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いまの地球には多種類の環境問題がある。地球温暖化、海洋汚染をはじめ、人類の発展とともに深刻化が明らかになった問題は決して少なくない。問題解消に向けたアクションも積極的におこなわれるようになった。本記事では環境問題のはじまりや、諸問題へのアクションについて詳しく解説する。
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環境問題の多くは、人類が社会性を持ち、経済活動を効率化した頃からはじまったと考えられる。その代表的な例としてフォーカスされるのは、18世紀なかばから19世紀に起きた産業革命だ。
イギリスの産業革命では工業機械や蒸気機関車が開発された。その結果、生産の効率化と輸送の利便性が格段に上がり、現代の社会構造の礎を築いたと言っても過言ではない。
いっぽう、これらの画期的な発明の活用にはエネルギーが必要になった。石炭や石油などの化石エネルギーの消費量が増加すると同時に、二酸化炭素の排出量も増加する。自然と人類の活動はバランスを崩しはじめ、環境問題を生み出す原因になった。
19世紀に入り、イギリスではスモッグが確認されるようになった。石炭燃料のススや煙がイギリス特有の霧に混ざり、人々の健康をおびやかしたのだ。
生産活動がますます盛んになった20世紀には、霧の都と呼ばれるロンドンで有害物質を大量に含んだ「ロンドン・スモッグ」が発生した。1957年、このロンドン・スモッグにより約4,000人もの死者が出てしまったのである。
これを機にイギリスは「大気清浄法(クリーン・エア・アクト)」を公布。近代の環境汚染対策法として実効力のある法律が制定された。
当時イギリスだけではなく、アメリカをはじめとした大都市を抱える国々でも大気汚染が発生していた。アメリカでは各州で死亡者が出る大気汚染の被害が発生し、1955年に「大気汚染防止法」を制定する。各州のいずれの大気汚染も、人口増加にともなう工業生産の活発化が原因だと言われている。
工業生産の進化と活発化は、大気汚染だけではなく地球温暖化もまねいていた。1827年、ジョセフ・フーリエが「二酸化炭素による地球温暖化仮説」を提唱。1896年にはスヴァンテ・アレニウスが同様の説を発表し、化石燃料の利用による地球温暖化の可能性を指摘している。しかし残念ながら、当時はそれほど問題視されることがなかった。
ようやく地球温暖化が注目されるようになったのは20世紀に入ってからだ。1970年代、科学の発展により多くの科学者が地球温暖化とその深刻性に気づき、警鐘を鳴らすようになる。
この頃には環境問題が世界の注目を集めるようになった。大気汚染や地球温暖化だけではなく、海洋・水質汚染、将来的な資源の枯渇の可能性など、多くの問題に人々の意識が向けられたのである。
1972年、ストックホルムで国連主導の「国連人間環境会議」が開催された。114ヶ国が参加した、世界初のハイレベルな政府間会合である。
この会議では「人間環境宣言」が採択され、環境に関する権利と義務、天然資源の保護などの26項目について、意識改革と問題解決の必要性が取り上げられた。(※2)
以降、環境問題の解決への努力、あらたな環境問題の認識と解決へのロードマップの作成・実行など、世界レベルでの取り組みが進められている。
現在、地球上で深刻化している環境問題はいくつもある。その種類と内容について紹介する。
過度の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、フロンガスなど)の排出によって地球の平均気温が長期的に上昇する。対策をしなければ2100年までに平均気温が5℃上昇し、異常気象の発生や生態系の破壊が進むとの危惧がある。
現在、対策としてグローバルレベルで温室効果ガス排出量の削減がおこなわれている。パリ協定が設けた基準やロードマップが有名だ。
2015年に開催されたCOP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)では、産業革命以前と比較し、世界の平均気温の上昇を2℃より低く保ち、1.5℃に抑えることを目標としたパリ協定が採択された。2022年のCOP27では、この努力目標が事実上の目標となった。
船舶の損傷で漏れる機械油や有害物質、工業廃水、生活排水ごみの廃棄で海洋を汚染する問題。海底探査施設で使用される機器も汚染原因になる。また、大気に含まれる有害物質が雨となって海洋へ落ち、汚染につながることも。
とくにプラスチックごみの問題は深刻化している。放置したままでは2050年までに海洋生物よりもプラスチックごみのほうが多くなるという試算がある(※3)。
海洋の生態系をおびやかす問題でもあり、対策は必須だ。現在はSDGsの目標のひとつとされ、各国や各企業が有害物質の排出の規制やプラスチックごみの削減、海洋分解性プラスチックの開発などに取り組んでいる。
