水辺の生態系を守るラムサール条約とは? 主な目的と経緯について解説

夕焼けと沼

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ラムサール条約とは、水辺の生態系や環境を守るための国際的な枠組みである。締約国は、この条約に基づいて自国で管理する湿地の環境を守っている。また、日本も締約国の一つである。この記事では、ラムサール条約の内容や採択された背景について詳しく解説する。

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2024.10.31

ラムサール条約とは

水鳥

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ラムサール条約とは、1971年にイランのラムサール市で採択された「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」である。主な目的は、湿地の保全と持続可能な利用を国際的に進めることだ。条約には湿地の定義や保護対象となる湿地の指定方法が詳細に記されており、世界各国が協力して湿地保護に取り組んでいる。

ラムサール条約の主な目的と内容

霧のかかった湿地帯

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ここではラムサール条約の主な内容について紹介する。

湿地の保全と持続可能な利用を促進

ラムサール条約の第一の目的は、湿地を保全し、その持続可能な利用を促進することである。湿地は多くの動植物の生息地であり、私たち人間の生活にも関わるため、適切な管理が求められている。条約では、各国が湿地を保護し、経済活動とのバランスをとることが強調されている。

生物多様性の保護と水鳥の生息地保護

もう一つの重要な目的は、生物多様性の保護である。ラムサール条約では水鳥の生息地としての湿地の保全が重視されており、渡り鳥などの生息環境を維持するための国際的な取り組みが進められている。

国際的な協力の促進による環境保護

ラムサール条約は、各国間の協力を通じて湿地保護を推進している。国境を越える湿地や水系の保護には国際的な協力が必要で、条約の締約国は情報交換や共同研究を行いながら湿地の保全に努めている。

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ラムサール条約の歴史と採択までの経緯

地球儀

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どのような経緯でラムサール条約は採択されたのだろうか。ここでは、歴史的背景について見ていこう。

1971年にラムサールで採択された背景

1971年にラムサール条約が採択された背景には、湿地の減少や水鳥の減少が国際的に問題視されていたことがある。湿地は過去において、農地や都市開発のために破壊されることが多く、その結果、生態系が失われるリスクが高まっていた。この危機感から、国際的な枠組みを通じて湿地を保護する取り組みが求められるようになった。

第一次条約の内容とその後の改訂

最初に採択されたラムサール条約は、湿地の定義や登録の基準を定めたものであったが、その後も湿地の保全状況に応じて内容が改訂されてきた。1990年代には生物多様性の保護や気候変動の影響を考慮した改訂が行われ、条約の範囲が広がった。その後も、3年に一度開催される条約締約国会議の決議や勧告を通じて、内容が大きく変化している。

湿地の重要性が注目されるようになった理由

湿地は多様な生態系を支えるだけでなく、水の浄化や洪水の防止、炭素の貯蔵など、環境保護においても大切な役割を持っている。さらに近年では、気候変動に対する緩和策としても湿地の重要性が再認識されるようになった。

ラムサール条約における3つの柱

3名の子ども

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定期的に行われる改訂は、3つの基本的な柱に基づいて決定される。ここでは、ラムサール条約における3つの柱についてそれぞれ解説する。

保全・再生

湿地は一度破壊されると再生が難しいため、早期に保護対策を講じることが求められている。またすでに劣化した湿地についても、適切な管理と再生プログラムを通じて復元が行われている。

ワイズユース

「ワイズユース」とは、湿地を保全しながら「賢明に利用する」という考え方である。湿地は多くの人々に食料や水、燃料などの恵みをもたらしており、それらを持続的に利用するための枠組みもラムサール条約の柱となっている。

交流と学習

ラムサール条約の第三の柱は、湿地の保護に関する交流、能力養成、教育、参加、普及啓発(CEPA:Communication, Capacity building, Education, Participation and Awareness)である。加盟国同士の交流はもちろん、地域住民や教育機関とも連携し、湿地の重要性を広める教育活動が行われている。

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ラムサール条約が定義する「湿地」とは

池と水鳥

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ラムサール条約ではたびたび「湿地」という言葉について触れられている。ここでは、本条約で定義される「湿地」について解説する。

ラムサール条約が定義する「湿地」

ラムサール条約は湿地を「天然または人工、恒久的または一時的な水域で、水が滞留するか流れているかを問わず、淡水、汽水、海水も含む」ものと定義している。さらに沼沢地、湿原、泥炭地、水田、湖沼、河川、干潟、マングローブ林などが含まれており、水深が6メートルを超えない海域も対象となるなど非常に広い。

