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自然環境の変化や人間の行動によって、地球上から姿を消そうとしている「絶滅危惧種」。一覧で見てみると、動物園や水族館でおなじみの動物たちも多く含まれていることが確認できる。本記事では30種類の絶滅危惧種を紹介。絶滅に向かっている理由や現状もあわせて解説する。
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絶滅危惧種とは、絶滅の危機に瀕している生物種のこと。一方で、すでに姿を消してしまった生物種は絶滅種と定義される。現在確認されている野生生物は、世界に213万9,242種以上。そのうちの4万7,187種以上が絶滅危惧種に分類されている(※1)。
絶滅のおそれがある野生生物をリスト化したものに「レッドリスト」がある。正式名称は「絶滅のおそれのある種のレッドリスト」。スイスに本部を置くIUCN(国際自然保護連合)によってまとめられており、定期的に更新される。1986年に第一版が作成され、2006年以降は毎年更新されている。
レッドリストの掲載対象は、哺乳類・鳥類・両生類・爬虫類・魚類・無脊椎動物と広範囲におよぶ。全世界で存在している野生生物のうち、レッドリストで評価されているのは15万種以上。上述した通り、そのうちの4万7,187種以上が絶滅危惧種とされている評価された種の約28%以上に相当する(※1)。
レッドリストに載っている野生生物たちは、絶滅の危険度に応じてランクづけされている。それぞれの専門家たちが調査を行い、9つのカテゴリーのどれに当てはまるかを査定する。
【レッドリストの9つのカテゴリー】
絶滅 Extinct(EX)
十分な期間の調査にもとづき、最後の1個体が死亡していると判断された
野生絶滅 Extinct in the Wild(EW)
栽培・飼育下や、過去の分布域の明らかに外側でのみ生存している
深刻な危機 Critically Endangered(CR)
野生で極度に高い絶滅のリスクに直面している
危機 Endangered(EN)
野生で非常に高い絶滅のリスクに直面している
危急 Vulnerable(VU)
野生で高い絶滅のリスクに直面している
準絶滅危惧 Near Threatened(NT)
現段階では絶滅危惧とはいえないが、近い将来絶滅危惧に移行すると考えられる
低懸念 Least Concern(LC)
上記のいずれの要件も満たしていない
データ不足 Data Deficient(DD)
個体数や分布に関する十分な情報がなく、評価できない
Not Evaluated(NE)
未評価
上記9つのうち、「CR(深刻な危機)」「EN(危機)」「VU(危急)」の3つに分類されている野生生物が、一般的に絶滅危惧種とされる。
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以下では、「CR(深刻な危機)」「EN(危機)」「VU(危急)」のカテゴリーごとに、30の絶滅危惧種を紹介する。生息域と絶滅危惧の理由をあわせて確認しよう。
・ゴリラ
生息地:西アフリカの熱帯林
絶滅危惧の理由:森林伐採や採掘などによる生息域の減少、内戦
・スマトラサイ
生息地:東南アジアのスマトラ島・ボルネオ島
絶滅危惧の理由:熱帯林の開発、密猟
・エジプトリクガメ
生息地:エジプト・イスラエル南部などの乾燥地帯
絶滅危惧の理由:開発による生息域の破壊、乱獲
・オランウータン
生息地:東南アジアのスマトラ島・ボルネオ島
絶滅危惧の理由:農耕地の拡大や鉱山開発などによる熱帯林の破壊、森林火災、密猟
・シャムワニ
生息地:タイ・カンボジアなどの河川や湖
絶滅危惧の理由:開発による生息域の破壊、乱獲
・ソデグロヅル
生息地:シベリアの湿原や干潟など
絶滅危惧の理由:繁殖地の減少・生息域の開発
・トラ
生息地:インド・ネパール・中国などの森林地帯
絶滅危惧の理由:農耕地や市街地の拡大による開発、密猟
・アジアゾウ
生息地:アジア広域の森林地帯や草原地帯
絶滅危惧の理由:開発による生息域の分断・消失、森林破壊、駆除、密猟
・レッサーパンダ
生息地:温帯・亜熱帯の森林地帯
絶滅危惧の理由:森林破壊、開発による生息域の減少、密猟
・チンパンジー
生息地:アフリカ各地の森林地帯
絶滅危惧の理由:森林破壊、密猟
・キンシコウ
生息地:中国・チベットなどの山岳地帯
絶滅危惧の理由:開発による生息域の減少、密猟
・ワオキツネザル
生息地:マダガスカル南部の林や乾燥地域
絶滅危惧の理由:森林破壊、密猟
・グレビーシマウマ
生息地:エチオピア・ケニアなどの草原地帯
絶滅危惧の理由:干ばつ、環境の変化による食物不足、密猟
・スイギュウ
生息地:ネパール・インドなどの水辺のある草原
絶滅危惧の理由:開発による生息域の減少、内戦、密猟、家畜との交雑
・ノウマ
生息地:中央アジアの草原
絶滅危惧の理由:開発による生息域の減少、温暖化による環境の変化
・マレーバク
生息地:東南アジアなどの多雨林や湿地