開発や乱獲、環境の悪化や外来種の脅威により、種の存続がおびやかされる生物がいる。このままでは21世紀末には145万もの生物種が絶滅するという試算だ。なかには人類の生態系に深くかかわる種もある。
現在は「生物多様性条約」をもとに、生物の多様性の保全、持続可能な利用、遺伝資源の利用から得られる利益の公平な配分などを重視して(※4)、各国やNGOが保全活動をおこなっている。
森林、熱帯雨林の減少により、緑地の砂漠化が進行している。原因は人口の急増やそれにともなう木材利用や農地開墾、異常気象、干ばつなどさまざまである。
森林破壊や砂漠化がこのまま進行した場合、緑地の減少だけではなく、今後25年のあいだに熱帯雨林に生息する生物が最大8%絶滅するという。また、森林が有する二酸化炭素吸収機能も減少することになり、地球温暖化の進行もあやぶまれる。
ODAによる国家間の技術連携、企業による緑化活動、国連の能力向上プロジェクトなど多岐にわたる対策と支援がおこなわれている。
化石燃料の燃焼によって発生した窒素酸化物や二酸化硫黄などの有害物質を含んだ酸性の雨。森林破壊や土壌・河川の酸性化、生態系の汚染など、放置を続ければ多岐にわたる悪影響がある。
対策としては有害物質の排出の削減が有効だ。化石燃料の使用を減らしたり、燃焼時に有害物質を排除できる技術を導入するなどが代表的である。
鉱物資源を採掘する際、有害物質・重金属が発生し、河川・海洋汚染を引き起こす問題がある。また、従事者や鉱山周辺の住民の生存権がおびやかされるなど、人権的な問題を併発することも。
作業環境の改善はもちろんだが、採掘量を減少させることも対策として有効だ。現在は資源のリサイクル利用や廃棄物から有用な資源を取り出す技術が注目されている。
自然災害により、世界の人々に充分な食料が行き渡らない問題である。とくに所得が低い国家では異常気象による災害が多く、食物の生産に大きな影響を受けてしまっている。
国連の推定によると、2050年には世界人口が92億人を超える。現状のままではいま以上に食料問題が深刻化するだろう。
現在は飢餓問題が深刻な国に対し、大規模な食料支援のほか、食料生産技術の向上指導などがおこなわれている。
地球温暖化や酸性雨などが懸念されるなか、エネルギー資源についても問題が起きている。化石燃料の使用が種々の環境問題を引き起こすことが判明しており、従来のエネルギー社会の持続が懸念されているのだ。このまま使い続ければいずれ化石燃料が枯渇する事実も考えなければならない。
さらに、ロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー危機が欧州経済を混乱に陥れている。これらの問題解決のため、太陽光発電や風力発電をはじめとした再生可能エネルギーの研究・開発・代替が急ピッチで進められている。
環境問題はすでに人類共通の課題として認識されている。世界が取り組む環境問題対策について見てみよう。
2015年に国連サミットで制定された、21世紀を代表する世界的な取り組み。持続可能な社会を目指し、17のゴールと169のターゲットを構成している。環境、社会、経済の3つの面から相互協力して人類共通の課題を共有・解決し、2030年までに持続可能な社会の実現を目指す。
化石燃料に代わるエネルギーとして期待される、再生可能エネルギーの普及を目指す。太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスなどの種類がある。
EU各国ではかなり注力されており、とくにドイツ・イギリスにおいては、経済効果・雇用の創出、エネルギー安全保障、気候変動対策など、環境以外における点でも人類にとってメリットが多いとして積極的な開発・導入を進めている。(※5)
地球温暖化問題の解決に向けた取り組み。温室効果ガスの一種である二酸化炭素の排出量をゼロにする目標がある。二酸化炭素の排出自体を完全になくすことは難しいが、排出量の削減とともに、排出した二酸化炭素を回収し、実質的なゼロを目指す。カーボンニュートラルとも呼ばれる。
化石燃料から再生可能エネルギーへの転換や、個人レベルであればポリ袋やプラスチックストローを使わないなど、大小かかわらず世界中の関心を集める項目である。
21世紀の現代では、SDGsの取り組みやNGOの積極的な活動をはじめ、個人でもトライできるアクションが増えつつある。環境問題を人類共通の課題として受け止め、解決を望む人々は決して少なくないだろう。
環境問題の歴史はそれほど長くない。私たちの行動ひとつで、すべての生命にとって住みよい地球環境を守り続ることにつながるのだ。
※1 第二章 大気汚染の歴史(2ページ目)|環境省
※2 国連人間環境会議(ストックホルム会議:1972 年) 人間環境宣言|環境省
※3 Designing out plastic pollution|ELLEN MACARTHUR FOUNDATION
※4 生物多様性条約とは|WWF
※5 再生可能エネルギー(2〜3ページ目)|環境省
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