海洋保護区とは? 海洋保護区の設定が必要な理由や日本における現状について

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海洋環境や海洋生態系の保全などを目的に設定される「海洋保護区」。この海洋保護区の設定が必要な理由や日本の現状、世界の海洋保護区の実例について解説する。

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2024.11.15

海洋保護区とは

海洋保護区とは、海の生態系保全を目的とした自然保護区域のことを指す。この海洋保護区には、IUCN(国際自然保護連合)の定義、生物多様性条約(CBD)の定義、日本における定義がある。

IUCNにおける陸域と海域双方の保護区に適用される定義は「自然および関連する生態系サービス、文化的価値の長期的な保護を成し遂げるために、法令その他有効な方法を以て認められ、特定の目的のために用いられる、管理された明確に境界が定められた地理的な空間である」としている。(※1)

生物多様性条約の定義は「海洋環境の内部またはそこに接する区域であり、そこにある水塊および関連する動植物相、歴史的および文化的特徴が、法律および慣習を含む他の効果的な手段により保護され、それによって海域または/および沿岸の生物多様性が周辺よりも高いレベルで保護されている効果を有する区域」としている。(※2)

日本における定義は「海洋生態系の健全な構造と機能を支える生物多様性の保全および生態系サービスの持続可能な利用を目的として、利用形態を考慮し、法律またはその他の効果的な手法により管理される明確に特定された区域」となっている。(※3)

海洋保護区の目的と役割

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海洋保護区にはどのような目的や役割があるのか解説する。

海洋生物や生態系の保護

海洋保護区の目的のひとつに、海洋生物や生態系の保護がある。これにより、絶滅の危機に瀕している動植物の保護や重要な繁殖地、育成場、漁場を保全する役割を果たす。(※1)

サンゴ礁やマングローブ林の保全

サンゴ礁やマングローブ林は、沿岸地域や海洋環境の保全に役立つ生態系である。前述したとおり、海洋保護区は海洋生物や生態系の保護が目的となっていることから、サンゴ礁やマングローブ林の保全の役割も果たす。(※4)

海洋資源の持続可能な利用と管理

海洋保護区内では、漁業活動が制限される、または漁業活動を一切行わないことがある。これにより魚の過剰な捕獲(乱獲)を防ぎ、魚種の持続可能な資源管理をサポートする。(※5)

気候変動や人間活動による環境悪化からの海洋保全

海洋保護区を設定し、生態系を守ることで気候変動への対応にもなる。また人間活動による環境悪化を防げることから、海洋保全にもつながる。(※6)

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海洋保護区の設定が必要な理由

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なぜ、海洋保護区の設定が必要なのか解説していこう。

生物多様性条約での目標設定

生物多様性条約の第10回締約国会議では、採択された愛知目標で「2020 年までに海域の 10%を海洋保護区に設定すること」が目標とされた。2020年時点で日本の海洋保護区の割合は13.3%となったが、あらたに2030年までに陸と海の30%以上を保全する目標「30by30目標」が掲げられ、これを達成するために新たな保護地域の設定に取り組んでいる。(※7、※8)

海の生態系が失われている現状

海洋には多種多様な生物が生息しているが、人間活動によって多くの種が絶滅の危機に瀕している。過剰な漁業や海洋開発などによって海の生物多様性が失われているため、海洋保護区の設定を行うことで生態系を守る必要がある。(※9)

海洋汚染の現状

海洋汚染には2種類ある。ひとつが産業排水や生活排水による汚染といった陸上での人間活動によるもの、もうひとつが船舶からの油や化学物質の流出などといった海上での人間活動によるものだ。(※10)

また海洋プラスチックごみは1億5000万トン以上に達しており、年間800万トンが新たに流入していると考えられている。(※11)

こうした海洋汚染は生物に有害な影響をおよぼし、生態系全体にダメージを与えてしまう。海洋保護区の設定により特定地域での汚染活動を軽減し、海洋環境を守ることが必要だ。

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漁業における問題

漁業も海洋の環境を悪化させる原因となっている。世界中で問題となっているのが乱獲だ。これにより資源の枯渇、生態系バランスの悪化が危惧されている。また希少種の混獲、ゴーストフィッシングなどによっても環境破壊が引き起こされている。海洋保護区を設け漁業活動を制限することで、持続可能な漁業の促進、長期的な水産資源の利用が可能となると考えられる。(※10)

