パタゴニアが挑む「リジェネラティブ・オーガニック」 農業を問題の一部から解決の一部へ

アウトドア企業「patagonia(パタゴニア)」は、気候変動を阻止するための取り組みであるリジェネラティブ・オーガニック(RO)を紹介するキャンペーンを7月30日から始めた。2017年にはRO認証制度設定を支援、ROのマンゴーやコットンの栽培に取り組み、商品を展開している。

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2020.08.14
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次世代のためのリジェネラティブ・オーガニック農法 気候変動を抑える土壌づくり

手で救った土

アウトドア企業「patagonia(パタゴニア)」は、気候変動を阻止する実行可能な方法であるとされるリジェネラティブ・オーガニックの取り組みを紹介するキャンペーンを、7月30日から開始している。公式サイトやSNS、ストアにて、動画などを交えながら取り組みの背景や方針を紹介している。

「リジェネラティブ」とは再生を意味する。この言葉を冠したリジェネラティブ・オーガニック農法は、オーガニック農業の最善部分を基礎に構築した、土壌の健康、動物福祉、労働、農家に配慮した新しい農法。次世代の農家の循環サイクルをつくるものとされる。

従来の農業では、排出するCO2が全体の最大25%を占めると言われていて、農業が気候変動を深刻化させる大きな原因のひとつとなってしまっている。

工業的に農業を行うことで、こうした事態が起きているが、一方で農業の基盤となる土壌は大気中のCO2を隔離でき、土に炭素が多く吸収されれば、生態系が豊かになる。

リジェネラティブ・オーガニック農法では、土を耕さず雑草や植物などの有機物で土の表面を覆うことで、多様な生物からなる豊かな土壌をつくる。この作用が、農業にとってプラスになるだけでなく、気候変動の緩和にも役立つwin-winの関係となる。

環境負荷を低減するだけではなく、実施すればするほど、環境や土壌が改善し再生され、本来の力を取り戻すことのできる農業なのだ。

パタゴニアのミッション ビジネスで地球の健全性を守る

広大な農場

パタゴニアのミッションステートメントは「We’re in business to save our home planet.(私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む)」であり、地球の健全性を守るために「ビジネス」を手段として解決策を提案してきた。

パタゴニアが実行する地球温暖化の解決策は3つある。

1つ目がCO2の排出を抑える取り組みだ。2025年までに再生可能天然素材やリサイクル素材のみで製品づくりを行うことを方針としている。

2つ目は、再生可能エネルギーへの転換だ。2025年にカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)のビジネスの実現を目指し、再生可能エネルギーの電力会社への切り替えに取り組んでいる。

これら2つは他企業でも取り組むところは多いが、さらにパタゴニアが注力しているのは3つ目の、炭素を土に戻すこと。

パタゴニアは1996年から100%オーガニックコットンのみを使用するなど、農業を通じた環境改善に取り組んできたが、さらなる革新的取り組みを進めていこうとしている。それがリジェネラティブ・オーガニック農業だ。

土、動物、人に視点を置く「リジェネラティブ・オーガニック認証」

2017年にパタゴニアは、米国を中心とした他ブランドとタッグを組み、リジェネラティブ・オーガニック認証の設定を支援した。

認証の管理団体である「リジェネラティブ・オーガニック・アライアンス」は、大学や研究機関、企業などと協力してリジェネラティブ・オーガニック農業を広めるほか、認証制度の監督も行なっている。

ソル・シンプレのチリマンゴー

このアライアンスの試験的プログラム(パイロットプログラム)には、パタゴニアのパートナーであるニカラグアでマンゴーを育てる「ソル・シンプレ」や、インドのコットン農家が参加してきた。

リジェネラティブ・オーガニックに取り組むソル・シンプレのマンゴーは認証を取得し、パタゴニア プロビジョンズの製品に使用されている。コットンについては現在認証を目指し活動中だ。

採集したコットン

認証の軸は、土壌の健康、動物福祉、社会的公平性の3つ。それぞれの分野における既存認定制度を活用し、それらの制度がカバーしていない部分を要件化することで、世界最高水準の包括的な有機認証を実現している。

世界初RO認証取得の新製品「RO チリ・マンゴー」 コットンも後続を目指す

RO チリ・マンゴー

RO チリ・マンゴー 885円

新発売の「RO チリ・マンゴー」は、世界で初めてリジェネラティブ・オーガニック(RO)認証を取得した製品の一つ。RO認証は、ゴールド、シルバー、ブロンズの3つのレベルを設けており、RO チリ・マンゴーはシルバー認証を取得。

シルバー認証を取得するソル・シンプレは、健全な土をつくり、生物多様性を拡大して二酸化炭素の排出量を削減するアグロフォレストリー(森林農業)システムの中で、ジューシーで最高品質のローザ・マンゴーを栽培。マンゴー栽培のそばでコーヒーやバナナを育てることで生態系を維持している。

また、農場でシングルマザーの女性を積極的に採用し、彼女たちの子どもが学校に通うための学費を稼ぐことができるようなサポートも行う。

ウィメンズ・ロード・トゥ・リジェネラティブ・リンガー・ティー

ウィメンズ・ロード・トゥ・リジェネラティブ・リンガー・ティー 5,280円

コットンについては、インドにある150以上の農場と提携し、綿花の合間に唐辛子やマリーゴールドを栽培している。これらは、密接し土壌を覆いながら、農家の利益の足しにもなるような仕組みづくりにつながっている。

農場に咲くマリーゴールド

この試験的プログラムで栽培されたコットンを採用したTシャツが2020年春に発売されており、秋冬には、リジェネラティブ・オーガニック認証・パイロット・コットンを採用した新製品を発売予定だ。

土を耕さず、土を裸にしないでいかに土を守るかを重要視し植物を育てるというのは、これまでの農業の概念を変えるものであり、イメージできない農家も多い。土壌に実際の効果が出ること自体も時間がかかるため、意識までを変えるには非常に時間がかかる。

パタゴニアのような企業が先陣を切って新しい農法を実践し、成功事例を確立することで情報を広めていけば、社会を動かす大きな歯車となるだろう。

リジェネラティブ・オーガニック キャンペーンサイトhttps://www.patagonia.jp/regenerative-organic/

問い合わせ先/パタゴニア日本支社
https://www.patagonia.jp/

※掲載している情報は、2020年8月14日時点のものです。

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