生物多様性条約とは? 目的・概要・COP15・日本の取り組みをわかりやすく解説

生物の多様性を守るための「生物多様性条約」

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生物多様性条約は、生態系を守るための国際条約だ。本記事では、この条約の目的や内容、日本での具体的な取り組みについて、わかりやすく紹介する。また生物多様性条約の国際会議、COP10やCOP15とは何か、ラムサール条約やワシントン条約など、生態系保全に関するその他の条約も紹介する。

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2022.11.28
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目次

生物多様性条約とは

生物の多様性を守るための「生物多様性条約」

Photo by Maksim Shutov on Unsplash

「生物多様性条約」とは、生物の多様性を保全するための国際条約のこと。その目的は、大きくわけて、以下の3つがある。(※1)

・生物の多様性の保全
・生物資源の持続可能な利用
・遺伝資源*の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分

*遺伝資源:作物などの改良品種をつくるときに利用できる遺伝子素材のこと

我々人間は、多様な生物による絶妙なバランスのなかで、現在の生活を維持している。しかし、人間の経済活動が活発になる一方で、生態系の破壊などによって、人間以外の生物が犠牲になる場面は決して少なくなかった。

こうした状態を改善し、将来にわたって持続していくことは、バイオテクノロジーやバイオ産業の発展にとっても、非常に重要な意味を持つ。

生物多様性条約は、1992年5月、ケニアのナイロビで開催された「条約交渉会議」で採択。1992年6月、ブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議」で、日本を含む157ヶ国が署名した。(※2)

生物多様性条約に加盟する国の数は、欧州連合(EU)とパレスチナを含めて196か国と、世界のほとんどの国が加盟している。(2021年9月時点、※3)日本は1993年5月28日に締約国となり、1993年12月29日に本条約が発効された。

多くの主要国が生物多様性条約を締結しているが、アメリカは批准(条約に対する国家の最終的な確認をとること)していない。

生物多様性条約締約国会議とCOP10・COP15

生物多様性条約の最高意思決定機関にあたるのが、締約国会議で「COP(Conference of the Parties)」と呼ばれ、おおむね2年に1回開催されている。(※4)

COP10 2020年までの愛知目標を決定

生物多様性条約締約国会議のなかでも大きな意義をもたらしたのが、2010年に愛知県名古屋市で開かれた「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」。180の締約国と関係国際機関など、1万3000人以上が参加したCOP10で、2020年を目標年とした新戦略計画(通称、愛知目標)が決定した。

COP15 2030年までの国際目標が決定する

「生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」は、新型コロナウイルスの影響で2021年にオンラインで第一部が開催され、第二部について2022年12月5日から12月17日まで、カナダ・モントリオールで開かれる。

COP15では、2010年のCOP10で定められた「愛知目標」を改訂した「ポスト2020生物多様性国際枠組み」が策定される。

2050年までの目標も明示された「ポスト2020国際枠組みのゼロドラフト」が、2020年に公開されているが、世界自然保護基金(WWF)はこの内容が不十分であるとし、さらに野心的な取り組みを定めるよう働きかけている。

ただ先進国の一つであるアメリカは、生物多様性条約に批准していない。今後、さらなる効果を求めるのであれば、世界のリーダーであるアメリカの参加が必要と言えるだろう。

生物多様性条約の目的は生態系保全

生態系保全を目的にした条約は、生物多様性条約以外にも数多く存在している。類似した国際条約について紹介する。

ラムサール条約

ラムサール条約とは、1971年、イランのラムサールで採択された湿地に関する条約で、1975年に発効された。ラムサール条約の正式名称は、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。

世界には、国境を越えて暮らす水鳥たちの生息地として、重要な役割を果たす湿地がいくつもある。こうした湿地と、そこに生息・生育する動植物の保全を目的に策定されたのが、本条約だ。日本には、ラムサール条約湿地が50か所あり、総面積は148,002haにおよぶ。(※5)

ワシントン条約

ワシントン条約とは、絶滅するおそれのある野生生物を保護する国際条約のこと。正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」。英名を略して「CITES(サイテス)」と呼ばれる。

米国政府および国際自然保護連合(IUCN)が中心となり、1973年にアメリカ・ワシントンで採択され、1975年に発効された。

ワシントン条約が対象としているのは、絶滅のおそれのある野生動物だ。これらの動物は、保護の必要性に応じて3つの区分に分けられ、それぞれのレベルに応じた国際取引の規制を行うよう、定められている。(※6)

