豊かな生物の多様性と生態系を守るレッドリストとは

カメラ目線のカエル

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IUCNが定めるレッドリストは、絶滅の恐れがある生物をリストアップしたものだ。各国がこのリストに基づいて生物多様性の保全を進めており、日本でもさまざまな取り組みが行われている。この記事ではレッドリストの定義や意義、日本における活動の具体例を紹介する。

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2024.12.09

レッドリストとは

ハチドリ

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レッドリストとは、絶滅の恐れがある野生生物をリストアップしたもので、絶滅危惧種を明確にし、その保護を目指す国際的な取り組みの一環である。IUCN(国際自然保護連合)が中心となって世界各国の絶滅リスクを評価し、各国政府や保護団体が利用している。日本では環境省が独自のレッドリストを作成し、国内生態系の保護を推進している。(※1)

レッドリストが誕生した背景

レッドリストが生まれた背景には、自然環境の悪化と生態系の危機がある。開発や気候変動、乱獲などによって生物の多様性が損なわれ、絶滅危惧種が増加している現状が問題視されてきた。こうしたなか、1964年にIUCNが「Red Data Book」を公表し、絶滅危惧種の保護活動の必要性が国際的に認識されるようになった。(※2)以降、各国で生態系保護の動きが進み、日本でも環境省が絶滅危惧種の調査やレッドリストの作成を行っている。

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レッドリストの目的

パンダ

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レッドリストの目的は、絶滅の危機に瀕する種を早期に発見し、その保護活動を実施・推進することにある。絶滅リスクが高い種を明確にすることで、保護対象を特定し、効果的な保護対策を講じやすくする。また環境保護や生態系の持続可能性の確保も目的としており、レッドリストがあることで各国政府や保護団体、企業が自然環境の保全を進める指針となっている。(※3)

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レッドリストの分類と掲載基準

トラ

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レッドリストに掲載される生物は、絶滅リスクの度合いに応じて複数のカテゴリーに分類される。IUCNでは、危機の程度に応じて9つのカテゴリーに区分しており、日本でも環境省が同様の基準で絶滅リスクを評価している。

絶滅リスクの分類

レッドリストは、絶滅リスクに応じた以下のカテゴリーに分けられる。

・絶滅(EX)
自然界での存在が完全に確認できない種。
・野生絶滅(EW)
飼育下にのみ存在し、自然界では絶滅した種。
・絶滅危惧IA類(CR)
非常に高い確率で絶滅の危機にある種。
・絶滅危惧IB類(EN)
絶滅の危機が差し迫っている種。
・危急(VU)
絶滅の恐れがあり、保護が求められる種。

さらに危機が少ない「準絶滅危惧(NT)」、絶滅の恐れが小さい「低危険種(LC)」、また「情報不足(DD)」といったカテゴリーも存在する。IUCNや環境省は、各生物の絶滅リスクを定期的に再評価し、リストの更新を行っている。(※4)

レッドリストへの掲載基準

レッドリストへの掲載基準は、生息域の縮小、個体数の減少、繁殖能力の低下など複数の指標に基づいている。具体的には、過去の観測に基づき以下の要素を評価している。

・生息地の減少や断片化
・個体数の大幅な減少(一定期間内における減少率)
・生息範囲の縮小や生存範囲の限界
・個体数の総数の評価と未来の減少

これらの基準をもとに各分野の専門家が絶滅リスクを判断し、カテゴリーに分類している。

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レッドリストの影響と活用

ナガスクジラ

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レッドリストは、絶滅危惧種の保護だけでなく、生物多様性を維持するためのものでもある。各国の保護活動や教育活動にも広く活用され、社会的な環境保全意識にも影響を与えている。

生物多様性保全への影響

各国の政府や団体がレッドリストを基に保全計画を立案し、具体的な保護活動を展開している。日本においては、環境省がレッドリスト掲載種に対して調査を行い、自然環境の把握と保全に努めている。リストの更新に合わせて保護対象が増え、より具体的な保護政策が講じられるようになっている。その結果、既存のレッドリストと合わせ、環境省が選定する我が国の絶滅危惧種は合計で3,772種であることがわかった。(※1)