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気候変動への対応

海洋は気候変動の影響を強く受けている。海流の変化や海水温の上昇は漁獲量の減少やサンゴ礁・海洋生態系に深刻なダメージを与えており、これらの生態系は回復に時間がかかる。海洋保護区は、こうした脆弱な地域を守ることで生態系の回復を促進し、気候変動に対する自然の防波堤としての役割を果たすために必要とされている。(※10)

30by30(サーティ・バイ・サーティ)目標

2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」において「30by30(サーティ・バイ・サーティ)目標」が盛り込まれた。

この目標は、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする世界目標のことを指す。日本では国立公園などの保護地域を拡張する、保護地域以外の生物多様性保全に資する地域の設定・管理するなどで目標達成を目指している。(※8)

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日本における海洋保護区の現状

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日本では、古くから海洋保護区に該当すると思われる海域の指定を行ってきた。現在海洋保護区に該当する場所には、自然公園や自然海浜保全地区、自然環境保全地域、鳥獣保護区、生息地等保護区、天然記念物の指定地、保護水面などがある。

日本の海洋保護区に該当する区域の合計面積は約36.9万キロ平方メートルで、管轄水域(領海および排他的経済水域)の約8.3%となっている。(※3、※12)

鳥獣保護区特別保護地域

海洋を含む鳥獣保護区は611か所ある。海洋もしくは海洋に接する鳥獣保護区の面積は690,085haである。このうち、まったく海洋と接しない特別保護地区を除いた特別保護地区は101か所あり、その面積は85,899haだ。また、鳥獣保護区特別保護地区の海水面は40,752haである。なお、海洋保護区のほとんどを鳥獣保護区が占める。(※13)

自然公園海中公園地区

自然公園海中公園地区は、国立公園、国定公園、都道府県立自然公園が該当する。内海洋を含む国立公園は15公園で、面積1,278,123ha。国定公園は25公園で、面積441,700haである。自然公園海中公園地区は、国立公園内が11公園、国定公園内が14公園あり、合計面積は3,745haである。(※13)

自然環境保全地域海中特別地区

自然環境保全地域海中特別地区は崎山湾のみで、海水面は128haである。(※13)

保護水面

保護水面は50か所あり、その海水面は2,747haである。最大の海水面は沖縄県石垣市のクロチョウガイなどを対象とした275ha、最小海水面は熊本県玉名市のアサリを対象とした10haとなっている。(※13)

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海洋保護区の設定を進めるための国の動き

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日本の海洋保護区の面積は、決して広いとはいえない。海洋保護区の設定が進まない理由のひとつに、海洋保護区に指定されることで利用が禁止されるのではないか、管理に費用や人材が必要なのではないかといった偏見や誤解があると考えられている。(※14)

海洋保護区の設定を進めるために、政府は継続的なモニタリングを実施し、検証による政策の見直しを行うとしている。また専門家や市民などさまざまな関係者が参画して、順応的管理を行うための連携体制づくりなどへの取り組みもしている。(※15)

世界の海洋保護区の実例

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世界の海洋保護区についてみてみよう。

パラオ共和国では自国海域全体の80%を保護しており、海洋保護区において世界有数の広さを誇る。その成果のひとつとして、魚の生物量が増加していることが明らかになった。(※16、※17)

エクアドルのガラパゴス海洋保護区は、1998年に設立。海洋保護区を多目的利用ゾーン、制限付き利用ゾーン、港湾ゾーンに分けて設定しているのが特徴だ。この結果、2001年には海洋保護区もガラパゴス諸島の自然遺産として登録された。(※18)

ハワイにあるパパハナウモクアケア海洋保護区は、ハワイ諸島北西にある世界最大級の海洋保護地域である。無許可での船舶の通行、観光、商業活動、野生生物の持ち出しが禁止されている。(※19)

海洋保護区に注目し続けよう

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海洋保護区は、海や生態系を保全・保護することだけでなく、人類が持続的に海洋資源を利用できるようにするためにも重要な役割を担っている。また、環境保護と経済活動のバランスをとるための重要なツールともいえそうだ。海を守るために、これからも海洋保護区に注目していこう。

※掲載している情報は、2024年11月15日時点のものです。

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