Photo by Minor Figures
「ブルーボトルコーヒー」などでも採用されている、英国生まれのオーツミルク・ブランド「マイナーフィギュアズ」。同ブランドは、リジェネラティブ農業(環境再生型農業)で栽培されたオーツ麦からつくったオーツミルク「バリスタ・オート」を発売した。

Naoko Tsutsumi
エディター/ライター
兵庫県出身。情報誌、カルチャー誌、機内誌など幅広いジャンルの媒体の編集に携わる。コロナ禍にシンガポールへ移住。「住む」と「旅」の視点の違いに興味を持ち、地域の文化の違いを楽しんでいる。
オーツミルクは、牛乳などの動物性ミルクよりも生産時の環境負荷が低いことで知られる。スターバックスコーヒーやブルーボトルコーヒーなど、サステナビリティを理念に掲げる企業の採用をきっかけに、日本のコーヒー業界でも植物性ミルクに代替する動きが広がっている。
そんなオーツミルクブランドのひとつで、ブルーボトルコーヒーでも採用されているのが、コーヒーに根差した革新的な植物由来製品を開発し販売する、イギリス発のオーツミルク・ブランドの「マイナーフィギュアズ(Minor Figures)」だ。
同ブランドは、同じくイギリスの「ワイルドファームド(Wildfarmed)」と提携。リジェネラティブ農業(環境再生型農業)で栽培されたオーツ麦のみでつくられた、コーヒーに最適なオーツミルク「バリスタ・オート」を発売した。リジェネラティブ農業のオーツ麦を採用することで、気候変動に対する代替ミルクムーブメントに一歩踏み込もうとしている。
提携先であるワイルドファームドは、独自のリジェネラティブ農業で小麦、大麦、オーツ麦などを生産。健康な土壌で生態系を回復させるため、英国各地の生産者とともに、自然と共生する農業ビジネスを展開している。
ワイルドファームドの共同創設者のひとり、エド・リーズ氏は「マイナーフィギュアズと提携できることを本当に誇りに思います。私たちのオーツ麦が植物性ミルクに使われるのは初めてのことで、ワイルドファームドにとってエキサイティングです」と話す。
ほかに、オーツミルク業界大手のスウェーデンのオートリーもまたリジェネラティブ農業に熱い視線を送る。同社は2030年までにオート麦供給量の3分の1、2040年には90%、そして2050年までに100%、再生農業に投資する計画を発表している。
リジェネラティブ農業は、一部の食肉・酪農企業が採用することで、実態はないにも関わらず気候変動対策を行っているように見せかけるグリーンウォッシュではないかと、批判の声があがっている。
だが、最近の研究で、温室効果ガスの排出や家畜の多様性に関連する悪影響に対処する必要はあるものの、リジェネラティブ農業が気候変動に強く、経済的に公平で持続可能なタンパク質生産システムに貢献する可能性が明らかになった。
リジェネラティブ農業について、国際的に標準化された法的定義はまだない。ワイルドファームドは2023年に、英国初の第三者監査による耕地再生農業基準を策定することで対応。これに署名する生産者コミュニティを構築したうえで、知識を共有しながら自然にやさしい農業を実行している。
ある調査では、イギリス人の56%がリジェネラティブ農業の持続可能性と土壌の健康への利点に同意し、37%がこの農業で栽培された製品にもっとお金を払うと回答。これらの数字から、イギリスでリジェネラティブ農業が受け入れられつつあることが見えてくる。
慣行農業からの移行を加速させ、自然豊かな景観を取り戻すか否か。選択権は消費者にもありそうだ。今後の日本での広がりが楽しみだ。
※参考
The Latest Sustainability Trend in Plant-Based Milk? Regenerative Farming|greenqueen
Regen special: FG survey reveals whether consumers are willing to pay more for food produced regeneratively|farmersguardian
Impact assessment for just transition of protein production systems|plos journal
minorfigures
wildfarmed
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