絶滅危惧の理由:森林伐採、開発による生息域の分断・減少、密猟
・アオウミガメ
生息地:熱帯から亜熱帯域の海洋
絶滅危惧の理由:産卵場所である海岸の開発、乱獲、海洋汚染、温暖化により孵化温度が上がりメスしか産まれない
・ラッコ
生息地:北アメリカ・アラスカなどの沿岸の磯
絶滅危惧の理由:海岸の開発、海洋汚染、気候変動による環境の変化、乱獲
・コウノトリ
生息地:ロシア・中国の湿原や沼地
絶滅危惧の理由:開発による生息域の減少、環境汚染、乱獲
・ジャイアントパンダ
生息地:中国・チベットの竹林など
絶滅危惧の理由:インフラ開発や農耕地の拡大による生息環境の減少、温暖化による植生の変化、密猟
※生息域の3分の2が保護区に指定されたこともあり、個体数が回復。2016年にカテゴリーがENからVUに引き下げられた。
・ホッキョクグマ
生息地:北極圏
絶滅危惧の理由:地球温暖化に伴う生息環境の減少、環境汚染、生息域の開発
・ジュゴン
生息地:インド洋・太平洋西部の沿岸
絶滅危惧の理由:沿岸域の開発、漁獲、水質汚染、船舶との衝突
・カバ
生息地:アフリカ南部の河川や沼付近
絶滅危惧の理由:気候変動による環境の変化、開発による生息域の分断・減少、乱獲
・ツキノワグマ
生息地:東南アジア・ヒマラヤ・日本などの山林地帯
絶滅危惧の理由:農耕地や市街地の拡大による生息域の減少、密猟
・ライオン
生息地:アフリカのサバンナや草原
絶滅危惧の理由:農耕地の拡大による生息域の減少、食物である草食動物の減少、駆除
・チーター
生息地:アフリカのサバンナや草原など
絶滅危惧の理由:農耕地の拡大による生息域の減少、密猟
・ユキヒョウ
生息地:中央アジアの山岳地帯
絶滅危惧の理由:開発や温暖化による生息域の減少、密猟
・トナカイ
生息地:北極圏のツンドラ地帯など
絶滅危惧の理由:開発による生息域の分断・減少、温暖化による環境の変化
・オオアリクイ
生息地:中央・南アメリカの草原や泥沢地帯
絶滅危惧の理由:開発による生息域の減少、森林破壊、乱獲
・コツメカワウソ
生息地:インド・東南アジアなどの河川や湖付近
絶滅危惧の理由:森林破壊、開発による生息域の減少、密猟
世界の絶滅危惧種の一覧を見ると、遠い話に感じられるかもしれないが、日本にも絶滅危惧種が存在する。環境省が公表した「レッドリスト2020」によると、日本の絶滅危惧種は現在3,716種。イリオモテヤマネコやオオサンショウウオ、トキなどの野生生物が含まれている。
日本の絶滅危惧種については、以下の記事で詳しく紹介しているので、そちらも目を通してみてほしい。
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大昔に繁栄した恐竜しかり、長い歴史を振り返ると絶滅して姿を消した生物は少なからず存在する。しかし現在、絶滅危惧種は年々増加傾向にある。さらに、かつてないスピードで増加が加速しているのが現状だ。1975年以前は、1年間に絶滅する生物種は1種以下だったというが、現代は年間4万種以上が絶滅していると推定されており、深刻度がうかがえる(※2)。
環境保全団体「WWFジャパン」のデータによると、世界の絶滅危惧種はここ20年で4倍近くに増加しているという(※3)。絶滅危惧種の一覧で紹介した絶滅危惧理由を見てもわかる通り、野生生物の絶滅には地球環境問題が大きく関わっている。環境問題が深刻化すると、地球上で生活している多くの野生生物が少なからず影響を受ける。いまの状態が続いていくと、絶滅危惧種は今後も増えていくだろう。
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野生生物が絶滅に追い込まれる背景には複数の要因がある。生物の本質そのものが起因していることもあるが、多くは環境破壊をはじめとする人間の活動が要因だ。以下では、絶滅危惧種の生存をおびやかす要因として代表的なものを3つ紹介する。
まずは、人間による密猟や乱獲だ。ペット利用や装飾目的、食用や伝統薬への使用など、さまざまな理由で野生生物の密猟・乱獲が起きている。例えば、アジアゾウは象牙や皮を目的とする密猟が相次いだことで、一気に頭数が減ってしまった。過去には、オランウータンの子どもをペットショップに売るために密輸する事件が発生したこともある。
絶滅危惧種の取引は規制されているが、いまもなお、人間の需要を満たすために違法行為が行われている。規制されている生物以外にも多くの野生生物が密猟や乱獲によって絶滅の危機に追いやられているのだ。
ゴリラやチンパンジーをはじめ、絶滅危惧種の多くは、生息地が分断されたり減少したりすることで、生きるための場所を奪われている。農耕地の拡大や観光開発などを目的に森林伐採が行われると、その場所を生息域としていた動物たちが行き場を失ってしまう。また、人間が未開の地に立ち入ることで、動物たちが病原菌に苦しめられることもある。森林は野生生物の宝庫であり、一種の生物が減少することで、森林全体の生態系が崩れてしまうことも大いに考えられる。
