レインフォレスト・アライアンス認証とは、森林や生態系の保護、農園の労働環境など、持続可能な農業のための包括的な基準を満たした農園に与えられる認証制度。この制度の仕組みや意味、フェアトレードとの違いについて紹介。さらに認証の基準と、認証を取得した商品の例を紹介する。
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レインフォレスト・アライアンス(Rainforest Alliance)とは、1987年に設立された国際NPO団体の一つである。設立の目的は、以下のとおりだ。
「レインフォレスト・アライアンスは、ビジネス、農業、そして森林が交差する場所で活動する国際的な非営利団体です。責任あるビジネスを新しい常識とすることで、人と自然にとってより良い未来を創ることを目指しています」
商業伐採や農地への転用などにより、世界の森林が急速に減少。それにより、生物多様性や気候変動に悪影響を及ぼしている。さらに途上国の農業生産者は、劣悪な労働環境と低い賃金に悩まされているケースが少なくない。
そのような問題に対応するためレインフォレスト・アライアンスは、熱帯雨林をはじめとする森林や、そこで暮らす野生生物を始め、農民や森林コミュニティを多種多様なパートナーと力を合わせて守り、持続可能な世界を目指している。
レインフォレスト・アライアンスは現在、日本をはじめ、世界70ヶ国で活動中だ。
レインフォレスト・アライアンス認証とは、より持続可能な農業を推進するための包括的な認証プログラム。独立した第三者機関による審査を受け、農園は持続可能性の3つの柱(社会・経済・環境)をもとにした厳しい基準要件に準拠することを求められる。
レインフォレスト・アライアンスは、認証の意味とその取り組みについて、以下のように説明している。
「レインフォレスト・アライアンス認証マークは、人と自然にとってより良い未来を表しています。認証農場は、人権が尊重されていなければならない、より安全な生活と労働の場です。
生産者は、児童労働問題への取り組みやジェンダー平等と差別禁止の推進などのトレーニングを受けます。レインフォレスト・アライアンスは生産者と労働者がより良い生活を送れるよう、例えば収穫量を改善し経費を削減する為に役立つ優れた農法の利用を生産者に促進するなどの取り組みも行っています。
生産者は、土地、水、そしてエネルギーを慎重に利用し天然資源と環境を保護しなければなりません。
認証生産者は人工肥料や農薬の使用を減らし、汚染を防止し、廃棄物を管理します。また、動植物の生物多様性を支えることにつながるよう森林と保護地域を保存する方法を学んでいます。
生産者と農場労働者は、気候変動に配慮した農法を利用し、気候危機の影響に適応するための研修も受けています」
つまり、レインフォレスト・アライアンス認証を取得した農場は、森林、天然資源や生物多様性の保全、生産者と農園労働者の生活水準の向上や人権保護など、より持続可能な方法で運営しているのだ。そして、一般消費者にわかりやすいよう認証農園産の原料を用いた製品には認証マークがついている。
レインフォレスト・アライアンス認証農園産の原料を用いた商品には、レインフォレスト・アライアンスの認証マークが貼付されている。
つまり消費者は、レインフォレスト・アライアンス認証マークのついた商品を選ぶことで、天然資源と生産者や農園労働者の健全な労働環境を支えることができ、より持続可能な社会の実現に向けた取り組みを応援できるというわけだ。
認証マークがついた製品の例は、以下のとおりだ。
・コーヒー
・紅茶/緑茶
・バナナ
・チョコレート
・ルイボスティー
・マカダミアナッツ
ふだん見逃してしまいがちだが、我々にとってなじみあるメーカー・製品にも、認証をマークがついたものは多い。ぜひ注目してみよう。
レインフォレスト・アライアンスの認証マークには、カエルが描かれている。
もともとカエルは、科学者が「生物指標」として注目してきた存在だ。カエルが健全な個体数や種類を保てるのは、健全な環境があってこそ。そのためレインフォレスト・アライアンスでは、約30年前にアカメアマガエルをマスコットに選んだ。
アカメアマガエルは、レインフォレスト・アライアンスが創設当時に活動を始めた中南米の熱帯雨林区で、ごく当たり前に見られる生物だった。そこで、持続可能な社会の実現を目指すためのシンボルとして、印象的なカエルマークが採用されている。
ちなみに、レインフォレスト・アライアンスは2018年に、オランダの非営利団体UTZと合併。2020年9月より、新しいレインフォレスト・アライアンス認証マークの使用が始まっており、以前のレインフォレスト・アライアンス認証マークとUTZラベルマークは、順次新マークに置き換えられている。
レインフォレスト・アライアンス認証を取得するためには、持続可能な農業基準を満たす必要がある。基準の焦点となるテーマについて、項目別に解説しよう。
樹木が生立する森林を保護し、森林内への耕作地の拡大を阻止し、樹木と土壌と水路の健全性を育み、自然林を保護するための慣行が推進されていること。
森林破壊を回避しつつ、炭素の貯留を増加させる、責任ある土地管理方法を推進していること。
