土の健康を守る「リジェネラティブ農業」 日本における普及の現状とは

作物が植えられた農地

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土壌の健康を守りながら、気候変動対策にも有用なリジェネラティブ農業。サステナブルな食糧生産の必要性が叫ばれる昨今、世界中で注目を浴びている環境にやさしい農法だ。日本でも少しずつ認知度があがってきており、取り入れ始める事業者が増えてきている。

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2021.04.30

リジェネラティブ農業とは

土

Photo by Dylan de Jonge on Unsplash

リジェネラティブ農業(Regenerative Agriculture)とは、土壌の健康を害さないうえに、気候変動対策にもなり得る農法のことである。日本語では「再生型農業」と呼ばれ、近年注目が高まっている。

世界の人口は増加の一途をたどっており、計画的な食糧生産の必要性が叫ばれている。安定した食糧供給をし続けるためには、農地を劣化させないことが非常に重要だ。

土壌が破壊されてしまうと、生物多様性のバランスが崩れ、環境へネガティブな影響を与えかねない。土の健全な状態を守ることは、私たちの毎日の食事を確保するだけでなく、地球環境を保護することにもつながるのだ。

従来の農業とは異なる仕組み

リジェネラティブ農業は、環境問題の原因をつくらない、地球にやさしく持続可能な脱炭素型の生産方式だ。

従来の生産方法との大きな違いの一つに、畑を耕さずに農産物を育てる「不耕起栽培」が挙げられる。トラクターや鍬で地表を掘り返すと酸素が取り込まれ、植物が光合成により土壌に固定していた炭素と結びつき、CO2となって大気中に放出されてしまう。つまり、今まで当たり前に行われていた「耕す」という行為は、温暖化の原因の一つになっているということだ。

耕さずとも元気な畑をつくるために、再生型農業においては作物を輪作することを推奨している。植物が地中に蓄えてきた窒素を栄養分として活用すれば、化学合成肥料に頼る必要がなくなる。結果として、土中の有機物に悪影響を及ばさずに済み、農地の劣化を防ぐことにもつながるため、とても理にかなった生産方法なのだ。

リジェネラティブ農業を用いた事例

サステナビリティに注力しているアウトドア用品メーカーのパタゴニアは、2017年にアメリカの研究機関であるロデール・インスティチュートとともに、リジェネラティブオーガニック認証制度を立ち上げた。

同研究所は、いまある農場と放牧地をすべて再生型オーガニック農業にシフトすると、地球上のCO2排出量のうち全量を、土壌に固定できると予測している。そのため、同社は認証制度以外にも、生産者に対し健康的な土づくりをしていくためのアドバイスもしている(※)。

また、大手コーヒーチェーンのスターバックスは、サプライチェーン全体でCO2の排出量を減らすべく邁進中だ。その一環として、牛乳より生産時の環境負荷が低いオーツミルクの導入を進めている。同社はプラントベースドの食品・飲料を活用することにより、持続可能なビジネスモデルを目指している。

メリットと必要性

収穫

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リジェネラティブ農業のメリットは、環境問題改善に貢献できるという点だけではない。企業はこの生産方法によって収穫された農作物を調達することにより、SDGsの目標達成に対する積極的な姿勢を世間にアピールすることができる。ビジネス戦略としても、非常に賢い方法であることは間違いないだろう。

現在、世界の人口は約76億人。将来的にはますます増加していくことが考えられる。これからやってくるであろう地球規模の食糧危機に備えるためには、世界中の農家が持続可能な生産方式に移行することが、地球の未来のために必要なのだ。

日本における現状

海外では普及しつつある再生型農業だが、日本ではまだまだメジャーではないのが現状だ。エシカル消費が広がっている昨今において、消費者のニーズは確実に高まってはいるが、供給サイドが追いついていないというのが日本の実情というところだろう。

逆を言えば、いま始めれば時代の先を行くパイオニアになれ、社会からの注目を浴びやすい。企業のPR材料として、上手く活用することができるのではないだろうか。

リジェネラティブ農業の今後と課題

世界がサステナブルな方向に歩み始めているいま、工業的な慣行農業は時代にそぐわなくなってきている。再生型農業に移行すると最初こそ大変ではあるが、長い目で見れば土が元気になることにより収穫量アップが期待できる。すでにリジェネラティブ農業を取り入れている有機農家は、生命力溢れる大地で育てた農作物に付加価値をつけ、通常よりも高く販売することに成功しているそうだ。

母なる大地、そして地球を健全な状態で後世に残すため、リジェネラティブ農業は世界的に拡大していくことだろう。

※掲載している情報は、2021年4月30日時点のものです。

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