密猟はなぜなくならない? 世界と日本の密猟問題と私たちにできる対策

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野生動物を絶滅の危機にさらす密猟。ワシントン条約や各国内の規制が強化されるも、密猟はいまもなくならない。その背景にあるものと、世界や日本で起きている密猟の現状、密猟により引き起こされる問題や野生動物を守るために私たちができることをみていこう。

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2024.06.26

野生生物を脅かす「密猟」とは

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密猟とは、国際間の協定や法令などを無視して野生動物を狩ることをいう。ワシントン条約では、国際取引によって絶滅の恐れのある野生動植物を指定し、取り引きを禁止している。また、WWFジャパンをはじめとする環境保護団体は、密猟から野生動物たちを守るための啓蒙活動を積極的に行っている。驚くほどの数のゾウやサイが密猟の犠牲になっていることを、世界のさまざまなニュースが報道し、私たちはその危機的状況を知ることができている。しかし、密猟はいまなお世界で横行しており、なくならないのが現状だ。

密猟は、SDGsにも関連する。SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」には、自然生息地の劣化を抑えること・生物多様性の損失を止めること・絶滅危惧種を保護して絶滅を防ぐことなどがターゲットとして盛り込まれている。つまり、絶滅危惧種を守ることは、SDGsを達成するために、いま私たちが取り組まなければならないアクションのひとつなのだ。

なぜ密猟がなくならないのか、密猟をなくすためには何ができるのか見ていこう。

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世界と日本における密猟の現状

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まずは、世界と日本における密猟の現状について説明しよう。

世界の現状

世界では、多くの密猟が行われている。100カ国以上で活動している環境保全団体「WWF」が発表した報告書『Wildlife Crime Scorecard: Assessing Compliance with and Enforcement of CITES Commitments for Tigers, Rhinos and Elephants(野生生物犯罪に関するスコアカード:象牙、犀角、虎骨取引をCITESで規制するための法令遵守と法施行)』には、サイ、トラ、ゾウの生息国と、象牙や虎骨などの中間取引国、最終消費国、合計23か国における、密猟や取引の最近の状況がまとめられており、調査対象となった23か国すべてで違法取引が続いていると報告されている。

23か国のなかでも、密猟されたアフリカゾウから象牙を業者に販売できる「法の抜け道」があるタイ、たった一回の密猟で数百頭のゾウが殺される事件が国立公園で発生しているカメルーン、サイの密猟を増加させる要因となっている犀角のもっとも重要な消費国であるベトナム、そのほかラオス、モザンビークなどで事態の深刻度が高いとされている。(※1)

日本の現状

日本国内では、野鳥を密猟し、外国産として偽装し販売する事件が起きている。またペット目的でカワウソや小型のサル、インコ、オウム、フクロウ、リクガメ、トカゲなどが違法な取引にさらされている現状がある。

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密猟の主な目的

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なぜ密猟は行われるのか。その主な目的について事例とともに解説する。

ペットとして販売

密猟した動物をペット市場で高値で取引し、金銭を得る密猟者は多くいる。ペット目的で密猟される動物には、カメやインコ、オラウータン、サンショウウオなどがある。

近年日本においては、コツメカワウソをペットとして飼うことがよく見られる。しかしコツメカワウソは、2019年にワシントン条約で国際取引禁止となった動物だ。よって日本でペットとして飼われるコツメカワウソは、密猟や密輸された個体の可能性がある。(※2)

装飾品や毛皮として販売

装飾品や毛皮の材料にする目的で、動物が密猟されることも多い。ターゲットとなる動物は、アジアゾウ、アメリカワニ、バラシンガジカ、タイマイ、ユキヒョウ、フサエリショウノガン、チンチラ、ヤマシマウマ、ビクーニャ、オオカワウソ、フェルナンデスオットセイなどだ。

なかでもアフリカゾウの象牙の需要は高く、アフリカでの密猟、アジア市場向けの違法取引を引き起こして問題となっている。象牙の国際取引はワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)により原則禁止されており、2016年のワシントン条約の第17回締約国会議では「ゾウの密猟や、象牙の違法取引に寄与している国内市場については閉鎖を求める」という勧告がなされている。(※3)