環境教育や意識向上への役割

学校や自然保護団体では、レッドリストを教材として活用し、生態系の重要性や保全の必要性について学ぶ機会が提供されている。またレッドリストに基づくキャンペーンやイベントが開催され、社会全体で環境保護への意識が高まっている。日本では各自治体が主導で発行するレッドリストも存在し、例えば佐世保市などは独自のレッドリストを公開している。(※5)

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レッドリスト掲載種の具体例と保全活動

森と湖

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絶滅の危機に瀕した種を保護するため、レッドリストは生物多様性の指標として重要な役割を担っている。ここでは具体的な絶滅危惧種と、保全活動の現状について紹介する。

絶滅危惧種の例

代表的な絶滅危惧種には、トラ、ジャイアントパンダ、アフリカゾウ、オオサンショウウオがある。(※6)トラは密猟や生息地の破壊によって数を減らしており、世界に数千頭のみが生息しているとされる。(※7)ジャイアントパンダも食料である竹の減少や森林伐採により個体数が減少していたが、近年の保護活動の成果で個体数は安定しつつある。(※8)

またアフリカゾウは象牙の密猟が絶えず、その数は激減しているが、アフリカ各国での保護区設置が進められている。(※9)オオサンショウウオも日本の河川環境の変化や水質汚染の影響を受け、個体数が減少している。(※10)

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絶滅危惧種の保全プロジェクト

絶滅危惧種の保護は、自然保護区や保護区を設けることで進められている。トラやジャイアントパンダは保護区内で厳重に管理され、生息地の再生と密猟防止が図られている。(※7)(※8)また、こうした活動には地域住民との協力が不可欠である。地域の協力を得ることで、地域住民の生活向上も図りながら絶滅危惧種の保護が進められている。

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日本におけるレッドリストの役割

梅とメジロ

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日本では環境省がレッドリストを独自に作成し、国内の絶滅危惧種の保護と生態系の維持に取り組んでいる。ここでは、日本版レッドリストの意義とその役割について解説する。

環境省による日本版レッドリスト

日本のレッドリストは、IUCNが定める国際基準に基づきつつ環境省が作成したものだ。日本に生息する生物に焦点を当てて作成されており、近年は海洋生物も含まれるようになった。国内の生態系においてとくに保護が必要な種をリストアップし、保全活動を推進するための資料として活用されている。国のみならず、自治体が独自でレッドリストを作成するケースもあり、各地域の保護対象種の指定や保護区の設置に役立てられている。(※1)

日本の保護団体や政府の取り組み

環境省をはじめとする日本の保護団体や自治体は、レッドリストに掲載された生物の保護活動を積極的に行っている。例えば北海道では絶滅危惧種であるシマフクロウの保護プロジェクトが展開され、人工巣箱の設置や餌の供給などの活動が進められている。(※11)また東京都では希少種であるアオバズクの保護を目的として、都市部の緑地や公園で生息環境の整備が進められている。(※12)さまざまな取り組みを通じて地域住民との協力体制も強化され、地域固有の生物を守るためのプロジェクトが各地で展開されている。

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レッドリストの今後の展望と課題

サメ

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レッドリストの有効性を高めるためには、評価精度の向上やデータの充実が求められている。また、気候変動への対策も保護活動の大きな課題だ。

絶滅リスク評価の精度向上

現在レッドリストは多くの生物種をリストアップしているが、データ不足によって正確な評価が難しい種も存在する。そのため近年では最新技術を活用し、遺伝子分析により詳細な生態情報を収集する試みが行われている。(※13)またデータ共有を行うことで、国際的な保護活動との連携強化も進められている。

気候変動や環境問題への対応

気候変動が生態系に与える影響は大きく、絶滅危惧種の生息環境も変化している。この変化に対し、国際的な協力を通じて生息地の維持や新たな生息地の確保が必要とされている。環境変化がもたらすリスクに対応するため、各国が連携しながら保護活動を行うことが求められる。

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レッドリストを活用した絶滅危惧種保護へのこれからのアプローチ

ゾウの親子

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絶滅の危機にある種を守るためには、国際的な協力と科学的データに基づいた保全活動が不可欠である。レッドリストの活用を通じ、今後もさらなる保護活動が進展することが期待される。

※掲載している情報は、2024年12月9日時点のものです。

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