拾いボランティア」や「ボランティア清掃」などと呼ばれることもある。
活動形態や範囲は、実に多様。道路や公園といった地域のごみ拾い、海岸・河川のクリーンアップ、学校・企業などの環境活動などが考えられる。一般的には、公共の場所で行われることがほとんどだ(※2)。
清掃活動ボランティアが注目される理由はさまざまあるが、海洋ごみやプラスチック汚染の深刻化により、環境への負荷が問題視されるなかで、個人が気軽に参加できるわかりやすい社会貢献として捉えられている側面が大きい。
SDGsが広く浸透したことで、地域美化や資源循環への意識も高まり、自治体・企業・学校が協働する動きも拡大している。また、清掃活動ボランティアは地域のコミュニティ形成にもつながることから、持続可能な地域づくりを支える実践的な取り組みとしても期待が高い。(※3)
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清掃活動ボランティアには、環境改善や地域貢献といった社会的効果だけでなく、参加者自身の成長や企業のCSRにもつながる多面的な意義がある。以下では、その主なメリットを紹介する。
清掃活動ボランティアは、ごみ削減や景観改善といった目に見える変化をもたらすだけでなく、生態系の保全や地域の安全性向上にも寄与する。歩きたばこやポイ捨ての減少といった行動変容を促す効果もあり、まちの環境価値を底上げする取り組みとしても重要である(※3)。
清掃活動は、参加者自身にとっても多くのメリットをもたらす。社会に貢献しているという実感を得られるほか、地域の人々との交流や連帯が生まれ、ネットワークを育む機会にもなるだろう。
体力や時間的な負担はあるかもしれないが、屋外での活動は心身のリフレッシュにつながり、健康促進の側面もある(※4)。また、親子や家族で参加することで、子どもの環境教育や主体性を育む場としても機能する。
CSR(Corporate Social Responsibility)とは、「企業の社会的責任」を指し、環境問題への取り組みやボランティア活動はその実践手段として広く採用されている(※5)。
清掃活動ボランティアは、SDGsへの貢献や地域社会との関係づくりに直結し、社員が主体的に参加することで、組織の一体感を高める効果も期待できる。環境負荷の低減だけでなく、社会に開かれた企業姿勢を示す取り組みとして、企業・団体での導入が進んでいる。
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清掃活動ボランティアは、日常の生活圏から自然環境まで、多様な場所で行われている。
街中で多く実施されている清掃であり、日常の街歩きの延長で、気軽に取り組みやすい。清掃用具の貸与や標示板の作成、保険制度の整備など、美化活動を支援する制度を行っている自治体も増えている(※6)。自治体や団体が主催する市民参加型の清掃イベントも開催されている。
私たちの暮らしに身近な川や湖は、多くの恵みをもたらす一方で、街中から流れ込むごみによる汚染が深刻化している。景観の悪化だけでなく、生態系への影響も大きく、最終的には海洋プラスチック問題へとつながっていく(※7)。こうした課題に対応するためには、河川・湖沼・水辺の清掃が欠かせない。流域に関わる住民だけでなく、多様な主体が連携し、美化に努めることが求められている。
海岸での清掃活動は、海洋プラスチック問題の解決に直結する取り組みとして、近年とくに注目度が高まっている。海に流れ出たごみの多くは、河川を通じて運ばれたプラスチックであり、細かく砕けてマイクロプラスチック化すると回収が難しくなる。そのため、海岸でのビーチクリーンは、環境汚染拡大を防ぐための有効な手段だ。海を守る意識を共有しながら、自然とのつながりを感じられる活動である。
花火大会や祭りなど、多くの人が集まるイベント後には大量のごみが発生する。効率的な回収方法や導線設計が重要であり、自治体や主催団体がボランティアを募集するケースが増えている(※8)。
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清掃活動に参加したいと思ったとき、まず知っておきたいのが「どこで情報を見つけられるか」だ。自治体のホームページやポータルサイト、SNSでの呼びかけなど、入り口は多様である。それぞれの特徴を理解しながら、自分に合った活動を見つけてほしい。