薬の原料として利用

アジアでは、動物の体の部位を伝統的な薬として用いることがある。薬の原料として密猟される動物は、トラ、ウンピョウ、ドゥクラングール、スマトラサイ、シロサイ、クロサイ、インドサイ、アフリカノロバ、タナリバーマンガベイ、オサガメ、オジロニジキジ、ヒメシワコブサイチョウ、レイサンガモ、ハワイガン、インドオオノガン、コビトカバ、アカウアカリ、センザンコウなどだ。

なかでも、サイの角は高額で取引されている。中国やベトナムで、健康増進からガン治療までさまざまな効能のある万能薬と考えられているからだ。サイの角は富裕層にとくに人気があり、ステータスシンボルともなっている。そのため、密猟がなくならないのが現状だ。

食用肉として利用

食用肉として密猟される動物もいる。オサガメ、オジロニジキジ、ヒメシワコブサイチョウ、コビトカバ、アカウアカリなどだ。

野生動物の食用肉は「ブッシュミート」と呼ばれる。多くのアフリカ諸国において野生動物を狩ることは文化的な習慣であり、ブッシュミートも伝統的な食材である。しかし、アフリカ諸国でも保護対象の動物の商取引は法律で禁止されている。その法律違反が黙認されていることや、移民の増加によって欧州各国でもブッシュミートの需要が高まり、高値で取引されていることが問題となっている。

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密猟によって起こるさまざまな問題

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密猟によってどんなことが問題となっているのか解説しよう。

絶滅リスクの増大

密猟は、野生動物の絶滅リスクを増大させる原因となっている。IUCN(国際自然保護連合)の「レッドリスト」によると、現在世界では44,000種以上の生物に絶滅の危惧があると報告されている(※4)。このうちの多くが、密猟や密輸の犠牲となった動物だと考えられる。

生態系の破壊

野生動物の個体数が減る、もしくは絶滅すると、遺伝子の多様性が失われる。そうすると、その種に依存していたほかの動植物も影響を受け、生態系の破壊につながる。また食物連鎖の崩壊や生態系の機能喪失なども、生態系のバランスを崩す要因となる。

動物虐待などの倫理的問題

密猟により、倫理的な問題も発生する。そもそも密猟は、動物に苦痛を与え虐待をしているといわざるをえない。極めて残酷な行為であり、動物の基本的な権利や福祉を無視している。また密猟によって動物が消滅してしまえば、野生動物が文化的または伝統的に重要な存在である国や地域では、文化や伝統が喪失する可能性もある。

違法取引の助長

密猟で得た動物が違法取引されていることも問題だ。違法取引が行われる大きな原因は、密猟された動物の部位(象牙、サイの角など)の需要が高く、高価な商品として取引されていることにある。密猟者は、高額な利益を求めて密猟を繰り返すのだ。

また密猟に犯罪組織が関与し、違法取引によって得た資金がほかの犯罪行為の軍資金となっていることも問題となっている。

野生動物を密猟者から守るために私たちができること

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野生動物を密猟者から守るため、私たちにもできることがある。

違法な野生動物製品の不買

動物が原料や材料となっているものにはいろいろあるが、疑わしい野生動物製品は買わないようにしよう。違法な野生動物製品が「売れない、儲からない」という状況をつくれば、密猟行為が減ることにつながる。

野生動物について学ぶ

どのような野生動物が絶滅の危機に瀕しているのか、野生動物の生体や生活環境、生物多様性など、野生動物について学ぶことも重要だ。これらの情報は日々更新されるため、野生動物について学び続けて知識をアップデートするよう心がけよう。

野生動物保護団体の支援

野生動物保護団体を支援することも、動物たちを過剰利用や違法取引から守ることにつながる。すぐに取り組める支援方法は、募金や寄付だ。野生動物を守るために、アクションを起こそう。

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密猟から野生動物を守ろう

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密猟により、野生動物が犠牲となっている。また、密猟が原因でさまざまな問題も発生している。密猟から野生動物を守るためにも、私たちにできることからはじめよう。

※掲載している情報は、2024年6月26日時点のものです。

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