児童労働、強制労働、劣悪な労働環境、低賃金、ジェンダー不平等、および先住民族の土地権の侵害などに対処し、農村の人々の権利が推進されていること。
農村の人々を貧困から抜け出させるため、生産者と森林コミュニティに対して持続可能な生計の機会を普及させていること。
これらの厳しい条件を満たした農園だけが、認証を受けられる。レインフォレスト・アライアンスでは、単純に認証プログラムの運営だけではなく、各種プログラムや研修制度を通じて、より良い農業の実現に向けたサポートも行っている。
レインフォレスト・アライアンス認証と似たような制度に、フェアトレードがある。フェアトレードとは、途上国の原料や製品を適正な価格で取引することで、社会的不利な立場の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す仕組みだ。
一方、レインフォレスト・アライアンス認証が対象としているのは、農業や栽培、それに関わる人々の暮らしなどである。持続可能な農業や栽培を推進している農場を認証するための制度だ。
ただし、農村の人々の労働環境や適切な賃金を重視している点は、レインフォレスト・アライアンスとフェアトレードに共通している。
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レインフォレスト・アライアンス認証をより身近に感じるため、日本で認証農園産の製品を取り扱う企業5つを紹介する。
1981年にジャマイカに自社直営農園「UCCブルーマウンテン直営農園」を開設したUCC。2008年には、この農園がカリブ海で初めてレインフォレスト・アライアンス認証を取得。長いこと、環境保全や労働環境の整備などを行いながら、コーヒーづくりに励んでいる。(※1)
キーコーヒーでは、レインフォレスト・アライアンス認証農園でつくられたコーヒーを扱っている。取扱商品のなかには、良質な認証コーヒー豆を使ったアイスコーヒーなどがあり、本格的な味わいを楽しめる。(※2)
コンビニ大手ローソンでは、人気のマチカフェコーヒーにレインフォレスト・アライアンス認証農園産のコーヒー豆のみを使用している(シングルオリジンコーヒー、カフェインレスシリーズを除く)。
また2015年には、レインフォレスト・アライアンス認証マークを取り扱う企業同士で立ち上げた「レインフォレスト・アライアンス コンソーシアム」に参加している。(※3)
キリンは、『午後の紅茶』の生産を支えるスリランカの紅茶農園が、レインフォレスト・アライアンス認証を取得できるよう支援している。認証取得に向けたトレーニング費用を提供するなど、持続可能な農園づくりをサポート。
この支援によって、2020年末時点で、93の紅茶大農園と120の小農園が認証を取得している(※4)。また2020年からはベトナムのコーヒー小規模生産者の認証取得支援も行っている
キリンは、ローソンと同じく「レインフォレスト・アライアンス コンソーシアム」に参加している。
コープでは、フィリピン、メキシコ、ペルーなどからバナナを輸入しているが、レインフォレスト・アライアンスやフェアトレードのバナナの取り扱いを増やしている。とくにフィリピン産バナナについては、レインフォレスト・アライアンス認証を取得した農園でつくられている。(※5)
自然環境や森林地域で生活する人々の暮らしを、包括的に守る仕組みを構築しているのが、レインフォレスト・アライアンス認証の大きな特徴である。
ふだん我々が口にする食べ物が、どのような場所と環境でつくられているのか、意識する機会は少ないかもしれない。しかし印象なカエルのマークを見つけたら、そのマークがついた商品を選ぶだけで、地球や生産地の人々を守ることにつながっていく。
我々消費者が、このマークの意味を知り、積極的に選択することで、支援の輪をより一層広げていけるだろう。
記事監修:レインフォレスト・アライアンス
※1 UCCのサステナビリティ|UCC
https://www.ucc.co.jp/company/csr/country_of_origin/jamaica.html
※2 サステナブルコーヒー|キーコーヒー
https://www.keycoffee.co.jp/products/sustainable
※3 おいしさのヒミツ|ローソン
https://www.lawson.co.jp/lab/machicafe/art/1309745_7561.html
※4 レインフォレスト・アライアンス認証取得支援|キリン 午後の紅茶
https://www.kirin.co.jp/softdrink/gogo/action/rainforest_alliance.html
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2021/0726_02.html
※5 バナナの特集|コープデリ連合会
https://www.coopnet.jp/product/osusume_coop/2018/201804.html
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