清掃活動ボランティアの募集情報は、目的や参加スタイルによって最適な探し方が変わってくる。全国の取り組みを一括して探せるポータルサイトから、地域密着で活動するNPO、自治体が主催する公的な清掃イベント、SNSでのカジュアルな呼びかけまで、情報源は幅広い。
以下では、3つの事例をピックアップした。まずは代表的なサイトや団体をチェックしながら、自分のペースや関心に合う活動を見つけていくのがおすすめだ。
グリーンバードは、2002年に東京の原宿・表参道で若者たちがはじめた活動が原点のNPO団体。「ポイ捨てのない社会をつくる」を活動の目的としており、誰でも自由にごみ拾いに参加できる。活動は全国・海外で行われており、公式サイトのスケジュールから実施日程・地域を確認可能だ。
東京ボランティアレガシーネットワークは、東京都の公式ボランティアポータルサイトだ。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会をきっかけに立ち上がり、清掃活動に限らず、地域イベントや環境保全など多様な活動が掲載されている。
参加条件や活動場所を比較しながら、興味のある分野のボランティアを探せる。体験談や活動レポートも掲載されているので、初心者の方の入り口としても使いやすい。
海岸を中心にビーチクリーン活動を続ける「team530」。「プラスチックが魚よりも多くならない」ように、茅ヶ崎海岸などで定期的に海岸清掃活動を行っている。公式サイトやSNSを活用したカジュアルでわかりやすい発信が魅力。清掃活動ボランティアの意義を体感したい人、海洋プラスチック問題について理解を深めたい人は、要チェックだ。
清掃活動ボランティアは気軽に参加できる反面、安全と快適さのための準備が欠かせない。履き慣れた靴、シーンに合わせた動きやすい服装が基本。持ち物は、軍手・トング・ごみ袋を用意することが一般的だ。主催団体によっては道具を貸し出している場合もあるため、事前案内をしっかり確認しておこう(※9)。
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清掃活動ボランティアを行う際には、安全管理や事前準備、継続の工夫など、いくつか押さえておきたいポイントがある。以下では、企画・運営をはじめる前に知っておきたい基本を紹介する。
清掃活動を企画する際は、まず実施場所の管理者への連絡や、自治体の許可確認が必要となる。また、ごみの回収・受け入れに関しても、自治体によって取り決めがあるケースがあり、支援を受けられる場合も。各自治体によって担当窓口が異なるため、必ず確認しておこう(※10・11)。
あわせて検討したいのが、ボランティア保険への加入だ。任意ではあるが、参加者の怪我や第三者への損害に備えられるため、個人・団体どちらの活動でも加入しておくと安心だ。補償内容や保険料は自治体社会福祉協議会ごとに異なるため、活動場所の地域で確認しておくとよい(※12)。
清掃活動では、安全と地域ルールの順守が欠かせない。ごみにはガラス片や危険物が混じる可能性があるため、必ず軍手や手袋、トングを使用しよう。
車道や河川沿いでは、見守り役を決め、声をかけ合いながら交通安全に配慮することも重要だ。分別は自治体の方式に従い、大型ごみや不法投棄物は無理に回収せず自治体へ報告を(※13)。
清掃活動ボランティアを継続するためには、参加し続けたくなる仕組みづくりがカギとなる。魅力あるテーマ設定や拠点づくり、参加動機につながる工夫を行いながら、目標の明確化や成果の見える化、SNSでの発信を組み合わせることで、活動の継続性も高まるだろう。
清掃活動ボランティアは、環境教育の実践の場としても注目されている。親子や学生が主体的に参加することで、地域や自然に対する理解が深まり、体験的な学びの場となる。活動前後にごみの種類や背景を共有したり、気づきを話し合う時間をつくることで、単なる作業にとどまらず、環境意識の育成にもつながるだろう。
こうした取り組みによって、夫婦・親子・孫の3世代で参加する家庭や、小中学生の参加を継続的に促す地域も増えており、世代を超えた学びと交流の場として広がりつつある(※14)。