カルタヘナ議定書

「カルタヘナ議定書」とは、生物多様性条約のもと、遺伝子組換生物(Living Modifi ed Organisms、LMO)による国境を越える移動について定めた国際的な枠組みのこと。2000年に採択され、2003年に締結された。(※7)

日本では、カルタヘナ議定書にもとづき、「伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(通称、カルタヘナ法)」が制定され、2004年から施行されている。(※7)

生物多様性条約が制定された背景

野生生物の種の絶滅やその原因となっている生態系の破壊への懸念は、1970年頃から国際的に問題視されるようになっていた。そのような中、ラムサール条約とワシントン条約が1975年に発効され、一定の効果をもたらしたと言われる。

しかし、特定の地域・種のみを守るだけでは、多様な生態系全体を保護することはできない。そこで、ラムサール条約とワシントン条約を補完し、より包括的な取り組みを行うために、生物多様性条約が採択された。

生物多様性条約は、地球規模で生物多様性を考え、その保全を目指すための国際条約である。

生物多様性条約の内容・概要

生物多様性条約の目的・課題

生物多様性条約が掲げる最大の目的は、生物の多様性の保全である。さらに、自然資源の持続可能な利用や利益の公正かつ衡平な配分も、重要視している。

環境や遺伝資源に対して、先進国と途上国の間で考え方に大きな溝が生じやすい。例えば、先進国が環境保全を訴える一方で、途上国の成長に大規模開発は欠かせない。また先進国の企業が途上国の遺伝資源を利用して医薬品などを開発すると、その企業は利益を得るのに対し、遺伝資源を有する途上国は恩恵を得られない。

このような意見の食い違いに折り合いをつけ、利益を公正にして、よりいい方向を目指していくことが、生物多様性条約が抱える課題の一つと言えるだろう。

条約における取り組みの指針

生物多様性条約は、条約を締約した国に対して、生物多様性の保全と持続可能な利用について、以下のような取り組みを求めている。

・国家戦略もしくは国家計画の作成
・作成した戦略もしくは計画の実行
・伝統的、文化的慣行の保護や奨励

生物多様性条約では、多様な生態系を包括的に守るための措置を、政策に盛り込むように規定している。上記の「伝統的、文化的慣行」とは、例えば先住民の伝統的な薬法などのことで、生物多様性条約ではそれらの保護や奨励についても規定している。(※8)

条約加盟国に求められる行動

加盟国は独自の取り組みのほか、国際協力や知見の共有を求められる。とくに重要な地域ではモニタリング調査を行い、先進国は開発途上国の取り組みに対する資金援助が求められる。また情報共有を行い、研究調査は加盟国が協力しながら進めていかなければならない。

生物多様性条約に基づく日本の取り組み内容

民間での取り組みを促進するプロジェクト

「生物多様性民間参画パートナーシップ」は、生物多様性の保護に向けた、民間事業者の取り組みを促進するプロジェクトだ。2010年からの5年間で、会員数は509事業者にまで増加した。

この事業者のうち9割以上が、生物多様性を経営理念や活動方針などに反映。事業活動のなかで、生物多様性条約の理念にそった取り組みを実践している。(※9)

日本各地で開催された啓もう活動

生物多様性の重要性や条約の意味を、より広く知ってもらうための啓もう活動が、日本各地で数多く行われてきた。

例えば、2010年には「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が愛知県名古屋市で開催され、関連イベントなどが行われた。その1年前の2009年には、民間企業やNGOなどによる議論や協力を促進する「神戸生物多様性国際対話」も行われた。

近年は、企業が事業活動の中で生物多様性を考慮するケースも増えてきている。

今後も多くの課題を抱える生物多様性条約

生物多様性条約は、ラムサール条約、ワシントン条約の内容を補完し、生態系全体を守るための国際条約である。日本を含めた世界各国が締結し、さまざまな取り組みを行っている。結果が出ている部分もあれば、まだまだ不十分な部分も多いのが現実だ。

生物多様性を守るためにも、我々の生活が生態系へどのような影響を及ぼすのか、まずは知っていくことが第一歩ではないだろうか。

※掲載している情報は、2022年11月28日時点のものです。

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