ラムサール条約登録湿地の基準

ラムサール条約登録湿地の基準は以下のとおりだ。

・特定の生物地理区内で代表的、希少、または固有の湿地タイプを含む湿地
・絶滅のおそれのある種や群集を支えている湿地
・生物多様性の維持に重要な動植物を支えている湿地
・動植物のライフサイクルの重要な段階を支える湿地
・定期的に2万羽以上の水鳥を支えている湿地
・水鳥の1種または1亜種の個体数の1%以上を支える湿地
・固有魚類など、代表的な生物を支える湿地
・漁業資源の重要な産卵場や稚魚の生息場となる湿地
・鳥類以外の湿地依存動物の1%以上を支える湿地

日本での湿地の登録条件

日本での湿地の登録条件は以下のとおりだ。

・国際的に重要な湿地であること(国際基準のいずれかに該当)
・自然環境の保全が将来的に図られること(自然公園法や鳥獣保護管理法などに基づく)
・地元住民からの賛意が得られること

日本における代表的なラムサール登録湿地

日本では、北海道のクッチャロ湖やサロベツ原野、宮城県の伊豆沼・内沼など、さまざまな地域の湿地がラムサール条約に登録されている。2022年までに53の湿地が登録され、水鳥の渡りや繁殖の重要な中継地など、自然保護の観点からも重要な場所が多い。(※1)(※2)

湿地を保全することのメリット

湿地帯

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ラムサール条約によって、湿地が守られることで享受できるメリットについて解説する。

生物多様性の保護

湿地は、地球上の生物種の約40%が生息する貴重な生態系である。再生された湿地は、地域の食物連鎖を活性化し、多様な野生生物を引き寄せる場となる。湿地の保全は、絶滅の危機に瀕した動植物の保護にもなるため、豊かな生態系を未来へつなぐ手段となるだろう。

水質の浄化

湿地は自然の「ろ過装置」として機能し、水をきれいに保つ役割を果たしている。湿地内の植物や土壌が汚染物質を吸着・分解することで、水質が浄化される。その地域に住む人々に、安全な水を安定的に供給する。

地域の気候調整

湿地は炭素を吸収・貯蔵する能力が高く、とくに泥炭地やマングローブ林、潮間帯などは効率的な炭素の貯蔵庫となっている。また湿地は豪雨や洪水の際にスポンジのように水を吸収することで、洪水や高潮の被害を軽減し、地域の気候調整にもつながっている。

ラムサール条約の加盟国と国際的な活動

蓮の葉

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ここでは、ラムサール条約締約国の主な活動についてみていく。

現在の加盟国の数と主要国

ラムサール条約は2023年までに172カ国が加盟しており、世界的に広がっている。アメリカやイギリス、日本などの主要国が参加し、国際的な湿地保護に取り組んでいる。加盟国は定期的に会議を開き、条約の改訂や各国の湿地保全に関する最新の情報を共有している。(※3)

国際協力の枠組みとその活動内容

締約国会議では、湿地に関わる幅広いテーマについて議論され、多数の決議が採択される。第8回締約国会議では生物多様性や気候変動、貿易や文化などの議論が行われ、46本の決議が採択された。また第12回会議では、湿地と防災、減災に関する決議が採択され、ラムサール条約戦略計画2016-2024が策定されている。(※3)

ラムサール条約に基づく各国の取り組み

ラムサール条約に加盟する約172カ国は、国内の湿地を保全するための具体的な行動を求められている。締約国は少なくとも1つの湿地を登録湿地として保全し、その湿地の生態学的特性を維持するための施策を講じる義務がある。さらに登録されていない湿地に対しても自然保護区を設け、調査や保全活動を行うことが求められている。

水辺の生態系を守るラムサール条約

大きな河川

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ラムサール条約は、湿地を保全し持続的に利用するための国際的な枠組みである。水鳥や絶滅危惧種の生息地を保護し、生物多様性を守ることを主な目的としている。湿地は周辺にある自然の浄化や気候調整にも関係しているため、私たちの生活にとっても重要な役割を担っている。意外と身近な場所が登録湿地になっているため、一度チェックしてみてほしい。

※掲載している情報は、2024年10月31日時点のものです。

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