清掃活動ボランティアは、SDGsと親和性が高い。「つくる責任・つかう責任」「海の豊かさを守ろう」「住み続けられるまちづくりを」などと関連づけることで、活動の社会的意義をより明確にできる。
回収したごみの量や活動レポートを共有したり、地域メディアと協働して情報を発信することで、活動の成果が可視化され、新たな参加者の呼び込みにもつながる。活動実績や活動参加者の声を報告書としてまとめることも効果的だ(※15)。
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清掃活動ボランティアは、団体や地域、企業などと協働することで、より大きな力となる。以下では、代表的な団体・取り組みを通じて、多様な清掃活動のスタイルや可能性を紹介する。
JTが主導で行う社会貢献活動「Rethink PROJECT」では、2004年から全国で「ひろえば街が好きになる運動」として市民参加型の清掃プロジェクトを展開している。「“ひろう”という体験を通じて、“すてない”気持ちを育てたい」という願いを込めており、ごみ拾いを行いながら、ポイ捨てマナーや街の環境美化について考えるきっかけを提供している。
熊本市では、「お城まつり」と連動し、熊本城周辺で清掃活動を実施。地域住民だけでなく、観光客も一緒になり、一体感を持った活動が行われた(※16)。
NPO法人「海さくら」は、「目指せ!日本一楽しいゴミ拾い!」をスローガンに掲げ、海岸でのビーチクリーンを定期的に実施している。2025年も、海の日に青いサンタクロースになってアクションを行う「BLUE SANTA 」をはじめ、さまざまなイベントと組み合わせた清掃活動を全国で展開。子どもから大人まで、多様な参加者が楽しく活動を行っている。
ごみ拾い後には、参加証明書が発行され、スタンプを集めるとプレゼントをもらえる。道具の貸し出しもあり、手ぶらで参加できる、初心者にもやさしいごみ拾いとなっている。
荒川クリーンエイド・フォーラムは、1994年から東京・荒川流域を中心に河川・水辺の清掃を行っている。企業・学校・自治体・市民団体などと連携して、各会場で多様な清掃活動を展開しているのが特徴だ。
年間150会場以上、参加者数は1.3万人を超え、「調べるごみ拾い」として、ごみの種類や量をデータとして記録。単なるごみの除去だけでなく、「なぜこのごみが生まれたか」「どう防ぐか」を考える環境教育と問題提起の場を提供している。
河川の自然環境保全や生物多様性の維持、地域の防汚対策としての役割も担い、企業のCSR活動や社員研修として導入される例も多い。ごみ問題と向き合いながら、組織や企業が持続可能性を考えるきっかけにもなるプログラムといえる。
清掃活動ボランティアは、地域や環境をきれいにするだけでなく、参加者同士の交流や街への愛着を育む力を持つ取り組みだ。身近な場所から一歩踏み出すことで、環境保全や暮らしやすい地域づくりに貢献できる。無理のない形で関わり続けることで、小さな行動が大きな変化を生み出していくだろう。
※1 ボランティアについて P1|厚生労働省社会・援護局 地域福祉課
※2 ボランティア清掃について|大牟田市
※3 About|green bird
※4 ボランティアに参加するメリットは?活動の種類や選ぶポイント|公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン
※5 CSR・SDGsと広報|企業広報プラザ
※6 美化ネットふじさわ|藤沢市
※7 全国川ごみネットワークについて|全国川ごみネットワーク
※8 花火大会翌日のボランティア清掃にご協力をお願いいたします|大洗海上花火大会2025
※9 ボランティアの基礎知識|ぼ活!
※10 ボランティア清掃|沖縄県
※11 ボランティア清掃を行う団体等を支援します!|京都市情報館
※12 ボランティアの基礎知識|ぼ活!
※13 ごみ拾いの注意点|ラブアース・クリーンアップ in 北海道
※14 ボランティア清掃の活動事例(平成31年度)|広島市
※15 クリーンボランティア支援事業を利用した活動状況|広島市
※16 「ひろえば街が好きになる」ボランティアが熊本城周辺を清掃|TBS NEWS
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