地球温暖化が深刻化し、生育環境の変化や異常気象によって多くの野生生物が苦しんでいる。生きていくために必要な環境が崩壊するだけでなく、ほかのエリアから生物が進出してくることによる生態系の崩壊も深刻な問題だ。
レッドリストでは、野生生物を絶滅の危機に追いやる要因として11の項目を挙げているが、そのひとつが「気候変動」である。気候変動の影響を受けている絶滅危惧種は、2000年時点で15種だったのが2020年には4,000種を超え、急激に増えている(※4)。残念ながら、野生生物が暮らしにくい地球へと変化してしまっているのが現状なのだ。
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世界には、絶滅危惧種の保護を国際的に推進するための条約や団体が存在する。以下で代表的なものを3つ見てみよう。
ワシントン条約は、野生動植物種の絶滅を防止するために、1973年に採択された。正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」。野生生物において、輸出国と輸入国が協力して取引規制を行うことで、動植物の乱獲や過度な利用を防ぐとしている。
国際取引の規制が必要とされる野生動植物が附属書にリストアップされており、絶滅の危機度合いや内容に応じて3区分に分けられている。いずれの区分においても、取引には政府が発行する許可証や証明書を必要とする(※5)。
生物多様性条約は、生物の生態系を守るための国際条約であり、1993年に発効された。「生物の多様性の保全」「生物資源の持続可能な利用」「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分」の3つを目的としている。
1975年に、野生生物たちを守るために、ラムサール条約とワシントン条約が発効された。生物の生育環境の悪化や生態系の破壊の深刻化にともない、過去にない速度で生物が絶滅していく状況を懸念してのことだ。生物多様性条約は、この2つの条約を補完するために採択された国際条約であり、より包括的に保全の取り組みを進めるための国際的な枠組みが設けられている。
国際自然保護連合(IUCN)は、正式名称を「自然及び天然資源の保全に関する国際同盟」という。絶滅危惧種をまとめたレッドリストを作成していることでも知られる同団体は、1948年に設立された。世界最大の自然保護ネットワークとされ、スイス・グランに本部を置き、160カ国以上の国で活動している。1980年には日本委員会が発足した。
活動内容は、地球規模での野生生物の保護や、自然環境分野における調査研究など。各方面への勧告や支援を積極的に行っており、1999年には国連総会オブザーバー資格を取得している(※6)。
絶滅危惧種を保護し、野生生物たちが生きやすい環境を維持することは、SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」の達成とつながっている。「陸の豊かさも守ろう」には、森林を保全し、土地の劣化や砂漠化を防ぐことなど、豊かな陸を守り取り戻すための内容が盛り込まれている。
豊かな陸を守ることは、絶滅危惧種のためだけに行われるわけではない。野生生物たちと同じように、私たち人間もまた、豊かな陸があってこそ生きていけるのだ。そして、豊かな陸は、野生生物たちによって豊かな状態に保たれている。1種の絶滅により、絶妙なバランスによって保たれていた生態系が崩れると、さらに多くの絶滅危惧種が絶滅する。そうなると、バランスのなかで生きていた私たち人間の活動も立ち行かなくなるだろう。
大きな話に思えるかもしれないが、絶滅危惧種を守るために個人でできるアクションもたくさんある。「FSC認証」や「レインフォレスト・アライアンス認証」など、適切な森林管理に配慮した認証マークがついた製品は、意外と身近にたくさんある。こういった製品を選ぶのもひとつの方法だ。
絶滅危惧種を保護し生態系を守る行動は、私たちの暮らしを守り、豊かな地球を次世代へ残すことにつながっている。地球上での営みは、絶滅危惧種を含む多くの野生生物たちによって支えられており、人間も一員でしかないことを忘れてはならない。
絶滅危惧種を守るためには、私たち人間が深刻な現状を把握し、持続可能な生活を送ることが重要である。絶滅した野生生物たちにはもう二度と会うことができないが、だからこそ、いま絶滅の危機に瀕している生物たちを精一杯守りたい。絶滅危惧種が危機を脱し、いきいきと過ごす未来を迎えるためには、いますぐのアクションが必要なのだ。
※1 IUCN|RED LIST|IUCN
【2025更新】レッドリストとは?|WWFジャパン
※2 環境省|日本の絶滅危機
※3 朝日新聞 SDGs ACTION|生物多様性の深刻な危機、絶滅危機種が4万種超に WWFと考える~SDGsの実践~【2】
※4 WWFジャパン|地球温暖化による野生生物への影響
※5 環境省|ワシントン条約とは
※6 外務省|国際自然保護連合(IUCN)
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